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第二百五十七話 運命の奇跡

早朝のお散歩。

それは"犬"にとっての楽しみの一つである。


ここで早速小話

普段のギールとジェルドの様に"獣人族"犬科の多くは、朝の五時から七時の間に散歩をする習慣があります。しかし、一部の学生たちは、平日の登校を早朝散歩と称して歩いて解消しています。


また休日の時は、普通に朝の六時には散歩に出かけ、一~二時間くらい歩くそうです。


ちなみに、以前までギールとジェルドが必要以上に桃馬を休日散歩へ連れ出し、ハスキー犬並みの大きさの二匹をリードで縛り交互に散歩していた事がある。


特に、ギールとジェルドの二匹同時の時は悲惨で、行く先々で喧嘩しては、美男子の姿になって散歩するなど、桃馬の休日は絶望に近かった。


最近ではギールの散歩はシャルたちがやるようになり、ジェルドについては、桃馬がたまにしてあげる事がある。




さて、裏話はここまでにして本編へ。


ギールとシールは本館より外へ出ると、

やはり数人ではあるが、朝早くから外に出ている生徒が目に入った。

警察の人たちも少しは警備してるようだが、

シールの件がバレることはないだろう。


しかし、ギールは念を入れて、

人目が少ない所を散歩コースに選ぶのだった。


ギール「よしシール?こっちから行こうか。」


シール「わふぅ~、おしゃんぽぉ~♪」


まだ寝ぼけているのか、

シールは依然"ふわふわ"状態であった。


ギール「ほら、散歩に行くのにそんな眠そうにしちゃダメだろ?」


シール「わふぅ~♪」


ギールはシールの手をしっかり握ると、

学園の東側から歩いた。


二人が歩いたことを確認した四人の男たちは、

颯爽(さっそう)に外に出ては様子を伺った。


桃馬「‥やっぱり二人くらい先に先行させた方がいいんじゃないか?」


憲明「でも、ばれるリスクが高いぞ?」


ジェルド「仕方ない‥俺と京骨が先回りしてやるよ。」


京骨「‥‥。」


ジェルド「京骨?おい、なにボーっと‥あっ。」


ジェルドの提案に無反応な京骨に、振り向き様に問い正すと、京骨は上を向いて口を開いていた。


ジェルドも注意しながら上を向くと、

徐々に言葉を失った。


桃馬「ん?どうしたジェルドまで‥ん‥なっ!」


憲明「‥ま、まじで‥。」


四人の目に入ったのは、()巻きにされ屋上から吊るされている七人の微食会であった。


ホラーとも言える光景に、警察や他の生徒たちが何故(なぜ)気にしないのかは、単純に昨夜の一件を大半の人たちが見ていたからだ。


ちなみに、ライブが終わった頃には、

既に五人が吊るされていた。

高野、大西、近藤、渡邉、本間

※番場、星野は、必死の逃走中であった。

しかし、ラグラを隠していた藤井、茂野、坪谷に売られ、結局捕縛された。



ジェルド「っ、お、驚いてる場合じゃない!ほら、京骨行くぞ!」


京骨「えっ?ぐへっ!?」


ジェルドは我に返ると、京骨の首根っこを掴み急いでギールの後を追いかけた。


桃馬「よ、よし、俺たちもいくぞ。」


憲明「お、おうよ。」


少し遅れて桃馬と憲明も動き出した。



その後は、

特別な何かが起こるわけでもなく、

二匹は普通に学園内を歩いていた。


序盤は心配していた四人であったが、違和感のない光景にただ安堵するのであった。



シール「お兄ちゃん‥、おんぶ~。」


ギール「ふっ、仕方ないな。よっと‥。」


そろそろ"時間"が迫っているのか、

シールはギールの足にしがみつき、最後の甘えを見せる。


ギールは、微笑みを浮かべシールを持ち上げ抱きかかえるも、シールの体重は昨日よりも軽く今にも霊体に戻ろうとしていることが分かった。


すると、

自然に込み上げる感情が溢れ、

少しだけ抱き締める力が強くなる。

ギールが、シールを抱きかかえながら再び歩きだすと、シールは弱々しい声で話す。


シール「お兄ちゃん‥暖かい‥。」


ギール「‥‥‥そうか。」


シール「‥お兄ちゃん‥実は私ね‥シャルお姉ちゃんたちが‥お兄ちゃんと出会ってから‥安心したんだよ‥。」


ギール「‥‥うん。」


シール「‥私のせいで‥長い間‥お兄ちゃんが傷ついて‥心を固く塞いで‥‥それを‥シャルお姉ちゃんたちが‥来て‥お兄ちゃんの心を癒してくれた‥‥。私は‥本当に‥それが‥嬉しかった。」


