表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
338/431

第三百三十六話 不安の火種

大広間の入り口から一人になった直人は、

先程まで晴斗と白備の三人で、盛り上がった"過去の話"に、変な好奇心を燃やしていた。


しかし、

下手をしたら死ぬかもしれない事に、

前に踏み込むか、大人しく手を退くかで迷っていた。


するとそこへ、

少し"からかう"様な感じで、

脳内に語りかけては、堂々と転移術のゲートを開き、そこから和服をしっかり着込んだ稲荷が、姿を現した。



稲荷「クスッ♪おはよう♪私の可愛い弟よ♪」


直人「お、おはよう稲荷姉‥。今日は夫って言わないんだね?」


稲荷「クスッ♪そう言うと嫌がるかと思ったんだけどな~?」


直人「っ、べ、別に何でも良いよ。てっきり、そう言うかと思ったから‥つい、反応しただけだ‥。」


地雷を踏んだ直人は、

目線を逸らし誤魔化しにかかる。


稲荷「クスッ、アイシュとの約束がなかったら、直ぐにでも夫婦の営みをしたいところだけど。昨夜はリールちゃんとエルンちゃんの件で大変だったみたいね♪」


直人「っ!み、見てたのか!?」


稲荷「クスッ♪今さっきね♪」


直人「今さっきって‥、はぁ、もしかして、あの部屋にカメラでも仕込んで隠し撮りしてたのか?‥全く‥晴斗もいるんだぞ?」


稲荷「まあまあ~♪それは計算の内だから大丈夫よ♪」


稲荷が楽しそうに話す中、

直人はさっき話していた事を切り出した。


直人「‥はぁ、それで、幽霊の件聞いてたんだよね?」


稲荷「もちろんよ。確かに妙な話ね♪」


意外にも陽気な返答に、

直人は少し驚く。


直人「‥あまり深刻そうじゃないね?」


稲荷「‥まあ、祓われたと言っても、悪気(あっき)だけ祓われて、一時的に姿を消した例もあるからね。その場の判断ではちょっと難しいからね。」


直人「稲荷姉でも、そう言うとなると‥。ちょっと探った方がいいかもな。」


稲荷「私も冥界に言って確認して見るわ。それに、怨霊が今になって、姿を変えてまで"わざわざ"来たって可能性もあるからね。」


直人「もしそうなら、物騒だな。‥普通に現世(げんせ)に留まっている幽霊なら良いのですが‥。」


稲荷「‥クスッ♪えい♪」


直人「むぐっ!?」


深く考え心配する直人に、

稲荷は直人に飛び付き抱きしめた。


稲荷「そう深く考えなくても大丈夫よ♪直人に害する者は、誰であろうと滅してやるんだから♪」


直人「ちょっ、身を呈してはダメだからな!?」


かなり物騒な事を言う稲荷に、

余計心配する直人であった。


稲荷「それほど大切だってことよ♪直人だって、みんなのためなら命を賭けるでしょ?」


直人「そ、それは‥う、うん。」


稲荷「だから、少しは家族を頼りなさい♪」


直人「うぅ、わ、わかったよ。」


言い返せない言葉を掛けられた直人は、

結局、何も言い返すことができず、

稲荷の言葉を受け入れるのであった。



稲荷は素直に聞き入れた直人の頭を撫でると、

直人から離れてゲートへと戻って行った。


直人「‥‥俺の出番はないのかな。」


再び一人残された直人は、

若干の無力感を身に染みて感じるのであった。




それから、十数分後。

人気(ひとけ)のなかった大広間に、多くの宿泊客たちが朝食を求めて詰め寄り始めた。



するとそこへ、

一足先に憲明を除く桃馬たちのグループが、

他の部屋のグループよりも先に、昨夜の話をしながら大広間へと向かっていた。




リフィル「ふぇ!?エルンちゃんがサキュバス化!?どうして起こしてくれなかったの!?」


桃馬「いや、二人ともぐっすり寝てたから‥。起こすのも悪いと思ったんだけど。」


リフィル「そのくらい全く悪くないよ!?」


滅多に見られない、

エルンの真の姿を見逃したリフィルは、

推しのアイドルのチケットが取れなかった時のガチ勢の様に酷く悔しがっていた。


これでも、一国の姫であるから驚きである。



桜華「で、でも、それでは、一般の人とか、白備さんたちが大変だったのでは?」



桃馬「まあ、一般人の被害はない様だけど、エルンのドレインタッチで、憲明、京骨、ディノ、ジェルドがやられたからな。あの時"アイシュ"さんの仲介がなかったら、俺までやられていたよ‥。あと問題はその後、アイシュさんに連れられたエルンがどうなったかだな。」


