第三百四十六話 犬神捜索その3
突然ですが、
最近の犬神様の私生活を振り返ってみましょう。
学園内の犬神。
犬神「エルゼ~♪エルゼ~♪はぁはぁ‥。」
とまあこの様に、
堂々とストーカー行為に勤しみ、
エルゼを見つけては尻尾を振りまくる日々。
更に学園だけじゃ飽きたらず、
とうとう自宅でも誘発。
お小遣いを叩いて小頼商会から買い集めた、
エルゼの写真に尻尾を振る日々。
その結果、度重なるストーカー行為に、
エルゼを怒らせてしまい絶賛嫌われ中である。
しかも、神様である品格が徐々に薄れており、
一応犬科の種族には、辛うじて神様と言う認識はされているが、最近はそれすらも忘れられてしまう様な現状である。
つまり、今の犬神は、
神様として崇めてもらえず、
自らの手で、神様としての品格を落としているため、神力が弱まっているのだ。
現状犬神に残された神力は、
二~三割程である。
しかもこれは、"今現在"の犬神の姿を知らぬ"犬科"の種族たちと、学園の犬科の同級生からの崇拝である。
失った七~八割は、
犬神に対する"直接的な扱い"が、
影響を大きく受けている。
この低評価の要因は、
一応、二つ考えられる。
まず一つは、
度が過ぎたストーカー行為に、
エルゼに愛想尽かされてはフラれ、
神としてのプライドをズタズタにされた一件。
そして、見ず知らずの子供たちや、学園等の友人、ギールたち兄妹に、好き放題"もふられ"ていた事が、大きな要因であると考えられる。
ディノ「うぅ~ん、た、確かに‥、神様としての威厳がない気がしますね。」
ギール「だろ?最近の犬神の扱いと言ったら、生意気けもみみ短パンショタだ。」
ディノ「‥え、えっと、その表現ですと、若干私情が入ってる気がしますけど‥。」
やたらと私情を感じるギールの見解に、
確かにと思えるディノであるが、
"口は災いの元"と言う"ことわざ"にならい。
賛成したい気持ちを圧し殺して、
ギールに全責任を押し付けた。
一方、シャルと加茂は、
犬神に対して弁護すると思い気や、
ここ最近の犬神について語り出す。
加茂「あ、あはは‥、で、でも、最近の犬神様は、私欲に囚われている様に見えますね。」
シャル「うむうむ、加茂の言う通りなのだ。実際、"ポチ"からのエルゼに対する気持ちは、かなり歪んでおるからな。本当に困ったものなのだ。」
この通り、
犬神に対しての弁論は全くなかった。
それどころか、
犬神の行動を避難する様な言葉が、
愚痴の様な形で語られた。
正直ここまで来れば、
犬神に呆れて捜索を中止する様な展開である。
だがしかし犬神は、"腐っても鯛"、
いや、"腐り堕ちても神"であるため、何かが起きる前に早めに見つけたいところである。
ギール「まあ、ポチの話は置いといて、早くポチを探しだそう。変な事に捲き込まれてこの温泉街を壊したら‥、取り返しがつかないからな。」
ディノ「そ、そそ、それは洒落にもなりませんよ!?」
シャル「っ、う、うむ!急いで探すのだ!」
その後シャルたちは、
四人から更に二手に分けて捜索を再開した。
内訳
シャル、ギール。
ディノ、加茂である。
その頃。
ボランティア班たちはと言うと‥、
昨日桃馬と憲明に擦り寄っていた、
二匹の犬と遭遇していた。
憲明「よーしよし、お前たちは今日も放し飼いか?」
桜華「か、可愛い!」
リフィル「はぅ~♪ポメちゃんとハシュキーだ~♪」
憲明に擦り寄りながら甘える人懐っこいポメ公とハスキーに、桜華とリフィルは釘付けになった。
しかし、そんな愛らしい二匹に対して、
敵視する犬もいるわけで‥。
ジェルド「っ、こ、この臭い‥、ま、まさか、こいつら‥昨日、桃馬に擦り寄った犬か‥。」
憲明「ん?どうしたジェルド?そんな怖い顔をして?」
ジェルド「の、憲明!もしかして昨日、桃馬はこの二匹と遊んだのか!?」
憲明「っ、あ、あぁ。そうだけど?(そうだった‥、昨日ジェルドの奴、この件に食いついていたな。)」
甘える二匹の犬に夢中になっていた憲明は、
ジェラシーオーラを漂わすジェルドの質問に、
トラブルの火種が漏れ出てしまったと実感する。
遡ること昨日の夕食前。
愛する桃馬にまとわりついている、
得体の知らない二匹の犬の臭い。
これにジェルドは、犬としてのジェラシーを掻き立たせては、夫の浮気を疑う妻の様な勢いで、桃馬に問い詰めていた。
