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第二百七十八話 日本国家大革命

春桜学園で起きた"春桜の変"から、


一週間と三日後の事。


学園の学生たちは、

待ちに待った夏休みを満喫し、

宿題と言う戦い(?)、部活動、娯楽などを楽しんでいた。



その頃、日本を担う大人たちは、

政治の中心である東京都国会議事堂にて、

政治家及び、政治家と名乗る案山子(かかし)、あるいは、保身に走り避難しかしない餓鬼(がき)たちが激論を飛ばしていた。



事の発端は、(春桜の変から三日後のこと。)


今回の春桜の変の件で、政府内の蔓延る汚職の尻尾を掴んだ事によるものであった。

これには憤りを通り越して激昂する内閣総理大臣"中田栄角"は、内閣総辞職する覚悟で、身内の政党及び政府内に蔓延(はびこ)る悪政を働く政治家たちへの世直しを図ろうとしていた。



証拠の資料については、

国家公安部を筆頭に全警察機構の調査により、

マスコミへの厳しい規制のもと、洗いざらい調べあげられた。


主に吊し上げられた件は、


退魔協会会長にして、

今回の春桜の元凶の一人、

木枯主善(こがらししゅぜん)の死亡。


証言等はその孫に当たる、木枯沙茉(こがらしさま)及び逮捕した退魔士、妖魔などから供述。


民間企業からの収賄(しゅうわい)など。


ネズミ講の如く摘発され、

政府直属の六割を越える政治家の汚職事件が発覚。


この結果を見た中田栄角は、

現日本政府の長きに渡って腐らされた政治体勢に呆れ返った。

内閣総理大臣任命から始めた汚職への糾弾は、上澄(うわず)みに過ぎなかったと重い知らされた。


これにより、

中田栄角は、信頼できる与党議員を集め、

国家の世直しに全力を注いだ。


そして、春桜の変から短期間で、

臨時国会と称した"世直し国会"へとたどり着いた。


各議員などには敢えて告げず、せめて物の情けで説明責任を果たさせてから、政治家としての称号剥奪及び、逮捕に踏み切ることを予定していた。





そして今、国家の基盤である衆議院議員らに、

春桜の変より、退魔協会側と関わった政治家及び、数々の汚職に手を染めた政治家たちを(しる)した資料が配られた。


すると突然の資料に与党議員はもちろん、

野党議員らも騒然となった。



すると、国会内は相も変わらず、野党の棚にあげ批判が木霊し、今に至っている。



際山「総理!総理!我々の党の中で汚職に手を染めた者は確かです。しかし、与党である総理が任命した、財務大臣、総務大臣、経済各担当者などから、これ程多くの政治家が汚職に手を染めています。野党をどうこう言う前に、国のリーダーとして、この件についてどうお考えですか?どうぞ。」


野党筆頭である際山(きわやま)の言うことは、

確かに一理ある。


しかし解せぬのは、自分たちの責任を棚にあげて話していることが気に入らない点である。



だが、現実からは逃げられない。

ここで逃げれば、歴代の数多くの愚かなリーダーと同じである。


白髪混じりの中田総理は、

強気の姿勢で答える。


中田「確かに、私が任命した大臣や与党の中に、汚職に手を出した者がいた事は認めます。大変遺憾で下劣な行為であり、許されざる行為であると思っています。」


際山「え~、歴代の総理が言いそうな事ですね。ならば、内閣の総辞職をする覚悟はお有りなのですか?」


確かに今言ったことは、歴代の弱腰総理たちが言いそうな決まり文句である。


しかし中田は、あくまでも建前(たてまえ)で発言していたため、ここから本音と言う、大きな一手を仕掛けようとする。


中田「もちろんです。そのために開いた臨時国会、いや‥世直し国会ですからね。ちなみに、ここにいる議員の皆さんは、今回汚職に関係した者たちがメディアに説明責任を果たすと約束するまで閉会しませんので、そのつもりでお願いしたい。」


中田の思いきった宣言に、

国会は大騒ぎとなり、政治家(かかし)や汚職に手を染めた者たちが強く非難の声が飛び交った。



これに中田は机を叩き一喝する。


中田「黙れ!この穀潰(ごくつぶ)し者共がっ!」


マイク越しからの一喝に、

味方の議員まで耳を塞ぐ程の咆哮(ほうこう)を飛ばす。


中田「こほん、失礼。甘い蜜を(すす)ってきた者たちには、苦い蜜を吸わせることになるが、この際はっきり言わせてもらおう。この国会は根本的に腐っておる。それは一般国民でも知るところだ。」


