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第三百十六話 餓えた妖狐

八月七日の早朝。


日の光が草津の観光地を明るく照らし、

朝靄(あさもや)を引き立たせていた。


葉から朝露(あさつゆ)(したた)り落ち、

(すずめ)(はと)の鳴き声が響く。


そしてここ、

妖怪が経営する老舗旅館"妖楼郭(ようろうかく)"にある、とある部屋では、


愛する弟が友達を引き連れて来ると言う事で、

妖狐お姉さんこと、両津稲荷が三日も眠れず待ち遠しにしていた。


稲荷「はぁはぁ‥、私の可愛い弟と妹たちよ‥。いらっしゃい‥。じゅる。」


夏休み中、リールとエルンが弟の家で泊まっていることもあり、稲荷の盗さ‥観察にも力が入っていた。


一時は、こっそり妖楼郭を抜け出して、愛する弟をリールとエルンと共に襲おうと考えていた。


しかし、その様な事は、

当然弟たちが許すわけもなく、

稲荷の脱走に厳重に目を光らせていた。


しかし結局は、稲荷のストレスは溜まるばかりで、改善どころか、そのまま悪化して行った。


そのため白備たちは、苦渋の選択を迫られた。


このまま予定通り直人が来た暁には、

即座に直人は、稲荷に(さら)われ、性的に喰い殺されてしまう想像が容易にできた。


そのため、一時は中止を考えたが、

白備たちも大好きな直人に会いたいため、


たった、二、三日で何とかしようと、

稲荷には妖楼郭内であれば多少の自由を許した。


もちろん苦渋ではあったが、直人、リール、エルンの観察と言う名の盗撮も了承した。


これで気分は晴れてくれると、そう思った。


だが、蓋を開けて見ればまさかの逆効果。

四日の日から一睡もしないで、三人の観察と妙な計画を練り始める始末‥。



そのため、稲荷の寝室前では、

扉を少し開けて心配しながら様子を伺う、

三人の弟たちがいた。


稲荷の実弟で、白髪けもみみ青年の白備。


鴉天狗の黒髪イケメンの昴。


元亜種族鬼神にして、今は鬼人として生きている両津家長男、リヴァルである。


※この時のリヴァルは、納涼祭の一件から"アイシュ"と共に妖ノ儀を受け、鬼人として生まれ変わっていた。



白備「うぅ‥、ね、姉さん‥、今日も寝てないのか。」


昴「さ、さすがに、まずいな。め、面会くらいは監視付きでやるべきだったかもな‥。」


白備「良い案かもしれないけど、外に出た瞬間直ぐに逃げられそうだよ‥。」


昴「あ、あぁ~、そ、そうだな。」


リヴァル「‥か、郭なる上は、お、俺が直人の身代わりになるしかないか。」


白備「‥に、"兄さん"。それはだめだよ。もしバレたら普通に殺されるよ。」



リヴァルを敵対視していた白備だが、

以前の"春桜の変"後に開いた家族会議で、

みんなの前でリヴァルを罵倒し、実姉(じっし)である稲荷の怒りを買い、初めて叩かれた事があった。


その影響もあってか、

徐々にリヴァルを兄と認め始めて今に至る。



リヴァル「だ、だよな‥。うぐぅ。直人には、恩がたくさんあるから‥、少しでも恩を返してやりたいんだが‥。」


昴「うぅ、兄さんの気持ちは分かるけど‥、姉さんを騙すのは容易じゃないと思うよ?例え、上手く行っても、実際は分からないフリをしているだけで、お仕置きと称して、搾り殺す寸前まで追い込むかも‥。」


リヴァル「っ、うぅ、そ、そうだよな。」


白備「と、取りあえず今は、様子を見ながら兄さんたちを出迎えよう。もし何か起きれば、命を懸けて兄さんを守るんだ。」


昴&リヴァル「お、おう。」


二人はゆっくり扉を閉め、

仕事に取りかかった。



それから数時間後。


信潟駅万代口、バスターミナルより、

午前九時五分発、午後十三時十二分着の、

草津行きのバスが到着。



ゴールデンウィークに来た時の、

二倍以上の御一行がバスから降りてきた。



シャル「おぉ~♪三ヶ月前と全く変わってないのだ~♪」


ギール「まるで大昔に来た様な言い方だな?たった三ヶ月で大きく変わるわけないだろ?」


シャル「む?でも見よギールよ!舗装がしっかり直されて綺麗になってるのだ!」


ディノ「た、確かに、さすがに舗装は綺麗になってますね。」


草津事件の爪痕で、

所々で舗装が壊れたりしていたが、

今ではすっかり、綺麗になっていた。


たった、三ヶ月ではあるが、細かいところから徐々に復興しているようであった。



すると、

十数年ぶりの訪れに興奮する京骨は、チェックインをする前から、あちらこちらへと行こうと"ウズウズ"としていた。


京骨「うわっ、すげぇ懐かしいな~♪まだ、あの店は今もあるのかな~♪」


ルシア「あはは、京骨ったら気が早いよ~♪まずは、旅館に行ってから二人で回ろう♪」


ルシアは京骨の腕を掴み、ハート型の尻尾を振りながら、一人行動をさせないようにする。


この光景に男たちは、

恐らく帰りまでに、何回、いや何十回かは、

人気(ひとけ)のない路地裏とかで、野外プレイに走ると予想した。


想像するだけで羨ましく感じてしまうが、

実際ここにいる男たちの中で、そんな事ができる度胸のある奴はいない。



そんな中、

今回の主催を務める直人は、

早いところ、みんなに自由時間を与えて、

自分は早く安全なところへ逃げようと思いながら、早速指揮を取り、まとめ上げる。




そして、ここから。

以前とは違う。


怪奇的な妖楼郭生活の始まりであった。



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