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第二百七十九話 面倒なもの程優先に

時は八月一日のこと。


春桜の変と言われた納涼祭から数日が経ち、

あの日の熱い光景が、まるで夢であったかの様に、学園内は休日並みの静けさに続いて、地獄の様な猛暑が覆っていた。


そしてここ、異種交流会部室では。

七月中まで宿題を終わらせられなかった、

桃馬、ギール、ジェルドが勉強会のために集まっていた。


桃馬「よく集まってくれた。宿題を終わらせられなかった悲しき子犬たちよ。飼い主として歓迎するぞ。ちなみに俺は、英語の書き取り四セットだけだ。」


ジェルド「俺はこの夏休みの間は、自由研究に励もうかと思って取り組んでるけど。それもあって、宿題は半分しか終わっていないな。」


ギール「うぐっ‥お、俺もシャルに邪魔されて半分しか終わってない。」


お互いの話を聞く限りでは、

進捗ゼロと言う訳ではなさそうだ。


任意の自由研究はやらないで、

英語の書き取りだけの桃馬はさておき。


夏休みの間、任意である自由研究を始めたジェルドだが、きっとろくでもない研究に違いない。


夏休みの間と言うくらいだから、恐らく日記見たいなやつであろう。

見かけによらず、アサガオの観察でもしてるのだろうか。



ギールに至っては、シャルの妨害がありながらも、よく半分も終わらせたと称賛するところがある。どうやら自由研究はしてないようだが、ここで進めておかないと恐らく終わらないであろう。




桃馬「うーん、色々ツッコミがあるが、とくにギールは、よくそんな環境で半分も終わらせたな?」


ギール「‥はぁ、お陰で寝不足だよ。」


確かにギールの目元はダル重そうにしており、"黒いくま"まで現れていた。



ジェルド「ふっ、兄弟が多いと大変だな?」


ギール「うぐっ‥、他人事みたいに言いやがって‥一日でもお前のところへ送りつけてやりたいくらいだよ。」


ジェルド「ふっ、妹なら間に合ってるよ。」


(あお)るジェルドに対して、いつもみたいに噛みつく気力のないギールは、無気力な本音をぶちまける。


その"らしくない"声は、

あの納涼祭以降、どの様に過ごしていたのか、

不思議とイメージができた。


差し詰め、

シャルが先に、その日の宿題を終わらせては、ギールにちょっかいをかけ宿題を遅延させていた展開であろう。


しかし実際は、

イメージ通りであった。


シャル「ぬはは!今日の分は終わったのだ♪ほれほれ~♪ギールはまだ終わらぬのか??」


翌日

シャル「今日も先に終わったのだ~♪およよ~♪そんな問題もわからぬのか?ギールの誠意次第では教えてやっても良いのだ~♪」



翌々日

シャル「シールと豆太の尻尾は"もふもふ"なのだ~♪ついでにギールもしてやるのだ~♪」

ギュッ!to be continued


翌々々日

シャル「面倒だから、今日で全部終わらせるのだ!」


翌々々々日

テレビ視聴中。

シャル「むぅ~、自由研究とな‥。ジーー、そうなのだ!おい、獣諸君!ちょっと毛をよこすのだ!」


以下略、こんな感じである。


そしてシャルは"獣の毛"

通称"キューティクル"について興味を持ち出し、今日もフォルト家で、ディノと豆太と共に実験中である。


ちなみに、犬神は、

未だシャルからココロの一件を許されておらず、

恥ずかしい写真を撮られては、ギールとジェルドの隠し撮り写真も添えてココロに送られた。

しかし、それでもシャルの気は収まらなかった。


この際、実験台として協力すれば許すと言う話に犬神はホイホイと乗り、色々と凌辱(りょうじょく)を受けては、毛の一本を抜かれると言う。生え変わりをした犬として、非常に嫌な行為を強いられていた。



桃馬「ふぅ、まあ、夏の大戦乱祭で勝ち取った分、宿題の量は冬休み程で済んでるけど、それでも多いよな。特に英語の四十項目書かれているプリント単語と二十番目から異様に長い会話文‥、これを八セットだもんな。」


ジェルド「はぁ‥、それが一番面倒だよな。俺は最初に終わらせたけど、翌日の腱鞘炎(けんしょうえん)は酷かったな。」


ギール「俺も同じく‥。というより、考えなしで書けるから、それしかできなかった。」


桃馬「面倒なものから終わらせる派と、環境状それしかできなかった派に分かれたな。てか英語が終わってるなら、ギールの宿題って半分は終わってるようなものじゃないか?」


ギール「そ、そうなのか?」


ジェルド「確かに、あとはプリント数枚で終わるだろ?」


ギール「えっ?漢字と異世界学は‥?」


桃馬「それは負けた奴等の宿題だよ。」


ギール「‥な、なんだと!?」


自分が余計にやっていたと言う指摘に、

ギールは驚きながらも席を立った。


桃馬「えっと、またシャルに騙されたか?」


ジェルド「あはは、もしそうなら最悪だな。」


ギール「‥い、いや‥、シャルじゃなくて‥ディノにだ。」


まさかの真面目なディノからの情報に、

桃馬とジェルドは耳を疑った。


桃馬「でぃ、ディノからだと!?」


ジェルド「‥じ、じゃあ‥まさか‥そ、そそ、そんな嘘言うな!?」


ギール「ほ、本当だ。家で見たんだよ‥。ディノが漢字の書き取りと、異世界学の書き取りしてるところを!」


この証言に、

桃馬とジェルドの脳内に大混乱が起きた。


もし、これが事実なら大事件である。


桃馬は、

宿題の項目をカバンから取り出した。


確か、俺たちに出された宿題は、地獄の英語の書き取りと各種プリントだけのはずだ。


頭に記憶している事と、

項目が一致していることを願いながら確認すると、記憶通りそんな余計な物は入っていなかった。


桃馬「あぶねぇ~!?心臓止まるかと思った。」


ジェルド「わふぅ~。おい、ギール‥心臓に悪いぞ。」


二人は、ギールの情報が誤報と分かるや、

椅子にもたれ掛かった。



ギール「‥じ、じゃあ‥ディノはどうしてやってたんだ。」


桃馬「ふぅ。まあ、ディノは真面目だからな。きっと、小さな事でも知恵を入れようとしたんだろうよ。」


ジェルド「確かに‥ディノならあり得るな。」


ギール「じゃあ‥あと、これだけなんだな。」


桃馬「そう言うことだ。いや~、心臓に悪い。ん?ちょっと、待て。そうなると‥俺が一番遅れてるのか?」


安心感に浸るのも束の間、

一番遅れているのが自分だと悟る桃馬は、

ここから、残りの英語書き取り四セットコースに入るのであった。


一セット、英単語と翻訳込みのため。

一セット終わるのに、約三十分は要する。

これを四セットなので、最低でも二時間以上はかかると予想される。


桃馬は、早速ノートを開き

黙々と書き取りを行うのであった。


宿題は面倒な物から始めるのが吉。

まして、夏休み前から出されているのであれば大チャンスである。


しかし、夏休み明けに宿題の小テストが出される可能性が大なため、特に小中学生は要注意である。






ちなみに、作者は中学の頃の印象が強すぎて、

高校の頃、夏休みに宿題があったのか、

全く覚えていません。


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