※三百二十三話より
そのためジェルドは、
まさに恋敵とも言える、得体の知らない二匹の犬を睨み付けては、早速にマウントを取り始めるのであった。
すると同時に、愛らしい二匹を守るため、
二人のセキュリティが発動する。
リフィル「こらジェルド?気持ちは何となく分かるけど、そんな怖い顔をしないの?」
桜華「そ、そうですよ!この子達は純粋に遊びたいだけ見たいですし、そんな悪意はないと思いますよ?」
ジェルド「わぅ‥。で、でも‥。」
二人の指摘により、
ジェルドは渋々と威嚇の姿勢を崩す。
するとそこへ、
ハスキーが"テクテク"と迫ってくる。
ジェルド「っ、な、なんだよ?」
ハスキー「わふっ。(お主、俺の声が聞こえるか?)」
ジェルド「っ、あ、あぁ。」
挨拶がてらとも思える意志疎通に、
ジェルドは一瞬ビビるが、ハスキーの質問に答えた。
リフィル「ん??今何を話したの??」
ジェルド「あ、あぁ。こ、こいつが獣族特有の意志疎通で話しかけて来たから、答えたまでだよ。」
桜華「す、すごい!ジェルドって、本当に犬の言葉が分かるんですね!?」
リフィル「そう言えば、ジェルドが普通の犬と話しているところ、あまり見た事ないかも。」
ジェルド「あ、当たり前だ。お、俺は、こ、こんな誇りもない犬とは馴れ合わないからな。」
憲明「誇りもないって、ジェルドも大概だよ?」
墓穴を掘りまくるジェルドに対して、
とうとう憲明まで話に割り込んできた。
ジェルド「なっ!っ、こほん。な、何を言っているんだ憲明?俺は主人に尻尾を振るだけの犬とは違うぞ?」
憲明「そう強がるなジェルド?お前は過去に、雌犬に追いかけ回されたトラウマと雄犬に圧し負ける理由で、話しかけないだけだろ?現に、近所のポメラニアンに負けてるしな。」
ジェルドの事情を知る憲明は、
桜華とリフィルの前で、痛い事をバラされる。
ジェルド「うぐっ。うるせぇ‥、だ、大体あのポメ公とは気が合わないんだよ。だから、敢えて俺から一歩退いてやってるんだ。」
憲明「‥一歩ね~。でも、エルゼちゃんとは仲良さそうだよな。」
ジェルド「うぐぐ、言わせておけば‥、好き放題言いやがって‥。」
憲明「まあ、そんなに怒るなよっと。」
憲明に言われても嬉しくもない事を言われ、
徐々に不機嫌になるジェルドの目の前に、
白くてモコモコなポメ公が現れる。
ジェルド「っ、な、何の真似だ!?」
憲明「いや、近所のポメ公じゃないから、行けるかなって。」
ジェルド「お、お前な~。俺は犬とは馴れ合う気はないんだよ!」
収拾がつかない展開に、
リフィルと桜華が止めにはいる。
リフィル「もう~、二人とも?今は喧嘩しないでよ?」
桜華「そ、そうですよ。"犬神"様が行方不明な時に、そんな事はできませんよ!」
ハスキー「わふっ?(犬神様‥?)」
ポメ公「っ、犬神を知ってるのですか!?」
憲明「っ!?」
ジェルド「ん?今のは‥。」
桜華「ふえっ?」
リフィル「い、今、しゃべった??」
突如聞き覚えのない声に、
四人の視線は一斉にポメ公の方へ向ける。
すると二匹の犬たちは、
何かを誤魔化すかの様に鳴き始める。
ハスキー「っ、わふっ!(こら、何を話しているんだ!)」
ポメ公「わふっ!?うぅ、わんわん!」
しかし、犬の意志疎通が聞き取れるジェルドの前では、無駄な事であった。
ジェルド「‥お前たち犬神の居場所を知ってるのか?」
ハスキー「‥わふぅ。(‥と、取りあえず、ここだと人目につく。犬神様を知る者たちよ。ついてこい。)」
ジェルド「‥犬神について何か知ってるんだな。」
ハスキー「わふぅ。(‥ついて来ればわかる。)」
ジェルド「‥わかった。」
目つきを変えたハスキーは、
意志疎通でジェルドに呼び掛けると、
そのまま歩きだした。
リフィル「な、何か分かったの?も、もしかして、今の声はこのポメちゃんから??」
ジェルド「恐らくな。それより、こっちに来いって言ってるけど、どうするよ?一応、犬神について知ってる見たいだけど。」
憲明「っ、それなら行って見る他ないだろ?」
桜華「なるほど、もしかしたら犬神様に準ずる方かもしれませんからね♪」
ハスキー「‥わんわん!(どうした来ないのか?)」
中々、足を進めないジェルドたちに、
謎のハスキーは、普通の犬の様に吠えては、
先導するのであった。