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第二百四十六話 因果と応報

あらすじ

突如現れた退魔士北条魅蓮により、

妖獣"蛇姫"は瀕死の重症を負い、

更には無様に吊るされた木枯 沙茉(さま)に対して、

祖父の殺害を淡々と話し挑発するも微食会の露払いもあり返り討ちに合った。


全てを失ったと悟る沙茉は、

銃を構える微食会の大西雷音に、開き直って死を選ぶも"こてんぱんに"され、リヴァルに身柄を預けられた。


だがしかし、

そんな甘いやり取りに、返り討ちにあったはずの北条魅蓮は不敵に笑うのであった。



北条「あはは!なんだい‥殺さないのかい‥。」


沙茉「っ!北条‥。」


沙茉を含む四人が、倒れた北条へ視線を向けると、何事もなかったかの様子に彼女は立ち上がった。


北条「今の少し効いたよ~。それに‥、僕を拘束して邪魔をしたのは誰かな??」


高野「俺だ!」


大西「はぁ‥。」


さすが微食会で一番謎深い

ポーカーフェイサーの高野 槇斗(まきと)である。

危険を漂わせる相手を前にしても、

自分のペースを(たも)ち続けようとする。


北条「っ、お、おやおや、即答とは‥、君は‥少し面白いね。」


高野「そう誉めなくていいよ。」


大西「マッキー、向こうは誉めてないよ。」


リヴァル「‥‥(た、対応が一瞬で変わったな。相手を油断させて‥動向を(さぐ)っているのか‥、それとも‥。)」


先程まで殺伐としていた二人から、

突然穏やかな雰囲気を漂わしている。


この切り換えを見たリヴァルは驚き、

この後どう出るのか気になった。


北条「‥ふふっ、気に入ったよ~。君‥僕のおもちゃにしてあげるよ。」


高野「あ、結構です。そういう趣味はないんで。」


北条「‥うぐっ、へ、へぇ~。実に面白い反応だよ‥、今まで会ってきた者にはない物を感じるよ。」


高野「いやいや~、またまた誉めなくても~。」


北条「‥っ‥や、やるじゃないか。」


北条は自分のペースに持っていけない高野に対して、変なプライドを掲げて張り合い始める。


例えどんなに強い精神を持った者でさえも、

簡単に自分のペースへ呑み込んでは弄んできた。


だが、目の前にいる男は、


今までおもちゃにしてきた者とは違う。

強い精神でもなく。強い魔力、妖気でもない。


どの様な作用を働かせているのか、

謎過ぎる男である。


この感覚は正直認めたくはないが、

自分と同じタイプの人間‥あるいはそれ以上‥。

そして、北条魅蓮にとって最大級の天敵である。


そのため北条は右ポケットに入れてある

"依代石(よりしろいし)"に手を伸ばす。


その行為に危険を感じた大西は、

北条の足下に一発の威嚇射撃を放った。


北条「っ。」


大西「それ以上動くな。」


高野「おやおや?何を取り出そうとしてるのかな??」


北条「‥ふ、さて‥なんだろうね。(ふっ、やっぱり甘いね‥。今ので僕を殺していれば勝てたかもしれないのにね。)」


北条の右手には、既に依代石を握っており、

いつでも操る準備はできていた。


対してそうとも知らない高野は、

見透かした顔で北条を見ていた。


高野「へぇ~、既に何か持ってますね?リヴァルさん、ちょっと、その罪人と一緒に離れてもらえますか?」


リヴァル「っ、な、何を言って‥。」


高野「お願いします‥、たぶん死にますよ?」


リヴァル「っ!(な、なんだこの殺気‥。)」


一瞬背筋が凍りつく様な殺気に、

鬼神であるリヴァルに死の恐怖を感じさせた。


リヴァル「わ、わかった。いくぞ、沙茉。」


無気力化した沙茉の腕を取り、

後退しようとすると、突然沙茉が叫ぶ。



沙茉「‥‥っ!北条!貴様だけは絶対に許さん!」


リヴァル「っ!こ、こら!?」


北条「あはは!何もできない癖に口だけはまだ達者なようだね??」


沙茉「黙れ!お前は‥いつか必ず滅びの道に進む。その時を楽しみにしていろ!」


北条「全然説得力を感じないな~?まあ、負け犬の遠吠えにはお似合いだけどね~?」


沙茉「‥ふっ‥おい、そこの二人!」


大西・高野「あぁ?・ん?」


偉そうながらも堂々としている沙茉に、

大西と高野は聞く耳だけを傾ける。


沙茉「頼む!お前たちが恨みを晴らす仕置人なら、俺の依頼を聞いてくれ!」


大西&高野「‥‥。」


都合の良い沙茉の依頼に二人は沈黙する。


