表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
266/431

第二百六十六話 姉御騎士とヴァンパイア

ラグラ・ノーヴァを含めた、

微食会の話し合いは、闇の内容には触れることなく、うまい具合に進めていた。


エニカ「なるほど、みんなで妖魔退治をね~。それでラグラさんは、敵対と言うよりは相容(あいい)れぬ関係である、退魔協会の一員って訳ね。」


茂野「そう言うことだ‥、勘違いせずに(とら)えてくれてありがとう。」


今のところ、変な誤解もなく進むなか、

エニカは重要な点を突く。


エニカ「でも、昨夜の件で何人かは退魔士を殺めたのでしょ?それなら、ラグラさんを生かす意味とは?」


ラグラ「確かに‥沙茉(さま)万里(ばんり)など、しかも北条魅蓮まで殺めたお前たちが、どうして私を生かすんだ?」


茂野「あ、いや、それはだな‥。」


茂野は言葉に困り藤井と坪谷へ目を向ける。


当時の一騎討ちで卑怯ながらも勝利した茂野、

そしてラグラを(かく)ったのも茂野である。


そのため、どうフォローしてやるかわからず、

二人は目を逸らし茶を濁した。


見てられない近藤は、補足の一手を打つ。


近藤「こほん、俺たちは全ての退魔協会を嫌ってるわけではない。本能のままに暴れる亜種族と同様に、(まっと)うな考えを持つ者を見極めて"仕置き"している。」


エニカ「し、仕置き?」


近藤「あっ‥っ!」

九人男子「っ!!?」


渡邉「こほん、‥殺めるって意味ですよ。尚弥(しゃうや)は時代劇が好きですからね。つい口にするんだよ。」


エニカ「そ、そうか‥仕置きか‥うむ、良い響きだな!」


つい口が滑った禁止ワードに、

思わず十人の男たちが反応する中、

渡邉による見事なフォローが決まる。


すると、

会話を聞いているラグラは、

姉御風に笑いだす。


ラグラ「あはは、いいね♪お前たち気に入ったよ♪なぁ、あたしはお前さんたちの仲間にしてもらえないだろうか?」



エニカ「えっ?」


茂野「はっ!?」


藤井&坪谷「っ!!?」


突然の申し出に、微食会一同は驚愕した。



近藤「あ、いや、仲間って言われても‥、」


渡邉「‥元々戦闘をメインにしたギルドじゃないんだけど。」


本来なら男だけで組織したものだが、


最近、エニカとルイの加入もあり、気を使うことが増えて来ている。エニカとルイは気にするなと言ってはいるが正直無理な話である。


しかも、姉御系のラグラを入れたらヤバイことになるだろう。


渡邉の脳裏では、

一瞬で今後の展開がプログラミングされる。


闇の一件を知るラグラ・ノーヴァ‥、

もし彼女が微食会に参加すれば、闇に隠れるどころか表に出始めて問題を起こすだろう。


それ(ゆえ)に、この申し出は難しい。


ラグラ「だ、だめなのか?なぁ、天~?藤井?坪谷からも何か言ってくれよ~!?」


茂野「‥そ、そもそも、ラグラはこの学園の生徒じゃないだろ?」


ラグラ「そうだけどよ~、妖魔退治とかで合流できるだろ?」


大胆にもみんながみている前で、

茂野の膝に座り込む。


茂野「なっ//何してるんだよ!?」


ラグラ「何ってお前の太ももの上に座ってるのだが?」


茂野「す、少しは恥じらいをもてよ!?」


ラグラ「なんだよ~?あ、もしかして‥あたしに意識してるのか?」


茂野「ば、ばば、ばかか!?と、取りあえず微食会の正規メンバーはこれ以上増やす気はない。入学してか出直すんだな。」


完全にラグラと茂野は、お互いに意識していることが読み取れる光景に、男たちは再び動く。


渡邉「ま、まあ、確かに正規メンバーは本来十人のところ、特別にエニカとルイを入れて今は十二人だけど、準なら受け入れるよ?」


ラグラ「おぉ!それは本当か!?」


茂野「待て待て蒼喜!?その前に学園の生徒じゃないと‥。」


星野「ご安心を編入希望の書類はこの通り。」


茂野「おい待て!?なんでそんなの持ってるんだ!?」


茂野が一人で焦る中、

誰一人も入学手続きを止めようとしない。


