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第二百九十八話 パパ活or推し活

八月三日、二十二時十八分。

とうとう、仕置人としての裏の顔が、

呆気なくルイにバレてしまった。


無表情ながらも怒っているルイの前に、

十人の男たちは為す術なく、ひれ伏しながら全てを打ち明けた。




ここで小話、

ルイが怒っている時の特徴として、

トレンドマークの二本アホ毛が"へにゅ"っと垂れ下がり、目元辺りが暗そうに見えたりする。


ちょっと、

今の状態では分かりにくいポイントではある。


しかし、分かりつらいと思った方はご安心を。


暗闇で分かりにくくても、

押し潰されそうな重圧とその場の空気が教えてくれるので大丈夫です。


注意、

そもそも怒らせたら、死だと思ってください。


以上

獰猛(どうもう)ながらも子犬並みに可愛いルイ・リーフの説明でした。





ルイ「事情はわかった‥。確かに、エニカがこれを知れば普通に首を突っ込むと思う‥。でも、ルイは‥、そうとも知らずに、みんなの想いを踏みにじってしまった。‥ごめんなさい。」


てっきり、激怒するかと思っていたが、逆にルイを謝らせてしまう形となり、男たちは慌てフォローを入れる。


なぜらなら、

ルイの表情が初めて悲しい顔をしていたからだ。


会場に残る薄暗い灯りが、

悲しくうつむくルイを照らし、

更に哀愁(あいしゅう)を漂わせた。


男たちも、

こう言う女性への耐性がないために、


"謝ることはない"とか、

"気にしていない"などの簡単な言葉を並べて、

いつものルイに戻そうとする。


しかし、

その行為は逆効果を招き、トレンドマークである、二本のアホ毛が前髪と同化してしまい消えてしまった。


十人の男たちが知恵を絞っても、

打開できない状態に頭を抱えた。


もはや、

上部(うわべ)だけの(なぐさ)めは駄目の様だ。


そう思った近藤は、

かいぬし‥ではなく、

一人の友人としてルイに寄り添った



近藤「る、ルイ?その‥、"これ"の件は、俺たちが望んでしてることだから本当に気にしなくていいんだよ?」


ルイ「ぅぅ‥でも‥‥ルイは‥‥、」


今まで何も知らなかった罪悪感に囚われるルイに、近藤は威を決してルイの頭に手を置いた。


近藤「ルイの気持ちは何となく分かる。"知らない"って怖いものだよな。でも、俺たちはただ、ルイやエニカ、ラシュたちが、平和に暮らしてもらえれば充分なんだよ。」


ルイ「‥っ‥ぅぅ。」


近藤からの裏表もない本心に、

ルイの不動の心が揺れると、瞳の奥から熱い"何か"が込み上げてくる。


初めての感覚に、怖く感じたのか、

近藤の片袖を掴み小さく(うな)りを上げた。



この光景に外野は、


高野「‥まるで父親だな。」


藤井「うん、さすが"パパ"だ。」


大西「‥パパ属性って珍しいよな。」


坪谷「いつも思うけど、近藤の場合"何か"ズレてる気がするんだよな。良い意味で‥。」


渡邉「‥確かに、最近の尚弥(しょうや)は極度の尊重派だからな。自分の意見より、相手を優先にしてるからな。」


番場「何かそれだと、恋愛を飛ばして次のステップに入ってる気がする‥。」


本間「‥うーん、恋愛とか、結婚をすっ飛ばして、親になってるんだよな。」


星野「と言うよりは、甘やかしたいだけとか?」


茂野「‥それってもう、パパ活じゃね?」


本間「ぶっ!」


優しいパパのイメージから一変、

一瞬でパパ活認定され笑い者にされるのであった。


近藤「っ!おい、誰だ!?こんなタイミングで、パパ活って言った奴は!?それは言ってはダメだろ!?」


どうやら近藤にも自覚はあった様だ。


本間「あはは!いいね~♪健全なパパ活だな♪」


