第二百三十一話 お忍び讃歌
時刻は午後十六時
納涼祭の一般参加が終わり、
各ブースでは後片付けを終わらせ、
ライブ会場である闘技場へと向かっていた。
その頃、
朝からリフィルとはぐれた憲明は、
同じくルシアとはぐれた京骨と共に今の時間まで、納涼祭を楽しみ、ついでに警備をしていた。
正面門
京骨「結局、リフィルの姉さんとは接触しなかったな?」
憲明「あぁ、なんとかな。そう言えば、直人は無事なのかな。」
京骨「うーん、特に変な魔力は感じないし、ルルーさんも現れたと言う話もないから大丈夫だと思うけど。」
ここで詳細
この時点で直人は襲われているのだが、
直人を転送魔法で移動させたのに、
魔力を感じなかった理由は、
両津稲荷による阻害妖術で妨害されていたためであった。
直人が搾られてることも知らずに、
二人は呑気に納涼祭最後のブース回りをしていたのだ。
憲明「まあ、例え襲われても死ぬことはないだろうし、むしろ喜ぶところだな。」
京骨「ははっ、確かにな。まあサキュバスの文化は一夫多妻だからな。エルンが嫁なら姉も参戦するのが自然だろう。」
憲明「と言うことは、京骨もか?」
京骨「ふっ、俺は幸運なことにルシアの独占下に置かれているからな。他のサキュバスの交流はない。」
憲明「‥それって逆じゃないか?」
普通ならサキュバスにちやほやされることは良いように思えるが、地雷を知っている憲明は敢えて逆の発想を問いただした。
すると、京骨は憲明の肩に手を置き。
爽やかな表情で本音を伝える。
京骨「精気を搾られ虚無感を迎えた時、直ぐにループしたらどうなるか‥わかるか?」
憲明「京骨‥‥ごめん。」
流石に分かりきった答えに、
肩に伝わる悲しき感情を受け止め、
京骨に謝罪した。
憲明「そ、それより、"ユキツバキ"の皆さんはどうやって来るのかな?」
京骨「‥ふぅ、バスかあるいはヘリか。まさか、紛れているってことはないだろ‥。」
二人は話ながら歩いていると、
突然正面からよそ見をしながら走ってきた、
茶髪ツインテ少女が憲明とぶつかった。
体格差から憲明は何ともなかったが、
少女の方は反動で倒れ込んでしまった。
良く見ると同じ学園の制服を着ており、
しかも見かけない子だった。
後輩‥あるいは、臨界生か‥。
取りあえず考えても仕方ないので、憲明は直ぐに手を差し伸べた。
憲明「っ、ご、ごめんよ!?怪我はない?」
茶髪ツインテ少女「うぅ、は、はい大丈夫です。‥‥あ、あの、私も前を見ずにぶつかってしまい、大変申し訳ございません。」
やたらと丁寧な話し方に、
一年六組の子かと思う二人。
するとそこへ、どこかで見たことあるような。
金髪エルフが走ってきた。
金髪エルフ「みのちゃ~ん、会場はそっちじゃないよ~?」
茶髪ツインテ少女「あっ、スカちゃん?」
金髪エルフ「はぁはぁ、もう急に居なくなるんだから心配したよ~♪」
茶髪ツインテ少女「えーっと、居なくなったより、スカちゃんから先行して居なくなったような気がするけど。」
金髪エルフ「ふえっ!?わ、私が原因!?」
どうやら二人は同級生の様に見えるが、
金髪エルフは茶髪ツインテ少女と比べてお転婆感がある。まあ、六組にもこう言うタイプがいるから違和感はないが‥。
それにしても誰かに似ている‥。
京骨「なあ、憲明?」
憲明「なんだ?」
京骨「エルフの子誰かに似てないか?」
憲明「うん、似てるも何も‥リフィルだろ?」
京骨「だよな‥でも、何か違う。」
金髪エルフ「っ!二人とも妹を知っているの!?」
何気もない会話に、
金髪エルフの少女がリフィルの名に反応した。
