第二百二十五話 鬼神ゆるふわ系大食い美女
午前十一時
突如学食で始まった大食い大会。
その名も、
"鬼神ゆるふわ系大食い美女、
ルイ・リーフ大食いチャレンジ!"
と言うものであった。
学食には多くの人が集まり、一般の人たちは静かに椅子に座り、表情一つ変えないルイに注目していた。
男性「あんな華奢な子が、大食いなのか?」
女性「‥あの子、凄く可愛い。」
学生「す、すげぇ美人‥、異世界の人かな。」
男子学生「ルイ~、頑張れよ~♪」
女子学生「はぁはぁ、ルイちゃんの可愛い食事シーンを撮るチャンス‥はぁはぁ。」
一般の感想は、ルイの容姿に一目置く中、春桜学園の生徒たちはカメラやスマホを構えて、ルイを応援したり、食事シーンを撮ろうと今か今かと待ち構えていた。
この間にもルイのお腹が時折"ぐぅ~っ"と大きく響かせると、一般の人たちは思わず驚く。そこへ学園の生徒たちが、ルイのお腹の虫であると説明すると、一般の人たちはほのぼのしく微笑んだ。
当然学園の生徒たちはメロメロになり、歓声が響いた。
するとここで、ようやく主催者の映果が現れた。
映果「皆さん、急な企画ではありますが、お集まりいただきましてありがとうございます♪まもなく、"鬼神ゆるふわ系大食い美女、ルイ・リーフ大食いチャレンジ"を執り行います♪」
映果の告知に会場は拍手と歓声が響いた。
映果「さて、今回のチャレンジですが、こちらの学園一の食いしん坊、ルイ・リーフさんがどれだけご飯を食べられるのか、その限界を調査する事を目的にしています!そして、今回は比較のために特別ゲストとして、三名の方にお越し願いました!どうぞ。」
映果の合図に、
二年三組の高田海洋
二年六組のアリシア・ダグリネス
数学教師の吉田鷹幸が前に出ると、
拍手と共に春桜学園の生徒たちからは、
どよめきの声が上がった。
映果「こほん、それでは選手たちのご紹介と意気込みを聞いてみましょう。まずは主役のルイ・リーフさんから、どうぞ。」
映果はルイにマイクを向けると、
ルイは何をすればいいのか分からず、
小首をかしげた。
すると、外野からカメラのシャッター音と共に無数のフラッシュが光りまくった。
一般の人たちは、ここでようやくカメラを向けている学生たちの真意がわかった。
仔犬のようなピュアな無表情に、
一般の人たちも心を奪われていった。
なかなか自己紹介しないルイに、映果は耳元でお願いする。
映果「る、ルイさん、打ち合わせ通りに名前と意気込みを。」
ルイ「‥うん、わかった。えっと‥私は‥ルイ‥‥、沢山食べる。」
ぐうぅぅ~!
