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第二百六十話 ラッキーとヘル

異種交流会の男子たちは、

シャルとギールたちがいると思われる、

エデン(控え室)へと向かった。


しかし、予想していたよりエデン(控え室)付近の廊下はかなり静かであった。


昨夜のノリであれば、

この辺りまでは声が響いていたはずだが、

ここまで来て聞こえないとなると、恐らく寝坊しているのだと思った。


そうなるとエデン(控え室)の中が気になるものだが、あまりにも静かすぎる不気味な扉を前にして、誰が先に開けるかで六人の男たちは揉め始める。


桃馬「ジェルド‥行けよ。ココロちゃんが待ってるぞ?」


ジェルド「っ、ば、バカ言うな‥いくら可愛くても女子の部屋に先陣切って入れるかよ!それなら、桜華も中にいるだろ?男を見せるなら今がチャンスだぞ?」


桃馬「ふ、ふん、桜華は朝に弱いんだ。こんな時間になっても静かとなれば夜更かしは確実‥。そうなれば誰が起こそうとしても起きやしないさ。」


憲明「おい桃馬‥地味に桜華をディスっているぞ。」


京骨「さすがに、それは嘘だろ?」


桃馬「すまん、少し盛った。でも、桜華が朝に弱いのは本当だ。ちなみに俺も朝に弱いから、誰も家にいない時は遅刻ギリギリだな。」


京骨「深刻レベルの弱さだな‥。」


憲明「で、誰が開けるの?」


控え室の前でキリのない話をする三人に、憲明が制止すると、見かねたディノがため息をつきながら部屋をノックした。


ディノ「おはようございます!シャル様。ディノですけど、入ってもよろしいですか?」


まるで執事の様な対応で先陣を切ったディノの姿に、四人の男たちは恥ずかしくなり話を止めた。


しかし、部屋からは誰一人として返答はなかった。すると、ディノはドアノブに手をかけ最後の呼び掛けをする。


ディノ「シャル様、皆様、失礼します。」


"ガチャリ"と扉を開けると、

そこには半裸でボコボコにされ、

椅子に縛られたギールがいた。


桃馬「‥な、なんだ‥これは‥。」


ディノ「に、兄さん!?」


豆太「はわわ!?な、何事ですか!?」


どん引く様な光景に、

弟たちは見るに耐えないギールの元へ駆け寄り、桃馬たちは、死んだ魚の目をしたギールを見るや背筋を凍らせた。


ディノ「に、兄さん!?しっかりしてください!?一体どうしたのですか!?」


豆太「も、もしかして、敵襲ですか!?」


二人の声も届いていないのか。

ギールの目は光を失い、そして無反応。

まるで精気でも吸い取られたかの様な感じであった。


ジェルド「‥わふぅ、こ、これは‥ひどいな。」


京骨「あの表情だと‥間違いなく精気を吸われているな。」


憲明「うぅ‥それからの暴行からの放置って‥‥やばいプレイだな。」


ジェルド「まあ‥ドMなギールにはご褒美かもしれないけどな‥。」


桃馬「感心している場合か!桜華たちもいないし、もし襲撃だったら(こと)だぞ!」


呑気に分析する三人に対して、深刻に考える桃馬は急いで周囲の捜索に出ようとする。


するとそこへ、丁度良くギールの様子を見に来た桜華が走ってきた。


桜華「あっ、桃馬!?」


桃馬「っ、桜華!?よ、よかった、無事だったんだな?」


桜華「ぶ、無事?あ、あぁ、なるほど、ギールを見ちゃったんだね。」


一瞬、意味がわからない表情になるも、

控え室の扉が開いていることから、何となく察したのだった。


桃馬「桜華、これは一体何があったんだ!?」


桜華「えっと‥実は‥タイミングが悪かった事故と言えば‥いいのかな。」


桃馬「じ、事故?」


事故と言う証言に、桃馬は小首を傾げる。

しかし、後方の三人は何となく事の経緯(いきさつ)が想像できた。


ジェルド「‥わふぅ、タイミングによる事故か‥。ふむぅ、ラッキースケベ展開か。」


憲明「うーん、着替えを見られたとか。」


京骨「その時に、恥ずかしい何かを見られたか‥だろうな。」


桜華「あ、あはは‥、そ、そんな感じかな。」


ほぼ正解の意見に、桜華は苦笑いをしながら返すと、桃馬は直球の質問を投げた。


桃馬「ギールに裸を見られたのか?」


桜華「っ//ふぇっ!?」


三人「っ!」


桃馬の重要とも言える質問に、

後方の三人も反応する。

リフィル、小頼、ルシアの彼氏である三人は徐々に桜華に詰め寄る。


ジェルド「あの、犬‥見たのか?」


憲明「リフィルの裸を‥。」


京骨「ま、まさか、ギールを襲ったのはルシアなのか!?」


桜華「ちょっ、ま、待ってください!?その‥わ、私はその時下着姿でしたけど‥えっと‥、あの時は確か、リフィルちゃんは上の下着を着けようとしてたような‥、でも、ルシアちゃんと小頼ちゃんは‥うぅ、ごめんなさい!見てないです!」


徐々に桜華に顔を近づける四人の男たち、

先程の心配がバカみたいであったかの様に、ため息をついた。


桃馬「‥あの駄犬の言い分によっては‥。学年ハーレム撲滅運動異端審問会にかけるしかないな。」


ジェルド「だな‥このラッキースケベは重罪だ。」


京骨「スカーレットちゃん、ダクト先輩、ルルーさんの裸を見たとなれば‥確実に吊るされるだろうな。」


憲明「あとは、精気を誰が吸ったかだな。ルルーさんなら大事(おおごと)だな。」


桜華「あ、あはは‥。」


憲明「えっ?」


桃馬「ま、まさか‥本当なのか。」


憲明の一言に、表情を(こわ)ばらせ苦笑いをする桜華に、四人の男たちは再び桜華に注目した。


桜華「あ、えっと‥ど、"ドレインタッチ"での吸い取りですから不純はないですよ!?」


確かにサキュバスは、ドレインタッチで精気を吸い取ることができるが、事後レベルの放心状態のギールに少しばかり疑問が浮かんだ。


疑わしい表情をする四人に、

桜華は更に弁論を唱える。


桜華「ルルーさんのドレインタッチは、普通のサキュバスさんより強いみたいで‥その‥"今日二人目だったからつい吸い過ぎた"とか言ってましたよ?」


桃馬「ふ、二人目?」


憲明「っ、ま、まさか、生徒の中で誰か喰われたのか!?」


ジェルド「ごくり‥う、羨ま‥じゃなくて‥襲われた奴‥吸い殺されてないよな?」


京骨「‥‥。」


一人目に思い当たる京骨は、冷や汗をかきながら目を閉じ小さくうつむいた。


桃馬「‥それなら直ぐに見つかるだろうな。その生徒も可哀想だな。見つかれば即吊るされちまうよ。」



その頃‥。


直人「へっくしゅん。うぅ‥風邪引いたかな‥‥。(昨夜の記憶がほとんどない‥恐らく吸われすぎて免疫力も落ちてるんだろうな‥。)」


エルン「す、すまない‥直人。その‥約束だったとはいえ‥や、やり過ぎてしまった。」


リール「あはは~♪昨夜のエルンはすごかったもんね~♪直人がへばったら、尻尾で性欲促進剤を刺しまくるんだから~♪」


エルン「お、おいっリール///そ、それをここで言うな!?」


ルルーと稲荷に、続いて二人の嫁の相手をしていた両津直人は、身体的にボロボロであった。







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