第二百七十話 漫画と現実
一時は生命の危機にさらされた
佐渡桃馬と両津直人であったが、
結局ルルーによる、
重い冗談であったと、会場の生徒たちが認識すると、その場の難は逃れた。
桃馬は、桜華への隠れ二股の疑惑が晴れ、
桜華と全生徒への見せしめは避けられた。
しかし、直人に至っては、
全生徒への見せしめは回避したものの、
大きな十字架を背負うことになった。
そして、時刻は十三時十分
特別ライブのやり直しは見事大成功を収めると、ちょうど昼時のタイミングで生徒たちは闘技場を後にして、各自で昼食を取り始めた。
ちなみに、豆太とディノは片付けの応援が入り、
駆り出されてしまいました。
一方、
異種交流会とユキツバキはと言うと、
女子たちを控え室に残し、男子たちは昼飯調達ついでに重罪人のギールを連行していた。
京骨「ほんと、一時はどうなるかと思ったな?」
桃馬「はぁ、完全にルルーさんのあの話し、絶対に直人の事なのに‥まさか、俺に振ってくるとは、寿命が縮んだよ。」
憲明「あはは、それにしても、ルルーさんはどうして直人の事を知ってたんだろうな?」
京骨「っ。」
話を振ったとは言え、
憲明の疑問点に京骨は声を詰まらせた。
桃馬「まあ、差し詰め桜華たちの誰かが喋ったんだろ?」
憲明「うーん、確かにそれしかないよな。例え直人を襲おうにも顔がわからないと襲えないしな。」
桃馬「そうそう、それに直人は、色々とリーチがかかっているし、盛り上がりのネタには良いだろうしな。」
憲明「あはは、そうなると直人が一番生きた心地をしなかっただろうな♪」
京骨「‥ははっ‥だろうな。」
実際、桜華たちが直人の話をしたかは分からないが、取りあえず京骨は、直人の既成事実から離れたようで安堵した。
ルルーと直人の関係を知る京骨は、
あの重い冗談が嘘ではなく、本当の事を嘘っぽく話していた物だと思っていた。それはルシアや相川葵、シェリルも同じ事であった。
更には、人によっては感じかたが違ったらしく。
弟をからかうような楽しみを感じた、
京骨‥。
上級サキュバス特有の独占欲を感じた、
ルシア‥。
勝手に生命の手綱を握られたと感じた、
葵とシェリル‥。
本来嬉しいはずの展開ではあるが、
皮肉にも、直人の人生を心配するのだった。
そして話しに戻り、
ライブの話で夢中になる三人の後方には、
ライブが終わるまで、十八禁レベルの放置プレイを受けていたギールは、未だに正気を保ちながら、嫌々ジェルドにリードを引っ張られていた。
ジェルド「ほら!ちんたら歩くなこの駄犬!」
ギール「ちっ、うっせぇ。誰がお前の歩幅で歩くかよ。」
ジェルド「ほぅ?ユキツバキの三人と小頼たちの裸を見た罪人の癖に、言うじゃないか!」
ギール「くっ!」
反抗的なギールに、
ジェルドはリードを強く引っ張った。
それはまるで、囚われの女騎士様を強引に引っ張るかのようであった。
憲明「それにしても、あの二匹を見ていると‥なんか、いけない気がしてくるな。」
桃馬「そうか?いつもの光景に見えるけど。(あぁ、可愛い‥、反抗的なギールに、天狗になったジェルド‥うぅ、もふりたい‥。)」
表面的には呆れて流している桃馬であるが、
内心は駄犬ながらも可愛い二匹にぞっこんであった。
ギール「くっ、ジェルドてめぇ‥、後で覚えておけよ。」
ジェルド「ふっ、負け犬の言葉を覚えているほど暇じゃないんでね。」
ギール「くっ‥(言い返せない‥。確かに裸を見てしまったのは事実だけど‥‥それでも、ジェルドにリードを持たれるのは屈辱だ。)」
普通の人が見たら誤解される、
イケメンけもみみ男子のやり取りに、
物陰から一匹の女の子と一人の女子が覗いていた。
ココロ「はわわっ!?す、すす、凄くエロいです///」
小頼「いや~♪ココロちゃんは運がいいね♪ジェルドとギールの公開お散歩プレイが見れて~♪」
ココロ「し、しし、白黒犬遊譚の白継君と黒江君みたいです!ま、まさか、現実にあのシーンが起きるなんて‥。同族にリードを持たれることは"屈辱"を意味すると言うのに、あ、あんなに大胆に‥、しかも、人前で‥わふぅ~//。」
※白黒犬遊譚とは、
約一年前に作者"よりより"こと長岡小頼が手掛けBL界を沸かせた薄い本である。
詳しくは、
第二百三十三話 夢の対面より
六割近くノンフィクションである白黒犬遊譚のベースは、ギールとジェルド、桃馬のやり取りを参考に作られているため、例え漫画のような展開でも、三人いや、二匹でも絡めばリアル白黒犬遊譚の完成である。
そのため腐女子モード全快のココロは、
本来ならあり得ない光景に感動し、尻尾を"ブンブン"と振り回していた。
ココロ「ど、同人誌なら‥こ、このまま白継君‥じゃなくて、ジェルドさんが‥くろ‥え‥じゃなくて、ギールさんを、お、おおっ、押し倒して、冬馬君の株を落とすシーン‥ヘッヘッヘッ♪。」
同人誌と現実がごちゃ混ぜになるくらいの興奮に、小頼は思わず嬉しくなった。
小頼「よく覚えてるねココロちゃん♪作者として嬉しいよ♪でも、その展開は作り物だから難しいと思うよ?」
ココロ「そ、そそ、それでも!ジェルドさんが、黒江君の首にリードを巻いて引っ張るなんて‥普通では見られません!」
小頼「あはは♪ココロちゃんったら、完全に同人誌と現実がぐちゃぐちゃになってるね♪」
ココロ「わふっ!?そ、そそ、そうでした!えっと、白継君と黒江君が同人誌で‥ジェルドさんとえっと‥あっギールさんが現実ですね!」
一瞬ギールの名前を忘れるほどの興奮に、
小頼は、ますますココロの純粋な心に惹かれていく。
小頼「もう~ココロちゃんは可愛いね~♪わしわし~♪」
ココロ「わふぅ~♪小頼しゃ~ん♪」
素直で純粋すぎるココロは、
気が合う小頼にそのままもふられるのであった。
しかし気がつけば、
二匹の美男子と三人の男たちを見失ってしまっい、頃合いと見た小頼は、仕方なく控え室に戻ろうとすることにした。
すると、そこへ一年生の小京加茂とジェルドの妹のエルゼが偶然にも出会うのだった。