第三百十五話 姉御風けもみみ美女が仲間になった
まさかシシリーの彼氏が、
あの微食会の番場誠太だったとは驚きであった。
桃馬は、二人のお熱い光景を見るや無言でお辞儀をして、その場から去って行った。
時刻は十六時を過ぎ、
そろそろ帰りの時刻である。
薬草むしりの報酬については、また後日に受け取る事にして、今日のところは明日の旅行に備えて帰ろうと思った。
だがしかし、
桃馬が戻った矢先のこと。
そこには、見たことのないオレンジ髪の姉御風けもみみ美女が、豆太を抱きしめながら桜華たちと仲良さそうに話していた。
ヴィーレ「あはは、そうかそうか♪やっぱ豆太は普段から大人しいのだな~♪」
豆太「あぅ‥//、ヴィ、ヴィーレお姉さん‥、は、恥ずかしいから下ろしてよ~。」
ヴィーレは、恥ずかしがる豆太をからかう様に、
程よく育った胸を押し付けながら抱きしめていた。
さすがのエルゼでも、大好きな豆太が目の前で、
ヴィーレと大胆な密接をしている光景に、黙って見ているはずがなかった。
エルゼ「わふぅ~!豆太ばっかりずるいよ~!ヴィーレさん!次は私にもギューッてしてくださーい♪」
シール「わふん♪私も私も~♪」
嫉妬よりも甘えん坊モードになっているエルゼは、シールと共にヴィーレの体へしがみつき尻尾を振っていた。
この素晴らしいほのぼのとした光景を見ている者たちは、"ほっこり"と笑みを浮かべていた。
これには当然、
あの変態神"小頼"も黙ってはいなかった。
昨日と今日で、盗さ‥、趣味のために、
何千、何万のシャッターを切った"相棒(一眼レフカメラ)"を構えて興奮していた。
小頼「はぁはぁ‥じゅる‥。か、完璧な‥おねひょた~♪そして、お姉さんを取り合う二匹の姉妹~♪はぁはぁ、今日は天国か~♪はぁはぁ‥。」
桜華「こ、小頼ちゃん‥。」
リフィル「あ、あはは‥、」
さすがの桜華とリフィルでも、
今の小頼の言動には、かなり引き気味であった。
更に一方では、
思わぬところで、豆太とヴィーレの"フラグ"が発生した事で、笑みを浮かべながら尻尾を振る犬神がいた。
犬神「ふんふーん♪」
ディノ「い、犬神様?心の声が表情に出てますよ?」
犬神「これが表情を出さずにいられるかよ~♪これは、チャンスだよ、チャンス!俺は、ヴィーレとか言う狼の恋路を応援するぞ!」
犬神に取ってヴィーレと言う存在は、
エルゼと豆太の恋路を破壊してくれる悪魔のキューピットの様に見えていた。
下心丸出しの犬神の姿には、
さすがのディノも呆れて、額に手を置いた。
かなり色んなイベントが発生している現場に、
桃馬は状況を知るため小声で憲明を呼び出す。
桃馬「‥お、おい、憲明‥。」
憲明「あ、桃馬、戻ったか。」
桃馬「一体これは、何があったんだ?」
憲明「あぁこれか?実は、桃馬がシシリーと一緒に"鑑定室"に行った直後の話なんだけど‥。」
憲明は、桃馬不在の短時間で起きた話を、
かいつまんで話した。
まず、オレンジ髪の姉御風けもみみ美女の正体が、ギールの"いとこ"で、ヴィーレ・コローと言う事。
そして、ヴィーレと豆太との出会いや、交尾、ここまでの経緯などを簡単に話した。
桃馬「なるほど、だから、豆太をぬいぐるみ見たいに抱きついて離さないのか‥。ごくり、姉御系のおねしょたか‥。しかも、逆転ものとは‥、まるで同人誌の内容が具現化されたみたいだな。」
憲明「あぁ、これはある意味レアだぞ。」
桃馬「‥だろうな。にしても、最近のギールの家族構成が、段々大きくなっているのは気のせいか?」
憲明「いや、気のせいじゃないな。現に、ラノベ小説の異世界系主人公のレベルだな。」
桃馬「だ、だよな。俺としては、このまま大人しくシャルと"アニイモ"展開になってほしいけど‥、果たしてどうなるかな。」
憲明「‥‥桃馬。お前もしかして、妬いて‥。」
桃馬「妬いてない。」
憲明の誤解を生ませる発言を、
即行握り潰す桃馬。
しかし、ヴィーレの紹介の際、
ギールの名前が出た時は一瞬驚いたが、
二人の関係が"いとこ"だと知ると、素直に安堵した。
さすが、リードを握る飼い主、
知らぬ間の嫁には、かなり警戒をしている。
そこまで考えるなら、
いっそのこと、ギールとジェルドを抱いてしまえと言いたいところだが、神様はまだ、その展開を望んでいない様だ。
憲明「ま、まあ、取りあえず、明日から更に忙しくなるのは、確実かもな。」
桃馬「まさか、ヴィーレさんも着いて来るってか?」
憲明「あぁ、豆太の同伴としてな。」
桃馬「旅行の前日だぞ‥、さ、さすがの直人でも、無理があるだろ。」
憲明「いや、たぶん大丈夫だと思う。」
桃馬「な、なんで、そう思う??」
憲明「だって‥、ヴィーレさん‥。稲荷さんの好物そうだろ?」
桃馬「っ、おまっ‥。うーん、あの方ならやりかねないかもな。」
否定的な意見を述べようにも、
ヴィーレさんが、稲荷さんに蹂躙されるイメージが容易に想像ができた。
しかも、
ギールのフォルト家は、直人の両津家との縁が強い。たった一人くらい放り込むなど、造作もないだろう。
その後桃馬は、
ギールとジェルドを呼びつけ意見を聞くと、
稲荷さんに管理されるのは、尖り過ぎた牙を程よく削れる良い機会だと話がまとまり、あとはヴィーレの動向次第となった。
次に、ギールからヴィーレに、豆太を餌にして明日の事を伝えると、大喜びで参加をお願いしてきた。
この時のギールとジェルドは、
まんまと餌に食いついたヴィーレに対して、
背徳感と言うか、罪悪感と言うか、後ろめたい感情を大いに通り越して、稲荷さんによる調教に期待するのであった。
そして、肝心の直人の反応はと言うと、
意図も簡単に承諾された。