第二百二十九話 大食い娘と恋喰い娘
時刻は十二時三十分、
学園の食堂で行われている大食い大会では、
残り三十分とあって会場は白熱していた。
高田海洋と吉田先生は、開始三十分でペースが落ち、一時間も経たないまま先に吉田先生がリタイヤ、その十分後に海洋がリタイヤした。
ここまで残っているのは、
ルイと意外にもアリシアが残っていた。
男子「す、すげぇ‥アリシアさん、意外と大食いだったんだな。」
男子「食べるスピードはルイより遅いけど、それでも何皿食べてるんだ。」
ルイ「はぐはぐ♪もぐもぐ♪」
アリシア「はむはむ♪」
番狂わせと思える展開に観戦している者たちは、華奢な二人の食欲ぶりに唖然とするばかりであった。
エニカ「る、ルイと張り合うなんて‥す、凄いわ!」
番場「す、すげぇ‥。」
茂野「まさか、六組にこんな逸材がいたとは‥。」
藤井「‥ルイはともかく、アリシアさんが食べた物って、どこに行っているんだろうか。」
坪谷「異世界‥とか。」
微食会の五人は、アリシアの大健闘に驚いていた。
特に、あれだけの量を食べても尚、お腹は大きくなっているように見えない。ルイの場合は食べた物はすぐにエネルギーに変わるため、膨らまないことは分かるが、アリシアの場合は、どういう体の仕組みなのか本当に不明である。
映果「残り三十分を切った~!少食と思われたアリシアであったが、ここで意外な覚醒を見せた~!この場に志道がいないのが不思議だが、この大食いを志道は知っているのであろうか!」
余計な実況に、アリシアは癇に触ったのか、食事をしながら左手でフォークを持ち映果に向けて投げた。
映果「‥っ!?へっ?」
予想以上に勢いがあるフォークは、
映果の右頬から数センチのところで通りすぎ、
そのまま壁に刺さった。
それからもアリシアは、何事も起きなかったかのように食事を楽しんだ。
一瞬、時が止まったかのように静かになるも、何もなかったかのように再び盛り上がる。
特に学生たちは、一瞬でアリシアの恐ろしさを実感した。そう、アリシアもまた‥ルイと同じタイプであると。
もし、志道にバラせば‥ここにいる生徒たちの命はないと言う警告である。
その後、タイムアップを迎えると、
さすがのルイを越えることはできなかったが、ルイのお皿の半分は食べると言う大健闘を見せた。
アリシア「ふぅ、ごちそうさまです♪」
ルイ「‥ごちそうさま。」
映果「本日の大食いを制したのはルイ・リーフちゃんです!皆さん大きな拍手を~♪」
会場は拍手と健闘を称える声が上がり、
調理場では、一般の人やおばちゃんたちが、感無量と言わんばかりの笑みを浮かべながら見届けていた。
称えられた二人が互いを見つめ合うと、
アリシアから手を伸ばした。
アリシア「さすが、学園一の食いしん坊ですね。」
ルイ「‥アリシアも、食いしん坊。」
アリシア「はぅ~♪可愛い~♪」
二人が手を握ると、
二本のアホ毛を動かすルイに、
アリシアは一瞬でメロメロになり抱きついた。
アリシア「ふへぇ~♪噂通りの可愛さ~♪この距離で見ると破壊力がすごいですぅ~♪」
ルイ「‥‥??」
何が起きてるのか理解していないルイは、
小首を傾げて無言で頭を撫で始める。
アリシア「ふへぇ~♪また、一緒にごはん食べましょう♪ねっ、ね~♪」
ルイ「うん、アリシアと食べるの‥すごく美味しかった。また、やりたい。」
何とも言えない、めしテロ宣言に、
さすがの、おばちゃんたちも苦笑いをするのであった。
例えやるにせよ‥いくらかかかるのやら‥。
と、微食会の四人は冷や汗をかくのであった。
番場「どうするんだよ。またやろうなんて言ってるよ?」
藤井「もし、そんなことされたら、一日で配布の中身は空だぞ。」
坪谷「あ、あの量を見たら十万は軽く飛びそうだな。」
茂野「ゆーちゃん大丈夫だよ。例え十万でも、一人一万だせば軽減されるよ!」
坪谷「い、一万って‥結構するな。」
被害系割り勘をすればなんとかなるが、
それでも納得いかない話である。
映果「さあさあ、これにて大食いイベントは終了です!皆様ありがとうございました~♪」
映果の閉幕から観客は満足そうに散り始め、
学園の一部の生徒たちは、ルイとアリシアに密着して写真を撮っていた。
映果「ふっふっ~、これで良いネタができたぞ~♪早速、編集だ~♪」
映果がその場を颯爽に去ろうとすると、何者かに肩を掴まれる。
異様に力を込められた感触に、映果は恐る恐る後ろを向くとそこには満面な笑みを浮かべたアリシアがいた。
アリシア「クスッ‥映果さん♪変なこと書いたら‥分かりますよね?」
表情と不の感情が合っていない分、
更に、映果を恐怖に陥れた。
映果「あ、あはは‥わ、わかっていますよ。あ、アリシアさんの健闘はカットしますから‥。」
アリシア「お願いしますね♪」
言質を取ったアリシアは、
笑顔を崩さぬまま、ルイの元へ戻った。
