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第二百三十三話 夢の対面

午後十七時半。

ライブ開始まで一時間。


闘技場の周辺では大きな動きはなく、

ごった返していた入場口も落ち着いてきた。


その頃、

国民的アイドル"ユキツバキ"の警護を任せられた異種交流会(一年を除く)の一行らは、仮練習場で夢の対面をしていた。


シャル「は、はわわ!?ほ、ほほ、本物なのだ!?」


ディノ「シャル様‥しーですよ。」


時奈「こほん、本日みなさんの警護を勤めさせて頂く異種交流会です。どうぞよろしくお願いします。」


初っぱなからのシャルの反応に"ユキツバキ"の五人が微笑む中、"春桜学園生徒会長"兼"異種交流会部長"の時奈が挨拶を述べた。

すると、ダークエルフのダクトから親しみを感じる様な返事が返ってくる。


ダクト「久しぶりだな時奈。元気そうで何よりだ。」


時奈「はい、先輩もお変わりなく。」


まさかの先輩発言に、

桃馬たちの目線は一斉に時奈へと向けられた。


桃馬「せ、先輩って、ダクトさんって春桜学園の卒業生なのですか!?」


ダクト「うむ、だが、私は臨界制で名前も偽名を使っていたから余り目立たなかったけどな。」


小頼「こ、これは凄い話ですね!」


桜華「この学園に国民的アイドルが居たなんて‥す、凄いです!」


ダクト「あはは、でも、この事は内密に頼むよ?」


小頼&桜華「は、はい!そ、それと‥さ、サインください!」


二人はアイドル顔負けの阿吽(あうん)の呼吸で、色紙とペンを突き出した。


ダクト「あはは、いいよ♪今日はよろしくね♪」


ダクトは(こころよ)く二枚の色紙にサインを書くと、他の四人にも色紙を回した。


桜華「はわわ!?一枚の色紙に五人のサインが‥。」


小頼「す、すごいです!」


シャル「ぬわぁ~!?ずるいのだ~!?余もほしいのだ~。豆太!色紙を出すのだ!」


豆太「は、はい!」


二人の優遇ぶりに()いたシャルは、

豆太に色紙を出させる。


すると、ルルーが豆太を見るや声をかけた。


ルルー「豆太‥あれ?よく見たら君‥化堂里(ばけどおり)屋の豆太くん?」


豆太「っ、あ、それは‥その‥。」


スカーレット「きゃぁ~♪久しぶり豆太く~ん♪もふもふな尻尾を今日こそ触らせて~♪」


豆太「ふぇ!?す、スカーレットさん!?」


スカーレットは目を光らせて豆太に飛び付こうとすると、憲明の背中に隠れていたリフィルが飛び出し首根っこを掴む。


リフィル「何をしてるのですかお姉様?」


スカーレット「ふえっ?り、リフィル!?」


久々の再会に驚くスカーレットだったが、直ぐに妹に抱きつく。


スカーレット「うぅ、リフィル~♪久しぶり~♪」


リフィル「お、お姉様‥み、みんなが見てるのですから‥余りくっつかないでください‥。」


久々の再会に、人前関係なく行動するこの異常なコミ(りょく)に、さすがのリフィルでも恥ずかしいようだ。


それより気になるのが、

気品のあるエメラルド色の瞳、

背中まで伸びた長い金髪。

そして整った輪郭‥。

二人があまりにも似ているため、一瞬誰がリフィルでスカーレットなのか、分からなくなるくらいのレベルであった。



憲明「ち、近くで見ると本当に姉妹って感じがするな。」


桃馬「う、うん‥双子みたいだ。」


男二人が素直な感想を述べると、

リフィルから衝撃的な告白を受ける。


リフィル「はぁ、双子も何も‥お姉様と私は双子よ?」


憲明「えっ?」


桃馬「わぉ‥。」


ジェルド「あ、あはは‥。す、すげぇ‥どんどん驚きの話が出てくるな。」


桜華&小頼「ふ、双子!?」


次から次へと語られる驚きの事実に異種交流会の一行は大混乱する。


シャル「こ、これは凄いのだ!ま、豆太よ!」


豆太「は、はひ!?」


シャル「お主、ユキツバキと知り合いの様だが‥一体どういう関係なのだ!」


豆太「い、いえ‥関係と言うよりも、たまにはお客様として来ていただけるだけで‥。」


シャル「な、ななっ、なんと!?」


豆太の証言では何回かは、

会ったことがある模様である。


京骨「化堂里屋か、懐かしいな、昔父上と遊びに行ったな~。」


ルシア「楽しいところなの?」


京骨「あぁ、でも今はどうだろう‥そう言えば桃馬はゴールデンウィークに行ったんだよな?」


桃馬「あ、あぁ、凄い面白いところだよ。プールもあるし、アトラクションも沢山あるよ。」


ルシア「へぇ~♪この休み中にいきたいわね♪」


桃馬「なら、直人に頼もうか?八月四日からお盆前まで妖楼郭に行くみたいだし。」


ルシア「本当に!?じゃあ行く~♪」


あちらこちらで話が進むなか、

ルルーが直人と桃馬のワードに反応する。


