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第二百四話 若き夫婦の絆

号外の影響は大きく、昼休みになると各クラスでは大盛り上がりを見せていた。


特に二学年では、

土佐の変の首謀者の土佐清一及び、幹部の薩摩良盛(さつまよしもり)長州新丞(ちょうしゅうしんすけ)、岩村一郎、そして組した者たちの処分が決まったこともありスカッとしていた。


土佐、薩摩、長州、岩村、退学処分となり、

組した者は、三ヶ月の停学、あるいは反省文の刑となった。


更に薩摩、長州、岩村については、

前科の疑いから警察に送検された。


その事から、中田栄角政権による法の大改革で、少年法が厳しくなったことを身近で感じる出来事でもあった。


そしてこの結果に一番喜びを見せたのが両津直人であった。


奏太「‥今日の直人気持ちが悪いくらい機嫌が良いな。」


晴斗「例の四人が退学処分になったからな。まあ、四人に取っては喜ばしい事だと思うけどな‥。」


リール「えっ?どうして??」


エルン「わ、私は何となく分かるかも。」


リールはわかっていないが、

頭の良いエルンは直ぐに察した。


晴斗「‥下手に許されて学園に残ってみろ。直人が黙っていると思うかな?」


リール「あぁ~♪確かに、きっと毎日目を光らせて復讐の気を伺うかも。」


エルン「うむ‥直人の事だ、やりかねないな。」


奏太「皮肉だけど、四人は命拾いしたな。」


ご機嫌な直人を背にして四人が話していると、

何かを思い出したのか、直人は席をたち四人のいる所へ向かった。


晴斗「ん?どうした直人?」


直人「あぁ、大した話じゃないんだけど、実は昨日の夜に、夏休み中に妖楼郭(ようろうかく)に行く事になったんだけど、一緒にどうかなって。」


直人曰(いわ)く、大したことはないと言うが、

リールとエルンからして見れば、かなり大した話であった。


リール「妖楼郭って、確かゴールデンウィークに行ったところだよね?」


エルン「うむ、稲荷さんと兄弟の皆さんがいるところだ。」


リール「うぅ~ん♪はいは~い♪いくいく~♪」


エルン「わ、私も‥迷惑じゃなければ行きたいな。」


二人は(こころの)く誘いに乗ってくれた。

後は男だが‥、反応は如何に‥。


奏太「すまん‥俺は、楓姉さんと武者修行の予定があるんだ。」


直人「そうか‥うーん、"せいっちゃん"に負けたのが相当悔しいのか?」


奏太「うぐっ、よ、よくわかったな。」


直人「予想がつくよ‥、それとも強い鬼のお姉さんに蹂躙されたいとか?」


奏太「っ!お、お前な!?」


直人「あはは、半分冗談だ♪」


図星の奏太に直人は畳み掛けて楽しんでいると、

一方で、晴斗は答えようにもタイミングが見つからず、中々返答できないでいた。


それに日時が分からない以上、誘いに直ぐに乗れなかったこともある。


そうこうして、何も言わないでいると直人から驚きの一言が飛んできた。


直人「さてと、ちなみに晴斗は絶対に来てくれ。」


晴斗「へっ?」


決定権無しの強制宣言に耳を疑った。


晴斗「あ、えっ?強制なのか!?」


直人「うん、できれば。」


晴斗「まてまて、まずいつ行くかわからな‥。」


直人「八月四日から盆前までだ。」


晴斗「っ、う、うぅーん、それなら‥大丈夫だと思うけど。それより、どうして俺だけ強制なんだ?」


直人「ちよ‥こほん、まあ気にするな。稲荷姉の誘いなんだ♪」


晴斗「今、"ちよ"って言おうとしたな?もしかして、千夜ちゃんが会いたがってるのか?」


直人「おぉ!さすが晴斗~♪よくわかってるな♪」


晴斗「‥ばらしていいのか?」


直人「あっ‥。」


千夜が晴斗に会いたがっていることは、本人から固く口止めされていたが、つい口が滑ってしまった。

そのため、泣きつくように晴斗にしがみついた。


直人「た、たた、頼む!晴斗!今のは聞かなかったことにしてくれ!」


晴斗「‥さ、さすがに、無理があるよ。」


直人「くっ、仕方ない‥じゃあ、記憶が残る前に強い衝撃を‥。」


直人は青白い妖気を漂わせ、。

