第三百四十八話 犬神捜索最終
支神"覇盧"と"佗盧"の導きにより、無事(?)に犬神を見つけ出した憲明たちは、早速シャルたちに連絡を送った。
するとシャルたちは、
発見の連絡からものの数分でお寺に集結。
ジェルドの背中で、呑気に寝ている人騒がせな犬神を見るや、素直に安堵するのであった。
シャル「うぇ~ん、ポチ~!無事で良かったのだ~。」
ギール「はぁ、全く人騒がせな奴だな。」
加茂「で、でも、不審者に拐われたり、危害を加えられた様な感じでもない見たいですし、本当によかったです‥ん?(この気配は‥。)。」
ディノ「本当ですよ‥、それより一体何処に居たのでしょうか?」
桜華「そ、それは、えっと、直ぐ近くのお寺に‥ね?」
ディノの素朴な疑問に、
取りあえず桜華は、支神様によって埋められていた事は触れず、居場所だけを伝えるとリフィルに視線を向ける。
リフィル「えっ、あ、う、うん♪」
話を"投げ"られるとは思っていなかったリフィルは、一瞬取り乱すもその場しのぎの返事で返した。
ディノ「お寺‥ですか??」
当然"お寺"だけでは、
"どこにいたのか"と言う疑問は解決するが、
"何のためにいた"のかと言う疑問生まれる。
そのためギールから、
ある程度の予想が述べられる。
ギール「それにしても寺で何してたんだ?まさか、雌犬によるハニトラに引っ掛かったとか?」
シャル「ぬわっ!?き、聞いた事があるのだ。確か若い雌が、権力者を陥れるために使う色気だとか‥。」
ディノ「ま、まさか、犬神様の正体を知った何者かが、連れ込んだのでしょうか!?」
やはり、地味に勘の良いフォルト家である。
とまあ、内容と状況は違うが、
何となくあり得そうな会話に盛り上がるそうな中、ここでジェルドから犬神を庇う訳ではないが、とある嘘をつく。
ジェルド「はぁ、なわけないだろ?単なる"犬の集会"だよ。」
ディノ「っ。い、犬の集会って、ま、まさか、ま、また、まわりの人たちを"犬化"しようとしてたのですか!?」
ギール「ま、まさか。ただの集会だろ?」
シャル「うむぅ。例えそれが本当だとしても、やる意味がわからぬのだ。」
ディノ「た、確かに‥。」
ジェルド「まあ、安心しろ。そんな計画染みた事はしてないから。実際、この方々と話をしていただけみたいだからな。」
動揺する三人に対して、
ジェルドは冷静に自分の後ろを指を差すと、
今回の元凶である二匹の支神様に視線を誘導させる。
ギール「ん?この方って‥うわっ!?」
加茂を除くギールたちは、
犬神に注目するあまり気づかなかったが、
ジェルドの後ろには、獣人姿になった覇盧と佗盧と戯れている憲明の姿があった。
憲明「ふへぇ~♪もふぅ~♪」
佗盧「わふぅ~♪」
覇盧「わぅ‥、(や、やはり、に、人間に触られるのは良いものだ。)」
加茂「ごくり‥ジーーーー。(はわわ!?い、犬神様御抱えの、し、しし、支神様が、め、めめ、目の前に!?)」
ジェルドたちと合流してからしばらくして、
二匹の神様の存在に気づいていた加茂は、
目に力を入れて血走らせながら二匹の神様をガン見していた。
支神様である"けもみみ"美男子を、
ごく普通の人間である憲明が、普通にもふっている光景は、かなりインパクトがあるものであった。
完全にリラックスしている白毛の佗盧様と、クールだけど、尻尾を振り回し赤面している覇盧様の貴重なシーンは、加茂に取って格別で至高であった。
世間では、
"百億ドルの夜景"と言うものがあるが、
こっちでは、"千億ドルのBL"である。
おそらく期待はできないだろうが、
もしここで憲明が、恐れ多くも二匹を性的に襲った暁には、更なる炎上と共に価値が上がることであろうと、加茂は分析するのであった。
ギール「ま、また‥すごいのがいるな。」
シャル「ぬおぉ~!もふり甲斐のある"もふもふ"がいるのだ!の、憲明!余も"もふ"らせるのだ!」