ルルー「直人‥桃馬?もしかして、君は佐渡桃馬君かしら?」


桃馬「えっ?はい、そうですけど‥、た、確かルルーさんって、エルンのお姉さんなんですよね?」


ルルー「クスッそうよ、妹がお世話になっているわね♪」


やはりエルンのお姉さんか、エルンとは少し違って柔らかいクール系の人だ。


桃馬「あ、あの‥実は俺直人の‥。」


ルルー「分かっているわ♪弟くんの従兄弟なんでしょ?」


桃馬「は、はい‥そ、その‥ちょっと遠いですけど親戚としてよろしくお願いします。」


ルルー「えぇ、よろしく♪でも、そんなに遠いかしら?」


さ、さすがサキュバス。

従兄弟の嫁の姉でも遠くないとは、

一夫多妻文化は凄いな。


などと、"当時はそう思っていた"。


すると、桃馬はここで多くの者が気になっている議題に小声で聞いてみた。


桃馬「あ、あの‥それで直人とは‥会ったりしましたか?」


ルルー「‥クスッ‥とっても美味しかったわ‥今度君のも‥いいかしら?。」


桃馬「っ!?」


耳元でエロエロしく囁かれた桃馬は、

思わず声だけで、感じてしまった。



一方、

ココロちゃんはと言うと、

目の前にいる無駄にイケメンな犬を、

尻尾を振りながら見ていた。


ココロ「わ、わふぅ~。(か、かか、カッコいい~!)」


ギール「ん?おお~、(なま)ココロちゃんだ。へぇ~、よく見るとちっこいな~。」


ジェルド「そうか?エルゼと同じくらいだろ。」


ギール「ま、まあそうだけどよ。」


ココロ「‥ぁぅ‥あ、あの!」


ココロにとってドストライクな二匹に、

勇気を出して話しかける。


ギール「あ、ごめんよ、今のは悪気が合った訳じゃ‥。」


ジェルド「ほら、ちっこいとか言うから、ごめんよココロちゃん。」


ココロ「い、いえ‥そ、その‥お二人は‥お付き合いをしているのですか?」



ジェルド&ギール「わふっ!?」


想定外の質問に、

二匹は尻尾と耳を直立させて驚く。


するとそこへ、見かねた弥彦稔がため息をつきながらフォローに入る。


稔「はぁ‥始まったわね。二人ともごめんなさい。この子少し腐女子属性があって‥。」


ココロ「ふ、腐女子じゃないよ~。美少年ロマンだよ~。」


稔「美化しても駄目よ。結局内容は腐女子と一緒でしょ?。」


ココロ「わふぅ~。いちゃつくだけなのに~。」


ギール「あ、あはは‥これはガチだな。」


ジェルド「し、知らなかったとはいえ、こいつといちゃつくなんてごめんだな。まして、付き合うなんてあり得ない。」


ギール「っ‥奇遇だな~‥俺も同じ意見だ。」


"犬犬(けんけん)の仲"の二匹が睨み合いを始めると、ココロは尻尾を更に振り回し、興奮し始める。


ココロ「こ、この展開は‥わ、私の好きな本の内容と同じ展開‥。白黒犬遊譚(しろくろけんゆうたん)に出てくる白継(しらつぐ)君と黒江(くろえ)君が、攻めと受けを決める際に睨み合いをするシーン‥。」


ジェルド「‥えっ。」


ギール「ま、まさか‥。」


詳細に語るココロに、ジェルドとギールはぎこちないロボットのようにココロを見る。

すると、今の話を耳にした小頼が嬉しそうに近寄ってくる。


小頼「へぇ~♪ココロちゃんって白黒犬遊譚好きなんだ~♪」


ココロ「は、はい!実は私、白黒犬遊譚の大ファンなんです!」


白黒犬遊譚とは、

約一年前に作者"よりより"と言う人が手掛けた、BL界を沸かせた薄い本である。

内容は、とある学園でいつも仲が悪い白狼(はくろう)族の白継と黒狼(こくろう)族の黒江が、冬馬(とうま)と言う男の忠犬の座を巡って争い、発情し、愛を深めていく、とんでもない同人誌である。


とまあ、

ここまで来ればお気づきだろうと思うが、

作者"よりより"とは、長岡小頼のことである。



小頼「ねぇねぇ、ココロちゃん♪実は白黒犬遊譚の最新刊‥気にならない?」


小頼は、ココロと同じ目線に合わせてしゃがみ込むと、満面な笑顔でエサを()き始める。


ココロ「わふぅ~♪気になりますよ~♪」


小頼「クスッ、実はね‥。その作者‥私なんだよ♪」


ココロ「わふっ!?本当ですか!?」


手応えありの反応に、ジェルドとギールは片手で自分の中の頭を押さえた。


小頼「ライブが終わったら、最新刊あげるから‥もふもふさせて~♪」


ココロ「わふぅ?そ、それだけで良いのですか?」


小頼「もちろん♪なんならサインもつけるよ♪」


ココロ「はわわ!?ぜ、ぜぜ、ぜひ!」


こうして"ウィンウィン"な契約を結ぶと、

小頼は誰もが羨ましがるココロちゃんを"もふもふ"する権利を手に入れた。


その後は、ほとんど親睦会みたいになり、

緊張した空気から一変、

ライブ開始まで色々と楽しんだと言う。


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