第三百四十九話 狐お姉さんの子作り教室
人騒がせな犬神を回収したシャルたちは、
ちょうど時刻が昼時と言う事もあり、支神である二匹を連れて悠々と妖楼郭へと戻った。
午前中は各々(おのおの)、
統一感のないバラバラな行動をとっていたが、昼食の時間になるや、桃馬と直人を除くメンバーたちが、ようやく昼食の会場である大広間に集まった。
※ちなみに、覇盧と佗盧は、
騒ぎを警戒して得意の犬の姿でお邪魔していた。
これに対して、
二匹の正体を察した妖楼郭の従業員は、
目を疑うや、ざわつき始めた。
支神でも犬神直下の神様であるため、
知る者には緊張が走った。
特に従業員の間では、
どの様にもてなすかで迷いが生じた。
神様として"もてなす"べきか、それとも今のお姿を察して、ちょっと待遇よく"もてなす"か。
これには、
大旦那である刹丸でさえも迷った。
正直"知らぬが仏"と言う様に、
突然の神様訪問は、
本当に知りたくない状況である。
※一応犬神については、
神としての力が弱まっているため、
誰も気づいてもらえないのである。
ともかく、大旦那である刹丸は、
当たり障りの無く普通に接待する事を決定。
それからと言うもの、
特別感のある大部屋では、
桃馬と直人が居ない中、一部では心配の声が上がるも、その場の"なぁなぁ"な雰囲気により一瞬で掻き消され昼食を楽しんでいた。
そしてその頃、
朝方、愛する弟である白備に一発KOされ、
発情状態の稲荷が待つ部屋に連れて行かれた"直人"と、白備襲撃未遂で稲荷に捕まり妖気製造機になりかけている"桃馬"はと言うと‥。
白備を含めて三人仲良く、
妖気製造機になっていた。
とまあ、桃馬が昼食会場に居ない時点で、
解放はされていないわけだが‥。
話を少し戻し、
白備が気絶した直人を連れて、稲荷の部屋に着いた時には、既に桃馬は虫の息であった。
完全に白備の忠告を無視した犯行に、
当然、白備は問い詰める。
しかし、一枚、いや百枚も上手な稲荷の言葉に乗せられてしまい、その場の流れで返却された桃馬を担いで、そのまま部屋を後にしようとした。
無論、そんな甘い話は存在はしなかった。
白備が隙を見せた途端、背後から稲荷が抱きつくや、直ぐに"ドレインタッチ"を強行。一瞬で白備の妖気を大量に吸い取ったのだ。
一気に半分近く吸われた白備は、
膝から崩れ落ち、稲荷に首輪をつけられ、
"姉に反抗した"と言う名目でお仕置きされるのであった。
完全に約束に反した展開に、
守ってくれる者が居なくなり、完全無防備な状況になった直人は、そのまま激しい稲荷の"子作り"行為に勤しまれるのであった。
もはや現場は、
完全にエロゲーの逆展開である。
稲荷「クスッ♪少しやりすぎちゃったかな」
直人「‥‥ぁ‥は‥へっ‥。」
白備「‥ぅ‥にぃ‥さ‥ん‥。ご‥めん‥なさい‥。」
若干意識がある白備は、惨めな兄の姿を見るや自分の甘さを実感させられ涙した。
直人の妖気を搾取しては、回復させたりと、
サキュバス以上の行為を繰り返した結果。
当然直人は、激しい快楽と疲労により、
一時的に正気を失っていた。
普通の人間なら廃人、
あるいは死んでいるレベルである。
仮にも直人が、妖怪の姿であったのなら、
何とかなったかもしれない。
とは言っても、あまり妖怪の姿に依存したくない気難しい性格なため、例え妖怪の姿でも、この展開は遅かれ早かれ同じだったかもしれない。
だが、既に事後のため。
考えるだけでも虚しさが残るだけである。
それに比べて稲荷は、
念願とも言える本懐を果たして上機嫌である。
子を身籠るのには、
充分すぎる妖気と精が必要である。
"精"は直人から搾り取れば何とかなるとして、
妖気に至っては、運が良い事に候補が多いため、丸一日経てば自然と身籠る事が可能である。
自分と直人の子供。
禁断の姉と弟。
しかも、形は義理であるため近親相姦でもないため、ある意味合法である。
されど、稲荷に取ってこの背徳感は、
新鮮でたまらないものであった。
更に、妖気補充のために従兄弟である桃馬と、実の弟である白備の妖気を強引に搾り取った感覚は、胸の内に"ビリリ"と感じていた。
結局、妖楼郭の妖気製造機と言うよりは、
自分の子を一日でも早く身籠るためのお膳立てとなっていた。
稲荷「ふんふ~ん♪子供は男の子かな~♪それとも女の子かしら♪」
気の早い稲荷は、自慢である高貴な金色の九本の尻尾を左右に振り、今か今かと子供の誕生を待ち遠しにする。
妖怪の母体は人間の母体とは異なっており、
母体の妖気の量によって、赤子の成長が早まると言う。
今の稲荷では、一週間で出産だろうか。
と言うことは、
このまま行けば、高校二年生の十七才にして、
直人はめでたくパパになってしまう。
両津家としては嬉しい事だが、
当の直人からしては、重いプレッシャーである。
当然、この事が学園に広まれば、
恐らく"死刑"は確実だろう。
そのためには、ワンステップとして、
小頼商会元締めである長岡小頼に、
決して悟られてはならない事である。
しかし、
一時的に正気を失ってる直人には、
こんな回避プランすらも考えられない程、
蕩けていた。
するとここで、再び稲荷が動く。
稲荷「よーし♪何回戦か忘れたけど、もっと楽しむわよ♪」
まるで、休憩でもしていたかの様なテンションに、三人の男たちは、この後も"主食"として喰われる事になる。
しかし、
主食があるなら当然デザートが欲しくなるもの。
完全に性欲を暴走させている稲荷は、
一応、監視の目が強い"リヴァル"と"アイシュ"にバレない様に、身なりを整え、エロい気持ちを圧し殺して部屋を出た。
もちろんターゲットは、
愛する妹である"エルン"と"リール"であった。
これに稲荷は、
迷わず二人が寝泊まりする部屋へと向かった。
淫こぅ‥ではなく、乱こぅ‥でもなく。
卑猥なパーティーに招待しようとする。
稲荷「リールちゃ~ん、エルンちゃ~ん♪稲荷お姉さんよ~♪今ちょっと良いかしら~??」
稲荷は扉の前で優しく呼び掛けるも、
どうやら二人は留守の様で返事はなかった。
今の稲荷に取っては、
ただでさえ暴走状態だと言うのに、
このお預け感とも言える展開がもどかしく、
淫靡な感情を擽らせる素であった。
そのため稲荷は、更なる強行手段として、
妖気や魔力をたどり、二人の位置を探し始めた。
すると驚く事に、二人の魔力の反応が、
なんと自分の部屋から感じ取ったのだ。
これに稲荷は、
慌てて転移術で戻るのであった。