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第二百五十一話 執着と報い

時刻は二十一時十二分の刻。


春桜の変も終局へと向かい始めていた。


学園生徒により北側、東側平定。

羅刹(らせつ)こと"牛鬼(ぎゅうき)"の討伐。

(ぬえ)蛇姫(だき)、北条魅蓮の失踪。


その後、

東西南北より、警察機構の合流。

街に蔓延(はびこ)っていた妖魔らの一斉検挙。


完全なる鎮圧までは、目の前まで迫っていた。



その頃南側では、


二人の親子が、腰を下ろしながら話していた。


界人「ふぅ~、負傷者は多いが死人が出なくてよかったな。」


直人「ほんとだよ。防御魔法と聖唱魔法が無かったら百人は軽く死んでいるよ。」


界人「確かにな。これも異世界の力様々だな。」


直人「様々はいいけど‥、少し学園に警界官を忍び込ませても良かったんじゃないのか?」


界人「何を言っている?稲荷たちが来ただろ?」


直人「いや、身内じゃなくて"役人"をだよ。」


界人「‥それは仕方ないだろ。広範囲に人質を取られては動こうにも動けないし、上杉校長からも下手に動かないようにって釘を刺されてたんだからな。」


直人「‥はぁ、なら敵さんの情報くらい欲しかったよ。」


界人「バカ言えて、子供にそんな情報を流せるかよ。それに教えたら無茶するだろ」


直人「うぐ‥ご明察‥。」


息子の考えを意図も簡単に見透かすとは、

流石父親である。


二人がのんびり話していると、

目の前にゲートが開き稲荷と鵺が現れる。


稲荷「お父様♪お疲れ様です♪」

鵺「長官、お疲れ様です!」


直人「げっ、って、鵺さん!?」


界人「よっ、二人ともお疲れ。」


稲荷の登場に直人は、一瞬背筋を凍らせたが、

少し遅れて出てきた鵺を見ると久々の再会に驚くのであった。


対して界人は、何のリアクションも見せず気軽に挨拶を返した。



鵺「あっ、若も居られたのですね。お久しぶりです。」


直人「っ、鵺さんもお久しぶりです!(や、やばい‥いつ見ても、か、カッコいい‥。)」


久々の再会に緊張してか、

ぎこちない挨拶で返す。


界人「何緊張してるんだよ?お前は乙女か?」


直人「んなわけないだろ!鵺さんは、誰よりもかっこ良くて強い妖怪だから‥その‥男として憧れるだろう‥。」


鵺「っ、わ、若‥。」


稲荷「ジーー。」


直人の素直な心の声に心を打たれる鵺に対して、その隣では嫉妬の感情を込めて鵺を睨むお姉さんがいた。


界人「まあ、否定はしないが。それより二人とも木枯沙茉(こがらしさま)の逮捕と"羅刹"消滅以降は何かあったか?」


鵺「はっ、未だ西側の抵抗はあるものの鎮圧には時間の問題かと思われます。あと、蛇姫と北条魅蓮については未だに発見されていません。」


稲荷「おそらく気配を消している可能性があるわ。私の力でも探せないからね~。」


界人「そうか‥、二人の容疑者は手当たり次第探すしかないか。わかった、二人は引き続き任務に移ってくれ。」


鵺・稲荷「はっ、・はーい♪」


界人の指示に二人はゲートへと戻って行った。


界人「ふぅ‥油断ならないな直人?ん?あれ?」


二人の話を終え一息つきながら横を向くと、

そこに直人はいなかった。


界人「‥はぁ、名前通りに育ったな。」


日に日に名前通りに成長する息子に感心するも少し寂しさを感じる界人は、気を紛らわせるために仕事中のケトーを呼び出してもふり倒すのであった。




その頃、

某東側の茂みで身を潜めていた北条魅蓮は、

腕の再生を終え密かに闘技場へ迫っていた。


北条「くっ、警察機構たちが増えてきたな‥。これ以上は危険みたいだね。ん?あれは‥。」


木の影から様子を見ていると、

人目を巧みに避けて闘技場の壁によじ登る、

一匹の蛇を見かけた。


北条(あの蛇‥まだ生きていたのか‥。"にょろにょろ"としぶといな。まあ、どう動くか‥少し様子でも見ようか。)


高みの見物に闇へ溶け込もうとすると、

そこへ、エニカ率いる微食会の四人が接近する。


エニカ「全く、最初から教えてくれたらそんな目に合わなくて済んだのにね。」


ルイ「うん‥ルイとエニカも、みんなの仲間‥除け者はだめ。」


高野「ふぁ、ふぁい‥ひゅみまへん。」

大西「ひゅまん。」



エニカとルイに黙って戦いに出たことがバレ、

運悪く二人に見つかった高野と大西はボコボコにお灸を据えられていた。


(さいわ)い、

二人に裏の顔を知られることはなく、

黙って抜け駆けしたことになっていた。


北条「っ‥あの子達は‥、(‥腕の借りでも返したいけど、警察機構がこんなに居ては面倒だな。)」


北条に取って警察機構は容易い相手ではあるが、厄介な者が現れる可能性があるため、面倒事が嫌いな北条は迷っていた。


がしかし‥。


北条「ふっふっ‥(でも‥、面白いことを思い付いた‥。)」


北条はポケットに入れてある"依代石(よりしろいし)"に触れ妖気を流した。


北条(さあ、僕の傀儡よ‥あの二人を捕らえなさい。)


