第二百三十八話 馬鹿と島流し
時刻は十九時四十八分。
春桜学園全体を覆っていた防御結界が所々破壊され、続々と妖魔連合隊が学園に入り込む。
だが、警備についた学生たちには想定内。
使い魔や式神を活用し襲撃に備えていた。
更に、ここで臨界制から援軍が到着する。
臨界制生徒会長兼春桜学園副会長を務め、
腰まで伸びた金髪ポニーテールに、
絵に描いたような無駄のないスタイルと大人びた佇まい。
そして、クールで美しく帝都を支える家柄の令嬢でもある。
"シルフィーナ・コードルト"を筆頭に、
地の利を活かした、防御陣を築いていた。
ここで小話
シルフィーナは帝都を守る五聖剣の一人、
ガーレン・コードルトと言う兄がいました。
しかし、先の帝都の変で遺体も残らぬ討死をしてしまい、一ヶ月近く伏せってしまった事があり、何とか克服したそうです。
ちなみに恋人は‥いるそうですが、それはまたの機会で。
各第二防衛戦の配置はこうなった。
東側
シルフィーナ率いる臨界制
二条実光、三条実時、藤原志道、
六組武装一派 。
南側
本田忠成率いる三年士道部
高田海洋、燕奏太、三条晴斗
二年三組一派。
北側
四風姉妹が率いる忍び一派。
スザク率いる魔候貴族。
他、三年武装集団。
西側
聖籠忍率いる大本営
相川葵、シェリル、一部臨界制生徒。
二年士道部半数。
そして各陣営に教師を配置。
内部の大雑把な配置はこんな感じである。
そして最初に動きがあったのは、
東側であった。
学園内東側では、林の中をぞろぞろと侵入してくる敵に対して、強襲を仕掛けようと二条と三条の部隊が備えていた。
ちなみに、
学園東側前線で交戦している。
高野、大西、両津リヴァルは、あまりにも悲惨な現場なため、ここは敢えて真の地獄と化したと言っておこう。
三条「実光そろそろ‥。」
二条「‥まだだ。もう少し‥もう少し‥よし、鉄砲隊放てぇ!」
妖魔連合隊との距離、約二十メートルに差し掛かった時、二条の号令により一斉に魔弾銃を発砲する。
火薬の弾ける音と共に、魔力が籠った鉛弾が青い閃光を纏い妖魔連合隊を襲う。
しかし、魔弾銃はその威力から連続撃ちができず、一発撃つことに"コッキング"をしなくてはならない。しかも、一度に弾を詰めれるのは三発までなので、性能は古いライフル銃並みである。
二条「第二射、放てぇ!」
血湧き肉躍る火薬の音に士気は上がり、
妖魔連合隊は、考える間もなく倒れていく。
侵入してしまえば、
こちらの物と妖魔たちは考えていたようだが、
むしろ地獄の入り口であった。
強襲に成功した二条らは、
一隊を東第一防衛陣まで後退し次に備えた。
三条「あはは!相手の慌て様見たか?」
二条「‥慢心はするな。これは遊びじゃない。本物の命を懸けた戦いだ。」
三条「あはは、そうだな。」
?「ふはは、相変わらず戦いに餓えているな?」
?「ほっほっ、野蛮とはまさにそなたのことよの?」
二条「ふっ、臨界制へ流されても相変わらずだな。実槍、実鬼。」
いつぞやの春の大戦乱祭では、
西軍に加担し本田忠成の離反により、
秒殺でリタイヤ。
その後西軍は敗軍となると、
"三撃槍王"五条実槍
"鬼畜陰険"六条実鬼
この二人は、罰として権力が一切通じない臨界制へ流された。
そのため不便な生活を強いられ、
反省しているかと思ったが‥。
五条「あはは、そうか?俺はあの敗戦のお陰で色々としがらみから解放されて気が楽なんだけどな。」
六条「ほっほっ、実槍の言う通り、向こうの方がこちらより気が楽であるよ。」
どうやら、ストレスで溜め込んでいた毒が抜け、性格などが穏やかになったようだ。
三条「まあ、あの時見たいに秒でやられるなよ?」
五条「あはは、そうだな。」
六条「あの時は相手が悪かった。本田殿では足元にも及ばん。だが‥。」
六条が何かに気づくと、
偵察していた生徒から敵発見の合図が送られる。
六組生徒「二条!敵だ!」
二条「っ、怯まず来たか。すぐに魔弾銃で迎撃‥。」
二条が指示を出そうとすると、
六条と五条が前に出る。
六条「待つのだ二条‥、ここは私と五条に任せよ。」
五条「そうそう、ここは条家として汚名を返上したい。」
二条「‥お前ら。」
三条「あはは、お手並み拝見だな。」
林から続々と妖魔らが現れると、
前線に五条と六条の二人が前に出る。
黒い着物を装うった二人の公家。
五条は、異世界で手に入れた槍戟"バカンス"を持ち。
六条は、天叢雲剣のパチ物、天野叢雲を手にし、
迫り来る妖魔たちに向け挨拶代わりに、
二人が同時に衝撃波と共に斬撃破まで飛ばした。
だが、ここでトラブル発生。
妖魔連合隊だけじゃあきたらず、林の木々まで薙ぎ倒され、終いには一部結界に穴を開けてしまう結果となった。
自然破壊及び結界破壊、計二犯である。
五条「ふはは!どうだ悪党共!死にたい奴がいるなら三撃槍王の俺が相手になるぜ!」
六条「ほっほっ~♪この程度とは守りに徹するまでもない。」
ようやく本領発揮できた二人は、
二犯を犯しても満足そうに佇んでいた。
例え性格は穏やかになったとは言え、
知恵は変わらずバカであった。
三条「あらら~、あの二人張り切りすぎてやっちまったな。どうするよ実光?」
二条「‥‥決まってるだろ。構え。」
三条「お、おう。鉄砲隊構え!!」
六組の生徒たちは号令に従い、
魔弾銃を構え発砲指示を待つ。
五条「ん?実鬼、今何か聞こえなかったか?」
六条「ほっほっ、おそらく皆が私たちの強さに驚いたのであろう。」
五条「なるほど、なら、俺たちだけで迫り来る敵を皆殺しにするか。」
六条「ほっほっ、それもいいでしょうな‥。」
‥‥。
なんとも都合の良い解釈で酔いしれる二人、
後方では撃つ気満々な鉄砲隊がいるとも知らずに数秒沈黙する。
正面からは破損した結界から妖魔たちが入り込み、先程より多い数が攻め混んでくる。
五条&六条「なら!勝負!!」
二条「放てぇ!」
二人が焔玉を投げて戦場を明るく照して敵に突っ込むと、同時に二条から発砲令が下り、二人を称賛でもするかのように発砲音が響く。
林が開けたことにより視界が開き、二人の心躍る健闘が二条たちの戦心に火をつける。
二条「‥ふっ、守り手が前に出てどうするんだよ。」
三条「‥ふっ、狂人走れば後に続くか。どうする実光?」
二条「ふっ、あんな戦いを見せられて黙っていられるかよ。」
三条「だよな~。」
三条が刀を抜くと、あわりも魔弾銃を置き刀を抜き始める。
二条「第二鉄砲隊とここに残りたい者はここを死守しろ。残りは、俺と三条と共にあの二人の阿保に続く。」
六組一同「おぉ!」
二条「‥ならばよし、いくぞぉ!かかれぇ!!!」
二条の大号令により東第一防衛陣から、
突撃するのであった。