逆恨みとも思える依頼、まして自業自得ともいえる悪人からの依頼。本来は受け入れがたい物だ。


沙茉「お、おい!聞いているのか!?」


高野「生憎、悪人の依頼は受けてないものですからね。」


大西「あぁ、逆恨みはお断りだ。」


当然とも言える答えだが、

依頼の沙茉は引かずに両膝をついてお願いする。


沙茉「頼む‥、じじぃの‥仇を取って‥く‥ください。お願いだ‥。」


次第に口調が弱々しくなり涙を流し始めた。

本来受ける通りはないが、目の前にいる危険な相手を考えれば‥、受けなくても望みは叶う。


二人はついで感覚で沙茉を少し試すことにした。



大西「ふぅ、涙を流せるのなら初めから悪に手を染めなきゃよかったものの‥。」


高野「全くだ‥。それで対価は。」


沙茉「‥俺の命‥そして‥今まで退魔協会がしてきた汚職の告発‥。」


充分な答えに二人は笑みを浮かべた。


大西&高野「‥ふっ、その恨み聞き入れた。」


ここに、沙茉と二人の契約は受理されると、

沙茉は二人に頭を下げ、リヴァルと共に一時後退した。


一方、二人の眼力と圧力の前に動けなくなっていた北条は、二人の正体を知ったことにより笑いだす。



北条「あはは、これは驚いたね~?まさか、噂の仕置人が君たちとは‥。」


高野「ふっ、驚いたのこっちだよ‥、あなたの様な人なら分かってるかと思いましたがね。」


北条「ふふっ、僕にだって知らないことはあるよ。全知全能ではないからね。」


大西「‥それは、"冷酷の蜘蛛(スパイダー)"でもか?」


北条「っ!?へ、へぇ‥そんな事も知っているとはね。」


大西が放った一言に、

北条は一瞬だけ目の色を変えて驚く。


高野「名前を聞くまでわからなかったけど、裏に精通していれば嫌でもそんな情報は入りますからね~。」


大西「かつては退魔士の中でもエリートと呼ばれていたが、その力を恐れた退魔協会により消されるも‥生存の噂が流れ、それからは良い話は聞きませんからね。」


北条「ふ、ふふっ‥君たちやっぱり面白いよ。ねぇ‥僕のおもちゃじゃなくて‥僕の仲間にならない?」


高野「怪しいカルトのお誘いは受け付けてませんよ?」


大西「そうだな。あなたの危険度も分かってますし、丁重にお断りします。」


北条「ふふっ‥それは残念‥。じゃあ‥死んでもらおうかしら。」


北条が狂気染みた表情を作ると、

依代石に力を込める。


すると、大西が突然高野に銃を向け発砲。


高野「っ!何をする大西!」


大西「‥‥。」


大西の瞳に光はなく、操られているかの様な無表情で次々と発砲する。


北条「ほらほら!その子に気を取られてる暇はないよ!」


大西の猛攻に気を取られていると、北条の合成魔法を纏った拳が高野の腹部を捉える。


高野「ぐふっ!?」


勢いよく吹き飛ばされる高野を、

急いで戻ったリヴァルが受け止める。


リヴァル「た、高野くん大丈夫か!?」


高野「かはっ‥はぁはぁ、リヴァルさん‥さ、沙茉‥は。」


リヴァル「それなら姉さんに預けて来たから安心しろ。」


事情がわからないリヴァルに、

北条と大西が二人に歩み寄る。


北条「おやおや‥もう戻ってきたのかい?案外早かったね?」


リヴァル「貴様‥大西くんに何をした。」


北条「ふふっ、見てわからないの?裏切りよ?う・ら・ぎ・り。」


高野「見え透いた嘘言うな‥。明らかに操られてるだろ。」


北条「ふふっ、さて、どうかしらね?」


北条は再び右ポケットに手を入れ依代石に力を込める。


すると、リヴァルまで高野に襲いかかる。


高野「‥っ!くっ!」


手負いの高野は糸を操りリヴァルの動きを止めるも、大西による遠距離攻撃と北条の連撃が襲う。


一瞬で予想外の大劣性に、

もはやこれまでと思ったその時。


北条と大西の前に二人の美女が飛び込んだ。


一人は、

深紅(しんく)の赤髪と二本のアホ毛を揺らし、

深紅の覇気を(まと)い、槍戟(そうげき)"四方華戟(しほうかげき)"を片手に北条に無言で斬りかかり。


もう一人は、

清楚で綺麗な赤髪をたなびかせ、

操られている大西(アホ)に、怒りの回し蹴りを見舞う。



北条「っ!おやおや、今度は‥な、なんだい‥。」



大西「ぐへっ!?」




余りの覇気に攻撃を中断し後ろへ後退する北条に、後頭部にクリンヒットした大西は無様に倒れ込んだ。


ルイ「‥‥。」



エニカ「全く‥ここには途中で見なくなった二人がいた様ね。」


高野「‥っ!る、ルイ!?それに、え、エニカ‥。」