ギール「‥うん‥うん。」


声を震わせ声が出ないギールは、口を閉じたまま頷くことしかできなかった。すると、シールの頬に大粒の滴が落ちる。


ギールはその場に立ち止まり両膝をつく。


シール「お兄‥ちゃん‥‥どうした‥の?」


ギール「‥ひっく‥ちがぅ‥傷つけたのは‥俺の方だ。シールが(そば)に居てくれたことも‥知らないで‥シールに見せたくない姿を‥長い間‥見せてしまった‥。」


シール「‥お兄‥ちゃん‥。」


ギールが声をかすれさせながら話す姿に、

シールは悲しい表情を作る。


お互いが背負った十字架が交わった瞬間。

そこには己自信を非難し、相手を擁護(ようご)する際限(さいげん)のない会話が待っていた。


ギール「‥シールの言う通り‥俺は‥シャルたちのおかげで‥今がある‥‥。それでも‥俺には‥シールも必要なんだよ‥‥。」


シール「‥ひっく‥お兄ちゃん‥‥。」


ギール「‥頼む‥シール‥いかないでくれ‥。ずっと‥側に居てくれ‥‥例え‥‥例え‥見えない幽霊でも構わない‥‥。」


感情のままにシールを抱き寄せると、

兄からのわがままを伝えた。


シールに取っては、嬉しくも酷な話である。

一緒に居ても話すことはできず、想いはいつも一方通行になってしまうのだ。


シール「‥お兄ちゃん‥‥私‥このまま‥お兄ちゃんと一緒にいたい‥‥お兄ちゃんと‥お話したり‥手を繋いで‥お散歩をしたいよ‥‥。ふぇ~ん!」


ギール「‥うっくっ‥ぅぅ‥。」


叶わぬ願いに二匹は涙を流す。

そうしている間にも、シールの体は透け始めている。


もはや、奇跡の時間も終わりが迫っている。


様子を見ている四人は、見事に貰い泣きをして、隠れながら泣いていた。


桃馬「うぐっ‥これは‥えぐすぎる。」


憲明「ずるる‥奇跡の代償だな。うぅ。」


京骨「‥代償がでかすぎるだろ‥うぐっ。」


ジェルド「わふぅ‥うぅ。」


そんな感動的な空間に、物凄い速さでギールに迫る少女がいた。


シャル「こらぁ~!ギール!なにシールを泣かせているのだ!」


ギール「ひっく‥‥うぅ?へぶっ!?」


シール「きゃふっ!?」


そう、現れたのは"フラグクラッシャー"のシャルであった。


シャルはそのまま、ギールの顔面にドロップキックを見舞うと、そのままギールは吹っ飛んだ。


様子を見ていた四人も口を開けて唖然とする。


シャル「シールよ!大丈夫か?あのバカに泣かされたのか??」


シール「わ、わふっ‥シャルお姉ちゃん?」


突然の事で何が起きたのか、

理解できていないシールは涙目ながらも驚く。


するとシャルは、

シールが透けている事に気づく。


シャル「ぬわっ!?た、大変なのだ!?シールが透けてるのだ!?」


慌てたシャルが咄嗟(とっさ)に魔力をシールに注ぎ込む。

すると、シールの体は紫色のオーラを纏い。

幽霊から"ゴーストリッチー"へと進化した。


容姿はそのままだが、

黒髪は腰まで伸び、

前髪も目が隠れるほど伸び。

そして真っ黒い"もふもふ"の尻尾が二本と、

金色の瞳と言う、ある意味やばい子が誕生した。


もちろん、体は透けておらず実態の姿となっていた。


シール「わ、わふぅ?」


隠れた四人の男たちは、

今年一番の驚愕的な光景に驚く。


奇跡を越えた奇跡が‥、

目の前に起こったのだった。





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