第二百七十一話 二匹の天使
純粋で可愛いココロを夢中で可愛がっていた小頼であったが、気づいた頃には尾行していた桃馬たちを見失ってしまう。
そのため小頼は、ここが引き時と考え、少し残念がるココロと共に控え室へと戻ろうとする。
するとそこへ、可愛らしい一年生が偶然にも小頼とココロの前に現れたのだった。
エルゼ「わふっ?あ、小頼お姉ちゃん♪」
加茂「あ、エルゼちゃん!?」
ジェルドの妹であるエルゼが、小頼を見つけると加茂様を置いて一目散に駆け寄る。
"もふさら"な尻尾を振り回し、
今日もご機嫌のご様子であった。
小頼「エルゼちゃ~ん♪今日もすこぶる可愛いね♪」
エルゼ「わふぅ~ん♪"わしわし"してください♪」
小頼が、勢いよく駆け寄ってきたエルゼの頭をなで回すと、エルゼは"デレデレ"に甘えてきた。小頼にしがみつき、顔を埋めては擦り寄せ、その姿は可愛さの塊であった。
しかも直ぐ隣に、
ココロが居るとも知らずに‥。
当のココロは、突然現れた自分と瓜二つのエルゼの出現に"キョトン"としていた。
同じ白狼族と言う共通点もあるが、それ以外にも、歳の差はほど変わらず、偶然にも容姿と髪の長さも一致している。
唯一違いと言うなら、"瞳"であろう。
ココロは純血の、青い瞳。
エルゼは混血の、黒い瞳。
後は‥個々の性質である毛並み、話し方、声。
くらいだろうか。
※とまあ、今段階で絵がないので皆さんのご想像になりますが‥。
まあ、それはおいといて、
エルゼが小頼に甘えている中、
雄の子にして男子専用の制服を着た加茂が駆けつける。
加茂「エルゼちゃ~ん!もう、急に走ったらだめじゃないか?」
エルゼ「ふへぇ~♪だって~♪」
加茂「もう~、ライブが終わってから~とか、ごはん食べから~とか、色々と用事を増やすんだから。」
何やら用事が色々と後回しにされている様だが、一方、小頼はエルゼにかまけてそれどころではなかった。
小頼「あはは、エルゼちゃんったら~♪お話しできるお友だちが増えてから内気な性格が良くなってるね♪」
加茂「うぅ、小頼さんまで‥ん?」
ここでようやく、
加茂はココロの存在に気づく。
加茂「‥おや?ん?うぅ~ん?」
ココロ「わふっ‥あ、あの、どうかしましたか?。」
見覚えのあるけもみみの女の子に、
加茂は、失礼ながらもココロのあちらこちらを見渡した。
加茂「‥その声にその瞳‥、エルゼちゃんと瓜二つ‥い、いや‥まさか‥、でも、小頼さんといるし‥いや‥でも‥。」
目の前のけもみみの女の子が、"ユキツバキ"のココロであると断定するも、偶然にも普通に出会ったことが逆に半信半疑を招き、加茂は一人でぶつぶつと呟いた。
ココロ「あ、あの、たぶん、お兄さんが思ってる通りかと思いますよ?」
加茂「ふぇ?じゃ、じゃあ君は‥ココロさん?」
ココロ「は、はい♪」
加茂「‥ふぁ~っ♪」
ココロの助言もあり、
目の前にいるけもみみの女の子が、
ココロであると判明すると、加茂は目を輝かせて感激する。
加茂「ココロさん!先程のライブとてもよかったですよ♪」
ココロ「ほ、本当ですか♪わふぅ~♪よかった~♪」
加茂「五人の歌は本当に素晴らしいです♪不思議と元気が漲ってきましたよ♪」
ココロ「えへへ~♪そう言って貰えると凄く嬉しいです♪」
べた褒めする加茂に対して、純粋で素直なココロは、可愛い尻尾を振りながら喜んだ。
すると、
左右に揺れる尻尾は、次第に加茂の"もふもふ"衝動を誘い、自然と目で追ってしまう。
