第三百四十話 "もふり"ニスト
イベント製造マシーンと化してる桃馬たちは、
朝食会場に着いても尚、小さなイベントを誘発させては、未だに朝食を済ませないでいた。
そんな中で、
リフィルの手によって気絶させられた直人は、
豆太とヴィーレの二人に介抱されていた。
豆太「あぅ、若様が起きないよ~。」
ヴィーレ「落ち着け豆太?こう言う時は、力ずくで起こすのが一番だ。」
豆太「えっ?力ずく?」
ヴィーレは、直人の胸ぐらを掴むと右腕を構えて、渾身の一撃を見舞おうとする。
姉御系でオレンジ色の長髪。
そして、尻尾は漆黒と言う完璧な獣人お姉さんが、弱った若様を殴ろうとしてる光景は、とても絵になっていたと、ある意味"冷静"に一部始終を見ていた加茂は語る。
しかし豆太は、至って普通に危険を感じては、
慌ててヴィーレの右腕にしがみついた。
ヴィーレ「こ、こら豆太!?主人を起こしたいんじゃなかったのか?」
豆太「ま、まま、待ってよヴィーレお姉ちゃん!?それだと若様が死んでしまいますよ!?」
ヴィーレ「っ‥な、なら、どうするんだよ?この様子だと優しく頬を叩いても起きないぞ?」
豆太「‥うぅ、あ、そうだ!」
豆太は"もふさら"な尻尾を前に出すと、
そのまま直人の目の辺りに置いてみた。
ヴィーレ「‥な、なにしてるんだ??」
豆太「わ、若様は、獣人の尻尾が好きなんです。も、もしかしたら反応するかなって‥。」
ヴィーレ「ぷっ、あはは!豆太らしい考えだな。どれ、あたしもやってみようか?」
実に馬鹿馬鹿しい案ではあるが、
ヴィーレもこの案に乗り、黒狼族の上質で"さらさら"な尻尾を直人の首筋辺りに擦り付ける。
豆太「ヴィ、ヴィーレお姉ちゃん?何をしてるのですか?」
ヴィーレ「何って、くすぐってやってるのだが?」
豆太「むぅ、若様をからかっていますね?」
ヴィーレ「あはは、そういう豆太も大切な若様の顔に尻尾を乗せていいのか?」
豆太「あぅ、そ、それは‥お、応急処置ですからいいんですよ!」
ヴィーレ「ふっ、可愛い事を言い‥わふっ!?」
豆太「ふえっ?!ど、どうしたの!?って、若様!?」
突然可愛らしい鳴き声をあげたヴィーレに、
豆太は驚きながらヴィーレと直人を見ると、そこには、ヴィーレのいたずら染みた介抱に反応した直人が、ヴィーレの尻尾を掴んで擦り寄っていた。
直人「もふぅ‥。」
ヴィーレ「くっ、こ、このっ‥先端は敏かんっ‥くふっ。」
完全に直人を見くびっていたヴィーレは、性感体でもある尻尾を的確に触られ、抵抗しようにも力が入らず、うまく抵抗できないでいた。
ちなみに、この現象は偶然ではなく、
両津家の本能みたいなもので、
直人だけではなく、父、界人と、母、杏佳は、
無意識のうちに犬や猫、獣人たちの弱点を的確に攻めてしまう癖があった。
そのため、ギールの親である。
父ケトーや母リブルは、界人と杏佳の手によって現に落とされている。
豆太「ごくり。あう、わ、若様‥。」
ヴィーレ「くっ‥ふぅ‥、ま、豆太‥み、見るんじゃわぅん‥。(や、やばい‥、このままだと‥ま、豆太以外の男に落とされる‥。だ、だが‥、相手は豆太の主人‥。結局は‥あ、あたしの主でもあるし‥うぐっ、訳がわからなくなる。)」
豆太の目の前で恥ずかしい姿を見られ、
更には、無意識状態の直人による、獣を喜ばせる高度な"もふもふ"により、落とされそうになっていた。
羞恥心と喜びなど複雑な思いが溢れる中、
逆らえない快感に身を任せ始める。
これに豆太は、
