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第三百八話 喰らう狼

ギールの"いとこ"であるヴィーレにより、

無事に豆太と再会できたギールと加茂。


しかし、ヴィーレは、

豆太の事を"夫"と呼び、(すこぶ)る気に入っている様であった。


話の過程(かてい)で、

てっきりギールは、一人になった豆太にヴィーレが襲いかかり、シンプルにヴィーレが返り討ちに合ったのだと思い込んでいた。


それがまさか、交尾で豆太に負けたとは、

この時のギールと加茂は想像も付かなかった。



そんな事よりギールは、

ヴィーレが何故ここに居て、

どうして豆太と一緒に居たのか気になった。


ギール「はぁ‥、ヴィーレ‥姉には、色々聞きたい事が山程あるけど、里を離れてここで何してるんだ?」


ヴィーレ「ん?そりゃお前、今宵は"蒼い満月"の日だからな。里にいる"仔犬"の相手は飽きたんで、外に出て気分転換さ。」


ギール「"蒼い満月"‥っ!ま、まさか‥。」


ここでギールは、全てを察した。

蒼い満月‥、それは年に一度の月がもたらす、

淫気を放出される日である。


もちろん、年齢や個人差はあるが、

禁欲等をしている若い女性を中心に、

発情をしてしまう厄介な日である。


ちなみに、魔界では、

サキュバス等の淫魔が暴走する日として恐れられ、各地の魔王や幹部でも、しっかり戸締まりをして夜が明けるまで引き籠る程である。


過去に、自信満々の男性淫魔が、

吸い殺されたと言う事例もあり、生半可な男性淫魔も震えるくらいである。



ギール「ヴィ、ヴィーレ‥姉。ま、まさか、豆太を‥お、おお、襲ったのか!?」


加茂「ふぇ!?」


ヴィーレ「ふっ、あぁ~♪最初は怯えるだけで、ちょっと摘まみ食いするつもりが、下の方が見た目以上に一人前でな。それで本気で犯したら、豆太の方もやる気になって腰を振るもんだから。あたしとした事が、つい流されちまったよ。」


