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第三百五十一話 平和な者たち

直人との稚子(ややこ)を一分一秒でも産みたい稲荷は、自室に"ノコノコ"と忍び込んで来た昴、エルン、リールの三人を襲うと、更に性欲の暴走に拍車がかかった。



三人をある程度搾った稲荷は、蕩けた直人たちと共に"秘密の部屋"へと放り込むと、早速次のターゲットを求めて動き始めるのであった。



その頃、憲明たちはと言うと‥。

裏で稲荷による"狩り"が起きているなど露知らず、各自部屋でのんびりとしていた。


そんな中で、次の注目となる視点は、

桃馬たちの中でも、愛については、一、二を争う程強く、そして貪欲。今では、トラブルメーカー化としている"骨と淫魔"に向けられた。


※即ち次なるターゲットである。



京骨「ふぁ~ぁ、さてと、これから何しようかな。」


ルシア「スヤァ~♪」


昼食を終えてから、再びルシアの淫行に付き合わされるかと思っていた京骨であったが、豪華な昼食に満足したルシアは、挑発的かつ淫らな姿で昼寝を始めていた。


狙うならチャンスな展開であるが、昨日からずっとルシアと体を重ねていた京骨に、もはや自主的な性欲など、ほとんど皆無であった。


そのため、どこかへ遊びに行きたいところだが、このままルシアを一人にさせるには、さすがに抵抗を感じてしまい、動こうにも動けない状態であった。


京骨「うーん、せっかく草津(ここ)まで来たのに、ずっと部屋に籠るのは普通に味気(あじけ)ないな‥。でも、ルシアを一人にしたら他のお客さんを襲うかもしれないし‥。うーん、本当に困ったぞ。」