北条の心の命令に、

周辺の二十人弱の警察機構らが四人に近寄る。



エニカ「あ、お疲れ様です♪」


ルイ「ん?」


先頭にいるエニカは、無言で近づく警察機構に挨拶を交わすが、ルイは不思議そうな目で見つめていた。


当然挨拶の返事は帰ってこず、

二十人の警察機構たちは四人を囲み始める。


エニカ「あ、あの‥なにか?」


ルイ「‥エニカ、下がって。」


エニカ「る、ルイ?」


高野「‥この感じは‥奴がいるな。」


大西「‥ナメたもんだな。」


依代石から流れる妖気を察知した、

エニカ以外の三人は警戒体勢を取る。


大西は懐から魔弾銃を取り出し、

妖気の出所(でどころ)へ一発放つと、

木の裏に"ちょこっと"出ていた北条の左肩を貫通させた。


北条「ぐっ!?」


大西「そんな所に隠れてないで出てきたらどうだ‥?でないと、次は頭をブッぱなすぞ?」



北条「くっ、へぇ~。よく‥分かったね。」


エニカ「っ!?」


木の裏から左肩を押さえた北条が姿を現した。

彼女の銃弾の当たり所が悪かったのか、左腕は全く動いていなかった。


大西「ふっ、さっさっと逃げれば良かったものの、ご丁寧に"お巡りさん"たちを操って居所をバラすとは‥執念深いバカだな?」


エニカ「ふぇ!?み、皆さん操られているの!?」


お転婆で身の危険について鈍感なエニカは、

大西の発言にようやく異変に気づく。



高野「ふぅ、だからエニカを戦場に立てさせられないんだよ。」


エニカ「な、なんですって!?」


高野「~っ!?うぅ、‥エニカは人が良すぎるんだよ。戦いの場で人が良すぎるのは相手のペースに漬け込まれやすいからな。」


エニカ「う、うぅ‥ふん。」


弱点を突かれたエニカは、

反論する事が出来ず少し不貞腐れる。



北条「あはは!エニカちゃんって面白いね~♪僕の腕を切り落とした赤髪の女の子も好みだけど‥決めた今日の収穫はエニカちゃんにしようかな。じゅる。」


高野&大西「はぁ?」


微食会に対する禁句の一つ、


"エニカとルイに害する発言"。


北条の舌舐めずりまで聞いた二人は、

目の色を再び変えた。


北条「ふっふっ、また怖い顔をして‥。でも、二人じゃ僕には‥。」


北条が話している最中に、


バァンッ!と


かなり大きな銃声が響いた。


大西と高野の手には、

微食会の十人が一丁ずつ持っている、

坪谷勇二郎が仕上げた禁断の銃。


魔弾式コルト・パイソン型ハンドガン


"BS-K500シリウス・エンド"


なる物を構えていた。



そこには腹部を大きくえぐられ致命的なダメージを負った、北条魅蓮が立っていた。


北条「かふっ‥えっ‥。な、なに‥が‥‥。」


高野「‥見てわからないのか?」


大西「ふっ‥まあ知ったとて、どうせお前は終わりだ。俺たちを本気で怒らせたんだからな。」


北条「‥はぁ、はぁ、かはっ‥、こ、こんなくらい‥な、ん‥とも‥ごはっ。」


再生しようにも、

気を失うくらいの激痛に、致命的な損傷と魔力が妨害し、北条は両膝をついて苦しんだ。


これにより操られていた二十人の"お巡りさん"は、妖気の作用でその場に気絶するも、

あまりにも大きな銃声に、少し離れた所で反応した警察機構たちが、異変を知らせる笛を吹きながら現場へと駆けつける。


すると北条は、この機に最後の力を振り絞り道ずれを図ろうと依代石に魔力を注ぎ込もうとする。


しかし、それを大西が許すはずもなく。

右ポケットに手を入れた瞬間、

右手目掛けて発砲。


北条の右手とポケットはちぎれ、

依代石ごと粉砕した。


北条「ぐあぁぁっ!!?」


大西「させるかよ‥。」


狂気とも言える大西の後方から、

高野が駆け出し北条に止めを差しに出る。


鋭利なピアノ線を装備してお得意の切り刻みの体勢に入る。


高野「‥これで終いだ!」


北条「っ!?」


高野が北条とすれ違うと、

大西は閃光玉を投げまわりの視界を奪った。


その間に北条の体はズタズタに切り刻まれ、

青い炎が灯された。


エニカ「うぅ‥あ、あれ‥。」


ルイ「‥?。」


二人の視界が戻ると、

背を向けた高野と大西、

目を眩ませた多くの警察機構たちが構えていた。


エニカ「ふ、二人とも?」


突然二人が豹変して思考が止まったエニカは、

恐る恐る二人に声を掛けた。


大西「ん?どうしたエニカ?」


高野「あはは、いや~、終わった終わった~。」


振り返った二人は、

まるで夢でも見ていたかの様に、

いつもと変わらぬ表情であった。


あの慈悲すら感じさせない殺気と冷酷な表情。

そして残虐的な攻撃をした者とは思えない反応に、エニカは恐怖を感じた。


しかし逆に、自分とルイのために怒り狂った事を証明する事になり、余計にエニカのお転婆とじゃじゃ馬を暴発させる切っ掛けとなるのであった。



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