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第三百四十一話 犬神捜索その1

朝食を済ませた桃馬たちは、

シャルからのお願いにより、昨夜から姿をくらませた、犬神の捜索を手伝う事になった。


ここで桃馬は、

面倒な案件を終わらせるべく、

単独で昴が居るフロントを訪ねた。


この時桃馬は、

犬神の事を敢えて"ポチ"と呼び、

シャルの弟だと教えた。


例え"犬神"と教えても、

相手は昴であるため、

恐らく笑って信じないだろう。


しかし、もしもの事を考えて、

下手な混乱を避けるためにも、

ただの"駄犬ポチ"として通すのであった。


昴「えっ?"ポチ"って言うショタ犬探しのために、監視カメラを見せてほしい?ま、まあ、それは構わないけど、迷子にでもなったのか?」


桃馬「じ、実は、昨夜から姿を消したみたいなんだよ。」


昴「さ、昨夜って、そ、それは大変だな。でも、どうして今になって?。」


桃馬「俺も詳しい経緯はわからないけど、おそらくは、直ぐに戻るかと思って待っていたら、気づけば朝を迎えてしまったみたいな感じかな。」


昴「なるほどな。よし、それなら早いところ、その"ポチ"って子を見つけようか。」


桃馬「すまない、一人にさせてるとちょっと、厄介な子でもあるからな。」


昴「あはは、それなら特にだな。ちょっと、フロント裏に来てくれ、妖楼郭の出入り口のカメラならここでも見れるからな。」


桃馬「ありがとう、本当に助かるよ。」


昴「いいって事よ。これでも親戚だからな~。」


そして、桃馬は昴の優しさに甘えて、

"ホイホイ"とフロント裏へと導かれるのであった。



その頃、

シャルたちフォルト家は、

もしやと思いつつ、一旦部屋へと戻っていた。


だがしかし、

そこには当然、犬神の姿はなかった。




シャル「むぅ~。本当にポチはどこに行ったのだ‥。結果次第では、明日からの毎食ドッグフードにしてやるのだ。」


ギール「ぷっ、ドッグフードって、遂に神様から駄犬へ転職か。」


ディノ「に、兄さん?笑い事じゃないですよ?もし、犬神様が変なことに巻き込まれて、"力"を乱用してしまったらパニックは確実ですよ。」


ギール「でもよ?エルゼが捜索を秒で断った時は、ディノも笑ってただろ?」


ディノ「あ、いや、それは‥。も、物事のタイミングと言う物にウケただけですから。」


かなり苦しい誤魔化しであるが、


あの時のディノは、

確かに笑っていた。



少し遡ること、


朝食を終えたシャルが、桃馬やジェルドたちに、

犬神の捜索協力を求めた時に起きた。


この要請に、一早く動いたのはエルゼであった。


しかしエルゼは、断固拒否した上、

シールを連れて大広間から出て行ってしまう。


普段からあまり怒らないエルゼではあるが、

最近は、犬神絡みの話になると直ぐに不機嫌になる様になっていた。


場の空気が凍りつく中、

ディノは一人でクスクスと笑っていた。


するとここで、

せっかくの休みだと言うのに、朝から遊べず捜索活動に縛られストレスを抱えているシャルが声を荒げる。



シャル「むぅ~!ギールよ!早速お主の自慢の鼻でポチを見つけぬか!」



ギール「そうはしたいけどな~。ここには微量の妖気が蔓延してるから、鼻が利かないんだよ。」


シャル「なっ!?こ、このままでは、今日からずっと捜索で終わるぞ!?それでもいいのか!?」


ギール「と言われてもな。もういっその事、神の世界に帰ったと思えば‥。」


シャル「そ、それはならぬ!今や"ポチ"はフォルト家の番犬なのだ!神の世界などに返してたまるか!」


ギール「かなり頼りのない番犬だ事‥、むしろ、シールの方が上手く番犬をやってくれそうだけどな。」


ディノ「ぶふっ‥ふっ、ふふ。」


犬神様を神様とは思わないのはいつもの事だが、

笑いのツボが浅くなっているディノは、顔を背けて笑い始める。


シャル「こらディノ!笑うでない!」


ディノ「しゅ、しゅみません。」



当然、シャルからの一喝は受けるが、

それでもディノは、漏れる笑いを必死で堪えていた。



ギール「まあ、犬神の事だ。エルゼのストーカー中に、他に可愛い子を見つけてついて行ったか。あるいは、子供たちに絡まれて遊んでいるか。それとも、お姉さんたちに捕まったか‥。」


