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第二百九十九話 儚く消えゆく花

微食会の掟である。

恋愛不可侵条約。


それは、

エニカとルイとの恋愛行為を

一切禁じる法である。


この神聖なる二人に対して、

下心を持つ者は、一切許すべからず。


破ったら袋叩きの上、

脱会させられる程の厳しい法である。


そして今、

ルイと一番仲が良く、一番距離の近い近藤が、

男たちのおふざけから生まれた誤解を解くため、下手にツッコンでしまい、更なる誤解を招いていた。



九対一と言う、殺伐とした空気に、

今にも激しい斬り合いが始まりそうな中、


両者の間に、ルイが割って入った。



ルイの頭には、トレンドマークである二本のアホ毛が復活しており、十人を越える圧を放つ。


ルイ「喧嘩は‥、良くない。」


少し怖いが、いつものルイの姿に、

十人の男たちは安堵した。


渡邉「ふぅ、ようやく戻ったな。」


番場「‥ははっ、まあ、ルイを甘やかすのは、みんなの特権だ。まあ、そんな中でも、過剰な男が一人いても不思議じゃないか。」


茂野「ま、まあ、近藤も下手な恋愛感情は持ってない様だし、今回は許してやろう。」


近藤「許すも何も‥、ゲームとかで推しが出たらガチャ引くだろ?」


あろう事か、

ゲームで例えるこの男。


これにより、渡邉を除く八人の男たちは、


確信する。


藤井「ガチャで例えんなよ‥。はぁ、これではっきりしたな、近藤は恋愛に関しては完全に天然だ。」


藤井の呆れ返った発言に、

八人の男たちは頷く。


近藤「うぐっ、そう言われると‥言い返せ‥ん?る、ルイ?」


藤井に指摘され苦笑いをしていると、

ルイが近藤の方を向き顔を近づける。


これには、

九人の男たちもまさかと思い。

展開を見守る。


グギュルルル~!