与党議員「総理!そんな話聞いていませんぞ!?」


野党議員「何を失礼な!国会を腐らせたのはあなたの指揮が悪いからではないですか?」


野党議員「その通り!現に五月の初頭(しょとう)に起きた草津事件では、前衆議院議員、小藤満助(ことうみつすけ)氏を筆頭に横暴なテロが起きたではないですか!」



中田「確かに、草津事件の一件では小藤受刑者らを警戒していたとは言え、結果的にテロ行為を許してしまった事は大変不覚でありました。しかしながら、この一件に野党筆頭である国家民主党の参議院議員、南雲家康(なぐもいえやす)受刑者も関わっていた事も事実です。ところで、際山(きわやま)議員からの説明が調査を理由に先延ばしにされてましたが‥。」


際山「総理!それとこれは、今は関係ないですよ。」


中田「関係なくはない!それより、人が話している時に口を出すとは、昔先生に"人の話を最後まで聞く"と教わらなかったのですか?」


際山「うっ、ぐっ‥。」


再び熱の籠った咆哮に、

国会内は静まり返った。


中田「はぁ、まあ良い。そもそも今回の件は、未来ある学生までもが捲き込まれた重大な事です。ゆえに私は、この件に関わった者だけは、決して許すことはできない。例え自分は関係のない汚職であっても、今ここで腐りきった議員‥いや、国賊を潰すことができるのは今しかないのです。」


喉にダメージが入るくらいの感情込めた演説に、中田総理は演説台にあった水を注ぎ一気に飲み干した。


中田「はぁはぁ、ゆえにだ。私の今ある大義は‥この腐った国会の基盤をぶち壊し、新な時代を迎え入れる事‥。そして、二度と国内でこのようなテロ染みた事が起きないため‥。お飾り()みた内閣を破壊し‥国会の基盤を根本から完全に破壊する。そう‥この中田栄角の首を賭けて、本来"国民の臣下"であるはずの政治家を正すため‥、ここにいる悪役人たちよ、私と共に地獄へ落ちようではないか!」