無口キャラ独特の話し方に、
現場の全員が微笑ましく和んだ。
色々と呑まれそうな空気に映果は、ジャーナリスト魂を奮わせ、和ましい空気をはねのけた。
映果「あ、ありがとうございます~。(や、やばい‥こ、これはもはや兵器だ。)さ、さて、次に二学年四天王の高田海洋さんにお願いします。」
海洋「あ、あはは、た、高田海洋です。よろしく。」
男子「あはは、なに緊張してるんだよ~。」
女子「意気込みはどうしたの~?」
ルイの次とあって、
気まずい海洋に同級生たちは煽った。
海洋「き、緊張なんかしてない!取りあえずベストを尽くすだけだよ。」
同級生「ぶーー!」
海洋「お、お前らな!?」
つまらない意気込みに同級生たちは、
ブーイングでいじり倒すのだった。
映果「はいはい、次はアリシア・ダグリネスさんお願いします。」
アリシア「はい♪アリシア・ダグリネスです。スイーツの大食いなら自信があります♪」
映果「え~っと、今日はスイーツはありませんのでご了承下さい。」
アリシア「ええっ!?スイーツ食べ放題ではないのですか!?」
一見高貴でお姫様の様なアリシアにしては、
意外すぎる一面に会場は笑いに包まれた。
どうやらアリシアの脳内辞典では、
"大食い"="食べ放題"らしく、更に食べ放題からスイーツを連想させて、スイーツ食べ放題などと解釈したようだ。
男子「アリシアさーん、明日からスイーツは断食ですね~♪」
女子「こら男子!アリシア様になんてことを!」
女子「アリシア様~!無理しないで辞退してくださーい!」
女子生徒陣営からは、辞退を勧められるも、
アリシアもダグリネス家の令嬢として、一度乗り掛かった船に何もしないまま逃げるわけにはいかなかった。
アリシア「いえ‥、やってやりますよ。ここで逃げたらお家の恥ですからね!」
アリシアのかっこいい発言に、
拍手喝采に続いて応援の声が響いたのであった。
映果「さて次は、本学園の数学教師吉田鷹幸先生です。それでは始めましょう。」
吉田「ちょっと、待て待て、待て映果さん。」
しれっと、吉田を飛ばす映果に会場から笑いが起きた。
映果「どうしましたか?」
吉田「あの、俺、久しぶりの登場。わかる?」
映果「えーっと、何を言っているのでしょうか?」
吉田「‥いや、その、ん?あ、はい。」
吉田は禁断のツッコミを入れそうになると、
黒子が現れカンペを見せる。
"これ以上喋ると、嫁の鬼人キリハさんと学園内でイチャイチャしていたことをばらします。"
ここで余談
鬼人キリハさんは、最近吉田先生と入籍を果たし、二学期から保健体育の先生として新任される予定である。
映果「それでは長くなりましたが、早速料理の方が安定ゾーンに入ったようなので、始めたいと思います。」
学食のおばちゃんが作った特製料理が次々に運ばれると、ルイの口から涎が滴り落ち、大きなお腹の虫を鳴らす。
映果「制限時間は二時間!箸を十分以上止めた者は脱落となります!それでは開始!」
映果の開始の合図でタイマーが起動すると、
早速度肝を抜かす展開が起きた。
物の十秒足らずで、ルイのお皿が空になったのだ。
映果「ふえっ!?」
海洋「っ!」
アリシア「えっ?」
吉田「へっ?」
あまりの早さに会場の全員が目を疑った。
だが、一部では違った。
エニカ「尚真今のタイムは!」
藤井「‥大盛りチャーハン三・七八秒」
茂野「おぉ~、早いけど初回完食三・二三秒は越えなかったな。」
番場「ちょっと、食器の配置とチャーハンの盛り方が良くなかったかもな。」
坪谷「いや、器が少し大きいせいだろうな。」
微食会にしては日常的な光景に、
むしろベスト更新が出なかったことに
原因を分析していた。
その頃ルイは、空の器とにらめっこしていると、最近生えた二本のアホ毛を揺らし、空の器を手に取り一言述べた。
ルイ「おかわり‥。」
これにより、会場は大歓喜に包まれた。
女子「ルイちゃん可愛い~♪」
男性「む、娘にほしい!」
女子生徒「おばちゃん!次のを頂戴!」
男子生徒「一品じゃ足りないから、五品頂戴!」
ルイに心を奪われた生徒たちは、続々とルイのテーブルに料理を運んだ。
すると、ルイは黙々と食べ始め、仔犬並の愛嬌溢れるオーラを漂わした。
ルイ「はぐはぐ、もくもく♪」
ゲストの三人をもろともせず、
ダントツに食べ進めるルイに、徐々に調理場はひっ迫し始める。
すると、ルイの愛嬌に心を打たれた料理ができる一般の人たちが調理場に入り込み、一般の人を巻き込む事態となった。
がしかし、
一般の人たちからは、大変勉強になったと大好評になるのであった。