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第二百七十六話 お使いついでに取り調べ

異端審問会の裁判にて、

桃馬と浦雅の意見が一理あると判断され、

晴れて記憶を消すだけで済んだギール。


多くの人から見れば、はなから異端審問会を開く意味はないと思うだろう。


しかし、これも飼い主の思いなのだろうか。


桃馬は放送室へ向かう道中で、ギールが他の者たちから迫害され痛め付けられる惨めな姿を想像するといても立ってもいられなかった。



そんな時、桃馬の様子に違和感を感じた憲明が声をかけると、桃馬は胸の内を明かした。


結果二人の結論として、

異端審問会にギールを出さなくても、お喋りなシャルと小頼が現場に居た以上、この事が漏れる可能性は十分にある。


更にバレた(あかつき)には隠していた事も(かさ)なり、

"ユキツバキ"のガチ勢が暴徒化し、世界中に発信される可能性だってある。



それならば、

話が通じる内に異端審問会を開いて、桃馬が命を懸けて、事故であったことを話して穏便に終わらせるしかなかった。


これが前回までの全容である。



そして、その一方‥。


放送室から購買部へ走った憲明はと言うと。


残りわずかとなっていた、

食料を買い占め控え室へと戻ろうとしていた。


憲明「ふぅ‥、何と人数分は買えたかな‥。うぅ、部費で落ちるのかな‥これ。」


今ある全財産を注ぎ込み、

空の財布を覗きながら心配していると、

そこへ、真似かねざる女子が現れる。


映果「の~り~あ~き~くん♪」


憲明「うわっ!?な、なんだ映果か‥、なんだよ何か用か?」


映果「えへへ~♪実はね~♪ちょっと前にジェルドが、ギールにリードを着けて散歩しているって話を聞いてね~♪撮影しようかな~って思ってたんだけど~♪全然見当たらなくて困ってるんだよ~♪何か知らないかな??」


まだ、異端審問会の判決が分からない時に、

一番注意しなければいけない女子に目をつけられてしまった。


しかも、この上機嫌‥。

嫌な予感しか感じない。


まあ、よく考えれば(おおやけ)の場で、

あんなプレイをしてたら、感づくのは当然と言えば当然である。


取りあえず、

知らない振りをして逃げるのが吉である。


憲明「し、知らないなけど‥。ま、まあ、どうせいつものことだろ?それより、俺はお使いを頼まれてる身でね。すまんがこれで失礼するよ。」


映果から変な質問をされる前に、

一刻も早く逃げようとする憲明に、

映果は、全てを見透かしたかの様に尋ねる。


映果「クスッ、そう邪険にしないでよ~♪それより、あの場に憲明も居たよね?桃馬も入れて五人仲良く‥。」


憲明「っ!?」



完全にネタを嗅ぎ付けている映果の話し方に、

憲明は思わず歩みを止める。


映果「おやおや~?急に足を止めてどうしたのかな~♪憲明~♪」


どこまで知っているかは謎であるが、

憲明が足を止めたことにより、ネタありだと感じた映果は、笑みを浮かべながら憲明の前に回り込んだ。


このまま黙秘すれば、

下手に何かあると悟られてしまう。


憲明は異端審問について、

触れないように対応する。


憲明「た、確かに俺はさっきまで桃馬たちと居たけど、ギールとジェルドの散歩が長引きそうだったから、購買部の食い物がなくなる前に買いに来ただけだよ。」



映果「ふ~ん、(しら)を切るんだ~♪さっき桃馬が、あんなに大胆な放送を流してたのにね‥。」


憲明「放送‥あっ。」


映果の追求に思わず声を漏らした。


二学年異端審問会の暗号放送。


赤発令とは、

今の二学年で言う、異端審問を指している。


そう言えばあの時、要注意人物を身内の異種交流会ばかりに絞っていたため、映果の存在を完全に忘れていた。


そりゃ映果も活発に動く訳だ‥。


憲明はため息をつくと、

手応えありと感じた映果は、

そのまま畳み掛ける。



映果「ねぇねぇ~♪もしかして~、ギールがユキツバキの誰かに変なことをしたのかな~♪例えば~、ココロちゃんを押し倒して腰を振ったりとか~?」


憲明「んな分けないだろ?大体ギールに、そんなリスクを犯してまでやる度胸はないよ。」


映果「う~ん、じゃあ、どうして、"控え室"であんな"放置プレイ"をしてたのかな?」


憲明「そりゃ、誤ってのぞ‥ん?今なんて?」


映果「あっ‥うぅん♪何でもないよ♪じゃあ、私はこれで~♪」


調子に乗ったのだろうか、

映果の口から、本来あの場に居た者にしか分からない情報が漏れる。


憲明は聞き間違いかと思い聞き返すも、

映果は店じまいでもするかの様に話を切り上げ、その場から去ろうとする。


しかし、

映果の行動に不審を感じた憲明は、

直ぐに映果の肩を掴み話しの続きをする。


憲明「おいまて、なぜ急に話を終わらせて逃げる?」


映果「あ、あはは~♪よく考えたら赤発令じゃなくて、新聞部の号外を意味する"赤発行(あかはっこう)"だったみたい~♪」


憲明「へぇ~、それは初耳だな?」


映果「と、当然だよ♪ほら、新聞はあまり放送とか使わないからさ~♪あはは~。」


憲明「‥ジーー。」


その場で作ったあからさまな嘘に騙されるほど、憲明は甘くはなかった。


憲明は、不審な目で映果を見つめる。


映果「うぅ、ごめんなさい。」


憲明「うむ、じゃあ、詳しい話を向こうで聞こうじゃないか。」


映果「は、はい。」


これ以上嘘が通じないと思った映果は、

諦めて憲明に連行されるのであった。



映果の話しによれば、

控え室や更衣室、リハーサル場に小型監視カメラや盗聴機などを前もって備え付けていたらしく、昨日から今日の朝までずっと一部始終聞いていたらしい。


更に詳しく聞くと、

この件には小頼も関わっており、

同人誌の参考資料などために、協力していたそうだ。


全く、相変わらず抜け目のない女である。


その後、

当然、話を聞いたからには、

憲明の監視の元で、映果は渋々採取した盗聴と盗撮したデータを全て消し、更には口外の禁止を約束させられるのであった。




しかし、データは消されたとは言え、

それ以上に素晴らしい物を見れた映果は、

がっかりする表情の裏腹に、心は不敵に笑っていた。


そう、

両津直人とルルー&稲荷の関係。

ギールのラッキースケベ。

美女たちの戯れなど。


脳裏に叩き込んでいたため、

後にフィクションと称したノンフィクション物語が、出回るのであった。







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