表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
355/431

第三百五十三話 賽投げと引き金

稲荷の恐慌(強行)的な身籠り計画により、

一人、また一人と被害者が続出する中、


手頃な"おもちゃ"こと、

サキュバス界、シフェルム皇国"第三皇女"のルシアを得た稲荷は、ちょっとした箸休めとして完堕ち調教に勤しんでいた。



一方、視点を大きく変わり、

早朝の頃に突如として現れた"ユメ"と名乗る幽霊について気になる"三条晴斗"は、直人の妹である"千夜(ちよ)"に深い理由は告げずに、無理を言って経理部の仕事を手伝いながら"ユメ"の監視していた。



当然予想はしていたが、

中々尻尾を出さない"ユメ"に対して、晴斗は身を呈して探ろうとするも、ここでちょうど良く、午前中の内に連絡を取っていた、母にして死神である"三条美香"から返信を受け取った。



やはり、一度冥界に昇った幽霊が、お盆前に現世に降りる事は、まずあり得ないと言う。

まして、"ユメ"と名乗る幽霊が、冥界を出入りしている記録はおろか、冥界リストにも該当していないらしい様であった。


となれば、

自縛霊、浮遊霊、悪霊、怨霊(おんりょう)の四つに、自然と絞られてくる。


そしてここから更に、

一反木綿(いったんもめん)の平沼の話を思い出す。


"ユメ"と名乗る女性の幽霊は、


過去に呪霊三女(じゅれいさんにょ)の一角、

貞美(ざだみ)の呪いを受けてしまい。


数十人にも渡る人間の霊魂が無惨に喰い千切り、人の魂を(むさぼ)る悪霊となるも、たまたま近くにいた、しがない退魔士に払われたと言う。


しかしその後、

"ユメ"と名乗る霊が成仏したのかは、

詳細が不明である。



取り敢えず、その場に縛られているだけの自縛霊は論外として、浮遊霊、悪霊、怨霊の(すじ)が高いと思われる。



これに対して、

母である"三条美香"は、悪霊の線を警戒した。


なぜなら、一度悪霊化してしまうと、

例え一度払われたとしても、冥界へ昇らない以上は悪霊のままだからである。まして、呪霊三女(じゅれいさんにょ)の一角、貞美(さだみ)の呪いを受けているのなら、特に警戒しなくてはならない。


ここで一番恐ろしい展開としては、"ユメ"と名乗る幽霊が、"貞美"の新たな"(うつわ)"として、新たな霊体の姿を得るパターンである。


これが、呪霊三女(じゅれいさんにょ)の一角、"貞美"の捜索困難な理由である。


呪霊三女の中でも、

妬むほど好ましい生きた女性や

霊体を中心に食らう"貞美"は、

一つ、二つと魂を貪り、

死体の皮を被るかの様に、

自らのカムフラージュに使っていると言う。



一応冥界でも、

わかる範囲の顔は割れてはいるものの、

実際は半分も特定されていないと言う。



そんな大物が何の因果か、

この妖楼郭に現れ、"貞美"討伐の好機が訪れたのだ。



これには当然、

三条美香は冥界本部へ連絡。


すると、早々に閻魔大王からの勅命(ちょくめい)により、数十名の死神が続々と妖楼郭へ向かう事になった。


これにより、

妖楼郭に灯された不穏な灯火が、

不気味に輝き始める。




そして話を戻し、

一部で緊張感を漂わす中、

経理部では意外と熱々な展開が始まっていた。



ユメ「さぁ、平沼様♪あーん♪」


平沼「ゆ、ユメ‥、嬉しいけど、み、みんなが見ているから自重してくれ。」


綺麗な長い黒髪に白いワンピースが、すこぶる似合う"ユメ"は、愛する平沼のために人目を気にせず、経理部専用の弁当を食べさせようとしていた。


これにはさすがに、

あの平沼でさえも堪える様で、思わずそっぽを向いては、素っ気ない態度を取る。


これに対して"外野"は、

気だるげながらも激しくブーイングを起こした。


平塚「おいおい、折角の奇跡の再会にその態度はないと思うぞ?」


平野「うん‥。今の態度はユメさんに対する冒涜だね。」


平賀「‥恥ずかしいのなら、今日は休んで外でいちゃつけば良いのに‥。」


平間「そうそう。今は最強の助っ人、"晴斗"くんが居るんだから。」


晴斗「っ!あ、いや、さ、最強って‥、で、でも、俺は‥。」


恥ずかしがる平沼対して、

"四平(よんぺい)"たちが善意で(あお)る中、まさかの外に出させようとする平間の発言に、晴斗は動揺しながら焦り出し始める。


折角警戒の(まと)が、

この狭い空間に閉じ込めていると言うのに、

わざわざ外に出すなんてとんでもないことである。そのため晴斗は、上手い具合に引き留め様とここで。


しかしここで、千夜が先に動く。


千夜「こら平間!晴斗様は善意で手伝ってくれているのよ!それを良い事に仕事を投げるのは許さないわよ!」


平間「っ、で、でも‥。二人の再会を(しゅく)すくらいなら、これくらいは妥当だと思うけど‥。」


平野「そうそう、五十年以上ぶりなら特にそうさせるべきだと思うぞ?。」


平賀「平間の言う通りだ。空いた穴は俺たち四人で分担すれば言い話だ。」


平塚「うんうん、それなら良い案だと思うけど、どうだろうか??」


千夜「うっ、うーん、そ、それなら‥構わないわ。」


晴斗「えっ!?」


まさかの千夜がごり押されると言う展開に、

晴斗は思わず声を上げてしまう。


これには当然平沼も、

勝手に話を進められ、午後からデート展開に決められた事により、思わず声を上げて待ったをかけた。



平沼「お、おいおい!?な、何勝手に話を進めているんだ!?」


平塚「まあまあ、そう恥ずかしがるな。"この奇跡とも言える時間"を無駄にするなよ。」


平沼「うぐっ、(つか)‥。」


平間「まっ、そうだな。盆が過ぎれば"また会えなくなる"し、今の内にユメちゃんと楽しんで来いよ。」


平賀「そうそう。何なら今夜のベッドメイキングもセットして‥‥あっ、ご、ごめん‥、冗談だからそんな怖い顔をして"銃口"を向けないでくれ。」


茶化される事に耐性がない平沼は、

引き出しの中に入れてある"妖銃(ようじゅう)"を取り出し、調子に乗って好き放題語る平賀に銃口を向けていた。


※ちなみに、この様な展開は月に三回程度あり、意外にもデフォルトである。



平沼「‥ふっ。な、なら、その話に甘えてやるよ。」


ユメ「ひ、平沼様‥。」


平沼「‥千夜、午後から有給だ。ここまで煽られたんだ構わないな?」


千夜「えぇ、それは構わないわよ。」



いやいや、構っちゃダメだよ!?

今ユメさんを外に出すと面倒だから!?




千夜の承認により、

晴斗は本格的に焦った。


もしユメさんが悪霊、怨霊の類いなら、

平沼さんを利用して魂魄(こんぱく)を食らう可能性がある。更に怖いのは、平沼さんを食らい擬態を得ることである。


正直の所、二人の跡をつけたいところだが、

千夜に無理を言ってまで、ここに居させてもらっている分、やっぱり戻るなど到底言えるものではない。



しかし、理由を話せば"すんなり"と返してくれそうだが、それでは千夜を巻き込んでしまいそうな気がして動けなかった。



結果、二人を外に出してしまう事になり、


更には、晴斗の知らないところで、

冥界から数十人もの死神たちが向かって来るのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