表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/431

第二百九十一話 片貝花火

突然発表された予想を越えるサプライズに、

信濃花火のプログラムを大体知っている桃馬、憲明、小頼の三人は驚愕した。


一方、

大体の流を掴めていない者たちはと言うと‥。


シャル「ほぅ~!それは‥すごいのか?」


ディノ「お、おそらく、三尺玉より大きい物かと思われますね。」


シャル「おぉ~!それは楽しみなのだ!それと、加茂よ?お主ずっと泣いておったが大丈夫なのか?」


加茂「ひっぐ、大丈夫ではありまぜんよ~。」


一から最後まで霊の感情を受けて泣いていた加茂は、目を真っ赤に充血させ、鼻声の状態で返事を返した。


シャル「うむぅ、かなり面倒な体質なのだな。」


ディノ「おそらく、神様の力が強すぎて霊たちが集まってるのかもしれませんね。えっと‥確かこういう時‥南無南無、」


加茂「ひっぐ、ディノお兄ちゃん‥ひっく、僕はひっく、神社の神様なのに‥ひっく、。」


シャル「ぬはは♪加茂は可愛いからな~♪霊たちが寄って来るのも納得なのだ♪」


加茂「ひっく、皮肉にも‥花火を‥ひっく、だのじめまぜん。」


再び霊たちの感情を受信してしまい、

泣き出してしまう加茂様。


これにはシャルも、

思わず同情するのであった。




更に一方では、正三尺玉より大きな花火が打ち上がると言う事で、不安になる者もいるわけで‥。


豆太「に、兄さん、この耳栓大丈夫なのでしょうか?‥ふぇ!?な、何してるのですか!?」


一抹の不安にかられる豆太は、

"耳栓の機能に影響はないのか"と、

ギールに訪ねようと振り向いた。


するとそこには、

犬神様をもふり倒している、

ギールとジェルドがいた。


犬神は、よだれを垂らすほど蕩けきっており、

ピクピクと体を跳ねさせている。


豆太「に、にに、兄さん!?」


ギール「ん?どうした豆太?」


豆太「あっ、えっと‥四尺玉が‥。」


豆太がギールと話しかけた瞬間。

聞き覚えのある大きなサイレンが鳴り響いた。


ギール「っ!?な、なんだ?また三尺玉をあげるのか?」


ジェルド「そうみたいだな。でも、これをつけてるから怖いものはないさ。それより、こいつを"もふり"ながら見ようではないか♪」


豆太の声も二人の声もサイレンでかき消され、

もう間に合わないと悟った豆太は、一抹の不安を抱えながらも見守ることにした。



サイレンが鳴り止むと、

正三尺玉が打ち上がるより大きな音が響いた。


緊張と期待、不安などの思いが入り乱れる中、

重たそうに打ち上がる正四尺玉が、夜空に正三尺玉を越える轟音と共に弾くと、広範囲に(かむろ)型の"千輪(せんり)"が花を咲かせた。


思わず耳を塞ぎそうになる程の迫力に、

"けもみみ"たちは、尻尾を直立させた。



会場では、大歓声と拍手が起きる中、

立て続けに、正五尺玉が打ち上がる。


四尺玉より更に大きな打ち上げ音に、

会場からは、上がれ!上がれ!と木霊し、

見るからにも危険そうな花火が天高く打ち上げられた。



夜空に巨大な花が咲くと、

全身に伝わる衝撃と勇ましい轟音と共に、

"(かむろ)"が花を咲かせ、そのまわりには大量の"千輪"が咲いた。



会場からは今日一番の大歓声が響き渡り、

拍手喝采が起きた。



シャル「すこいのだ!すこいのだ!」


ディノ「こ、これは見事です!」


加茂「はわわ!?な、なな、なんですかこれは!?」


これにはシャルも、

大興奮で喜んでいた。


加茂も迫力ある花火に、

霊たちから解放されたのか、

驚愕していた。


桃馬「うわぅ~、すっげぇ~、威力だな。」


憲明「三尺でも、体に響くってのに‥五尺になると、身がすくんでしまうな。」


小頼「だ、だね~。確かにすごいけど‥、私は四尺までで良いかな~。」


現実世界出身の三人は、

初めて見る正五尺玉に驚くも、

凄すぎる故に、評価はあまり高くなかった。


ましてやこれで、

