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第二百八十話 夏休みの宿題は序盤で終わらせるが吉

夏休みの宿題。


それは、

夏休みと言う楽園行きの切符に付いてくる、

学生たちから忌み嫌われる副産物である。


その膨大な量は、

多くの学生たちを苦しめ、


計画的にやる者。

序盤で終わらせて楽をする者、

現実逃避から後回しにして苦労する者に分けられる。


小学生たちは、夢のような一時(ひととき)に、

毎日遊び呆けては、朝から母親に叱られ、

渋々集中できない宿題をやっていただろう。


中学生たちは、問答無用と言わんばかりの宿題に加え、部活と言う半日あるいは、丸一日と言う更なる副産物があったことだろう。


高校生もまたしかりである。


学生なら避けては通れない鬼門であり、

現実逃避をしたい者たちの気持ちは分かるが、


あの夏休みの終末を告げる、

二十四時間テレビの"ザライのララバイ"(※サライ)が流れた頃には、多くの者たちが現実を受け入れ始め、楽しい夢から覚めたのではないだろうか。



気づいた頃には遅く、

家庭内では怒号と子供たちの阿鼻叫喚で響き渡っていたであろう。



すなわち夏休みとは、

ある意味学生たちの戦場である。




そしてここ、

春桜学園の異種交流会部室では、

そんな地獄を回避するために、三人の男たちが黙々と手をつけていた。


そんな時、

一つ疑問に思ったジェルドが桃馬に語りかけた。


ジェルド「そう言えば桃馬?桜華は宿題は終わってるのか?」


桃馬「ん?あぁ、桜華なら昨日にも終わらせてたな。」


ギール「えっ?一緒にやってるのに、どうしてそこまで差がつくんだ?まあ、英語の書き取りは個人差はあるけどさ。」


桃馬「あ、あはは‥、ほら、今もテレビでやってるけど、国会の一件で大騒ぎだろ?気になって集中できなかったんだよ。」


ギール「っ。そ、そうだったのか。」


ジェルド「‥確かに、納涼祭の一件から、この国はすごいことになってるもんな。」


桃馬「そうそう、ここ最近は親父と義叔父さんが心配で仕方ないよ。」


裏世界の政治家やそれに準ずる人間に宣戦布告とも言える今回の行いに、桃馬は身内の安否を心配していたのだ。


ジェルド「わふぅ。そうなると、桃馬の身にも危険が出るかもな。」


ギール「っ!そ、それは大変だ!?よ、よし桃馬!今日から俺を番犬として雇ってくれ!」


桃馬「えっ、ちょっ!?」


突然の身を乗り出しての申し出に、桃馬は思わず取り乱すと、そこへジェルドまで対抗し始める。


ジェルド「てめぇギール!抜け駆けは卑怯だぞ!番犬なら俺がやる!」


ギール「ふっ、お前は愛する妹でも守ってな!このシスコンが!」


ジェルド「な、なんだと~!?ど、どうせお前なんか、夜な夜な桃馬の隣で寝たいだけだろ!この淫犬が!」


ギール「い、淫犬だと‥、。」


ジェルド「なんだよ‥やるか?」



桃馬を挟んで、

毛を逆立て始める二匹は、

今にも喧嘩しそうな勢いである。


すると、

みかねた桃馬は二匹の尻尾を握り締める。


桃馬「はいはい、喧嘩するな駄犬共。」


ギール「きゃふっ!?」


ジェルド「わふっ!?」


二匹の足が崩れ落ちると、

大人しく机に突っ伏した。


桃馬「裏の件なら心配するな。警察機構があちらこちらと目を光らせてるから大丈夫だよ。それに、もし命を狙ってるならここに来る途中に襲われているよ。」


ギール「わふぅ‥、だけどよ‥。」


ジェルド「様子を見てるって可能性もあるだろ?」


桃馬「うーん、まあ来れば返り討ちできる時代だし、そこまで考えてなかったな。」