ギール「あっ、おいシャル!?」
"もふりニスト"であるシャルは、
憲明と戯れる二匹の神様を見つけるや、
目の色を変えて憲明に迫った。
当然ギールが止めようとするが、
逆にジェルドに肩を掴まれ止められる。
ジェルド「まあ、待て。」
ギール「っ、な、なんだよジェルド!?止めるなよ!」
ジェルド「そう気を張るな。シャルなら多分大丈夫だからよ。」
ギール「い、いや‥、その安心はどこから来てるんだよ。そ、それより、正直シャルよりは、憲明と戯れている二匹が、犬神と深く関わっている様な気がして不安なんだが‥。。」
ジェルド「おぉ~、相変わらず勘が良いな?実はあの二匹、犬神に仕える支神って言う神様みたいなんだよ。」
ギール「や、やっぱり神様か‥。(うぐぅ。白黒の方はかなりのイケメンだな。対して白い方は‥、誰にでも受け入れられるタイプか‥。羨ましい。)」
予想通り、犬神に関わる神様だと知ると、
犬神と違う本物の愛嬌とカリスマ性、そして何より"犬"としての魅力が強い事にギールは羨んだ。
何とも平和的で和ましい光景であるが、
少々細かいところで疑問に思うディノは、
桜華とリフィルから知る限りの情報を得るため、事情聴取をしていた。
ディノ「な、なるほど、弱体化した犬神様の懲罰ですか‥。それにしても、首から下を埋めるなんて独特ですね?」
桜華「ま、まあ、神様の世界では、"土葬晒し首"と言って、高貴なプライドをズタズタにするには、マイナーな懲罰ですね。」
ディノ「っ、そ、そんな効果があるのですか‥。しかもマイナーって‥。」
リフィル「ふむふむ、でも、プライドが無い神様には無意味な懲罰だね?」
桜華「ま、まあ、中にはプライドを持たない神様も居ますけど、大半の神様は、高貴なプライドを持っていますから、こう言った屈辱的な懲罰が意外と効いたりするんですよ。」
さすがに神様事情の話になると、
桜華は普段砕けた言葉使いから徐々に、
畏まった口調になる。
どこで誰が聞いているかもわからない世の中。
壁に耳あり、障子に目ありとは、
良く言ったものだ。
しかも、語る相手は神様なため。
それこそ、神仏序列の最下層にいる"聖霊"である桜華が、軽はずみに神様の事を語り、下手な事を言ってバレれたりすれば大目玉である。
※犬神については別である。
しかし、そうとも知らないディノは、
探求心と好奇心を掻き立たせると、もっと神界事情について学ぼうと桜華に迫り始める。
ディノ「桜華さんのお話を聞いていたら、神界についてもっと知りたくなりました!」
桜華「ふぇ!?あ、いや‥でも‥。」
ディノ「言えない事なら無理に教えなくてもいいですから、えっと、そうですね‥、例えば、そう!簡単な日常生活とか。」
リフィル「す、凄い食い付きだね‥。」
目を輝かせながら桜華に迫る一人の男の娘。
さすがの桜華も折れてしまい、タブーにならない程度の話をするのであった。
そしてその頃、注目のシャルはと言うと。
畏こくも二匹の神様をもふり倒していた。
ギール似の覇盧は、
シャルに手懐けられ。
やたらと憲明に懐いていた佗盧は、
シャルのテクニックに墜ちそうになるも、
そのまま憲明に甘え続けていた。
シャル「ぬはぁ~♪だまりゃにゃいのらぁ~♪」
憲明「だろぉ~♪こ、これは‥普通にやばい‥。神様の上質な毛並み‥、本当に最高だよ~♪」
佗盧「わふぅ~♪。」
覇盧「‥わぅ‥(これが白山乃宮様が言っていた、シャル様か‥。なるほど‥、なるほど、これは上級者だな。)」
昨夜、犬神の失態と粗相に呆れていた二匹であったが、それが今では犬神と同じ様に蕩けていた。
しかし、犬神と違って"もふ"られていても、
スケベな声を上げずに気品のある姿勢を見せていた。
それはまるで、
マッサージでもされている様なものであった。