第二百三十七話 慢心と無情
闇夜にて
戦火に舞うは
もののふの
光照すは
戦華の乙女
時刻は十九時半。
空は薄暗く若干明るさが残るものの、
闇に住まう者たちが活動するには充分であった。
学園の四方から攻める妖魔、亜種族連合隊は、
怨霊も加えて本格的な総攻撃を始めた。
しかし、鉄壁とも言える微食会の迎撃に妖魔連合隊の屍は二千を越えた。
だが、そんな鉄壁でも必ず限界はある。
おそらく気になる人もいるだろう、
四方がダメなら八方から、微食会が居ないところから強引に攻め入ればと思うだろう。
実際、今の学園敷地内には学園教師及び生徒たちによる、広大な結界が張られており、部外者からの侵入を防ごうとしている。
だが、所詮は一時しのぎの物
幾度も攻撃をすれば必ず崩れる。
そしてその時が訪れる。
学園西側防衛戦。
星野「そろそろ、まずいな‥。」
本間「どうした仁くん?何がまずいんだ?」
星野「結界の耐久が落ちている。さすがに、この人数で抑え込むには無理があったな。」
前線には番場と両津直人の弟と名乗る月影が戦っている。
例え結界に穴が開きようが、
ここを突破されれば、相手の勢いがつくことは目に見えている。
星野「‥さて、どうしようか。」
怨霊「呪呪呪‥カカカ!」
後退か死守、星野は二つに一つのことを考えていると、トラウマ級の怨霊たちが不気味は動きで迫って来る。
本間「っ!きっしぇーんだよ!さっさと成仏しな!」
怨霊「ぎぇぇぇぇっ!!?」
本間の容赦ない首跳ねが、怨霊共にお見舞いする。例えそれが女の怨霊でも容赦はなかった。
星野「‥南無阿弥陀仏。成仏なされ。」
本間「供養してる場合じゃねぇよ。仁くんの魔力はどうなんだ?」
星野「それなら ‥あと、これで四割かな。」
カツン!っと杖を地面に叩くと大きな魔方陣が浮き上がり、辺り一帯の連合隊を蹴散らした。
月影は慌てて魔法の光で現れた影に隠れるも、
番場は可哀想なことに捲き込まれた。
本間「せいっちゃん!?月影くん!?」
星野「安心しろ。人間には効果は薄い。」
本間「ばかばか!?月影くんは違うって!?」
星野「っ、おっと‥これはまずい。」
本間「もし何かあったら‥第三者‥直人と戦闘になるぞ。」
星野「‥ど、どど、どうしよう。」
家族思いの強い直人のことだ、
百倍返しでツケを精算させるられることになる。
月影「あ、あの、僕は大丈夫ですよ。」
二人が動揺するなか、暗闇から月影が現れる。
すると、二人はすぐに振り向くや、月影の体を触り始める。
月影「はひっ!?あ、あの、な、何でしょうか?」
只でさえ人見知りの月影に、
二人は月影のあちらこちらを触り、
傷がないか確認する。
月影は、ここまでがんばって我慢していたが、
これには思わず闇に逃げようとする。
しかし、この行為により、
直人に一切合切漏らされると勘違いした二人は、両腕を掴み引き止めた。
星野「ま、まぁまぁ、そう逃げないでくれ!さっきしてしまったことは、本当にすまないと思っている。」
本間「頼む‥、この事を直人には黙って‥い、いや、望むなら仁くんをここで処刑しますから、何卒俺だけは‥。」
星野「っ!おいおい、本間俺を売るな!?」
本間「第一の原因は仁くんだろ。ケジメつけろよ。」
月影「う、うぅ‥えっと‥(に、兄さん姉さん‥たすけてぇ~。)」
八方塞がりの月影に、救いの手が差し伸べられる。
まあ、差し伸べるよりは鉄拳制裁だが‥。
番場「おい、二人とも~?」
本間&星野「っ!」
月影「ひっ!?」
後方より低い声で殺気を漏らす男がいた。
二人は恐る恐る振り向くと、黒焦げの番場が目を黄色く光らせ眼力強く睨んでいた。
本間「ま、待てせいっちゃん!?俺じゃない、仁くんが主犯だよ!?」
番場「へぇ~、仁くんが‥。これはどう言う了見なのかな?」
星野「す、すまん‥つい大魔法を放ってしまった。」
番場「ほぅ、なるほどな‥。」
指の関節をボキボキ鳴らし、
制裁準備万端である。
番場「で、直人の弟にしがみついて何してるんだ?」