リフィル「そ、それじゃあ、今、エルンちゃんの部屋に行けば‥ごくり、な、なな、直人と‥いや、リールちゃんも入れて三人‥いやいや、アイシュさんも入れて大乱行を!」


無限に溢れる変態妄想により、、

リフィルは朝食を済ませるよりも先に、エルンの部屋へと強行しようとするが、桃馬に首根っこを捕まれ阻止される。



桃馬「待て待て!?早まるんじゃない!?もし、エルンを抑え込む直人が居なくて、まだサキュバス化が解いていなかったらどうする?」


リフィル「で、でも、さすがに、エルンちゃんのピンチなら、稲荷さんが気づいて直人を送り込みそうだけど?」


※筋は通っている推理だが、

実際は全く違う展開である。


するとここで、桜華は、

更にあり得そうな予想を考える。


桜華「た、確かに、リフィルちゃんの言う通りかも。で、でも、もしかしたら、そこへ稲荷さんも入れて、五人とか‥。」


リフィル「ありゃ~♪じゃあ、四人に蹂躙されることになるね♪もし正解なら、さすがの直人も年貢の納め時だね♪」


二人の嫁と"姉兼嫁"、そして、姉。


色々と危険な匂いを漂わす中、

リフィルと桜華の腐女子魂が覚醒する。


今回の推理が正しければ、逆レ◯プ物である。


※推理は外れています。



桃馬「はぁ、リフィルや小頼たち見たいな変態と居るせいで、桜華に悪影響を与えているな‥。」


既に手遅れではあるが、

徐々に変態思想を恥ずかしげもなく語る桜華に、桃馬は心配しながら歩いていると、大広間の入り口付近で、壁に寄りかかっている直人が居た。


桃馬「‥ん?あれは、直人か?」


リフィル「ふぇっ!な、直人!?う、うーん、干からびてないところを見るに‥。してないのかな?」


桜華「そ、そうみたいですね?と、と言うことは、穏便に落ち着かせたのでしょうか?」


桃馬「ま、まあ、取り敢えず無事みたいだし、話を聞いて見るか。おーい、直人~!」


三人が思っていた程、

無事過ぎる直人の姿に、桃馬は声をかけた。



直人「ん?おぉ、桃馬か。案外早かったな?よく眠れたか?」


桃馬「あぁ、ぐっすり眠れたよ。」


直人「そうか、それは何よりだな。」


桃馬からの返答も至って普通で、

昨夜の内に、激しいプレイがあったとは、

想像がつかない程であった。


しかし、

桃馬たち三人は、

無言で視線の圧力をかける。


桃馬「‥‥。じーー。」


桜華&リフィル「じーー。」


直人「な、なんだよ。三人ともその目は?」


桃馬「直人‥、昨夜、エルンがサキュバス化して大変だった事知ってるか?」


直人「あぁ、そりゃあ知ってるよ。昨夜はエルンとリールに半殺しにされたからな。」


桃馬「は、半殺しって、稲荷さんとアイシュさんとかも混ざったのか?」


直人「ぐ、ぐいぐい来るな?まあ、変な噂を流されるよりは、今のうちに話しておくか。えっと、まず稲荷姉とアイシュ姉とは体を重ねてないよ。」


リフィル「と、と言う事は、」


直人「いつもの日常だよ。」


桜華「り、リールちゃんとエルンさんに、半殺しにあっても日常って‥すごいですね!」


リフィル「愛だね~♪」


相変わらずの重い愛に感心すると、

桃馬は肝心な質問を切り出す。



桃馬「それで?エルンは元に戻せたのか?」


直人「そ、それが‥。途中で意識が飛んで気絶してたからな。気がついた時には、大浴場に浸かっていて、そこで白備と昴から無事に戻った事は聞いたけど‥。実際、会って見ないとわからないな。」


桃馬「そうか。なら、よかったよ。」


リフィル「ふぇ~、それじゃあ、事後ではないですか~。」


桜華「あ、あはは‥、そ、それで直人さんは、お二人を待ってるのですか?」


直人「っ、あ、いや、ちょっと、考え事をしててな。ま、まあ、それより、三人が来たことだし、朝飯でも食べようかな。結局昨日はここに来てから何も食べてないからな。」


桃馬「っ、ま、まじかよ。」


桜華「そ、それなら、今は凄くお腹が空いてますよね?」


リフィル「ごくり、食事を取るその代わりに、二人に食べられるとは‥。とんだドMですね~。」


直人「‥ほぅ?」


若干暴走気味のリフィルは、

直人の地雷を踏みつけては、

直人のお仕置きメーターに火をつける。



それから四人は、

指定された部屋へと向かうのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