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第二百三十四話 春桜の変

時刻は十八時

学園内は未だ平穏そのもの。


しかし校外では、微食会と両津家により百をも越える妖魔などの死屍が築き上げられていた。


正面(南)

茂野、坪谷、藤井

両津昴


学園西側

番場、星野、本間

両津月影


学園東側

高野、大西、

両津リヴァル


学園北側

渡邉、近藤、ラシュリーナ

両津白備


外部の守備陣形はこのようになっていた。




視点は学園北側。


ラシュリーナが気絶から目を覚ますも、ゲートが危険を察知するセキュリティによって閉じられた今、彼女を異世界へ戻す手段がなくなってしまった。


近藤はラシュリーナに、闘技場へ向かうように頼むも、何故か側を離れようとしなかった。


そのため、危険ではあるが戦地に連れてくることになった。


しかし、ラシュリーナは渡邉と近藤が思っていた以上に強かった。


特に"血の剣"通称ブラッドソードと言う、

血で作られた深紅(しんく)の剣である。

切れ味もさることながら、一振りで飛び散る血を浴びると深紅の炎に包まれ灰になると言うチート物であった。



渡邉「‥ふぅ、まだ明るいと言うのに‥敵は"チマチマ"来るし、火遊びはするし‥めちゃくちゃだな。」


近藤「‥だな。それよりまじで俺‥ラシュリーナの下僕にさせられるかも‥。」


渡邉「もうなってるだろ?」


近藤「なってないよ。まあ蒼喜も一緒になるなら‥考えるが?」


渡邉「まさか‥俺にはリーファがいるから間に合ってるよ。」


近藤「‥ほんと好きだよな。この際ルイにも手を出せば良いのに。」


渡邉「おいおい、ルイは不可侵だろ?」


近藤「引っ掛からないか‥。」


ラシュリーナ「ちょっと二人とも!こんな時に何話してるのよ!」


楽しそうに恋ばなをしていると、ラシュリーナが"血の剣"を向けて話しかけて来た。


渡邉「ほら、お呼びだぞ?」


近藤「あ、すまんすまん、かっこよかったよ~。」


ちょろいラシュリーナに、

近藤は適当に簡単な言葉を並べて褒めた。


ラシュリーナ「っ、えっへん♪そうでしょ!そうでしょ♪って、ちっがーう!」


予想通り釣れたものの、途中で気づいたようで

ツンデレ娘特有のツッコミを見せた。



近藤「‥うーん、段々慣れてきたか。‥意外に早かったな。」


ラシュリーナ「何か言ったかしら?」


近藤「いいえ、な~にも‥ん?。」


渡邉「尚弥(しょうや)‥。」


近藤「わかってる‥。」


何かの強い気配を感じた渡邉と近藤は、

ラシュリーナをそっちのけで辺りを警戒する。


ラシュリーナ「こら、人の話を聞いているの!」


近藤「しっ、静かに‥。」


渡邉「何か来る‥。」


禍々しい妖気と共に、

和服姿の白髪けもみみ男子が現れる。


ラシュリーナ「ま、また敵?」


ラシュリーナは攻撃の構えを見せると、

近藤と渡邉が前に出る。


近藤「‥ラシュリーナは手を出すな。もし何かあれば、直ぐに逃げろ。」


ラシュリーナ「な、何言ってるのよ!?」


渡邉「そうだな、相手はかなり‥やばい。」


今まで仕置してきた中でも上級レベルの妖気に、二人の目から余裕が消えた。


和服姿の白髪けもみみ男子は、腰には刀を差し、淡々とこちらへ近寄ってくる。


近藤「‥失礼、そこの方、少し止まってもらおう。」


警告と共に刀に手を置くと、

白髪けもみみ男子は慌てた様子で答える。


白備「あ、す、すみません。警戒させてしまいましたね。こほん、お久しぶりで尚兄、蒼兄。」


近藤「っ、そ、その呼び方‥もしかして、白備か!?」


渡邉「っ、白備だと!?」


白備「はい♪お久しぶりです♪」


辛辣(しんらつ)な空気から一変、久々の再会に二人は驚いた。

白備はもふもふの尻尾を左右に振り、嬉しそうであった。


近藤「大きくなったな~、昔の臆病狐がこんなにもカッコいいイケメンになって‥。」


渡邉「絵に描いたような容姿だな。結構女の子から告白とかされるだろ?」


白備「い、いえ、私は兄さん一筋ですから色恋沙汰はまだ考えていませんよ♪」


近藤「あ、相変わらず直人への愛は変わってないんだな。」


ここで小話

白備と二人の関係は小学三年生の頃に(さかのぼ)る。当時の白備は、姉の稲荷と共に両津家の養子に成り立てで妖楼郭ではなく、両津家に預けられていました。


その頃はまだ、異世界との交流も浅いく、

妖楼郭や妖怪の存在も架空だと思われていた頃であった。


そもそも異世界の交流が始まったのも、

