第二百九十五話 闇夜に紛れし仕置人
信濃花火始まって以来の、
最大級にして最高の演目が終わり、
満悦した数十人の群衆が、大河の如く移動する。
今年の素晴らしき花火は、
多くの人たちに強い印象を与えたことだろう。
それゆえ、
この良き思い出を心に秘め、
無事に帰りたいと思うであろう。
しかし、
そんな思いを踏みにじるかの如く、
闇に隠れし外道が、目を光らせていたのだった。
とある、路地裏にて‥。
群衆に飲まれ、友人たちと"はぐれて"しまった一人の金髪エルフが、若いチャラ男たちに騙されて連れ込まれていた。
金髪エルフ「‥あ、あの、本当に、この様なところに、案内所があるのですか?」
チャラ男「あぁ~♪心配しなくていいよ♪案内所に行けば、すぐに友達と再開できるさ♪」
先頭にいるチャラ男が、
金髪エルフの警戒心を解かせるかの様に、
フレンドリーに答える。
しかし、
まわりの男たちは、頬を緩ませスタイル抜群の金髪エルフの体を下から上へと見渡していた。
長すぎない茶色いブーツに、
エルフらしい緑色のスカート衣装。
そして、スカートから除かせる"黒いスパッツ"、太ももまで伸びた"白いソックス"が、
チャラ男たちの性欲を刺激させる。
しかし、
このチャラ男たちは、ご丁寧にも案内所と言う、"自称"安全地帯まで、爆発しそうな思いを抑えていた。
そう、目の前にいる上玉を好き放題できるなら、
安い物だと‥‥そう胸に秘めながら。
外道たちが、まんまと金髪エルフを騙して案内所とやらに着くと、如何にも怪しい建物であった。
さすがの疑心状態であった金髪エルフも、
目の前にいる人たちが普通ではないと、ようやく認定すると、その場から直ぐにも離れようとする。
金髪エルフ「‥すみません。やっぱり、一人で友人を探しますので‥。」
チャラ男「おいおい?連れないこと言うなよ~?せっかくここまで来たんだから、友達が来るまで、ちょっと、休んでいこうよ?」
ここまで、ペラペラと話してきたチャラ男が、
引き留めにかかる。
金髪エルフ「い、いえ‥、だ、大丈夫です。えっと、ご親切にありがとうございました。」
下心丸見えの説得に、
早くこの場から逃げようとするも、
当然、進路を塞がれてしまう。
金髪エルフ「あ、あの‥通して‥ひゃっ!?」
ダメ元でお願いするも、
一人のチャラ男が、スカートの上からお尻を触り出す。
金髪エルフ「や、やめてください!?」
一度は反射的に手を払うも、あっという間に両手を捕まれ、口をテープで塞がれてしまう。
金髪エルフは、必死で身をよじり抵抗を見せるも、既に手遅れな上に、多勢に無勢。
もはや、これまでかと思い。
金髪エルフが涙を浮かべて、
心の中で助けを求めた。
しかし、その願いも虚しく、
とうとう事務所らしき所へ連れ込まれてしまった。
だが、しかし‥。
事務所の中に入ると、
驚愕の光景が広がっていた。
チャラ男「な、なな、なんだ‥こ、これは!?」
チャラ男「ひ、ひっ!?こ、この短時間で‥な、何が‥うぅ、おおぇぇっ!!」
チャラ男たちの目の前に広がる事務所には、
壁や床、あちらこちらに血がベッタリとついており、死屍累々となっていた。
中には、首を落とされた者や胴体が真っ二つになった者など、無惨な死に方をした同類が転がっていた。
この騒ぎに、拐われの金髪エルフは、
現状を知ろうと、目を開き確認しようとする。
しかし、目を明けると目の前は真っ暗で、気づけば周囲の声や音まで聞こえなくなっていた。
何が起きているのかわからない状態でいると、
自然と力が抜け、深い眠りについた。
すると、奥の扉から二人の若者が姿を現した。
そう‥。
春桜学園微食会にして仕置人。
渡邉蒼喜と星野仁であった。
渡邉「おや?外回りの外道がようやく来たか‥。」
星野「一、二、三‥、五人か。合わせて十五人‥、これで五万だから‥。一人三千円弱か‥、チャラ男の外道には高いくらいだな。」
チャラ男「な、なんだと!?」
チャラ男「このガキが‥。」
星野の挑発染みた言葉に、
ホイホイ釣られる低脳な外道たち。
一人のチャラ男が、
定番の人質作戦に乗り出し、
眠っている金髪エルフにナイフを突き立てる。
チャラ男「へっ、かっこつけやがって‥、こっちには人質がっ‥‥。」