魔法とかで抑えられているとすれば、

海まで持っていかないと、安全に見れないだろう。


心臓に難ある人や耳の良い種族たちには、

おすすめできないものだ。




そう、目の前の"けもみみ"たちみたいに。


ギールとジェルドは、

犬神の耳と尻尾を強く握りしめながら、

まるで双子の様に耳と尻尾を直立させ、

放心状態となり。


その頃犬神は、

敏感な箇所を急に強く握られ、

気絶。


更に更に、

ビックリした豆太は、

死んだふりをしている。


しかし、

エルゼとシールは、尻尾と耳を立てるものの、

気絶はしていなかった。

その代わりに、姉妹の様に抱き合っていた。



まわりの獣人たちも同様に、"チラチラ"と気絶したり、落ち着きが無くなっていた。


恐らく今後、

信濃花火に正五尺玉の打ち上げは、

当分ないだろう。


そもそも、

昨日打ち上げても中止にしない辺りがすごい。


打ち上げたとしても、

更なる研究と研鑽を積むことが、

今後の課題となるだろう。



桃馬「おーい、"けもみみ"たちよ?大丈夫か?」



可愛い"けもみみ"たちが、

正五尺玉に圧倒される中、

桃馬たちは、信濃花火の最後名物が始まる前に、何とか、起こそうとするのだった。


が‥。


アナウンス「見事な正五尺玉いかかでしたでしょうか?昨夜の世界初の打ち上げ成功に続いて、今宵も見事に咲かせました。そして本日は、もう一つサプライズがあります。」


まさかの、

サプライズが、まだあると言う知らせに、

会場からは拍手と歓声が木霊する。


すると、

アナウンスから聞き覚えのある声が響き渡った。



?「やぁやぁ、信濃花火をご覧の皆様、今年最後の信濃花火はいかがでしたでしょうか?最後に相応しい見事な正四尺玉と正五尺玉でしたが、ここで終わらせては、味気無いと思いませんか?」


謎の男勝りな女性の声に、

会場中が、大賛同する。



そんな中でも、

桃馬と憲明は声の主について考えていた。


桃馬「うーん。この声‥どっかで聞いたことあるな?」


憲明「確かに‥。でも、どこでだろう?」


小頼「‥もしかして、想花ちゃんかな?」


桃馬&憲明「そうだ!五組の片貝想花だ!」


小頼の答えから、桃馬と憲明は声をあげた。


代々花火職人の家系で、春桜学園では花火部の副部長にして次期部長である。


銀髪高身長で健康的な褐色肌を持ち、

胸の谷間を大胆に開き、羞恥心を感じさせない姉御肌を見せつけていた。


しかし、ここは公共の場、

桃馬たちもしっかりとした服装をしていると思っていた‥。


実際の服装はと言うと‥。


上半身は、

さらしで胸の辺りを巻き、

法被(はっぴ)を羽織るだけで前はオープン。

そして、(はかま)姿と言うハレンチな姉御ファッションとなっていた。



この時の片貝想花は、

昨日と今日で、信濃花火の作業員として活動していたのだ。もちろん、花火部の見学と体験込みである。



そんな想花が、何をするのかと注目する中、

驚きの発表がされる。



想花「それでは、正四尺玉と正五尺玉に花を持たせるための、最高の花火をご覧にいれましょう!春桜学園、花火部副部長兼、片貝大花火財団、片貝(かたかい)正衛門(しょうえもん)想花(そうか)の名の元に、尺玉五十連、三尺玉五発一斉打ち上げを行います!」


前代未聞過ぎる今年の信濃花火に、

会場中から再び歓声が響いた。


想花は"いつもの"アナウンスの人に代わると、直ぐに打ち上げ開始の合図を流すのだった。


五ヵ所打ち上げ場から、

五発の一尺玉が一斉に打ち上げられた。


のっけから迫力ある光景に、

再び、夜空が明るく照らされた。


そして、一尺玉五十連発が終わると、

直ぐに、五発の正三尺玉が打ち上げられた。


"(かむろ)"、"千輪(せんり)"、"冠"、"千輪"、"冠"


の並びで打ち上げられ、

最後に相応しい締めで終わった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