中田側の議員たちは涙し、

拍手をしながら称賛した。

中には、お供するまで言う者まで現れた。


そんな中でも、野党からの追求は続いた。


際山「自分の立場を棚にあげて、正義ぶるのはやめてもらいたい。それに総辞職は当然の事です、胸を張るのはお門違いですよ。」


耳障りなブーメラン発言に、

とうとう、一人の男が短刀抜き、

批判する際山の席に短刀を突き刺した。


際山「ひっ!?な、なんだっ!?」


中田「はぁ‥あれほど大人しくしろと言ったのに‥。まあ、総辞職する訳だし構わぬか。」


ビビる際山(きわやま)議員の後ろから、

佐渡景勝が話しかける。



景勝「さっきから耳障りな事を言うじゃないか‥。」


際山「さ、佐渡!?き、貴様!神聖な国会で短刀を抜くとは何事だ!」



景勝「これは失礼。だが、汚職に手を出したあんたが言える立場なのか?」


際山「な、なんだと‥、無礼なことを言うな!私は何も関与はしていな‥。」


悪役人に聞く耳なし、

景勝は懐から、一枚の資料を叩き出した。


際山「な、なんだこれは‥?」


景勝「あんたの汚職だよ。見覚えあるだろ?参議員の代田(しろだ)議員と結託して、現役引退している瀬田際(せたぎわ)に高額な賄賂を送っただろ?」


際山「し、知らない。そんなの作り物だろ?」


景勝「白を切る気か‥、代田議員と瀬田際は吐いてるぞ?」


際山「さぁ、私を陥れようとしてるだけでは?」


証拠を出しても認めないグズ役人に、

景勝は最後の一手を打つ。


景勝「そうか、残念だよ。‥お前が瀬田際に渡した高額な血税‥、どう使われたか知ってるか?」


際山「さあ?知らないことは知りませんので。」


景勝「‥退魔協会の裏金だよ。」



景勝の告発に、まわりがざわつき始める。


自分は関係ないと言いながらも、

実際は物凄く関係したと言う、駄目政治家としてのボロが出始めた。


自分を棚にあげ、

バレれば知らぬ存ぜぬを通すゴミの象徴である。


際山「言いがかりだな。」


景勝「いいえ、事実です。現に先程家宅捜索もさせてもらいました。」


際山「っ!景勝!」


遂に本性を現したのか、

際山議員は景勝の胸ぐらを掴みにかかるが、

直ぐに、まわりの議員に引き剥がされる。


景勝「ふぅ、総理も言ってただろ?国会の基盤をぶち壊すって、この意味は‥国会議員にも適応するんだよ。」


際山「ぐっ、総理!あなたがやろうとしていることは国の破滅ですぞ!国会‥いや政治はそんな甘い考えでは回らないことくらい、総理も知っているでしょう!」



中田「それは国家の基盤が腐りかけているからだ。腐敗した環境しか知らない際山議員及び、平気で汚職に手を出した者に、この考えはわかるまい。新しい国家が出来たとき、甘い汁など(すす)れないと思え。まあ、それを決めるのは国民だがな。」


際山「‥うぐっ。」


中田「さて‥、本来こんな話し合いは無駄であるが、さっさと、メディアを招き大会見を開く、汚職に手を出した者は、しっかり説明責任を果たしてもらう。包み隠さず、国民に話すように。」




衆議院の世直し国家が終わると、

国会内では多くのメディアが押し掛け、


内閣総辞職及び、衆議院の解散。

数々の政治による汚職の公開、


また、

後に開く参議院世直し国会開催の予告。

参議院総解散までも公表された。




そして、

大注目の大記者会見では、

メディアと警察機構が集まる中、

次々に甘い汁に甘えた政治家たちが汚職を認め、職権乱用などの罪でそのまま逮捕されていった。


中には、

知らぬ存ぜぬ、記憶にないとか、ここに来て白を切る者、クーデターと称して吠えまくる者が現れるが、証拠の資料を提示され有無を言わさず逮捕された。



そして、

三日後、参議院世直し国会も開かれ、

衆議院世直し国会と同様に、政治家たちの逮捕が行われた。


半数近くの国会議員を排除した中田内閣は、

衆参総辞職をする前に、新たなる憲法大改正を行い新な国家の再築を図るのであった。



当然、連日に渡る衝撃的な報道に、

日本国民は大いにショックを受けた。


一人や二人ならまだしも、

今回は半数近くの政治家が、私利私欲のために働いていた事が明かになり、汚職政治家への怒りが増した。


一方で、

この大胆にも勇敢とも言える中田総理の行動は、腐った政治家に牙を削がれ"家畜"とされた日本民の本来あるべき"力"を呼び覚ました。



この一件で世論の賛否はあったが、

その大多数が称賛の声であった。



総辞職と政治家としての信頼を失う覚悟で行った世直し国会は、世論から良い意味で反発はあったが、中田総理は、参議院世直し国会の翌日の会見にて"もし、次なる日本の夜明けとなる選挙で、忖度なしで私に託してもらえるなら、今の強気の精神で政務に取り組む次第です"と言い、国民の真意を問うたのだった。


こうして、

空前絶後国会議員の大清掃は幕を下ろした。




ちなみに、

八月のニュース番組では、

この件の話ばかりで、各都道府県の県議、市町村の議員までも白羽の矢が立ち、芋づる式に大小合わせて、七百人以上の逮捕者が出たそうだ。



後の裁判で、

春桜の変に出た退魔士の死刑が確定。

もちろん、木枯沙茉も同様である。


また、妖魔についても魔界へ送られ同様の裁きを受けた。



更に春桜の変に関わった者については、

ABCの区画に分けられた。


犯罪者達A犯は、

国家転覆罪、テロ・無差別殺人として死刑。


犯罪者達B犯は、

間接的共有犯として無期懲役


犯罪者達C犯は、

賄賂、選挙法違反等として禁固二十年


一方それ以外の汚職について、


犯罪者達D犯が加えられ、

血税、職権乱用等。 懲役五年から十年。


この異例の裁きに、

日本国の法が"悪"に対してかなり厳しくなっていることが広く伝わると、これが抑止力となり、犯罪件数が減ったと言う。



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