包み隠さず語るヴィーレに、

ギールと加茂は唖然とする。


特に加茂は、衝撃的な話しに固まってしまう。


ギール「な、何て事を‥、ま、豆太には好きな子がいるんだぞ!?」


ヴィーレ「ふっ、そうみたいだな?まあ、あたしも、童貞で可愛い豆太に女と言うものを教え込んでやるつもりだったが、まさか逆に、調教されるとは思ってなかったからな。」


ギール「ちょ、調教って、は、恥ずかしいこと言うなよ!?てか、豆太がそんな趣味あるわけないだろ!?」


半分程度、胡散臭い話しに、

ギールは豆太を擁護する。


ヴィーレ「ふっ、義理の兄の癖に、豆太の事をわかっていないな?」


ギール「な、なんだと‥、」


ヴィーレ「豆太は、見かけは可愛い獣かもしれないが、心は立派な狼だ。もしかしたら、ギールより床上手かもしれないな?」


ギール「なっ///」


ディープ過ぎる話を堂々とするヴィーレに、

素面(しらふ)で童貞なギールは赤面する。


ヴィーレ「まあそれはいいさ、それよりギール?お前、豆太の好きな奴の事知ってるみたいだな?」


ギール「っ、し、知ってたら何だってんだよ。」


ヴィーレ「ふっ、決まってるだろ?見定めだよ、み・さ・だ・め。」


ギール「見定めだって‥ざ、残念だけど、豆太の好きな子は、お前みたいに姉御風暴力女じゃ‥ごふっ!?」


エルゼの危機を悟ったギールは、

身を(てい)して、ヴィーレとは真逆であると答え様とする。

しかし予想通りヴィーレは、ギールの腹部に拳を入れ、両ひざをつかせてうずくまらせた。


ヴィーレ「誰が"姉御風暴力女"だって?」


ギール「はぁはぁ、かはぁ‥はぁはぁ、今のでもわからないのか。」


ヴィーレ「ふっ、まあ取りあえず近々会わせろ。もし、"そいつ"がこの世界に居るなら特にだ。いいな?」


ギール「はぁはぁ、わ、わかった‥、な、なら‥このままギルドに着いて来るといい‥。(こ、こんな暴力女に、絶対に豆太はやらないぞ!)」


加茂「はわわ、(ど、どど、どうしよう!?う、動けない‥。)」


かなり強引な言質(げんち)の取り方に、

慌てる加茂に対してギールは、ここに来て娘を送り出す父親の感情がなんとなく分かるのであった。


絶対に弟を婿(むこ)にはやらんと言う、

少しズレた展開ではあるが、大切な弟をこんな危険な獣に渡す訳にはいかない。

そう、胸に刻むのであった。



するとそこへ、

大捜索に走るシャルの声が、

徐々に大きく響き渡る。


シャル「ま~め~た~!どこなのじゃ~!」


ギール「っ!?」


加茂「こ、この声‥シャルお姉ちゃん!?」


ギール「や、やばい‥また、面倒なのが‥。」


ヴィーレ「‥へぇ~、さっきから聞こえるこの声が、そうなんだな?」


ギール「えっ?あ、いや、これはちが‥!?」


大きな勘違いし始めるヴィーレに、

ギールは酷く焦る。


今ここでシャルと出くわせば、

確実に殴り合いが始まると感じた。


例え、ヴィーレとは"いとこ"同士でも、

いたいけな豆太を襲った挙げ句、夫に寄越せと言えば、確実に激しい怠慢が起こる。


ギールが最悪の展開を想像する中、

とうとう目の前に、焦りから涙を流し、

大人びたエッチな姿をしたシャルが現れる。


シャル「ひっぐ、ギ~ル~!加茂~!豆太が見当たらないよ~。」


ギール「しゃ、シャル!?それなら安心しろ。豆太ならここにいるぞ。」


この世の終わりの様な表情をしたシャルに、

ぐっすりおやすみ中の豆太を見せると、

シャルは歓喜を上げて駆け寄った。


シャル「っ!?おぉ~!豆太~!すまん、すまぬ!余がペペ狩りに夢中になったばっかりに‥、怖かったであろう~。」


豆太の"ふにふに"のほっぺを突っつきながら、

安堵していると、ギールに取って黙って居てほしいヴィーレが口を開く。


ヴィーレ「へぇ~、あんたが‥豆太が好意を持ってる女か?」


ギール「っ!?ヴィーレ‥ね、姉。違うって!?」


嫌な予感が"びしびし"と伝わる感覚に、

自然と尻尾と耳が直立する。


シャル「ん?なんだお主は?」


挑発口調のヴィーレに対してシャルは、

見覚えのない姉御風の雌犬に視線を向ける。


すると、ギールは身を挺して、

二人の間に入り込んだ。


ギール「しゃ、シャル!?紹介するよ♪お、俺の"いとこ"のヴィーレだ。」


シャル「む?ギールの"いとこ"?」


ギール「そ、そうだ、ちょった性格に難があるけど、仲良くってうわっ!?」


色々と問題が起こる前に、

ギールは、全力で建前を作り上げるのだが、

背後からヴィーレに肩を掴まれ軽く退()けられてしまう。


二人の距離が、"一"メートルを切ると、

ヴィーレは立ち止まりシャルを観察する。


ヴィーレ「へぇ~、なるほどね‥。」


シャル「お主先程から何をしているのだ?」


ヴィーレ「ふっ、何って、豆太が好いた雌がどんなものか見ているんだよ。」


シャル「ん?お主は何を言っているのだ?」


もう、どうにもならないと悟ったギールは、

両手で顔を隠して何も起こらないことを願った。


そして加茂は、

豆太を抱えながらギールの後ろへ回る。


ヴィーレ「ふっ、単刀直入に言う‥、豆太をあたしの夫に迎え入れる。大人しく渡してもらおう。」


シャル「っ!‥ほぅ、いきなり何を言うと思えば、例えギールの"いとこ"とは言え、それは飲めぬ話だ。」


ヴィーレ「ふっ、そう言うと思ったぜ?まあ、豆太を童貞のままにする程、大切にしていた様だが、あたしがもらっちまったからな。」


喧嘩上等なヴィーレは、恐れることもなく、

堂々と豆太との既成事実を告白する。


これに対してシャルは、

目を瞑り少しうつむくと、小声で聞き返した。


シャル「お主‥豆太を襲ったのか‥。」


ヴィーレ「あぁ♪一人で森に迷っている所をな。でも最後は、豆太の本領発揮に負けちまって、あたしの心を物にしちまったけどな。」


シャル「そうか‥、なら‥尚更‥豆太は渡せないな。」


ヴィーレ「‥ふっ、そう言うと思ったぜ。なら、力ずくで認めさせてやる‥。」


予想通り、シャルが豆太の譲渡(じょうと)を拒むと、ヴィーレは戦闘の構えを見せる。


シャル「‥なあ、お主、さっき豆太が一人の所を襲ったと言ったな?」


ヴィーレ「ん?あぁ、そうだが?」


シャル「‥それからずっと一緒だったのか?」


ヴィーレ「まあ、そうなるな?」


シャル「‥わかったのだ。」


確認とも思えるシャルの発言が終わると、

大量の魔力が溢れ出す。




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