第三百二十二話 気だるげな経理
各自で草津旅行を満喫している頃。
妖楼郭の経理部では、売り上げなどを算出するためのパソコンが故障してしまい、ちょっとしたパニックが起きていた。
千夜「はぁ、やっぱり‥、また同じ事をやらかしたのね。この、バカ"ふんどし"共‥。」
まるで、ゴミでも見る様な視線を送る千夜の目の前には、気が抜けた五人のイケメン男子たちが正座していた。
彼らは、"一反木綿"と言う妖怪で、非常に温厚でマイペースな性格が多く、かなり能天気な妖怪である。
働く際は、人の姿をしており、
他の妖怪と比べて頭が良いのだが、
能天気過ぎる性格が表情に出てしまい。
普段からは、面倒くさがり系、低速マイペース系美男子になっている。
しかし、それでも彼らは見かけによらず、
仕事はしっかりこなすエリートである。
だがその代わりに、ドジ属性が強い事は、
"たま"に傷である。
そのため、今回で三回目の事例に、
さすがの千夜も、負のオーラを放ちながら、
一反木綿の中でも一番親しくしている、
前髪だけ黒髪、後は白髪の美男子に話しかけた。
千夜「あれほどデスクトップの上には、飲み物を置くなって言ったのに‥、どういう事かしら‥、平塚?」
平塚「いや~、千夜も見ての通り、テーブルは紙だらけで、置くところがないんだよ~。」
千夜「だからって、不安定な所に五人全員が置くことないでしょ!?前回決めたスペースはどうしたのよ!?」
平塚「あぁ~、それなら、あの後直ぐに"紙"の侵攻に合って、直ぐにスペースが失くなったな。」
まるで、"仕事の書類が多いみたいな"平塚の言い分に続いて、四人の美男子たちが頷くと、千夜の心の火山が煮えたぎる。
千夜「へぇ~、紙って言うのは、漫画本の事かしら?それとも、新聞?写真集?」
平塚「っ、あ、いや、それは~。」
痛いところを突かれて動揺する五人の美男子。
しかも机の上には、片付け損ねた漫画本を始め、布について書かれた雑誌、けもみみ美女の写真集が置かれていた。
千夜「私の見たところ‥、平塚、平野、平間の机の上に、私物らしき"紙"があるのだけど?これは仕事関係なのかしら??」
千夜は瞳を真っ赤に光らせ、
見かけによらず一端の大妖怪並みの圧をかける。
しかし、五人の美男子には効いていないのか。
気だるげな瞳で千夜を見つめていた。
分かってはいたことだが、
全く手応えのない五人の反応に、
次第に千夜は馬鹿馬鹿しくなり、
心の火山が不思議と落ち着くのであった。
気だるげな五人の美男子の中に、
一人の猫耳少女とは、"少女漫画"で例えるな、好きな人がいるのに、五人の美男子にからかわれて狙われる展開。ある意味、素晴らしいものだ。
だが実際は違う。
千夜に迫る所か、押し倒したり、壁ドン展開もない。普通に、だらしがない美男子に振り回され、悩まされているだけであった。
千夜「はぁ‥、まあ、何にせよ。私物はしっかり片付けなさいよ!次に、また同じことをしたら、私物の持ち込みを禁止にするからね!」
四人「っ!?」
平塚「っ!お、おう‥、わ、わかった。」
とうとう、
切り出された"私物持ち込み禁止"令に、
五人の美男子たちは反応すると、ようやく千夜の注意を受け入れるのであった。
千夜「ふぅ、それじゃあ早速仕事に移るよ!」
五人「お、おぉ~。」
とにかく、晴斗と一緒に居たい千夜は、
気だるげな美男子たちの"ケツを叩き上げ"、
号令をかけるのであった。
そんな様子を、扉の隙間から除く晴斗がいた。
晴斗「さ、さすが千夜ちゃん‥。がんばり屋だな。」
月影「当然ですよ♪千夜お姉ちゃんは、兄弟の中でも"ひたむき"な努力家ですからね♪」
晴斗「‥"ひたむきな努力家"か。千夜ちゃんに相応しい言葉だな。本当に可愛い‥。」
晴斗の本心とも思えるセリフに、
月影は満面な笑みを浮かべながら喜んだ。
月影「晴斗さんと千夜お姉ちゃんが結婚したら、晴斗さんは僕の兄上に‥はぅ~♪」
生涯末っ子の"座"を譲る気がない月影に取って、新たな兄ができる事は、喜ばしいものであった。
晴斗「月影が義理の弟か。それも良いけど、直人とも義理の兄弟になるのは変な感じがするな。」
月影「全然変じゃないですよ♪むしろ喜ばしいことです♪あっ、そうだ!こうしてはいられません!千夜お姉ちゃんの手伝いをしたいんですよね!どうぞ中へ~♪」
晴斗「えっあっ!?月影君!?」
両津家特有の"暴走"が、遂に月影にも発動してしまい。月影に手を取られた晴斗は、経理部に連れ込まれた。
当然これには千夜も驚いた様子で、
晴斗と月影に視線を向ける。
千夜「にゃっ!?は、はは、晴斗様!?ど、どうしてここに‥って、月影!?な、何で晴斗様を連れてきてるの!?」
月影「ふぇ?何でって、晴お兄ちゃんと千夜お姉ちゃんのためだよ?」
晴斗「は、晴お兄ちゃん‥?」
完全に二人をくっつけようとする月影に、
千夜と晴斗は気まずくなる。
しかも、恋では部外者である五人の美男子が居る中での展開に、千夜が一番動揺していた。
千夜「あう、も、もも、もしかして、さっきまでのやり取りも見てましたか?」
晴斗「あ、いや‥その‥、ごめん。」
一旦は誤魔化そうとするも、
さすがに、無理があると悟って諦めると、
月影から更に恥ずかしいことを暴露される。
月影「晴お兄ちゃん、凄く千夜お姉ちゃんを褒めてたよ?ひたむきな努力家だって?」
晴斗「っ!こ、こら月影君!?」
千夜「にゃっ///そ、そそ、そんな‥あえっと‥うぅ~//」
どうやら月影が暴走すると、
かなり口が軽くなる様だ。
そんな弟に、千夜が振り回されていると、
五人の美男子たちが、気だるげな表情で見ていた。
平塚「なるほど、最近の千夜が張り切っているのは"この"ためか。」
平野「へぇ~、千夜に好きな人が居たんだ。」
平間「‥ふむふむ、相性が良さそうだな。」
千夜「ちゃ、茶化すな!ばか~///」
五人中、三人は興味を持っているが、
他二人は興味なさそうであった。
平沼「ふぁ~、ねむ‥。」
平賀「よしよし‥(競馬中)」
その後晴斗は、
経理部の手伝いを許可される事になった。
すると早速、計算等が得意な晴斗は、千夜から色々と教えてもらうと、その天才的な頭脳を持って仕事をこなすのであった。