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第二十一話 桃馬捕獲戦線

桃馬が二匹の駄犬に捕まる少し前のこと。


桃馬「はぁはぁ、結構遠くまで探しに来てしまった見たいだな。はぁはぁ、桜華たちに会えない。」


運良く"ルコの実"を見つけ出した桃馬であったが、男してのプライドと(けつ)を守るため、気づけば密林地帯の奥深くまで入り込んでいた様であった。


そのため桃馬は、どれだけ走っても桜華たちと合流できないでいた。


桃馬「困ったな……。もしかして、迷ったかな。おーい、桜華~!憲明~!リフィル~!」


試しに大きな声で三人の名前を呼んでみる桃馬であったが、一回目は当然帰って来るはずもなく、続けて二回、三回と繰り返し呼んでみた。


すると、おそらく桜華の声だろうか、


"桃馬~"っと、かすかに遠くから声が聞こえた。


桃馬は、声が聞こえた方向へ急いで走った。


しかしそこへ、二匹の"魔物"が桃馬の前に現れた。



野生のギールとジェルドが現れた。


選択肢。


たたかう。

話す。

逃げる。

諦める。


桃馬は、話すを選択した。


桃馬「っ、お前ら、何してるんだ。」


ギール「桃馬……、大人しくルコの実を渡してもらおう。」


ジェルド「そうそう、大人しく渡してくれたら、桃馬の意見も尊重して優しくしてやるからさ。」


二匹は満面な笑みを浮かべながら、上質な尻尾を左右に"ぶんぶん"と振り回していた。


桃馬「っ、な、なんの事だ?ルコの実はまだ捜索中だ。邪魔をしないでもらえるか。」


ギール「へぇ〜、(しら)を切るんだな。んじゃあ、その袋の中身……、見せてくれよ。」


ジェルド「もしルコの実が入ってないのなら、見せれるよな?」


桃馬「っ。」


まるで採取した事を知っているかの様に、二匹の駄犬は"じりじり"と桃馬に近寄り始める。


再び選択の時。


たたかう。

ルコの実だけ取り出して袋を渡す。

ルコの実を捨てて逃げる。

ルコの実を捨てずに逃げる。

諦める。

話す。


ここまで来ると、桃馬に取って良い選択肢など見当たらなかった。


そのため桃馬の脳内では、高速で選択肢の末路を予想した。



たたかうを選んだ場合。


桃馬「くっ、こうなったら、力ずくでも通してもらうぞ!」


桃馬は先手を取り、一番勝ち目のあるギールに蹴りかかる。


しかし、駄犬モード全開な上、普段の身体能力を倍以上跳ね上げたギールに叶うはずもなく、桃馬は足を掴まれるなり

そのまま地面に押し倒された。


桃馬「かはっ!は、離せ!」


ギール「はぁはぁ、離すかよ……ぺろっ。」


ギールはうつ伏せになった桃馬に抱きつくなり、そのまま嫌らしい声で桃馬の返事を返し首筋を舐め上げた。


桃馬「ひっ!?」


完全に抑え込まれたその隙に、ジェルドは桃馬から袋を奪うなり中身を物色……。


ジェルド「……っ、桃馬~♪これは何かな?」


桃馬「た、ただのクルミだろ。早く離せ、このバカ犬!」


ジェルド「くくっ、嘘をつく悪いご主人には……お仕置きが必要だな。」


桃馬「っ、お、おいこら、ばかやめろ!?淫獣認定するぞ!?ぎゃぁあぁぁっ!!」


バッドエンド"無駄な抵抗"