大切な嫁がピンチと言うのに、
羨ましい感情と共に、嫁の弱点を観察していた。
それより、今止めに入ったら普通に怒られそうな気がして、止めようにも止められなかったのだ。
一方、三人の観察をしている加茂は、
生唾を飲みながら、三人のやり取りにハマり出していた。もちろん、止めると言う無粋な事は一切せずに、これからの展開に期待していた。
ヴィーレ「はぁはぁ、こ、これが‥手懐けられると言うやつか‥、上等じゃねぇ‥。くぅ。」
豆太「あぅ。ヴィーレお姉ちゃんばっかりズルい‥、僕も若様から"もふ"られたいよ~!」
強がりを見せるも満足そうにしているヴィーレの姿に、とうとう豆太も我慢の限界が来た。
豆太は、直ぐに豆狸の姿になると、
直人の片手をヴィーレの尻尾から剥がし、
自らの尻尾に掴ませた。
ヴィーレ「んくっ、こ、こら豆太‥。何をするんだ!?」
豆太「ヴィーレお姉ちゃんばっかりズルいよ!ぼ、僕にだって"もふ"られる権利はあるからね!」
ヴィーレ「わぅん、はぁはぁ、全く‥豆太が、ここまで主に執着する気持ちがよくわかったよ。これは‥たまらねぇよ。」
豆太「ふぁ~♪ふへぇ~♪」
ヴィーレ「‥ふぅ、もう自分の中かよ‥んあっ。」
こうした二人の獣たちは、
朝飯の事をすっかり忘れて、もふられ始めた。
シャル「むぅ、豆太はともかく、ヴィーレまでも手懐けられるとはな‥。」
ギール「‥さ、さすが、直人だな‥。あのヴィーレでも一撃か‥。」
凄いを通り越して感心する二人に、
遂に興奮度MAXにたどり着いた加茂が口を開く。
加茂「はぁはぁ、じゅる‥。姉御系のお姉さんが、落とされる光景は、す、凄く興奮しますね!」
ディノ「か、加茂様!?よ、よだれが出てますよ!?」
加茂「はぅ!うぅ~、あ、ありがとうディノお兄ちゃん。」
神様として"はしたない"加茂に、
注意と共におしぼり差し出すと、
加茂は我に帰って口元を拭いた。
ジェルド「ごくり、加茂の気持ちはわかるかもな。あのヴィーレを一瞬で落とすとは‥、ある意味才能だな‥。」
ギール「ふぅ、いっその事、ジェルドと犬神を直人に献上してやりたいな。」
ジェルド「‥ふっ、逆にギールがその身を献上してやれば、親子揃って両津家に仕える事になるから、その方が良いと思うが?」
ギール「な、なんだと‥。」
どさくさに紛れて桃馬争奪戦の火蓋が、切られると直ぐにストッパーが作動する。
エルゼ「お兄ちゃんたち喧嘩はダメですよ?」
シール「うんうん!ここで暴れて直人さんの顔に泥を塗る行為は許しませんよ!」
ディノ「そ、そうですよお二方?まして、この様な素晴らしいお部屋での喧嘩は、許しませんからね?」
ギール&ジェルド「うぐっ、は、はい。」
可愛い妹たちの注意はともかく、
珍しく真顔で注意するディノに、
二人は、直ぐに矛を納めて静かになった。
シャル「ぬはは!よくやったディノよ♪やはり、あまり怒らない分、本気で怒った時のディノは恐ろしいのだ~♪」
ディノ「‥っ、は、恥ずかしい事を言わないでくださいよ!?そ、それより、朝食を済ませたら、犬神様を探しに行きますよ?」
シャル「分かっているのだ。それにしても、ポチは一体どこに行ったのだ。」
ギール「エッチなお姉さんに、ホイホイ着いていったとか?」
シャル「うーん、もしそうなら、お仕置きが必要なのだ。はむっ、~~!うまいのだ~♪」
その後、
豆太、ヴィーレ、直人を除く桃馬たちは、
シャルのお願いにより、朝食を済ませると直ぐに犬神捜索に出るのであった。