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第二百五十五話 守秘と陥落

ギールとシールの感動的な再開から一時間後の事、シールは泣き疲れたのか、ギールにしがみついたまま寝ていた。



ジェルド「ようやく、落ち着いたな。」


稔「これで少しは、自分への遺恨は消えたかしら?」


ギール「‥はい、稔さん‥本当にありがとうございます。」


(まれ)に見ぬ素直なギールの姿にジェルドは驚いた。

いつもなら弄り対象ではあるが、今の現状そこまでの気は回らなかった。


稔「お礼はいいわよ。これは私からの"今日のお礼"と神界(しんかい)に帰らない"バカ犬"の面倒を見てくれているお礼だからね。」


ギール「‥神界に帰らない"バカ犬"‥犬神の事ですか?」


稔「そうよ、あの子は神界でも頭を悩ませる問題児だからね。少しの間でも預かってもらえて感謝してるのよ。」


ジェルド「犬神様‥嫌われてるな。」


ギール「あの性格だからな‥そりゃ浮くだろうよ。」


犬神の素行(そぎょう)の悪さは、神界でも問題になっている事実に、二匹は弁論するどころか、そのまま納得してしまうのであった。


更にギールに至っては、今までの接し方が肯定される事になり、今まで通り接することをここに誓うのだった。


ギール「そ、それより、シールはいつまでこのままの姿でいられるのですか?」


稔「それならとうに過ぎてるわよ。本来は十分が決まりだけど‥、あの状態じゃあ引き剥がせられないわよ。」


ギール「‥す、すみません。」


稔「まあ、今回は私と神々からのお礼って事で、朝までそのままにしてあげるわ。」


ジェルド「どんだけ犬神様の件で清々しているんだよ。てか、(はず)みすぎだろ‥。」


犬神様が如何(いか)に嫌われているのか、身に染みて感じたジェルドは思わずツッコむ。


ギール「ありがとうございます!」


稔「ただし、今起きたことは墓場まで持っていきなさい。後は‥難しいかもしれないけど、できるだけシールちゃんを人に見せないこと。」


ギール「わ、わかりました!」


ジェルド「でも‥それは無理だろ?」


ギール「な、何でだ?」


ジェルド「シャルたちを忘れてないよな?」


ギール「っ、しまった‥そうだった‥。」


シールに夢中になりすぎて、

要注意人物の存在をすっかり忘れていた。

勘の良いシャルの事だ、シールを見たらきっと騒ぎ立てるに違いない。


となると、控え室や部室に戻るのは危険である。


ギール「‥仕方ない。ここで寝るしかないか。」


ジェルド「え?良いのか?」


ギール「ここにはマットがあるし、それに今は夏だからかける物が無くても冷房で調整すれば大丈夫だ。」


ジェルド「それでも‥うーん、わかった。俺が後で何かかける物を持ってきてやるよ。シャルたちには俺から上手く言っておくからさ。」


ギール「‥ジェルド‥すまない、恩に着る。」


稔「決まりね。あとは久々の兄妹の時間を楽しみなさい。」


その後、

稔とジェルドは更衣室を後にし、

みんながいる控え室へ向かうのであった。



そして‥二人が去って数秒後‥。

閉まった扉がゆっくり開き‥、

不気味に目を光らせる‥、

一人の女の子がいるのであった‥‥。




稔とジェルドが戻ると、

予想通りギールがいない事をツッコまれる。

ジェルドは予定通りの展開に、ギールは体調を崩して保健室に行ったと説明した。


桃馬「本当にギールは大丈夫なのか?」


桜華「ここを出る前は元気だったのに‥心配ですね。後でお見舞いに行きましょうか?」


ジェルド「そ、それはだめだ!?」


桜華「ふぇ?」


桜華のお見舞いワードに反応してか、

ジェルドは慌てて阻止する。


小頼「ちょっとジェルド~?急にどうしたの?」


ジェルド「えっ、えっと‥その‥と、とにかく‥本人から心配するなって言われてるから‥。」


桃馬「‥尻尾の動きが変だな。嘘ついてるだろ?」


ジェルド「あ、いや‥それは‥。」


あっという間に嘘がばれ追い詰められたジェルドは、何を考えたのか、とんでもないことを口走ったり


ジェルド「あ、あの駄犬が‥お、俺と稔さんを‥襲おうとしたんだよ。」


稔「っ!?」


桃馬「なっ!?」


桜華「ふえっ!?」


小頼「へっ?」


稔まで捲き込んだ言い訳は、

話をしていた三人と、稔さえも驚きを見せた。


ジェルド「そ、それで‥反撃して‥‥その‥。」


桃馬「あの駄犬‥とうとう本性を出したな。」