加茂「‥こ、ココロさん、えっと‥その。」
ココロ「わふっ?どうしました?」
加茂「あぅ、その‥も、もふ‥。」
ココロ「わふぅ??」
小声で"もじもじ"させていると、
ココロは首をかしげて少し困った表情を見せた。
加茂「‥はぅっ!(うぅ、可愛すぎる‥や、やはり、狼族は卑怯です~!)」
とまあ、こんな風に一瞬で"心"を"射ぬ"かれる訳で‥、(ココロと犬だけに‥)
加茂の我慢も限界が訪れる。
加茂「はぁはぁ、こ、ココロさん‥ごくり、あ、あの、も、"もふもふ"させてください!」
ココロ「わふぅん♪良いですよ~♪」
感極まりド直球なお願いを放つと、
ココロは、嫌な顔を見せずに受け入れ、
頭を差し出した。
加茂は緊張しながらも、
白い"もふもふ"に手を伸ばす。
加茂「~~っ///」
ココロの毛並みは見た目より、"しっとり"と"ひんやり"しており、完璧な夏毛であった。
一度触れたら離れることはできない。
そのまま気持ちの良い"もふもふ"に手を突っ込み、"わしわし"する他ない。
例え、エルゼと瓜二つでも毛並みと性質は全く異なっており、さすが純血と言ったところだ。
ココロ「くぅ~ん♪耳の付け根‥きもちいれふぅ~♪」
加茂「ひぅっ///」
更に、甘々な声の追撃に、
加茂は思わず抱きつき虜になった。
学園内で堂々と二匹をもふりまくる二人に、
学園の生徒たちが見ては、白狼族と戯れている程度にしか見えない。
まして、ココロちゃんがこんなところで、もふられているなど夢にも思わないだろう。
加茂「ふへぇ~♪最高です~♪(これ癖になる~♪何か大事かことが合った気が‥‥あれ?)」
ココロ「わふぅ~♪(お兄さん撫でるの上手ぅ~♪それに、自然とライブの疲れが取れていく~♪)」
犬の習性で撫でられる事で色々と癒されるが、
それは所詮マッサージ程度の効果でしかない。
しかし今の場合は、今朝の超回復見たいに、
ココロは加茂に撫でられる度に、疲れまでもが浄化されていた。
この原因は至ってシンプルで、
本来神様である、小京加茂がココロに癒される度に、無意識に超微量の神力を注いでいた事による物であった。
双方が癒されるWin-Winの中で、
突然、加茂の脳裏に大事な用事を思い出す。
加茂「っ!そうだった!犬神様を探さないと!?」
ココロ「きゃふっ!?」
小頼「ふぇ!?ど、どうしたの加茂ちゃん?」
エルゼ「わふぅ?」
加茂の咄嗟の大声に驚いたココロと小頼。
ココロは"ビクン"と体を跳ね上げ、
慌てた小頼は、直ぐに加茂へと視線を向ける。
一方、呑気なエルゼは、
ようやくココロの存在に気づくも、その白い"もふもふ"の女の子が、ココロであると認識していなかった。
そのため、
無垢な表情でココロを見つめていたが、
ここで加茂から本来の目的を告げられる。
加茂「え、エルゼちゃん!"もふもふ"はここまでにして、すぐに犬神様を探しにいくよ!」
エルゼ「むぅ、ふん、私は"わがまま"で人を悪く言う犬神様なんて知りません。プイ。」
加茂「うぅ、気持ちはわかるけど‥。」
小頼「ん?犬神様がどうしたの??そう言えば、いつも一緒にいるのに見当たらないけど?」
加茂「えっと‥話せば長くなるのですが‥。」
どうやら犬神関連の問題が起きたようだ。
こう言う時は、シャルに話せば直ぐに解決すると思われるが、取り敢えず事情を聞いてみるのであった。
ちなみに、ココロちゃんは
恐れ多くも犬神様が、この学園に居られると知ると驚きと緊張のあまり固まってしまった。