第二百六十五話 氷結と姉御
あらすじ
退魔士ラグラ・ノーヴァを匿い色々と"ほとぼり"が冷めるまで、捕虜の尋問と称して時間をもらっていた、藤井、茂野、坪谷の三名であったが、
ここで遂に、
エニカ率いる微食会が、様子を見るため微食会のアジトこと、別棟の美術室に訪れた。
しかし、美術室の扉は固く閉ざされ、
近藤の馬鹿力により、少しの隙間が開くも真冬並の冷気が流れ込み、近藤はもちろん、開けようとした本間と番場を凍えさせた。
そのため星野の保護魔法を施され、現微食会で最強のルイが、強引な力業で開かずの扉を破壊。
美術室の中は、
氷の幻想的な光景が広がっていた。
エニカ「す、すごい‥まるで氷の国にでも来たみたい‥。」
思わずエニカが声を漏らすと、
突如手前のソファーから女性の声が聞こえた。
?「んんっ‥だれだ‥‥人が気持ち良く寝ていると言うのに‥‥。」
聞き覚えのない男っ気のある女性の声に、
エニカたちは身構えた。
すると、手前のソファーからジャージ姿の銀髪美女がノロリと起き上がり振り返った。
ジャージのチャックを半分以上下げ、
綺麗な白い肌にヘソまで出し、お腹の見える範囲には激戦を戦い抜いてきたと思われる傷が見えた。
そして、彼女が異世界出身であると思わせるほどの、美貌とスタイル、そして下着を着ていないのか、両胸の内側が大胆に出ていた。
これには七人の男たちは、
一斉に目を逸らしたため、エニカが代表して銀髪美女に問うのであった。
エニカ「あ、あなたは何者ですか?」
?「あぁ?人の眠りを邪魔したくせに何者だと?良い度胸してるじゃねぇか?」
さすが男勝りな姉御系美女だ。
かなり好戦的でカッコいい‥、だが、服だけはしっかり来てほしいと思う男たちであった。
しかしエニカは、そんな相手の態度でも一歩も引くことはなかった。
エニカ「眠りを妨げたのは悪いと思うわ。けど、あなたは尚真、天、勇二郎の捕虜なんでしょ?とうの三人はどうしたの?」
?「っ、三人を知っているのか!?そ、そうか‥、じゃあ、あんたが話にあったエニカ様か?。」
三人の名前に反応するとエニカを凛々しく睨む。
すると、危機を悟ったルイが前に出た。
ルイ「‥‥。」
エニカ「待ってルイ‥、こほん、だから、なんだと言うのですか?もし‥三人に危害を加えたのなら‥私はここであなたを討ちます。」
エニカが臨戦態勢を取るとルイに続いて、
ラシュリーナと七人の男たちも視線を逸らしながら警戒した。
殺伐とした空気の中、
突如、銀髪美女が高らかに笑った。
?「あはは~♪そうかそうか、あんたがエニカ様か。待っていろ、直ぐに三人を呼んでくるからな。」
エニカ「へっ?」
ルイ「?」
ラシュリーナ「‥‥はっ?」
七人男「‥えっ?」
拍子抜けとも言える展開に、
エニカたちは、無言で銀髪美女が歩く方向を見る。
するとそこには、氷漬けになった異世界へと繋ぐゲートの隣に、よく見ると小屋のような物が備え付けられていた。
銀髪美女はドンドンと扉を叩くと、
三人を呼び出した。
?「おーい、天~?予想通りエニカ様が来たぞ?」
茂野「うわっ、ビックリした‥、いきなり扉を強く叩くなって。」
?「しゃーねぇだろ?加減が難しいんだから。」
茂野「はあ、それで、そっちは寒くないんだよな?」
?「おぉ♪寒くないぞ♪むしろちょうど良いくらいだ♪」
茂野「‥信用できねぇな‥。」
何やら銀髪美女は、茂野と話しているようだ。
男たちは二人のやり取りに"クスクス"と笑っていた。
高野「おい、聞いたか?天だってよ‥。」
本間「ふふ、聞いたぞ、下の名前で言ったな。」
大西「こ、これは‥昨夜の戦闘で何かあったな‥。」
番場「‥元々下の前で呼ぶ主義にも見えるけど、はてさて‥彼女が"シゲ"にとっての春になるのか‥。」
近藤「春にしては寒い出会いだな。」
渡邉「ふっ、確かにな。」
星野「ま、まあまあ、もう少し様子を見てみよう。」
人の恋沙汰を弄るのが大好きな思春期の男たちは、この先の展開に期待するのであった。
その頃小屋の中では、
藤井「‥えーっと、"便器に籠る茶色いドラゴン"を召喚して、アメーバと融合。ゲリラドラゴンを召喚してアタック。」
坪谷「う~ん、う、受けよう。」
藤井「うし、次が怖いが‥ターンエンド。」
何と小屋の中ではカードゲームで、
盛り上がっていた。
茂野「二人とも、そろそろ終いだ。エニカが来たから外に出るぞ。」
坪谷「おう、わかった。それじゃあ‥一応このままにしておこうか。」
藤井「だな。続きは色々終わってからだ。」
三人は防寒着を身につけ外へと出た。
ラグラ「おっ、やっと出たか。三人とも?」
茂野「うぅ、やっぱ寒いじゃねぇか。」
藤井「うー、さぶっ‥って、みんな夏制服じゃないか!?」
坪谷「み、見てるだけでも寒いのだが‥寒くないのか?」
保護魔法を受けていない三人には、
薄着のエニカたちを見るだけで寒くてしかたがなかった。
星野「体温維持の保護魔法をしてるからな。寒くはないよ。ほら、三人も。」
再び杖を叩き、三人に保護魔法を施すが‥。
茂野「あっち!?」
藤井「あっちゃっ!?」
坪谷「うわっ、あつっ!?」
昨夜の逃走中に番場と共に売った恨みは、
忘れていなかった。
星野は三人に一瞬だけ真逆の術を施し、
三人は防寒着を脱ぎ捨てた。
茂野「‥仁くん‥恨みを込めたな‥。」
星野「これでおあいこだよ。それとも、屋上から吊るされたいか?」
藤井「っ、お前たちまさか吊るされたのかよ。」
近藤「うん、でもよく眠れたよ。」
本間「目覚めは悪かったけどな。」
渡邉「‥だな、よかったら経験してみるか?。」
ルイの優しいモーニングコールに起きなかった、近藤、渡邉、本間は、それはもう、力業で起こされていた。
三人「いや‥遠慮しとくよ。」
三人は息を合わせて拒否するのであった。
?「あはは~♪お前たち面白いな♪"退魔協会"にいたときより愉快だ。」
茂野「っ!こらラグラ!?」
銀髪美女、ラグラ・ノーヴァの一言により、
七人の男たちの目が変わった。
特に、高野と大西は殺気まで見せた。
高野「‥退魔協会だと?」
大西「‥なるほど、それなら捕虜にした意味がわかった。」
茂野「ま、待てお前ら、説明するから落ち着け!?」
ラグラ「あはは、話し以上の毛嫌い様だな?」
藤井「ラグラさん、話がややこしくなるから一旦口を閉じてくれ。」
坪谷「取りあえず話せば分かる奴等だから。」
どたばたな展開に、
一旦ソファーに全員を座らせ話を進めるのであった。
特に、闇繋がりの話のため
エニカとルイ、ラシュリーナにはバレないように話を進めるのであった。