しかし、その瞬間。
ナイフを突き立てたチャラ男が、
突然、決まり文句を言い止めた。
近藤「‥そんなにナイフを突き立ててぇのなら、地獄の閻魔様や鬼にでも突き立てるんだな。」
突如背後から現れた、もう一人の仕置人。
近藤 尚弥が、
人質に取っているチャラ男の背中に、
短刀を根本まで差し込んでいた。
時代劇見たいに、
短刀を引き抜くとチャラ男はそのまま倒れ込み、
近藤は金髪エルフを奪還した。
突如現れた殺気を漏らす危険な男に、
四人のチャラ男たちは恐怖した。
しかも、出入り口を完全に塞がれた状況に、
身の危険を感じたチャラ男たちは、無様にも狭い事務所に散らばる。
チャラ男「ひ、ひぃ!?た、助けてくれ!?」
チャラ男「お、お前ら‥、こ、こんな事してただで済むと思っているのか!?」
渡邉「そのセリフ‥、お前たちが言うか?逆に聞くが‥、ここでお前たちを殺した場合と生かした場合‥どうなるのか聞かせてくれよ?」
近藤「それは俺も気になるな‥。お前たちのリーダーが全力を上げて潰しに来るのか?」
星野「例えそうだとしても、外道の皆さんへの始末は変わらないですよ?まして、虎の威を借りる連中は、特に八つ裂きにします。」
三人の仕置人は、
反吐が出そうなチャラ男の脅し文句に、
キレ始める。
三人の殺気に、その場しのぎの文句を言った、
チャラ男は発狂寸前まで追い詰められていく。
チャラ男「あ、あぁ‥。」
追いつめられたチャラ男は、三人の仲間たちに、助けを求めて視線を向けるも、そっぽを向かれ簡単に切り離される。
そんな様子に、
近藤が近寄ると、優しく声をかけた。
近藤「悲しいな‥。意図も簡単に仲間から見捨てられるとは‥、まさに滑稽だ。所詮貴様らは、利害の一致だけで集まった烏合の衆‥、都合が悪ければ平気で仲間を見捨て、売るだけの"クズ"なんだよ。」
しかし、優しいのは最初だけであった。
中盤からは、嘲笑うかの様に罵倒し冷徹な鬼の様に接し始めた。
チャラ男「あ、ぁぁ‥、うわっぁあぁ!がっ!!?」
ついには発狂するチャラ男に、
近藤は容赦なく開いた口に、短刀をねじ込み黙らせた。
近藤「ふっ、悪いな‥、貴様があまりにも"うるさい"物だから、間違って喉奥に刀をぶちこんじまったよ‥。いや~、咄嗟の事で‥、てめぇらが大好きでやっていた、柔らかくて硬い棒じゃなくて悪かったな。でも、血の味がして上手いだろ?」
人道を捨てた様なエグい殺し方に、
三人のチャラ男たちは、腰を抜かし許しを乞い始める。
しかし、
相手は人道から逸れた、外道にして"化け物"。
人道や情け、慈悲など、そんな優しい事は無粋である。
そんな"化け物"が、
己の都合で罰から逃げようとするなど、
言語道断である。
仕置人は、そんな化け物を始末するための、
闇の組織にして、虐げられた人々の無念を晴らす最後の砦である。
未だ完璧ではない、穴だらけの法に甘える外道がいるのなら‥、逆にその穴にお邪魔して、仕置するまでである。
渡邉、星野、近藤の三人は、
情け容赦なく外道と言う名の"化け物"を、
仕置きするのであった。
星野「よし‥恨み晴らしたっと‥。」
星野はスマホを取り出し、
仕置きの元締めに報告する。
渡邉「それにしても、予想通り"政府の世直し"で、叩き出された外道たちが、影で活発に動き出してるな。」
近藤「‥ふぅ、今まであんな連中に国や県、地方などを任せていたと思うと泣けてくる。」
渡邉「‥あぁ、でも、政治家全員が外道って訳じゃないけど、それでもこれで四件目だ。」
星野「うーん、そうだな。今年の五月から始まって‥三ヶ月弱‥。外道な政治家は多いな。」
血ノ海の事務所の中で、
三人の男たちは、腐り果てた政治家を哀れんだ。
その後、星野の便利な魔法により、
屍は骨を残さず焼き付くし、彼らの魂が天国などへ行けないように、僧侶系の魔法である"デスヘル"を唱え、事務所ごと異次元へ転移させたのだった。
それゆえ、
テレビで大々的に流れることはなく、
行方不明程度のレベルで取り上げられため、
バレることはない。
もし、仕損じたりバレたりすれば、
掟により、謹慎、剥奪などの処分が下され、場合によってはその者の命が処罰されることになる。