第二百六十二話 熱意と心配
このまま続くと思った桜華のヤンデレモードであったが、控え室から桃馬が戻って来るや、一瞬でいつもの暖かな表情に戻った。
これを知る憲明、京骨、ジェルドの三人は、
黙って二人の後を追いながら、複雑な気持ちで二人の将来を心配するのであった。
その頃リハーサル場では、
"ユキツバキ"の五人が、特別ライブのやり直しに向けて曲合わせをしていた。
昨夜の一件で疲れているはずにも関わらず、
彼女たちは楽しそうにリハーサルに打ち込んでいた。
シャル「五人はすごい根性の持ち主なのだ‥。あれほどの聖唱魔法を放ってもなお、ステージに立とうとするとは‥恐れ入るのだ。」
シール「わふぅ~♪かっこいいです♪」
昨夜ダウンしてしまったココロの容態が心配されるが、早朝散歩の頃から気力と体力が回復しており、他の四人も何事もなかったかの様に回復していた。
これが"聖女"と呼ばれる由縁なのか‥。
それとも無理しているだけなのか‥。
シールを抱き締め色々と疑問に思うシャルではあったが、それでも彼女たちのやる気を見るや、
心のそこから敬意を評するのだった。
ここでネタ証し
実はみんなが寝静まっているとき、
"ユキツバキ"のメンバーであるルルーさんが、
昨日搾りまくった両津直人の精気を媒介させ、生命エネルギーを作成。
最後は"エナジータッチ"でメンバーの四人を回復させていたのだ。
想像を越える回復効果に、
ルルーは両津直人に興味を持つのであった。
ルルー「みんな、昨日より動きが良いわね♪」
スカーレット「うん♪不思議とやる気が満ち溢れてくるんだよね~♪今なら魔王でも倒せそう!」
ダクト「それは調子に乗りすぎだ、きっと聖唱魔法による一時的な回復期なんだろう。」
稔「‥回復期ね。まあ、実戦で聖唱魔法を使ったのはあれが初めてだし、そうなのかもね。」
ルルー意外は回復期だと勘違いしている中、
ルルーの脳裏では、如何わしい実験を色々と想像しているのであった。
ルルー(クスッ、エルンも良い夫を持ったわね‥。こうなったら、私も噛ませてもらわないと‥くすす。)
こうして直人は、知らぬ間に更なる十字架を背負うことになるのであった。
小頼「それにしても、昨夜のココロちゃんの容態からして、一夜で治るものなのかな??」
ルシア「それは私も気になるわね。そもそも聖唱魔法の基本は、あらゆる力を相手に与え、唱える人の想いが強いほど、その効果が上がる大魔法の一つね。唱える限界には差はあるけど、本来ココロちゃん場合なら頑張っても三十分のはず、それを一時間近く唱えていたのだから本当にすごいわ。」
小頼「そ、それなら余計に一夜での回復は無理じゃないの!?」
ルシア「そうなのよね。回復期はあるかもしれないけど、たった一夜で回復するなんて無理よ。昨夜のココロちゃんの容態だと、一週間‥短くて三日は寝込むはずよ。」
小頼「そ、そんなに‥。」
ルシアの見解に驚愕する中、
二人は気になる問題に頭を悩ませた。
事実を知れば納得する話ではあるが、
実際、九十度以上曲がった答えにたどり着くには相当難しい。
ルシア「ま、まあ、良く考えれば個人差ってこともあるからね♪ここは変に追求しないようにしましょう♪」
小頼「そ、そうだね♪変に考えてたら夜も眠れなくなっちゃうからね♪あはは~。」
と、言いつつも少し気になる二人であった。
一方リフィルは、
姉のスカーレットにべったりとしていた。
リフィル「お疲れ様ですお姉様、昨日より動きが悪い様でしたけど大丈夫ですか?少しお休みになられても‥。」