ルコの実だけ取り出して袋を渡す場合。


桃馬「……ちっ、ほらよ、」


ジェルド「…右手も出せ。」


桃馬「な、なんだよ?何もないっての…、ほら?」


ジェルド「ギール、右のポケットだ……。」


ギール「おう、わかった。」


桃馬「くっ!?(だめだ…、やっぱり鼻が利くこいつらに、こんな子供騙しは通用しないか……。)」


気味の悪い笑みを浮かべながら近寄るギールに、思わず桃馬は、一歩、また一歩と後ろへ下がる。


ギール「おいおい、どうして逃げるんだ?」


桃馬「っ、そ、それは、お前が気持ち悪い顔をしながら近寄って来るからだろ!?(このままだと確実に犯される。思い切ってルコの実を捨てて逃げるか……、いや、今更そんな事してもこいつらは俺を襲うに違いない。)」


ギール「心外だな〜、別に下心はないんだよ?」


桃馬「う、嘘つけ!今までそれで何度騙され…て……。」


今にも襲って来そうなギールの仕草に、桃馬は危機感を感じさせながら、ギールの足並みに合わせて後ろへ下がる。


すると、背中と首筋に"ふわふわ"とした桃馬に取っては、嫌な予感しかない"もの"に、背後を許してしまったと感じた。


恐怖のあまり振り向けない桃馬は、背後から伸びて来た腕を見るなり絶望した。


ジェルド「つ〜か〜ま〜え〜た〜♪」


ジェルドは、怯える桃馬の右ポケットに手を突っ込むと……。二つのルコの実を薬指と小指で挟み、余った三本の指で桃馬にお仕置するのであった。


バッドエンド"袋と二つの実"



ルコの実を捨てて逃げた場合。


ギールとジェルドは、容赦なく桃馬を捕まえるなり、その場で暴走した思い爆発させ、桃馬を滅茶苦茶にする事であろう。


おそらく、ルコの実を捨てずに逃げたとしても同じ結末が、予想される。


バッドエンド"無駄な逃走"


そして、諦めた場合。


降参と捉えた二匹の駄犬は、桃馬の肩に腕を回すなり、そのまま優しく可愛がってくれる事だろう。そして部活が終わっても学園に帰らず、ルクステリアの街にあるホテルへ連れ込まれそのまま犯すだろう。


バッドエンド"駄犬の餌"



もはや逃げ場はないと悟った桃馬は、それでも希望の可能性がある話す事を選んだ。


桃馬「な、なぁ二人とも、どうして俺がルコの実を持ってると思うんだ?」


ジェルド「そんなの見てたからに決まってるだろ?」


桃馬「っ。」


ギール「それに、ルコの実の匂いが"プンプン"匂うからな〜。」


予想通り鼻が利くのは仕方ないとして、一部始終を見られていた事については、桃馬に取って恐怖を感じさせた。


尾行と嗅覚。


駄犬から変態犬に進化した二匹は、"じりじり"と桃馬の体を求めて接近する。


桃馬と二匹の距離は、三メートル。


もはや考える猶予もない。

このままでは確実に掘られる。


そして窮地にたった時の桃馬の選択がこれだ。


逃げる。

交渉をする。

諦めずに話しかける。

降伏して許しをこう。

身を委ねる。


逃げる。

飛び付かれてアウト。


交渉

却下あるいは後日、不利な条件を提示される。


諦めずに話をする。

押し倒される。


降伏して許しをこう。

そのまま掘られる。


身を委ねる。

身も心も犯される。


もはやこの窮地において、助かる道は一つしか無かった。


桃馬は交渉を選んだ。


桃馬「ふ、二人ともストップ!そ、その、こ、交渉だ。見逃してくれたら、い、一週間、さ、散歩に付き合ってやるから、い、良いだろ?。」


声を震わせながら二匹の変態犬に提案するが、二匹は不適に笑みを浮かべながら桃馬の腕を掴む。


桃馬「ひっ!?」


ジェルド「そんなので、納得するとでも思ったか?」


ギール「ふっ、この勝負を勝てば、桃馬を好き放題に出来る話だぞ?たかが、散歩だけで納得するわけないだろ?……ぺろっ。」


※勝ち誇っているギールであるが、そもそも三班は、採取クエストよりも目先の欲に駆られて遊んでいたため、半分近くのノルマを達成していなかった。


当然、桃馬の好き放題する権利は無いが、希少なルコの実を二十個ほど採取しているため、結果発表でどう評価されるか注目である。


桃馬「はひっ!?こ、こら……やめろよ…ギール…。」


ジェルド「くくっ、今まで駄犬などと(ののし)ってくれたお返が出来ると考えると"ゾクゾク"するよ……ぺろっ。」


桃馬「ひぃぃっ!?(女の子ならともかく、なんで俺に寄って来るのは男なんだよ!?こんなのおかしいよ!?だ、誰でもいいから助けてくれ〜!)