桜華「は、はわわ!?な、なな、何と言う展開‥み、みなさんに聞かれてないよね‥?」


小頼「これはこれは‥ふっふっ‥。」


とんでもない話に、桜華は他に聞かれていないか辺りを見渡し確認する。

幸い、まわりが盛り上がっていたこともあり、情報が漏れることはなかった。


一方、

稔はジェルドの袖を引っ張り耳を貸させると、

当然捲き込んだ事について説明を求めた。


稔「ちょっと、どういうつもりよ!私まで捲き込んだらギールさんに悪いレッテルが張られるじゃないの!」


ジェルド「す、すみません‥つい‥でも大丈夫です。ギールの悪いレッテルなら前々から張られていますから。」


稔「そういう問題じゃないでしょ!?」


二人がこそこそしていると、

桃馬が話しかける。


桃馬「‥二人とも何"こそこそ"してるんだ??」


ジェルド「あ、いや‥、稔さんの代弁をしようと思ってな~♪」


桃馬「代弁ね~、(なんか‥まだ嘘ついてる時の尻尾の振り方なんだよな。)」


口では上手く言ってるつもりだろうが、

体は正直の様であった。



桃馬「まあ、それは後で聞くとして‥それよりここに戻ってくる際にシャルと会わなかったか?」


ジェルド「えっ?シャル?いや、見てないけど‥。」


桃馬「十分くらい前にトイレに行ったんだけど戻ってこないんだ。」


桜華「や、やっぱり、見に行ってきた方がいいかな?」


桃馬「だな‥、小頼‥は、忙しそうだから、二人で行こうか。」


桜華「あ、あはは‥そうだね。」



小頼「ふへへ‥高貴な神様と‥幼馴染みの美男子の二股‥売れるかも‥。」


エロ同人ネタを脳内で妄想している小頼は、

もはや自分の中のワールドへ閉じ籠っていた。

気持ちの悪い笑みを浮かべて立ち尽くす姿は、

不審者その者であった。


桃馬と桜華が控え室から出ようと扉を開けると、ちょうどそこへ、"黒い何か"を抱えたシャルが走ってきた。


桃馬「あ、お帰りシャル?遅かったな?」


シャル「と、桃馬か!この子を見るのだ!さっき更衣室でギールと寝ていたのだ!」


深夜近くにも関わらず、

珍しく慌てた様子のシャルが、おやすみ中と思われる可愛い黒髪"けもみみ"少女を見せた。


すると廊下からギールの声が響く。


ギール「やめろ、シャル!その子は‥っ!?」


一応保健室にいるはずのギールが血相変えて、

こちらへと走ってくる。


ジェルド「‥‥。」


稔「ふぅ、なるほど‥これはお話以上ね。」


早々に要注意人物に目をつけられ、

ごく一部だが、シールの存在が明るみに出てしまった。


ジェルドは(ひたい)に手を当てお手上げ状態。稔に至っては、想像を越えたシャルのフラグ回収能力に驚くばかりであった。



それより問題なのが、どうして二人が嘘をついてまでギールと少女‥いや幼女との関係を隠していたのか気になるところだ。


桃馬「‥ギール、‥この小さな子は‥誰だ?。」


ギール「ち、違うんだ桃馬!?そ、その子は‥えっと‥。」


既にロリペド認定にしている桃馬の瞳は冷たく、

もはや軽蔑までもしていると言っても良い瞳であった。


ここまでと思ったジェルドは、桃馬とギールに土下座して、嘘をついていたことを告白する。


ジェルド「ギール‥すまん!桃馬!今のは全部嘘なんだ!」


桃馬「いや、それは初めから知ってるよ。」


ジェルド「なっ!?」


桜華「ほ、二人を襲ったのは嘘なんですね‥よかった‥。」


桃馬「いや桜華、安心するのは早いよ。」


桜華「あ、そうだった。」


さすがのこの騒ぎには、

控え室の全員が注目した。


時奈「こらこら、今度は何をしでかしたんだ?」


ギール「と、時奈先輩‥。」


シャル「時奈よ、この少女とギールが更衣室で寝ていたのだ!」


ギール「シャル!?お前は少し口を閉じろ!?」


時奈「ギールよ。」


ギール「は、はひっ!?」


時奈「詳しく聞かせてもらおうか‥場合によっては‥処分が必要だからな。」


ギール「うぅ、は、はい‥。」


その後、

稔の仲介もあり、ギールのロリペド容疑は晴れることになったが、その代わりにシールの存在を知る者が増えることになった。


しかし、シールの可愛さは控え室にいる者たちをデレデレにさせ、ココロと並べたり、寝込みを襲い(平和的に)、お開きの頃には、無事にギールへ返還されるのであった。


その後、

異種交流会は念のため女の子たちを残し、

男たちは部室へと戻ったのだった。




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