スカーレット「もう~、リフィルは心配性ね?朝だから少しキレが悪いだけだから心配しないの?」
リフィル「で、でも‥。」
いつも呑気で明るいリフィルでも、
お姉様主義である分、ずっとスカーレットを凝視してはお節介を働いていた。
スカーレット「クスッ、そんな困った顔しないの♪私はいつも学園で見せているリフィルの笑顔が見たいな♪」
リフィル「うぅ、お姉様//」
姉の前でつい固くなるリフィルに、
スカーレットは優しく頭を撫でる。
さすがのお節介なリフィルでも、
こうなってしまうとどうすることもできず、
赤面しながらうつむいた。
スカーレット「~~っ//リフィルかわいい~♪」
リフィル「ひゃう!?」
"くっころ"感もでて何とも可愛らしいリフィルに、スカーレットはたまらず抱きついた。
金髪エルフ美女に姉妹愛が上乗せされ、小頼は即反応し小型カメラで盗撮を始め、ココロは尻尾をブンブン振り回し両手を"グー"にして見ていた。
ダクト「ふぅ、全く‥二人の姉妹愛には感服するよ。」
ルルー「クスッ、昨夜からべったりだもんね♪」
稔「久々の再会もあるけど‥これはもうシスコンの域ね。」
見せつけてくれる姉妹愛に、三人の意見は様々だが、昨夜からべったりとしている二人にある意味感心していた。
世話焼きの妹に、妹を離さない姉。
寝る時も一緒という貴重な時間を謳歌していた。
するとそこへ、
ギールの様子を見に行っていた桜華が、桃馬たちを連れて戻ってきた。
小頼「むっ?あ、おかえり桜華ちゃん♪桃馬たちも丁度来たんだね♪」
ルシア「結構寝てたわね?寝つけなかった?」
桃馬「ま、まあ、それもあるな。」
ルシアの言う通り、
昨夜はギールの淫靡な寝言により眠れず、色々あって仮眠程度の二度寝をして今に至っていた。
ジェルド「それにしても起きて早々、ギールのあれには驚いたな。」
ルシア「あぁ、ギールを見たのね。全く、早く閉めれば良いのに、全体を見渡すなんて変態よ。お陰で私の裸を見られたわ。」
京骨「な、なに?!」
小頼「わ、私は‥たぶん下着姿を見られたかな♪」
ジェルド「わふっ!?」
二人の確実な証言に二人の男が反応する。
これにより、
ギールの株が更に暴落、
引き換えに駄犬への殺意が湧きたつのであった。
ジェルド「く、くくく‥、」
京骨「ふっ‥ふふっ‥。」
不敵に笑い今にもバグりそうな二人に、
桃馬と憲明は、思わずギールの安否を心配するのであった。
桃馬「はぁ、今日はギールにとって汚点となる日だな。」
憲明「あはは‥、汚点ですめば良いけどな。」
桃馬「だな‥、それより時奈先輩が見当たらないけど、どこに行ったんだ?」
小頼「時奈先輩なら校長室に行ったよ?午前中に行う特別ライブについて話してくるって。」
桃馬「さすが先輩だな‥。仕事がはえ~。」
憲明「‥一手二手と打つのがはやいな。」
急きょ決まった午前中の特別ライブに、
時奈は上杉校長の許可をもらいに出ていた。
まあ許可は確実に下りるとは思うが、
昨日の今日で直ぐにライブを開くには、ユキツバキの五人にかなりの負担がかかると思われる。
特に、昨夜頑張りすぎてダウンしたココロちゃんだが、今朝の反応から元気を取り戻しているようだけど‥、病み上がりで無理をさせて悪化させるのも心苦しい。
とまあ、何も知らない桃馬と憲明は、
五人が完全回復している事も知らずに、
余計な心配をするのであった。
その後、
時奈が校長室から戻ると、
午前中の特別ライブは余裕を見て十一時から開催する事になったと伝えるのだった。