今から十年前でごく最近の話である。白備と稲荷が現れたのも交流から二年後のこと。


それから八年でここまで進展したのは、

もはや奇跡である。





白備「当然です。あっ、それよりお二方、聞いてくださいよ!」


近藤&渡邉「お、おう、どうした?」


突然何かを思い出したのか、

白備は二人に詰めより相談事を持ちかけてきた。


白備「二人もご存じかもしれませんが、先の帝都の変で敵将である、リヴァルとアイシュ姉さんが養子になったことは知ってますよね!」


近藤「ま、まあ‥。」


渡邉「た、確か稲荷姉さんが持ちかけたんだよね?」


白備「そうです!それで兄さんが‥長男の座をリヴァルに取られて‥次男に‥うぅ~。」


二人からして見れば返答に困る内容に、ひどく頭を悩ませた。小さい頃から直人とベッタリとくっついて事もあり、白備にとって長男と次男の座は絶対固定だったようだ。


しかも、長男が元敵だったこともあることから、

更に反発は大きいのだろう。



近藤「ま、まあ気持ちはわかるけど、リヴァルさんは根は良い人っぽかったし、ここは目をつぶってやっても‥、」


白備「兄さんからも‥同じ事を言われました。"僕"も受け入れようと努力してますが‥やっぱり、だめなんです。」


渡邉「崇拝(すうはい)の線を越えた結果だな‥。これは一筋縄ではいかないな。」


三人が話を進めるなか、

再びすっぽかされたラシュリーナが、

不機嫌そうに話に入ってきた。


ラシュリーナ「むぅ、また私をのけ者にて‥、楽しそうね。」


近藤「あ、ごめん、久々の再会だったからつい‥。」


ラシュリーナ「ふーん‥で、その獣とはどういう関係なの?」


近藤「どういう関係って‥友達の弟だよ?」


ラシュリーナ「友達ね~?」


なんだか、二股を探る彼女みたいに

近藤と白備の二人を見る。


渡邉「‥‥。(凄い執着だな。そんなに尚弥を気に入ったのか。)」


白備「えっと、本当ですよ♪私は両津白備、この学園にいる両津直人と弟です♪」


ラシュリーナ「‥知らない名前ね?」


近藤「ぶっ!」


思わず近藤は吹いた。

まあ自己紹介をしてなかったのもあるが、

実際は、一度お昼頃に目の前で会っている。


その時ラシュリーナは固まっていたけど‥。


ラシュリーナ「な、何笑ってるのよ!?」


渡邉「ど、どうした?」


近藤「い、いや、すまんついな。ラシュリーナ、白備の兄さんにはお昼の時に会ってるよ?」


ラシュリーナ「えっ?そ、そうなの?でも、白い髪の獣人とは確か会ってなかった気が‥。」


近藤「白備は養子だよ。それにあの時ラシュリーナは、固まっていただろ?」


ラシュリーナ「‥ふぇ!?じゃ、じゃあ、あの二人の誰かがこの子のお兄様なの!?」


近藤「あぁ、ちなみに身長が大きい方がそうだ。」


事情を知ったラシュリーナは、慌てて白備に頭を下げた。


ラシュリーナ「ご、ごめんなさい!わ、私‥変な誤解をしてました!」


意外にも謝る時は、

素直になるヴァンパイア少女であった。


白備「あ、あはは、いいんですよ♪(何を誤解したんだろう。)」



近藤「そう言やぁ、白備はここに一人で来た訳じゃないよな?」


白備「はい、姉さんと弟の昴、月影‥あと、リヴァルも。」


近藤「リヴァルに対する毛嫌いがすごいな。」


渡邉「と言うことは五人か。」


白備「はい、姉さんは闘技場に、私と昴、月影‥り、リヴァルとで東西南北に分かれています。」


近藤「な、なるほどな、ん?」


渡邉「‥また懲りずに来たか。」


白備「‥もうじき"奴等"の時間ですからね。」


ラシュリーナ「‥‥ふぇ?」


四人の目先には、先程の手勢とは違い五十は越える妖魔と亜種族が現れた。


妖魔「‥聖女の妖気‥、生き肝‥。」


妖魔「‥力‥力‥、我が手に。」


亜種族「‥きひひ、上手そうなヤツがおるな‥。」


近藤「ぺっ、雑魚の決まり文句だな。」


渡邉「‥悪役崩れにはぴったりな‥死に際口上だ。」


二人は刀に手をかけると渾身の殺気を放つ。


妖魔「っ!」


亜種族「うっ!」


低能な妖魔たちでも命の危機を感じさせる程の殺気に、妖魔たちの足並みを乱れる。


渡邉「さて‥、白備準備はいいか?」


白備「いつでも大丈夫です。」


近藤「‥よし、ラシュリーナ、白備と一緒に後ろを任せる下手に前に出るなよ。」


ラシュリーナ「わ、わかったわ。」


近藤「では‥。」


近藤&渡邉「血祭りだ!!!」


刀を抜き青白いオーラを纏わせた二人は、

妖魔と亜種族の群れへと斬りかかった。

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