すると、憲明と京骨の脳内で何かに気づく。
茶髪ツインテ少女は学園の制服とメガネ、ベレー帽を身につけている。
そして金髪エルフさんは、こちらも学園の制服にメガネを身に付けている。極めつけはリフィルにそっくりでお転婆。
かなり怪しい素材だが、
二人は当たり障りなく接してみることにした。
憲明「えっと、まあリフィルとは同級生ですから。」
京骨「ちなみにこいつは、リフィルの彼氏だよ。」
憲明「ちょっ!?いきなり何言ってるんだ!?」
目の前の人が、リフィルの姉にして"ユキツバキ"のメンバーである、スカーレット・ナーシェルかもしれないというのに、京骨は憲明を餌に正体を釣ろうとした。
すると‥。
スカーレット「~~っ!あ、あなたが、村上憲明君ね♪妹がお世話になっているわ~♪」
茶髪ツインテ少女「こらこらスカちゃん?」
何の警戒もせずに正体をバラし、
憲明の両手を掴み上下に握手した。
幸いまわりからは、リフィルとイチャついていると勘違いされ最悪の展開は回避した。
憲明と京骨は、リフィルより強いコミ力に驚愕する中、茶髪ツインテ少女がスカーレットの袖を掴む。
茶髪ツインテ少女「ちょっとスカちゃん、二人とも困っているよ?」
スカーレット「あっ、ごめんごめん、ちょっと驚かせちゃったね♪」
憲明「い、いえ、えっと、もしかして‥その子は弥彦稔ちゃんですか?」
スカーレット「うん♪そうだよ♪」
稔「こら、スカちゃん?公の場でこれ以上簡単に正体をバラさないの。」
スカーレット「えへへ~♪ごめんごめん♪」
いつもライブで見る甘えん坊な妹キャラとは違い、オフの時はクールな感じを見せるギャップに二人は驚く。
更には、一見身長差でスカーレットの方がしっかりしているように見えていたが、実際はその逆と言う貴重な光景を目にすることができ、二人は感動するのであった。
稔「ふぅ、お二人には度重なるご迷惑をかけて申し訳ありません。失礼かと思いますが、ライブも近いのでこれにて。」
スカーレット「クスッ♪ぜひライブを見に来てくださいね♪」
稔「ほらいくよ、スカちゃん。」
スカーレット「ふぁ~、待ってよ~♪また迷子になるよ~♪」
稔「ここの学園広すぎて迷いやすいのよ‥‥。」
楽しそうに去っていく二人の姿に、
憲明と京骨は棒立ちのまま手を振っていた。
憲明「普通に紛れ込んでいたな。」
京骨「そうだな‥。」
憲明「話変わるけど‥直人‥‥。終わったかもな。」
京骨「だろうな。それより結局憲明は狙われてなかったな?」
憲明「ふぅ、よかった~。これでリフィルに縛られずに済むよ。」
京骨「恐妻家なのか?」
憲明「いやいや、独占家なんだよ~♪」
京骨「愛されてるな‥。それより、ライブを見に来てくださいか‥。」
憲明「‥まあ、俺たちは強制だから気にすることはないさ。」
京骨「ふっ‥ちげぇねぇな。」
二人が腰につけた刀に手をかけると、
後ろに迫って来た妖魔を斬り刻んだ。
妖魔「ぐへぁぁっ!?」
憲明「‥さて、平和を脅かす虫けら共‥貴様らを地獄に叩きのめしてやろうか!」
京骨「大妖怪に逆らうとは‥身の程知らずめ、力の差でも思い知らしてやろうか!」
二人の一括に、十人は要るであろう妖魔たちはたちまち逃亡するが、一度抜いた牙は容赦なく妖魔たちを喰らい。そのまま闘技場へと向かった。
そんな様子を空から両津家四男にして烏天狗の両津昴が見ていた。
昴「さすが、憲明さんと大妖怪京骨様だ。俺の出番は無しか~。いやいや、何が起こるかわからないし、兄さんのためだ頑張るぞ~。」
いつも呑気で、たまに真面目な昴は、
ここに来て久々の本領発揮を見せようとするのであった。