叶いもしない助けを、桃馬は心の底から願って求めた。



すると、願いが通じたのか。



茂みの中から狼型の亜種族。


狂獣(きょうじゅう)の群れが現れた。

ボスであろう大きめの狂獣を含めて、十匹程は居るだろうか。


狂獣「グルル……。」


狂獣の群れは、あっという間に桃馬たちを囲むと、グルグルと威嚇しながら睨んでいた。


おそらく、白狼族と黒狼族の二匹の駄犬がいるせいだろう、狂獣の様子からして、ナワバリ意識を働かせている様にも見えた。


この狂獣の出現により、せっかく訪れた至福の時間を邪魔されたジェルドとギールは、当然怒りを(あらわ)にした。


手始めに、襲って来た二匹の狂獣を蹴り上げると、ジェルドとギールは刀を抜き、宙に浮いた狂獣の首を切り落とした。


ギール「……てめぇら、」


ジェルド「邪魔するなよ……。」


二人は、不抜けて緩んだ目を釣り上げると、何とも狼らしいキリッとした表情へと変わった。


先程まで見せていた淫獣の様な要素は、跡形もなく消えていた。


そんな二人に対して、続いて三匹の狂獣が襲いかかる。


しかしこれも、一瞬で斬り倒される事になった。


これに、ボスと思われる大きい狂獣は、二人の殺気に押されその場を逃げようとする。しかし、二人はそれを許さず、ギールが刀を投げて狂獣の脳天に突き刺すと、続けてジェルドが首を斬り落とした。