まさかの二人の登場に、高野は唖然とする。

するとルイが、高野に振り向き無言で歩み寄ってくる、その表情は目を赤く光らせ完全に怒っている様であった。



高野「っ、る、ルイ‥た、助かったよ♪そ、それよりここは危ないから下がって‥ひっ!。」


深紅の美女が高野の近くまで接近すると、

"四方華戟(しほうかげき)"の石突きで地面を力強く叩いた。

コンクリートの地面は割れ、十メートル先までヒビが入り込む。


ルイ「‥‥。」


しかも彼女の無言の圧は、

言葉にならないほど恐ろしいものであった。


エニカ「こら、(らい)!起きなさいよ!」


大西「んんっ‥ブクブク。」


こっちはエニカに胸ぐらを掴まれ、

大西は泡を吹きながら気絶していた。


先程のかっこいい姿は見る影もなかった。


北条「‥へぇ~、これはこれは‥まさかこんなに可愛い女の子までいたとは‥じゅるっ‥いいね~、僕のおもちゃにはピッタ‥かはっ!?」


北条は二人の美女を見るや、

早速自分の"おもちゃ"にしようと言いかけるが、ぶちギレモードのルイにより、目にも止まらぬ早さで懐に入り込まれ、四方華戟(しほうかげき)の石突きで"みぞおち"を突かれ、吹き飛ばされた。


すると、妖気の集中が途切れた事から、

依代石と力の連動が解け、操られていたリヴァルが正気に戻る。


リヴァル「っ!お、おれは何を‥。」


高野「も、戻りましたか。」


亜種族にして力のあるリヴァルでさえも操る力に、高野は北条に対する危険度を上げた。


コンクリートの地面に叩きつけられながら転がり込む北条に、ルイはジリジリと迫る。


北条「かはっ‥はぁはぁ‥、はぁはぁ‥。(い、息が出来ない‥。なんだこれは‥。)」



経験のない感覚に北条はかなり焦った。

たった一撃の攻撃で、呼吸ができなくなるくらいの衝撃。そして、シンプルに死の恐怖を感じた。


ルイ「‥お前‥二人を傷つけた‥ルイは怒った‥許さない。」


感情と表現が上手く噛み合わないのか、

殺気の籠ったルイのカタコトは恐ろしく、

少し離れた高野とリヴァルのところまで重い殺気が届いた。


リヴァル「な、なんだ‥この殺気は‥並大抵の亜種族でも出せないぞ。」


高野「こ、これが‥本気で怒ったかもしれない‥ルイの本気か‥。」


エニカ「本気も何も、あれは間違いなく本気よ。」


ぶちギレモードのルイに気を取られていると、

大西の首根っこを掴み引きずるエニカが声を掛けた。


高野「え、エニカ‥。」


エニカ「‥ルイがあんなに怒る時は、ルイにとって大切なものが傷つけられたり、重要な所で嘘をつかない限り、滅多に怒らないわ。」


高野「そ、そうなのか?」


エニカ「そうよ。よっと、」


大西「ぶくぶく‥。」


エニカは少し乱雑に大西を投げると、

指の関節を鳴らしながら態度を豹変させる。


エニカ「さて‥朝から何していたのか‥詳しく聞かせてもらおうかしら??」


高野「っ、ちょっ、待てって!?それは、相手を倒してからだよ。」


エニカ「‥もう、決着は着くわよ。」


高野「あ、相手は人を操れるんだぞ!」


エニカ「そんなの、(らい)を見たときから分かってるわよ。」


高野「だ、だとしても‥。」


エニカ「まあ、見てなさいって。」


やたらと自信ありのエニカに、

高野は言われるがままルイの様子を見守る。


ルイ「‥‥せめての情け‥苦しまないように殺す。」


北条「はぁはぁ、くっ!」


北条の首を狙い四方華戟を振り下ろすと、

突如大量の煙幕が発生し、煙が晴れた時には北条魅蓮の右片腕が残されていた。


ルイ「逃げた‥。」


エニカ「ルイ~!今の煙大丈夫だった!?」


ルイ「うん、大丈夫‥。」


エニカ「よ、よかった~。」



高野「はぁ‥逃げられたか。あいつとの契約どうしよう。」


リヴァル「‥ふぅ~ん、ん?高野くん、朗報だ。やつは学園内に侵入した様だ。」


リヴァルは、ダメもとで切り落とされた片腕の血液から妖気や魔力などの力をたどり、その力が学園内に侵入したことを察知した。


高野「ほ、本当ですか!じゃあ、早速追いかけ‥。」


手負いながらも追撃しようとする高野に、

突如後方から何者かに両肩を掴まれる。


後ろから感じる嫌な気配、

高野は恐る恐る振り向くと、無表情のルイと満面な笑みを浮かべるエニカがいるのであった。




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