本気で記憶を物理的に消そうとしている。

対して晴斗は慌てて止める。


晴斗「わ、わかった!何とか忘れるから、物理的に消すのは止めてくれ!?」


直人「じゃあ‥黙って来てくれるか?」


晴斗「わ、わかった!わかったから‥、その拳を下ろせよ!?」


直人「‥わかった。」


千夜との約束を強引に守ろうとする直人に、

晴斗は大人しく言うことを聞く条件で事を静めさせた。


夏の大戦乱祭から少し様子がおかしい直人に、 奏太が心配そうに尋ねる。


奏太「なあ、直人?大きなお世話かもしれないけど、以前より少し攻撃的じゃないか?」


直人「うぅ‥、あぁ、俺も気を付けてるんだけど、どうも少し興奮する(たび)に我を忘れかけてしまうんだよ。」


エルン「そ、それは仕方がないぞ。あれからまだ三日しか経っていないんだ。力と心の制御がうまく行かないのも当然だ。」


直人「‥え、エルン。」


さすが嫁のエルンだ。

夫の精神的事情を熟知している。

思わず直人は、感動のあまり泣きそうになる。


リール「やっぱりエルンって、凄く直人のこと好きだよね~♪」


エルン「っ!?」


奏太「夫に尽くす良いタイプだよな。」


エルン「‥っ///」


晴斗「強くて夫思いで、そして少し堅物属性‥直人は恵まれているな。」


エルン「~~っ///!!?」


みんながエルンのことを褒めちぎると、それに連れてエルンの表情は赤面していき、戸惑い始める。


直人「か、可愛い‥ごくり。」


思わず直人も本音を漏らし生唾を飲んだ。

エルンは、恐る恐る直人の方を向き、目を合わせると、二人の意識は高まり赤面しながらお互いはそっぽを向いた。


このまま見つめ合ったら、ある意味襲いかねない‥。朝に磔にされたばかりだと言うのに、公開プレイなんか見せつけたら、確実に殺されてしまうだろう。


そんな中、もう一人の嫁が背中を押すように煽り始めた。


リール「クスッ、二人とも何"もじもじ"してるのかな~?」


直人「も、もじもじなんかしてないよ‥。」


エルン「そ、そうだ!これは‥その‥そ、そう!これは発情だ!」


突然の発情宣言に四人は固まり、近くにいた男子たちも注目し始め、直人に冷たい視線を送った。


すると、直ぐに我に返ったエルンが赤面して誤魔化し始めた。


エルン「あっ//いや、こ、これはだな、は、発情ではなくてだな‥//」


リールの煽りに墓穴を掘り激しく動揺する。


ヤバい‥可愛いすぎる‥。

ここに誰もいなかったら、どうにかなりそうだ。


直人も大概ではあるが、

自分の命より大切な嫁の暴走は、直人からしてみれば(たま)らない一瞬であった。


外野の冷たい視線は何のその、

ずっと可愛い嫁を見ていられた。


晴斗「全く、仲の良い夫婦だこと。」


奏太「リールたちも、良く取り合いにならないよな?」


奏太が、かなり重要な点を突くと、

リールが楽しそうに答えた。


リール「そりゃそうだよ♪直人はみんなの物だからね♪それに、直人はしっかり平等に愛してくれるから取り合う必要はないよ♪」


裏もない純粋な答えは、

奏太と晴斗、そしてまわりの男子たちの心を掴んだ。


独占欲もなく、来る者拒まず、そして底知れぬ信頼と言う絆を感じさせた。


晴斗「ふぅ、リールとエルンには敵わないな。」


奏太「だな、ここまで信頼し合えるのは、もはや夫婦の鏡だな。」


リール「いや~♪それほどでも~♪」


最後はリールらしく照れると、赤面するエルンを(なだ)め始めた。


晴斗と奏太は、直人の肩に手を置くと激励の言葉をかけた。


晴斗&奏太「二人を悲しませたら殺すからな?」


直人「えっ?な、何だよいきなり!?」


晴斗「ぷ、あはは!」


奏太「何だよじゃねぇよ♪この浮気者がよ~。」


直人「いたたっ、ぐ、グリグリするな!?」


これにより二年三組の通常運転が始まり、夏の大戦乱祭の幕が下ろされたのであった。




一方で、一番気になる魔王様はと言うと、いつもの屋上で楽しく話していた。


そう、楽しく‥。


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