第三百二十五話 油断ならぬフラグ
賑やかで騒がしい大部屋に、
次々と豪華な料理が運ばれてくる中、
一人だけ酒を飲みながら直人について考えるヴィーレがいた。
昨日の豆太一件から何だかんだあって、
直人と初対面を果たした。
しかし、初対面にしては、
どこかで会った事がある気がするが、結局直人の事は全く知らない。
今の話と言い、ここに着た時の扱いと良い、
普通ではない事から少し気になっていた。
ヴィーレ「なぁ、豆太?さっき直人について頷いていたけど、何か知っているか?」
豆太「えっ?若様についてですか?」
ヴィーレ「わかさま?おいおい、豆太まで言うのか?」
豆太「ま、まあ‥。色々と関わりがありますからね。あ、そう言えば、ヴィーレお姉ちゃんと若様は、一応繋がりがありますね?」
ヴィーレ「繋がり?それは、あたしと豆太が結婚して、繋がりが生まれたって事か?」
豆太「うぅん、そうじゃないよ♪ヴィーレお姉ちゃんって、警界官なんだよね?」
ヴィーレ「まあ、警界官って言っても、警界犬所属だったけどな。」
豆太に取っては十分過ぎる程の繋がり材料に、
思わず笑みを浮かべた。
豆太「あはは♪それならきっと、若様のお父様と会ったことがありますよ♪」
ヴィーレ「直人の親父?ま、まさか、弾崎の‥。」
豆太「ふぇ?」
ヴィーレはまさかと思い、
全く違う弾崎の名前を出してしまった。
当然、豆太に取って聞いたことのない名前に、
思わず"キョトン"とする。
ヴィーレ「っ、な、なんだよ豆太?突然難題を吹っ掛けられたかの様な、その目はよ?」
豆太「あ、い、いえ‥、そ、その人ではなく、両津界人様ですよ?」
ヴィーレ「両津‥界人‥聞いたことある名前だな。」
答えが出ても、はっきりとは分からないが、
どこかで聞き覚えのある様な名前に、
ヴィーレの脳裏に、何かが引っ掛かる。
豆太「あはは♪それはそうですよ♪大旦那様は警界庁長官ですよ?それに、"ケトー"お義父さんの相棒でもありますからね♪」
ヴィーレ「っ!な、なんだって!?」
確信を付く程の衝撃的な情報に、
思わずヴィーレは声をあげる。
豆太「え、えっと、もしかして、ケトーお義父さんが、警界官って事も知らなかったとか?」
ヴィーレ「あ、あぁ、フォルト家がこの世界に行ってしまってから、会う機会なんて殆どなかったからな。」
豆太「な、なるほど‥、それじゃあ、フォルト家の現状はわかりませんよね。」
連絡を取るより、そもそも取る用事がないため、どうやは数年間も疎遠状態になっていた様だ。ここに来て続々と出てくる衝撃的な事実にヴィーレは驚きを隠せなかった。
ヴィーレ「そうか‥、じゃあ、あたしが警界官って事は、ケトーさんとリブルさんも知っていたんだな。だから、あんな事をしたのに、無期限の謹慎で済ませてくれた‥‥。弾崎だけじゃない‥、他にも、こんなあたしを庇ってくれる人がいたなんてな‥。」
片手で額から目の辺りを隠すと、
徐々に声を震わせる。
普段から男気っが強く、
ショタを平気で襲うヴィーレにも、
しっかりと感情はあった。
豆太「ヴィーレお姉ちゃん‥あぅ。」
ヴィーレは何かを誤魔化すためか、
静かに豆太を抱き寄せた。
ヴィーレ「あたしって、本当に守られっぱなしだな。強いのは腕っぷしだけで、世間からみりゃあ、本当に一匹狼だな。」
豆太「っ、うぅん!そんなことないよ!」
ヴィーレらしくもない悲観的な発言に、
豆太は声を大にして否定した。
ヴィーレ「ま、豆太‥?」
豆太「た、確かに‥、今まではそうだったかもしれないけど、今は違うと思うよ?だ、だって、ヴィーレお姉ちゃんは、ぼ、僕の、お、おお、お嫁さんなんだから//」
ヴィーレ「っ!?」
豆太は無意識だろうか、
浴衣の胸辺りを掴んで、
真剣な目で見つめている。
小さいながらも逞しい豆太の姿は、
ヴィーレの心を打ち込みまくった、
複雑なマイナスの気持ちに、