近藤「本間‥てめぇ。」


一人だけ大爆笑する本間に、

憤りを感じる中で近藤は冷静に考えた。



ルイへの恋愛感情は当然"不可侵"のため、

そんな感情は持ち合わせていなかった。


だが、可愛いルイに飯を(おご)ったり、構ったりして、もどかしい感情を晴らしていたのは事実である。


そう考えると、パパ活って言うほど、

不健全ではないが‥。


いや、むしろこれは、

推しに(みつ)ぐと言った方が、

健全ではないだろうか。


そうこれは、

パパ活ではない、推し活なのだ!


近藤は、

パパ活より綺麗な言葉を閃いた。


俺とルイの関係は、

圧倒的に清らかなものだ。


不純と金にまみれた汚物(パパ活)とは違う。


パネ(しゃ)(パネル写真)詐欺は当たり前、

それに加え高額な物を貢がせようとする魔女。

または、性欲を発散させようとする変態紳士の様な、下品で下劣な関係ではない。


よし!


近藤は、完璧なルイとの関係性を見つけ出し、

自信を持って反論に転じる。


近藤「‥ふっ、ふふっ、俺はパパ活をしている覚えはない。俺は、この可愛いルイを推している!即ちこれは推し活だ!」


しかし、この発言が大きな誤解を生む。



藤井「お、おぉ‥、」


高野「いや~、そんな恥ずかしいことをよく大声で言えるね?」


本間「しかも、本人の前で可愛いって‥狙ってるな?」


番場「今のは告白‥と言うより、所有宣言か?」


渡邉「ふぅ、脈はあると思ったけど、ここで宣言とはな。」


九人の男たちは、

ジリジリと近藤に迫ると、

不可侵条約違反と見て問い詰める。


近藤「えっ?な、何を言ってるんだ!?ちょっ、何勘違いしてるんだよ!?よ、寄るなって!?よ、よく考えてみろ!?お、お前たちも同じ思いだろうが!?」


話が耳に入らないのか、

大親友である渡邉も含め、

九人の男たちは、刀に手を置き恐ろしい圧を放っている。


近藤「‥問答無用ってか。」


本来なら土下座してでも、

許しを乞うところだが、今の近藤は、メンバーの中で、唯一人間を止めた‥と言うよりは、ラシュリーナの手によって止めさせられた男だ。


ちなみに今の近藤は、

"ヴァンパイア"であるラシュリーナの特異体質である、日光に耐えられる体質を受け継ぎ、

容姿はいつもと対して変わらない、

中途半端な"ヴァンパイア"となっていた。




ここで再び小話

近藤がヴァンパイアになってから、

初めて家に帰る時のこと。


当時"ラシュリーナ"も一緒に行くと駄々をこね、近藤は、不安を抱えながら仕方なく共に帰宅。


両親との面会の時では、

自分の息子が"ヴァンパイア"になったことよりも、目の前にいる次元を越えた可愛い少女に釘付けになっていた。


それからと言うもの両親は、

ラシュリーナを実の娘の様に可愛がり、

実の息子は、そっちのけであった。


皮肉な話ではあるが、

実際の近藤は、上手く打ち解けられた事に安堵していた。


まあ、ヴァンパイアになったと言いながらも、

いつもと容姿が変わらず、強いて言えば上の犬歯が伸びたくらいだ。


しかも、

太陽もへっちゃらと言う説得力のない話に、

むしろ、小バカにされるのであった。


それからと言うもの、

父と母の暴走は止まらず、

尚弥(しょうや)の彼女には勿体ないと言うことで、勝手ながら近藤家の娘として迎えられたのだった。



ちなみに、

二学期からはラシュリーナは、

春桜学園に通うのだが、公務次第で近藤家の方で過ごす予定である。




話は戻り、

一対九の殺伐とした空気に、

うつむいていたルイが近藤の前に出るのであった。



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