ルイは"無表情"
アリシアは"おしとやか"
感情の読み取りが難しい二人、
記事にするには最高な物であるが、
書けば殺される爆弾ネタに映果はため息をつくのであった。
そんな時、
木造校舎(寄宿舎)にて、桜華様(藤霞)に蹂躙された桃馬と正気に戻った桜華の二人が、気まずそうに食堂へ入ってきた。
桜華「‥‥。」
桃馬「‥‥。」
いつもより素っ気ない二人に、
まわりの学生たちは、喧嘩でもしたのかと心配する。
すると、勘の良い映果が気を取り直してターゲットを二人に変えた。
映果「やぁやぁ、お二人さんどうしたのかな?」
桃馬「げっ、え、映果‥。」
桜華「え、映果ちゃん!?」
嫌な顔をする桃馬と、ただ驚く桜華の様子に、
映果はネタがあると確信をついた。
映果「二人ともなんだよ~♪その反応は~♪」
桃馬「な、何でもないよ。」
桜華「‥ぅぅ//、そ、そうですよ。」
映果「おやおや~?桜華ちゃん?顔が赤いですよ~♪もしかして、早速キスハグでもしましたか~?」
桜華「わ、わわっ、私は何もしてませんよ!?こ、これは、お、おかあさ‥。」
桜華が桜華様の事を話そうとすると、
桃馬はすぐに、桜華の前に立ち話を割り込んだ。
桃馬「あ、あはは、そ、そうなんだよ♪実は、学園の恋愛イベント見たいなことをやったら、気まずくなっちゃってな♪」
映果「へぇ~、桃馬にしてはやるね~♪その後、人気のないところで、○ハメですか?」
桜華「~~~っ///」
桃馬「ば、ばか!そ、そんな事‥できるわけないだろ。」
映果「冗談ですよ♪そうか~、恋愛イベントか~。早速学園のリア充どもにインタビューだ!」
映果は迷惑ジャーナリスト魂に火を付け、
風のように去って行った。
結果、桃馬と桜華が話すきっかけとなったが、
これにより、本来関係のない者たちが被害を受けることになるのであった。
その後二人は、
無難な天ぷら蕎麦と一本のフランクを購入し、はしっこの席に着いた。
桃馬「‥お、桜華がフランクを買うなんて珍しいな?」
桜華「っ//そ、そそ、そうかな?ほ、ほら、今日は朝ごはんを抜いてるでしょ?た、足りないかなって‥思って‥。うぅ。」
微妙に歯切れが悪い桜華に、桃馬は"まさか"と思い不純な考えが思い付く。
も、もしかして、さ、誘っているのか‥。
い、いや、桜華に限ってそんな事は‥‥、
と、取りあえず様子を見てみよう。
桃馬「そ、そうか。それもそうだよな♪さ、早く食べようか、い、いただきます!」
桜華「い、いただきます。」
二人は早速天ぷら蕎麦をすすった。
黙々と食べる二人であるが、
異様に目立つフランクは、未だ健在。
桃馬はいつ食べるのか気になって仕方がなかった。
結局フランクは、蕎麦を食べ終わるまで一口も口にしなかった。
すると桜華は、赤面しながら辺りを気にして"もじもじ"し始める。
桃馬「どうした桜華?」
桜華「と、桃馬‥えっと‥その‥、こ、これ‥食べさせて‥くれるかな?」
桃馬「えっ?ま、まあいいけど?」
桜華「ごくり‥じゃ、じゃあ‥ふあぁ~ん。」
舌を出しながら口を開ける桜華に、
桃馬は生唾を飲みながらフランクを向けた。
桜華「‥ふぁ、はむっ、んはぁ‥ちゅるっ。」
桃馬「お、桜華!?は、はしたないよ!?」
桜華「んはぁ、いいの‥お母様と‥したんでしょ‥」
桃馬「そ、それは‥ま、まあ‥襲われた側だから‥何とも言えないけど‥。」
桜華「むぅ、はむっれるっちゅ‥はむっ。」
桃馬「お、桜華‥。」
今の桜華は、ふしだらな行為を働いた桜華様の記憶が混在しているため、かなり混乱していた。
幸い角度的に見えずらい位置にはいるが、それでもまわりの動きが気になって仕方がない。
少しでも間合いにはいれば完全に気づかれるため、桃馬は神経を尖らせる。
桜華「んんっ?ちゅぷちゅぷっ♪はむはむっ」
そんな様子を見て桜華は、わざとらしく小さな音をたてながら食べ始めた。
桃馬は慌てて、フランクを引き抜いた。
桜華「ふぁっ‥はぁはぁ、な、なにするのよ?」
桃馬「な、何するじゃないよ桜華!?い、今のはまずいって、少し落ち着こう‥な?。」
桜華「‥じゃあ、今夜‥お母様としたことと、同じことをしてくれる?」
桃馬「っ、あ、いや‥そ、それは‥。」
桜華「むぅ‥お母様にはして‥私にはしてくれないの?」
桃馬「そ、そう言い訳じゃ‥ほ、ほら、ここは学園だし‥。」
桜華「お母様とした時も学園よ。」
桃馬「うぐ、で、でもあの時は、運良く人がいなかったからよかったけど、もしばれたら規則違反になるよ!?」
桜華「‥なら‥夜の屋上はどう?それに、本当の恋愛ならいいんじゃなかった?」
桃馬「っ、そ、それは‥そうだけど。」
桜華「クスッ、じゃあ決まりね♪はむっ♪」
フランクを取り上げると、機嫌良く普通に食べ始める。
桃馬はとうとう、エロゲー展開である学園内プレイに足を伸ばすのであった。