ルシアと言う鎖に縛られた京骨。


本来なら無防備なルシアを襲うには、

これ程にもないチャンス‥。しかし、先程も言った様に、今の京骨に自主的な性欲など皆無である。


つまり、

この空間を脱するには、

誰かが訪ねて来ない限り、

シンプルにルシアと添い寝をするか。

ただボーッと、景色を眺めるだけしかできない。


しかしここで、京骨に取っての転機が訪れる。



暇を(もてあそ)んでいる頃。

突如、扉からノック音が響いた。



京骨「ん?はーい、」


京骨は、警戒なく扉の前に立つと、

防犯用の除き穴を覗いた。


しかしそこには、

不気味な事に誰の姿もなかった。


これに京骨は、

反射的に扉を開けて辺りを見渡すも、

奇妙な事に人の影すらなかった。



こう言う時のパターンとして、

大抵子供の霊のいたずらが多い。


しかも、ここは妖楼郭。

妖怪や幽霊などは普通に存在しているため、

考えられる話である。


京骨「ふぅ、幽霊(こども)のイタズラか‥。」


少し呆れながら扉を閉めて部屋に戻ると、

先程まで寝ていたはずのルシアの姿がなかった。


京骨「えっ、んっ?んん??、んんっ!?」


一瞬の内で三度見はしただろうか、

突然すぎる失踪展開に京骨は戸惑い始める。


まさに神隠しの様な展開に、身の危険を感じた京骨は、近くに置いてある自分の刀を取ろうとする。


しかし、刀に掴むと同時に、

背後から何者かに口を塞がれ、

そのまま暖かな温もりと共に意識を失った。


午後の某刻。

ルシア、京骨失踪。




その一方で、

ジェルドとエルゼ、小頼の三人が泊まる小部屋では、白い"モコモコ"のエルゼと黒いモコモコのシールが無防備な姿で昼寝をしていた。


この神聖とも言える光景に、

小頼商会の活動に熱が入る小頼は、

カメラを構えてせっせと盗撮をしていた。


しかも、本来ガードであるジェルドは、

"ちょっと、外に出てくる"と言いながらも帰って来る気配は全く無かった。


ジェルドが部屋を出る際に言い残した、

"変なことはするな"と言う警告も虚しく、

容易く崩壊していた。


小頼「ふへぇ~♪この二匹の破壊力はたまりまひぇんね~♪ジェルドも帰って来ないし、撮れるだけ撮ってやるわ~♪」


実の姉妹の様に抱き合いながら眠る二匹に、

不純なお姉さんは、誰もが微笑むであろう二人の寝顔を犯した。


エルゼ「わふぅ~♪シールちゃん~♪」


シール「わぅ~♪スヤ~♪」


小頼「ぐへへ~♪何度見ても本当の姉妹みたいだよね‥。はぁはぁ、純粋な二人を汚してしまっているこの背徳感‥。エロい展開も良いけど‥、これはこれで格別だよね~♪」


カメラのシャッターを絶えず押す小頼は、

正面、真上、真横など、様々なアングルから盗撮を繰り返す。


漫画やドラマなどのお決まりのパターンなら、ここでジェルドが登場するところだが、残念な事に現れるのとはなかった。



と言うより、妹たちのピンチに、

ジェルドは何をしているのか‥。


ジェルド視点に(うつ)してみよう。



"時"と"場"の流れから、

犬神の支神である"覇盧(はろ)"と"佗盧(たろ)を妖楼郭に招き入れてしまった事で、駄犬心に火をつけるジェルドとギール。


その一方で、

二匹の神様を歓迎するシャルたち友好派は、

大喜びで遊んでいた。


しかも意外な事に、あのヴィーレまでも二匹を気に入ってしまい、ジェルドとギールは、強く受け入れを反対できず、片隅からジェラシーの念を飛ばしながら監視していた。


ジェルド「‥くっ、こんな時にとんでもない"ライバル"が出たもんだな。」


ギール「‥うぐぅ、皮肉だが‥。昼食の時に桃馬がいなかったのは、ある意味幸いだったかもな。」


ジェルド「それな‥。と、とにかく"白い"方は置いといて‥。問題は"白黒"方だ。悔しいが、獣人化しても犬化しても‥俺たちより上な気がする。」


ギール「っ、ま、まあ、否定はしないけど‥。それより、ジェルドが弱気になるなんて珍しいな?」


ジェルド「あ、当たり前だ!あ、あんなチート染みた犬が、昨日"ノコノコ"と桃馬の前に現れては、気安く擦り寄ったんだぞ!?も、もし、この隙に桃馬が取られたらどうする!?」


ギール「ば、ばか!?声がでけぇよ!?お、俺だって、その‥なんだ、そう言う危機感はあるさ、だからこうして見張ってるんだろ?」



かなり重度なジェラシーを漂わすジェルドに、

ギールは意外にも冷静になっていた。


いつもならジェルドと同様に、ジェラシーを(こじ)らせ敵意を向ける展開だが、今日のギールは、不思議と強いジェラシーを感じていなかった。



むしろ、ギールの目に映る覇盧(はろ)が、

眩しく光輝いていた。


"駄犬駄目神"こと、"犬神"と生活している分。

覇盧(はろ)の姿が、真の犬神様に見えて仕方がなかった。クールでかっこよく、そして神らしい品格。まさに憧れの象徴であった。


しかし、桃馬争奪のライバルの可能性もあるため、光輝くオーラの"中心"、即ち"(かく)"の部分から、カラスの羽の様な黒い色、いや、不敵にイケメン男子が微笑むかの様な黒いオーラを感じた。


もっと分かりやすく例えらなら、

男でも惚れさせるカリスマを漂わせているのだ。


それ故にギールは、

覇盧(はろ)の様な兄が居たら、

どれほど良かったであろうと思うのであった。


ジェルド「ぐぬぬ、桃馬の"ケツ"の開発は、絶対に阻止してやる。」


ギール「っ、そ、そうだな。」


成長するギール。

停滞するジェルド。


二人の駄犬としての品格の差は、

こうしてまた開くのであった。




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