星野「あ、いやこれは‥、その、怪我してないか‥心配なんだよ。」
本間「本当は直人にチクられることを恐れて止めてるだけです‥。」
星野「なっ!?言っちゃダメだろ!?」
月影の目の前で本音を漏らす本間に、
星野は慌てて突っ込む。
月影「あ、あはは‥、うぅ、。」
番場「‥ほう。で、月影くんは怪我はしてるのか?」
星野「そ、それを今調べ‥っ!番場後ろ!」
番場の背後に青白い攻撃的な光を見つけると、
すぐに閃光速さで放たれる。
だが、
番場はその光を素手で捕まえると、
それは邪毒妖気を纏った矢であった。
番場「次から‥次へと‥。」
戦いに熱が入りこれからと言う時に、誤爆と言う結末を迎え珍しく不機嫌な番場に対して、更に新たな水差し行為‥‥番場は矢をへし折り阿修羅と化した。
三人はその恐ろしさから、互いを抱き合い怯え始める。
?「おやおや、まさかあれを素手で止められるとは驚きだよ。」
死屍累々と化した闇から、
一人のローブを着た男が現れた。
片手にはクロスボウの様な物を持ち、
焔魂を照らしている。
属性は陽キャラみたいだ。
番場「お前が‥この隊の黒幕か?」
?「あはは、そんな顔で睨まないでくれよ♪俺はただ、上の命令で来ただけなんだから‥。」
番場「上の命令ね。なるほど、君は相当お喋りのようだね?なんなら、遠慮なく君が知ってることを話してくれてもいいよ?」
挑発的な口調を無視して、
自分のペースを崩さない番場は逆に煽る。
?「あはは、君面白いね~?今まで殺してきた退魔士にそんな事を聞いてくる奴は一人もいなかったよ♪」
番場「ふーん、君は俺たちを殺したいみたいだけど、それはあまりお勧めしないんだよね。だから、"お前"の名前と知ってる情報を教えて、とっとと消えてくれるかな?‥死にたくないだろ?」
?「あはは、まじで面白いな~君は?まあ、良いか、どうせ君たちは死ぬんだ‥。俺は退魔協会一等退魔士、東雲万里だ!かふっ!?」
自己紹介が済んだ瞬間、
背後から刀の様な物が貫いた。
東雲「‥え‥な、なん‥だ‥。」
本間「‥見事な死に際の口上だな。」
東雲の背後を襲ったのは、先程まで星野と月影と抱き合っていた本間であった。
本間は月影の力を借り、東雲の影に移動。
趣味で使っている録音機を取り出し東雲の"ボロ"と最高の瞬間を伺っていたのだ。
本間は録音機の再生ボタンを押し、
徹底的な証言を東雲に聞かせる。
"東雲「あはは、君面白いね~?今まで殺してきた退魔士にそんな事を聞いてくる奴は一人もいなかったよ♪」"
カチッ。カチッ。
"東雲「あはは、まじで面白いな~君は?まあ、良いか、どうせ君たちは死ぬんだ‥。俺は退魔協会一等退魔士、東雲万里だ!かふっ!?」"
本間「とまあ、こんな感じだな。」
東雲「‥き、きさ‥ま‥。」
東雲はありったけの力を振り絞り、
クロスボウを向けようとする。
番場「よそ見すんじゃねぇぇ!!」
東雲「へ、バカめ‥本命はお前だ!」
正面から殴りかかる番場に対して、
東雲はクロスボウを向ける。
だが、クロスボウを持った片腕が落ちる。
東雲「~~っ!!!?」
月影「‥僕もいますよ。」
東雲「っ!ふざげるなぁぁ!!」
番場「地獄で後悔しな!!」
本間は合わせて刀を抜くと、番場は容赦なく、
己の力を一点に集中させ正拳突きを見舞う技。
拳式四式阿修羅を見舞った。
東雲の首は折れ、そのまま勢いよくコンクリートに叩きつけた。
恐らく東雲は漫画とかでよくある。
序盤から中盤と終盤の間まで出てくる、
主人公たちと進展のない小競り合いする、
厄介な敵役レベルだと思われる。
だが、喧嘩を仕掛ける相手が悪すぎた。
そのため可哀想なことに、噛ませ犬と言う形でその生涯を終えるのであった。
問答無用で容赦なし、
如何なる敵でも、写す価値はなし
強くナメてる奴こそ面白い。
闇夜の仕置きで一発退場。
これこそ仕置きの美学なり。
by微食会。
その後数ヵ所の結界が破れ、
そこから続々と侵入されるのであった。