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第三百十八話 姉弟と想人

最近色々と様子がおかしい稲荷姉。

妖楼郭に着いてからも、着物を綺麗に着込み、

いつもと全く異なる程の真面目モードであった。


これに対して直人は、

普通に試しているだけなのか、

それとも、我慢しているだけなのか。

動向が分からず、逆に恐怖を感じていた。


だが、直人は、

このまま何もしないのも、かえって危険であると判断し、一人で稲荷姉の元へ行こうとする。


ところが、早速部屋から出ると目の前に広がったのが、見知らぬ部屋に、俺とリール、エルンなどの写真が、壁一面に貼られた謎の部屋であった。



そして今は、出口は塞がれ、

密室に近い空間で、稲荷姉と二人っきり。

甘えるなら絶好のチャンス。

襲うなら絶好のチャンス。

蹂躙される絶好のチャンス。

‥と言う、直人に取っては命がけの展開だが、

普通に見たら羨ましい最高の展開であった。



しかし、一方の稲荷姉は、

やはり様子がおかしかった。


いつもの稲荷姉なら、胸元を出しては白か黒、あるいは紺色のニーソックスを見せつけ、動揺する俺に迫るはず‥。


なのに、未だに着物を崩さず、

稲荷姉は、優しげな微笑みを見せながら、

こちらを見つめていた。


直人「い、稲荷‥こ、ここは‥、稲荷姉の部屋なのか?」


稲荷姉の真面目な姿も気がかりだが、

それより、ストーカー並みのこの部屋について、

直人は、質問したくて仕方がなかった。


稲荷「クスッ♪半分正解ね♪ここは、私の趣味部屋よ♪」


なんとなく返答は分かっていた。

稲荷姉は、何否定することなく答えた。


直人「しゅ、趣味‥ね。(おいおい、悪趣味すぎるよ!?)」


稲荷「まあ、驚くことは無理もないわ♪本当なら私のお部屋に転移させたかったけど、白備たちがマークしているせいで、この部屋でしか転移できなかったのよ~♪」


直人「は、はぁ。そうですか‥。」


結局、俺の即誘拐は企んでいた様だ。

しかし、白備たちの警戒のお陰で、何が置いてあるか分からない稲荷の部屋よりも、趣味部屋に追い込んでくれたのは、ある意味よかったかもしれない。


なぜなら、ここにあるのは稲荷姉に取ってはお宝の山。むやみに動いて写真とかを破いてしまう様な行為はしないはずだ。


ありがとう白備たち。

こんな俺のために、気を使ってくれて。



結果的に良い方向に捉えた直人は、

兄弟たちに感謝するのであった。



すると、いつもと違う稲荷は、

直人に近寄ると優しく抱きついては、

なでなでをした。


直人「い、稲荷姉?」


稲荷「よしよし♪直人はこうされるの好きでしょ?」


直人「う、うん‥、好きだけど、最近は‥これよりハードな事をされてたけどね。」


稲荷「クスッ♪ごめんね♪あまりにも直人の事が好きすぎて、気持ちを抑えられなかったからね~♪」


直人「うぅ、い、稲荷姉の気持ちも分かるけど、お、俺は‥稲荷姉に、こうされたいよ//」


直人が学園に入る前までは、

よく稲荷姉に"なでなで"をしてもらい、

"良い姉さん"に"甘える弟"の関係であった。


しかし今は、

学園生の立場もあり、

甘えることに抵抗が芽吹くお年頃。

まして、一応夫婦の関係でもある。


素直に、"稲荷姉さん撫でてくれ"などは、

言えないだろう。


そんな思いの中で、

心の奥底で待ち望んだ癒しの一時。

直人は照れ臭くも稲荷を抱きしめ甘えた。


すると、

甘く引き寄せられそうな香りと共に、

直人の体に力が抜け始め、意識が遠退いていく。


そして、稲荷の胸の中で眠りについた。


稲荷「クスッ♪やっぱり、直人は素直で可愛いわ♪」


優しげな笑みを浮かべる稲荷は、

眠りについた直人を布団に寝かせ、

淫靡の欠片もない添い寝をするのであった。


稲荷に取って三日ぶりの睡眠である。




その頃、

一人ぼっちになった晴斗と言うと、

千夜と共に、旅館の手伝いをしていた。



晴斗「よっと、これでよしと。それにしても千夜ちゃんは凄いな~、毎日こんなハードな仕事をしてるんだから。」


一升瓶が六本も入った箱を一つ運ぶので精一杯な晴斗は、それを三段も重ねて運ぶ千夜の姿に感心する。


千夜「にゃっ!?そ、それほどでもありませんよ。そ、それより、晴斗様はお体が悪いのに、重い物をお持ちになって大丈夫なのですか?」


晴斗「あはは、心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だよ。最近は不思議なくらい調子が良いんだ。でも、力は弱いからこれくらいしか貢献できないけどね。」