星野は茂野を拘束魔法で縛り付け、ラグラの前に入学手続きの紙を並べた。


その様子に、

ラシュリーナが羨ましそうに見ていた。


近藤「ん?どうしたラシュリーナ?もしかして、興味あるのか?」


ラシュリーナ「ふぇ!?あ、う、うん、そうね。下僕たちと一緒に居られるのも悪くないわ‥‥けど、」


近藤「けど、どうした?」


昨日までの様子なら喜びそうな話ではあったが、以外にも顔色を暗くして悩んでいた。


ラシュリーナ「私がこの学園に入ったら‥村の子供達を誰が守るのかなって‥。」


近藤「‥っ、ラシュリーナ‥、」



ラシュリーナの言う通り、

魔界進出を企む組織を壊滅しても、

牛鬼なる妖怪を倒しても、異世界の情勢は揺れに揺れている。いつどこで侵略、統一戦争が始まるかわからない。


そんな時に、力が弱い守護者が安全なところで暮らして良いものなのか。


その間に、城と村が襲われたらどうなるのかと‥。


ラシュリーナの心は葛藤していた。


ラシュリーナ「尚弥(しょうや)‥、私は異世界に帰るわ。」


近藤「‥そうか‥、ならこれは俺からの餞別(せんべつ)だ。」


近藤が席を立つと、ラグラへの入学手続きの書類をビリビリに破いた。


ラグラ「なっ!?何しやがる!?」


近藤「くっ!」


微食会に入れるチャンスを破かれたラグラは、

机を叩き近藤の胸ぐらを掴む。


エニカ「っ、尚弥(しょうや)!?」


ルイ「っ!」


渡邉「なっ!」


全員が席を立ち引き剥がそうとすると、

近藤から制止の声がかかる。


近藤「みんな手を出すな!ラグラさん‥あなたの最高のチャンスを踏みにじったことはお詫びします‥、しかし‥あなたを別口で準メンバーに迎えることはできます。」


ラグラ「な、なんだと?それは本当か?」


近藤「えぇ、この条件を呑んでくれるのであれば‥全責任を持ってラグラさんを準メンバーに加えます。」


ラグラ「で、その条件とは?」


近藤「と、取りあえず、離してもらえますか?」


ラグラ「あ、あぁ、すまない。」


胸ぐらを掴んだままの体勢から解放されると、

近藤は本題を切り出した。


近藤「こほん、条件ですが、こちらにいるラシュリーナ・ダクリロード様の元で騎士として働いてほしいのです。」


茂野「っ!」


ラシュリーナ「ふえっ!?」


ラグラ「ほう‥そのお嬢ちゃんの騎士か。」


ラシュリーナ「えっ、ふぇ!?」


ラグラは、自分より小さなラシュリーナに、

顔を近づけ観察する。

ラシュリーナも突然の事に困惑し、取り乱していた。



ラグラ「ふっ、まあいいぜ。あんたからには、相当このお嬢ちゃんを大切にしている感情が伝わってくるからな。それによく考えれば、勉強をしているより騎士に戻るのも悪くないからな。」


近藤「御理解を頂けて何よりです。感謝します。」


ラシュリーナ「ま、待ちなさいよ!?何かってに決めてるのよ!?」


近藤「まぁまぁ、ラグラさんはかなり強そうだし、お城と村を守るための仲間が増えるのは良いことだろ?」


ラシュリーナ「そ、それは‥う、うぅ、そうね。」


近藤「それに、日が昇っている手薄な間を考えれば、ラグラさんは大きな戦力になるしな。」


ラシュリーナ「う、うん‥。確かにね‥。」


一理ある説得にラシュリーナは、

そのまま言いくるめられてしまった。


茂野「あ、安心しろラシュリーナ?ラグラは信頼できる人だぞ?」


ラグラ「あはは~♪言ってくれるじゃねぇか、天~♪ほれほれ~!」


茂野「うぐぐっ、ぐるじぃ‥。」


やけに茂野に懐いているラグラは、

両腕を茂野の首にまわし、絞めながら抱きついた。


ラシュリーナ「し、信頼ね‥。」


近藤「まあ、あれは茂野限定だと思うから、気にするな。」


こうして、

茂野、ラシュリーナ、ラグラの三人が満足する提案がここに締結された。


時刻は気づけば十一時半を過ぎ、


特別ライブがとうに始まったこともあり、

一行らは、ラシュリーナが住む城へと赴くのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