シャル「うぐっ、あ、あり得るのだ。っ、いやいや、失踪理由よりも居場所を知りたいのだ!?」


ディノ「と、取りあえず‥、あちらこちら探してみましょう。最悪の場合は、白備さんたちの力を借りて探すしかないですよ。」


シャル「う、うむぅ‥。わ、わかったのだ。と、取りあえず午前中は、妖楼中を探し回るとして、午後からは妖怪の街で指名手配にしてやるのだ。」


大雑把ながらも、

段取りをしっかり取っるシャルである。


しかし、指名手配などと、

大それた事をしようとしている事に、

ギールは冷静にツッコむ。



ギール「指名手配って、そんな大騒ぎにしなくても‥。それより、手を貸してくれる当はあるのか?」



シャル「ふっ、それはもちろん、化堂里屋の狸たちを使うのだ!」


ギール「っ、ば、ばか!?また、織奉(しきぶ)さんに迷惑掛ける気か!?」


ディノ「そ、そうですよ!昨日織奉さんを襲って困らせた事、忘れてませんよね!?」




ここで小話。

昨日、化堂里屋で遊んでいたフォルト家一行であったが‥、実は裏話あり。



店主である織奉が、

何者かに襲われると言う事件が、

密かに起きていた。


犯行理由としては、

織奉が持つ、夏毛なのにも関わらず、

"まふまふ"とした尻尾を狙ったものであった。



織奉は犯人と共に、とある個室で蕩けていると、犯人を探しに出ていたギールとディノに発見され事なきを得るのであった。


そう、織奉を襲った犯人は、

ご存知シャルであった。



当然、強姦にも近い行為に、

ギールとディノは、織奉に謝罪。


しかし皮肉な事に、

織奉の心は、完全にシャルに落ちていたため、

許しは簡単に得たが、取り返しのつかない事になったのだと二人は思っていた。


しかも、織奉からシャルへの叱責を封じられ、

二人はこの件の話を闇に葬ったのだ。


もちろんこの件は、直人の耳は愚か、

白備や稲荷の耳にも届いていなかった。



そんな事がありながらも、

昨日までの織奉の様子から、完全に我が物にしたと思い込んでいるシャルは、織奉を味方につけて、更に迷惑を掛けようとしていた。



シャル「迷惑だと?何を言っているのだ?織奉は、立場的に甘える事ができずに苦しんでいたのだ。そんな時、余が手を差し伸べただけの事なのだ。」


かなり合法的に語るシャルの姿に、

ディノとギールは、複雑な気持ちで見つめる。


ディノ「え、えっと‥、聞えは良いですけど‥。」


ギール「ただ、強姦して落としただけだろ?」


シャル「ふっふっ、ギールがその様な事を言うのは想定内なのだ!だが、余には分かるのだ。あの豆太にも退けを取らぬ上質で整った尻尾。まさに、心の奥底で"もふ"ってほしいと言っているようなものなのだ。」


何とも都合の良い解釈に、

ギールとディノは若干引いた。


ギール「‥だめだこりゃ。」


ディノ「も、もしかしたら、化堂里屋の狸さんたちが、この滞在中に全員"もふ"り倒されるかもしれませんね。」


ギール「‥直人に知れたら面倒な事になりそうだな。」



ディノ「と、取りあえず、シャル様から離れない様に犬神様を探しましょう!」



こうして、

次なるイベント犬神大捜索が、

始まるのであった。




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