千夜「い、いえ!一つ持ってくれるだけでも、十分に助かります!」


自分の価値に低評価をつける晴斗に、

千夜はそれを否定する。


晴斗「あ、あはは、そう言ってくれると嬉しいよ。」


千夜「あ、当たり前です!晴斗様は、謙虚すぎますよ。」


晴斗「千夜ちゃんは優しいね。でも俺は、大口を叩くよりも、行動で示して物事を言いたいんだ。正直これだけは譲れないね♪」


千夜「晴斗様‥、(はぅ~♪謙虚な意地を通す晴斗様素敵~♪)」


真っ直ぐな晴斗の言葉に、

心を打たれるばかりか、少しでも気を許せば、晴斗を押し倒す程まで、晴斗に対する愛が爆発しそうになっていた。


晴斗「さてと、次は何しようか。」


小さな手伝いが終わると、

晴斗は次の手伝いをしようとする。


千夜に取って一緒に居られるだけでも嬉しい事だが、さすがに、お客である晴斗をこれ以上働かせる訳にはいかない。


千夜に取って苦渋ではあるが、

やむなく止めに入る。


千夜「は、晴斗様だめですよ!?お客様がお仕事を手伝うなんて‥。大旦那様が知ったら怒られてしまいますよ。」


晴斗「その時は俺が全部責任を負うよ。」


千夜「そ、そんな無茶ですよ!?」


妖楼郭には、微量の妖気が立ち込んでいるため、千夜の目には、若干晴斗が妖気に酔っている様にも見えた。


晴斗「無茶かどうかは、やってみないと分からないだろ?」


徐々に千夜へ迫る晴斗。

対して千夜は、嬉しい思いを圧し殺しながら、

晴斗を落ち着かせようと思うのだが、上手く言葉が出ずに後ろへと追い詰められ、そして壁ドンされる。


夢にまで見た嬉しい展開。

しかし、心の準備をしていない千夜は、

赤面しながら取り乱す。


千夜「にゃうっ//は、晴斗ひゃまままっ!? 」


晴斗「ねぇ、千夜ちゃん?俺にできる事まだあるよね?」


突然変なスイッチが入った晴斗に、

千夜は追い詰められる。


レアとも言える肉食系の晴斗の姿。

できることなら、このまま首筋を舐められ、身を捧げたいと思うほどであった。


しかし、そこへ、

忍びの姿をした黒髪左目隠しの少年が、

慌てた様子で駆け込んで来た。


すると晴斗は、

直ぐに我に返り千夜から離れた。


一方で、

良い意味で追い詰められ、最後に水を差された千夜は、突然駆け込んで来た末っ子の月影(つきかげ)に、動揺を見せないために冷静を取り戻す。


千夜「‥えっ、えっと、ど、どうしたの月影?」


月影「は、はい!えーっと、あれ?晴斗さん?」


晴斗「っ!」


月影に声をかけられ、

ただいま動揺中の晴斗は、

月影と顔を会わせられないでいた。



千夜「は、晴斗様より、よ、用件は何かしら?」


月影「あ、そうでした、大変です!経理部のパソコンが、また壊れて売り上げの計算ができないみたいなんです!」


千夜「な、なんですって!?うぅ、これで何回目よ‥。」


月影「と、取り敢えず急いでください!?」


千夜「はぁ、わかったわ。今行くから先月末と昨日までの伝票をまとめておきなさいと"ふんどし共"に言っておきなさい。」


月影「わ、わかりました!」


千夜の気品のある指示の元、

月影はその場を去った。


千夜「はぁ、晴斗様と一緒に居られる時間が‥。」


晴斗「へ、へぇ~、千夜ちゃんって、経理とかできるんだね?」


千夜「え、ええ、まあ。実は私、昔から計算が好きで、お父様に拾われてから、色々な事を学びましたからね。」


晴斗「‥へぇ~、それなら俺も手伝うよ?」


千夜「にゃうっ!?そ、それはさすがに、だ、だめですよ。」


晴斗「実は俺も数学が好きなんだよ。もしかしたら役に立つかもよ?」


千夜「で、でもこれだけは、妖楼郭の心臓部ですし‥ごめんなさい。」


晴斗「‥まあ、そうだよね。ごめん。頭に乗り過ぎたよ。」


千夜「うぅ。本当にごめんなさい‥。」


さすがに、甘えられない現状に、

千夜は名残惜しそうに頭を下げると、

晴斗の前から去ったのだった。



しかし、やる事が急に失くなり、

再び暇になった晴斗は、千夜の事が気になりすぎて、仕方がなかった。


晴斗「うーん、でも‥気になるよね~。」


結局晴斗は、千夜の断りを無視して、

後を付けるのであった。

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