ギール「な、なら余計側に誰かつけないと‥。」


ジェルド「うんうん!今なら優秀な番犬が三食だけで雇えるんだよ!大変お買い得だよ!」


ギール「てめぇ‥どさくさに紛れて、売り込むなよ。」


桃馬「‥うーん、そうだな。」


二匹の勧めに桃馬は改めて考えさせられた。


明日明後日は信濃川大花火大会が始まり、

見に行く日は明後日の三日、その翌日には、異種交流会のみんなで従兄弟の直人と共に草津‥。


結局一緒にいるなら、

番犬として側に置いても良いと考えた。


まあ、変なことすればすぐに追い出せば良いことなので、そこは良しとしておこう。


問題は、エルゼとシャルである。


ジェルドが番犬になれば、

エルゼは一人になってしまう点。


ギールの場合は、

シャルが許すかどうかである。



とまあ、エルゼも来ると言うことは想定内に入れるとして、シャルがどう出てくるのか全く想像がつかない。


桃馬「わ、わかった。でも、ジェルドはエルゼとしっかり相談しろよ?正直一人にさせるのは心が痛いからな。あと、ギールだが‥、シャルとよく話してから来るように。」


一応、最低限の注意を促すが、

桃馬からOKが出た時点で、二匹は満面な笑みを浮かべながら尻尾を振っていた。


その姿は、狼ではなく。ただの"犬"であった。



良い気晴らし程度の会話を終えると、

再び桃馬は英語の書き取りを始めた。



しかし、駄犬の二匹は、

ずっと桃馬を凝視して何かを狙っていた。


桃馬「‥‥。」


ギール&ジェルド「ジーーー。」


二分後。


桃馬「‥‥‥。」


ギール&ジェルド「ジーーー。」


五分後。


桃馬「‥ふ~ん‥。はぁ、さっきなんだよ?」


ギール「っ、あ、す、すまん、つ、ついな。」


ジェルド「そ、そうそう♪さっきの嬉しさで、つい固まってただけだよ♪」


怪しさしか感じられない二匹に、

桃馬は疑いの眼差しを向ける。


よく考えれば、今の空間は二匹にとって絶好のチャンスである。お互いが心を一つにできれば、俺への攻略など容易(たやす)いだろう。



桃馬「‥で、本音は?」


ギール「桃馬に抱きついて甘えたい♪」


ジェルド「桃馬を犯したい♪」


桃馬「ギール、その白い駄犬を犯せ。」


ギール「わふっ♪おまかせ‥っ!?今なんて言った!?」


まんまと引っ掛かった黒い駄犬に、

桃馬は心の中で大笑いしていた。


桃馬「ふっ、聞こえた通りだよ。」


ギール「ふ、ふざけるなよ!?誰がこんな薄汚い淫獣とやるかよ!」


ジェルド「‥へぇ~、奇遇だな。俺も同じ意見だよ。お前みたいな淫犬に犯されたら‥、ショック死してしまうよ。」


ギール「‥グルル。やっぱり気に入らねぇな。桃馬の番犬はやっぱり俺一人で充分だ!」


とうとう、ギールがジェルドへ飛びかかると、

とうとう喧嘩が始まってしまった。


二匹は狼の姿になり、

"わんわん"とあちらこちらへ、走り回り回っていた。


ここまで来たらどうしようもない桃馬は、

ため息をつきながら、戸棚にあるビーフジャーキーを手にして、二人の席に一枚ずつ置いた。



すると、二匹は喧嘩をすぐに中断して席に戻ると、けもみみショタへと姿を変え、ビーフジャーキーを黙々と食べ始めたそうな。



その後、

三人の宿題は午後の十三時に終結し、

桃馬が直ぐに帰ろうとする。


しかし当然、

この二匹の駄犬が、このまま何もせずに桃馬を帰すわけもなく、桃馬が部室の扉に手をかけた瞬間、二匹な後方から襲うのだった。






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