ルイ「お腹空いた‥。」


大きな腹の虫と共に、

可愛らしい一言が放たれた。


近藤「そ、そうか、なら、帰り際に何か食って帰ろうか。えっと、ここの辺りだと‥ずぎ屋があったな。"キング"三つで足りるか?」


ルイ「うん‥。」


何やら恐ろしい"ワード"が放たれる中、

ルイは二本のアホ毛を左右に揺らしながら頷いた。



ここで小話。

ずぎ屋の裏メニューである"キング"とは、

牛丼のサイズを指しています。


その大きさは、メガサイズの三倍であり、値段も以外と高くはなく、一杯"千二百円"くらいである。


大食いの人にとっては、嬉しい裏技である。




二人が呑気に夜食の話をする一方で、

一線を越えると思った男たちは、

良い意味でも悪い意味でも落胆した。


恋愛不可侵条約の存在もあるが、

それを破ってまで動こうとしない近藤に、

九人の男たちは再び思う。


近藤の恋愛は、

友人以上恋人未満の属性がある限り、

一生恋愛できないと思われるのであった。


まあ、それはそれで、

楽しそうな人生を歩めそうな話である。



それからと言うもの、

ルイには悪いが、男たちが仕置人である事は、絶対に口外しないと約束させ、おやすみ中のエニカとラシュリーナを起こして、花火会場から"ずぎ屋"へと向かうのだった。





他にも視点は多くあるのだが、

キリがないため省略。


桃馬たちの最後の視点をお楽しみください。




ようやく眠りについたシャルは、

可愛い"けもみみ"たちに囲まれながら幸せそうに寝ていた。すると、頃合いと見た桃馬たちは、その隙に後片付けを始める。


一方、

突如、姿を消していた京骨とルシアは、

結局、戻ってくる事は無く。


変わりに"先に帰ってくれ"と言う、如何(いか)にも、これからルシアとイチャつくと言わんばかりの内容が送られていた。




桃馬「よっと、ふぅ、色々ツッコミたい事はあるけど、粗方まとめ終わったな。」


憲明「ああ、それと結局、この"焼きそば"の出番はなかったな?」


桃馬「そもそも、鉄板が無い時点で普通に作れないし、まあ、あったとしても、こんな傾いてる所では作れないよ。」


憲明「ま、まあ、それもそうだな。それより、材料もそんなにも多くないし、京骨のクーラーボックスを預かるついでに、俺が引き取ろうか?」


桃馬「おお、それは助かる。じゃあ早速、中身の入れ換えだな。」


桃馬と憲明は、

早速中身の入れ換えに取り組んだ。


そんな地味で特別感のない行動に、

二人の女の子たちは、じっと見つめていた。


桜華「‥あう。」


リフィル「うぅ~、私たちの焼きそばが~。」



どうやら、

桜華とリフィルは楽しみにしていた様だ。


繰り返しになるが、

鉄板が無い以上作ろうにも作れない。


桃馬「そんな顔で俺たちを見るなよ?いいか?材料があっても、調理器具がなければ作れないだろ?」


桜華「そ、そうだけど‥。」


リフィル「うぅ、この時季のテレビとかでよく見る。花火を見ながら焼きそばを作っては食べる行為をしてみたかったのに‥。」


憲明「‥花火を見ながらって、リフィルと桜華が"これ"に気づいたのって、花火が終わってからだろ?」


桃馬「ぶっ!」


冷静で至極最もなツッコミに、

桃馬は思わず吹き出す。


桜華「はうっ!?」


リフィル「う、うるさいわね!?こ、こうなれば、今夜憲明の家に上がり込んで、食べてやるんだから!」


憲明「‥どんだけ食いたいんだよ。はぁ、わかったよ。でも、今日は遅いから明日の昼に出直すんだな?」


リフィル「むぅ、今日はダメなの~?」


憲明「ダメに決まってるだろ?リフィルの家にいるメイドさんたちが心配するだろ?」


リフィル「むう、今から連絡すればわかってくれるもん!」


憲明「‥太るぞ?」


リフィル「なっ!?うぅ、ずるいよ~。」


さすが憲明、

リフィルの強引な行動でも平然とつっぱねる。



ここで小話。

納涼祭の一件から、

リフィルの出生が王族であると分かると、

今まで謎になっていた、リフィルが暮らしている家についてようやく明らかとなった。


それは七月末の頃、

憲明はリフィルに連れられ、

謎であったリフィルの家に上がり込んだ。


まさか家には、

国王様と王妃様がいるのかと思ったが、

実際は、エルフ族の専属メイドが二人おり、家の管理とリフィルの身の回りのお世話をしている様であった。


当時の憲明は、

初対面のエルフメイドさんたちを前にして、

嫌悪感を(いだ)かれるのではないかと思った。


しかし、二人のエルフメイドさんは、

嫌な顔をするどころか、やけに親しく接してくれて、(もてあそ)ばれるくらいであった。


まあその時は、

直ぐにリフィルが止めに入ってくれたけど‥。



リフィル家の中は、至って普通の構造であり、

特別豪華な物が備え付けられているわけではいなかった。強いて言えば、ナーシェル王国に繋がるゲートが備え付けられているくらいだろうか。



そして、

お待ちかねのリフィルのお部屋では、

とても綺麗で女の子らしい部屋であった。


しかし、一つ気になったのが、

どうして、クローゼットに封印魔法をしているのだろうか‥。




そして話は戻り、


桃馬「あはは、確かに太るって言うよな。桜華もこの時間からの飯は控えた方がいいぞ?」


桜華「あう‥。我慢しますぅ~。」


桃馬も憲明の言葉に便乗し、

桜華を止めると、直ぐに帰り支度を始める。



一方、その近くでは、


余った食料の残飯処理が行われていた。


大量に残ったおにぎりと、おかずに、

ディノと言う一人のスライムが、美味しそうに頬張っていた。


ディノ「はむはむ♪はむはむ♪」


小頼「す、すごい食べっぷりだね?」


ジェルド「うぅ。み、見てるだけでもお腹一杯になりそう‥。」


犬神「う、うむ。一体その量を入れる胃袋はどこにあるのだ。」


春桜学園に君臨する、

二人の"暴食娘"に引けを取らないほどの食べっぷりに驚く三人。


しかし、

この光景を見慣れているギールは、

冷静に犬神の疑問に答える。


ギール「バカだな?スライムに胃袋なんか無いよ。食ったら直ぐに消化されるからな。」


犬神「な、なんと‥ん?今バカって言ったか?」


ギール「気のせいだろ?」


犬神「‥そ、そうか?なら、良いのだが‥。」


まんまとギールの口車に乗り始める犬神様、

その神々しい威厳も徐々に薄れていき、ギール以下の駄犬道を歩むのであった。



その後、

ディノが残り物を平らげると、

心地よく眠っている四人を起こさない様に抱き抱え、ゆったりと会場を去るのであった。


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