第二百三十五話 開幕と宣戦
時刻は十八時半。
春桜学園内闘技場にて、
国民的アイドル"ユキツバキ"の特別ライブが始まった。
開幕に先立ち花火部による"ユキツバキ"の代表曲"エンジェルハート"に合わせて、絢爛豪華な花火が打ち上げられた。
ステージには彩りのライトが照らされ、
観客の生徒たちは、二年三組、粟島浦雅を筆頭にペンライトや旗などを振り回し、のっけからフルスロットルで盛り上がった。
すると、ステージ下から盛り上がりに応えるかの様に五人の美女たちが飛び出した。
スカーレット「みんな~♪お待たせぇ~♪今日は思う存分に楽しんで行ってね~♪」
センターボーカルにして、天性とも言えるコミ力を持つスカーレットから第一声を投げられた。
会場からは大歓声が上がると、
五人は曲に合わせて歌い始めた。
暴走の一歩手前まで来ている生徒たちは、こぞって上空にメッセージ砲を送りまくり、カオスな現場と化していた。
一方闘技場の外では、生徒会を筆頭に風紀委員、士道部などの一派が警戒を始めた。
闘技場正面入り口防衛本部
忍「‥始まったか。」
忠成「その様だな。想像以上の盛り上がり様だ。」
忍「ふっ、盆踊りとかだと思ったのか?」
忠成「まさか、俺はあまりアイドルとか興味はないが、たまにテレビとかで見る程度の知恵はある。」
忍「へぇ~、今時ユキツバキの本懐を知らないとは‥サ◯エさんを知らないくらいやばいぞ?」
忠成「‥そこまでいくか?」
さすがに国民的アイドルと国民的アニメを比較するのはどうかと思うが、堅物で無知な忠成に取っては気になるものであった。
忍「それより、ライブ開始と同時に敵が来ると思ったけど、中々姿を現さないな。」
忠成「ふ、油断するな。来ない事に越したことはないが、相手は妖魔たちだ。結界を張ったとは言え、どこから来るか分からないぞ。」
忍「だな、それとさっきも話したが、警察機構の情報には、幻魔界に警界庁が提示している妖魔指名手配犯が結集したという話もある‥この件と関わっているなら気を引き締めないとな。」
二人が警戒を強めるなか、
偵察兼暗殺強襲隊の四風御影が本部に現れる。
御影「敵の居所がわかったわ。予想通り東西南北から攻撃を仕掛けて来ているわ。」
忍「そうか。後輩たちの守備はどうだった?抜かれそうとか、やられそうとかあったか?」
御影「いいえ、むしろ返り討ちにしてるわ♪まあ、一応後詰めは用意してるけど、あの子達の間合いが本当に危険すぎて近づけないわ♪」
忍「なるほど‥、心強い後輩たちだな。」
御影「クス、でも、多勢に無勢。いつ漏れるか分からないけどね。」
忍「あぁ、その時は俺たちが全力で相手を潰すだけだ。」
忠成「ふっ‥是非もないな。さて、我は防衛戦に行くとしよう。」
忍「ふっ、さて‥相手を後悔させてやろうか。」
いつも演劇スイッチが入っている忍だが、
今日ばかりは珍しく、真剣な眼差しで事に当たるのであった。
その頃、東西南北に分かれた微食会と両津家は、無数に現れる妖魔、亜種族を片っ端から血祭りに上げ、死屍累々を築いていた。
だがしかし、本当の闇は訪れていない。
日が完全に沈み闇が濃くなれば、怨霊共も参戦し、今の三倍、いや五倍は覚悟しなければならない。
本来なら、一般参加が終わったタイミングで警界庁に通報するべきではあるが、学園の近くには一般住宅などの街があり、下手に刺激をすれば学園を中心とする街を強襲する可能性がある。
もちろん、警察機構の一部ではこの件について知ってはいるが、万が一スパイがいる場合を考えて公にはできていなかった。
そのため‥、
警界庁信潟県支部大本営にて、
極秘の対策会議が行われていた。
首相、中田栄角を始め。
両津界人を筆頭に信頼できる幹部たちが集められていた。
中田「‥さて、いよいよ、決断の時だ。未来ある若者をこの様な所で失っては警界庁‥いや、日本人として恥である。両津くん準備はどうだ。」
界人「はっ、準備はできています。偵察の情報によりますと、既に学園では戦闘状態に入り、学園側の損害はゼロに対して、相手はかなり損害を出ている模様。」
中田「‥よし、では、幻魔界ではどうかな?」
弾崎「はっ、今のところマークしている
者たちに動きはありません。おそらく日が沈んだ時が危険かと思います。」
中田「よし、諸君!相手は油断ならない相手だ。我らが出ずとも十中八九、街を襲い卑劣な手段に出ることは目に見えている。我らは、これを見過ごすことはできん!これより、学園を中心に厳戒態勢を敷く事を許可する!奴等の暴挙を許してはならんぞ!」
幹部「はっ!」
十八時四十六分、
帝都の変に続く、"春桜の変"が開幕する。
現地へ動員された警察機構約七千二百人の勇士たちは、四方八方に配置され目を光らせるのであった。
その頃、四方に分かれた微食会と両津家は、
約千をも越える妖魔と亜種族の屍が積み重ねられた。
こうして、妖魔、亜種族の第一次攻撃隊は、
恐れおののきケツを出して撤退して行った。