ジェルド「ふっ、手こずらせやがって。」


ギール「全くだ、至福の時間を邪魔しやがって。」


ジェルド「ふぅ、さて桃馬、早速続きを……あれ?」


ギール「あ、あれ?」


二人が後ろを向くと桃馬の姿はなかった。


ジェルド「ふっ、逃げたか。どうせ桃馬の足じゃ遠くには逃げれない…。直ぐに捕まえて可愛がってやる。」


ギール「クンクン、あ、あれ?」


ジェルド「どうしたギール?」


ギール「クンクン、や、ヤバい、血の臭いのせいで、桃馬の匂いが分からない!?」


ジェルド「なに!?クンクン‥っ!!くっ、でも、そう遠くは行けないはず、直ぐに探すぞ!」


ギール「あぁ!」


鼻が効かなくなった二匹は、思い当たる方向へ向け走り出した。


一方、行方をくらました桃馬は、近くの茂みに身を潜めていた。


桃馬「……はぁ、助かった。ルコの実も奪われずに済んだ。後は見つからない様に桜華の所へ……。」


桃馬は、体を低くして"ほふく"前進をしながら茂みから出始めた。


すると目の前に、しゃがみながら桃馬を見つめる二匹の姿があった。


桃馬「あ、あれ、な、なんで……。」


ギール「いやいや、少し移動しても桃馬の匂いがしなかったからもしやと思ってな。」


ジェルド「惜しかったな~♪桃馬~♪」


桃馬「あ、あぁ……。」


声も出せないくらいの絶望感。


二匹は桃馬を縛り上げると、ルコの実を没収した。


その後、タイムリミットまで拘束されながら、屈辱的なセクハラを受け続けたのであった。



そして……、判決の時が来た。


小頼「みなさん、お疲れ様で~す♪まずは、クエストの依頼については、依頼された素材より少し多く採取できました~♪」


桜華「よかった~♪頑張った甲斐がありました♪」


リフィル「でも、ルコの実は見つからなかったけどね〜。」


小頼「それでは各班が採取した素材の集計を簡単にお知らせしますね♪♪え〜と、ぐふふ、一班はルコの実以外ノルマをクリアしてますけど、ミッション失敗でーす♪」


桃馬「んん〜!!」


小頼の悪意のある報告に、桃馬はジェルドとギールの不正を訴えようとするが、ギールとジェルドに口を塞がれていた。


小頼「続いて今回のMVPである二班は、ルコの実を二十個も採取したに続いて、各種ノルマの二倍の働きを見せてくれました〜♪」


時奈「ふむ、容易いものだな。」


吉田「当然だな。」


ジェルド「ふっふっ〜、どうだ桃馬?結局、量的な勝負でもお前は俺の物になる運命だったんだよ?」


桃馬「んんっ〜!(かっこいい(つら)して、平気で気持ち悪い事を言いやがって、覚えていろよ!)」


ギール「桃馬〜、今夜は楽しみだな♪」


二班の手柄に、ギールまでも便乗する中、小頼の口から衝撃的な言葉が投げかけられる。


小頼「しかし、三班は、ルコの実を十八個を採取に続いて、シゴロダケのノルマはクリアしてますが、薬草、万漢にんじん、カルミ花の根が、全く取れてませんね?」


ギール「……はっ?つまり、それはどういう事だ?」


小頼「ノルマ未達成ってところですね。」


ジェルド「っ、ふ、ぷくく。(だっせぇ〜。)」


ギール「な、なんだと〜!?おいおい、京骨とルシアは、一体何をしてたんだ!」


ルシア「えへへ〜♪京骨と一緒に亜種族と交戦してたかな?」


ギール「う、嘘つけ!?どうせ、近くの茂みで京骨と遊んでたんだろ?」


ルシア「むぅ、心外だな〜。」


ギール「なら、どうして京骨がこんなにも衰弱してるんだ!」


京骨「うぅ〜。」


ルシア「獣型の亜種族の毒をもらってね、荒療治だけど、私が治したのよ?」


ギール「うぅ、嘘くせぇ……。」


ギールの睨んだ通り、確かにルシアは嘘をついていた。


何せ、九十分間も茂み隠れては、終始京骨と愛し合っていたのだから。とは言っても、京骨が持っている、ルシアを"よがらせる"ほどの凶悪な"あれ"を亜種族と例えるなら、それはそれで戦っていた事実に嘘は無い。



ギールはショックを受けた。


せっかく、希少なルコの実を採取したと言うのに、それでも桃馬を好き放題出来ない事に、ギールの熱は一気に冷えきった。


しかし心優しい小頼は、そんなギールの為に粋な計らいをしてくれた。


小頼「こほん、本来ならノルマ達成とは言い難いですが、ルコの実の量を考慮すれば、他の足りない素材を補える程の価値はあります。」


ギール「っ、こ、小頼……。もしかしてそれって。」


小頼「特別に達成にしますよ♪」


ギール「〜っ、やったぁ〜!」


桃馬「こ、小頼てめぇ〜、やっぱりんんっ〜!(あの変態女め!やっぱりルールをねじ曲げて来やがったな!?くそぉ、小頼め〜!)」


案の定、ルールをねじ曲げた小頼の横暴に、桃馬はジェルドとギールに拘束されながらも、怒りを露にした。



小頼「という事で、明日からギールとジェルドは、節度を持って、桃馬を煮るなり焼くなり好きにしていいですよ~♪」


ギール&ジェルド「わおーん♪」


勝利と喜びの雄叫びが密林中に響き渡った。


桃馬に取っては、終末を告げる騒音に聞こえるのであった。


一方の桜華は、小頼とリフィルに吹き込まれ、仲良しの証としてほのぼのしく、桃馬に取って"地獄の様な光景"を見ているのであった。


夢であれ

馴染みの言葉に

嵌められて

俺の尊厳

犬に喰われり



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