程よいプラスの気持ちを与える。
何とも言えない恋の"スパイス"である。
これによりヴィーレは、
今すぐにでも豆太とイチャつきたいと思うが、
一旦冷静になり、本題に戻す。
ヴィーレ「こ、こほん//え、えっと、こ、この話は後にして、な、直人が、長官の息子で、豆太に取ってもご主人なら‥、あ、あたしも仕えなければならないな。」
豆太「ふぇ!?あ、いや、わ、若様はそんな事は望んでないと思うよ!?」
直人に取って嫌な予感を感じた豆太は、
急いで嫌な予感を回避させようとする。
ヴィーレ「何を言っている豆太?誇り高い黒狼族は、主に仕える事も本分だぞ?」
豆太「あ、えっと、ちなみに、どんなことを‥。」
ヴィーレ「ん?どんなって‥、そうだな、取りあえず力量を見たいからな、決闘か交尾だな。」
豆太「っ!?だ、だだ、駄目に決まってるじゃないですか!?わ、若様を殺す気ですか!?」
自分の嫁を取られる危機よりも、
只でさえ若様は、死にかける日が多いと言うのに、ここでヴィーレまで参戦したら、確実に若様が死んでしまうと心配するのであった。
ヴィーレ「こ、殺すわけないだろ?さっきも言ったが、力量をみたいだけで‥。」
豆太「そ、そんなのだめだよ!ヴィーレお姉ちゃんは僕の者だよ!例え若様でも渡したくありません!」
ヴィーレ「ま、豆太‥。」
豆太「うぅ~ん!ん?はわっ!?(ぼ、僕は何を口走って!?)」
自分の思いと若様を守るため、
勢いに任せた豆太は、つい本音をぶちまけた。
ヴィーレ「ほぉ~?豆太は、あたしが他の男と体を重ねて欲しくないんだな~?」
豆太「あぅ、ぼ、僕の嫁なら僕だけを見てよ。」
ヴィーレ「~~~っ///豆太ちょっと、席を外そうか♪」
豆太「ふぇ?」
ヴィーレは、豆太を抱きしめて席を立つと、
どこかへ退席しようとする。
ギール「ん?おーい、ヴィーレ?もう部屋に戻るのか?」
ヴィーレ「あぁ~♪少し飲み過ぎてな。」
ギール「うーん、まあ、一升瓶三つ空ければそうなるよな。」
ヴィーレ「そう言うこと♪じゃあ、お先ね~♪」
豆太をぬいぐるみの様に抱きかかえ、
しれっと部屋から出ようとすると、
冷静なギールは声をかける。
ギール「ちょっと待て、その前に豆太を置いていけ。」
ヴィーレ「なんだよ?抱き枕くらい良いだろ?」
ギール「だめだ。酔った勢いで襲う気だろ?」
ヴィーレ「‥ほぅ~♪"夫婦"の営みを邪魔する気か?ギール??」
ギール「っ!?」
夫婦の営みを邪魔するギールに、
ヴィーレは一転集中型の殺気を放つ。
さすがに、
肌を刺す様な圧に敵わないギールは、
あっという間に折れては、妥協策を提案する。
ギール「え、えっと、出きるなら‥部屋を汚さない程度に‥。」
ヴィーレ「ふっ、わかってるよ。部屋を汚したりして、直人が責められるわけには行かないからな。そんじゃ、お先に~♪。」
ギールの注意を一応受け取り、
ヴィーレは上機嫌で豆太と共に、
宿泊部屋へと戻った。
ギール「はぁ‥、疲れるな。」
桃馬「あはは、仲良さそうで良いじゃないか?」
ジェルド「それだけならいいけどな。それにさっき耳にしたけど、力量と称して直人を襲おうとしてた見たいだよ?」
桃馬「うげ、まじかよ。もし、稲荷さんに搾られて瀕死状態だったら、オーバーキルじゃねぇか?」
ジェルド「まあ、それなら安心しろ。豆太が身を呈して、守ったみたいだからな。」
桃馬「っ、じゃあ、ヴィーレさんが出て行ったのって‥まさか。」
ギール「‥まあ、身代わりにも見えるけど、おそらく半分以上は豆太の欲望だと思うけどな。まあ、当たってたら、本当にお盛んだよ。」
桃馬「‥バカップルだな。」
一時は知らぬ間に、直人の人生が終わりそうであったが、豆太の欲求とジェラシーにより助けられた。
ちなみに、
話を聞いてしまったエルンは、
かなり動揺して焦ってはいたが、豆太の勇敢な姿を見るや安心感を得るのであった。