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第二百三話 犬神ショタは恋にすれ違う

我の名前は、白山乃宮(はくさんのみや)ポチ

シャル様にお仕えする忠犬にして犬神である。


それ(ゆえ)我は喧嘩が強く、神としての威光も兼ね揃え、シャル様にお仕えする素質が充分に備わっている。


更に多くの崇拝者が、我を(あが)め犬の頂点に祭り上げ、下界で我に逆らう者はおらず、欲しい物は思いのままに手に入れて来た‥。


だが‥、ここに降りてから、余に逆らう者が現れ、欲しい物が、思うように掴めなくなった。


取りあえず、我に逆らうバカ(ギール)は置いておいて‥、今、我の目前には‥白くて"サラサラ"な毛並みと、おっとりとした性格、そして神である我の心を揺るがす女子がいる。


一昨日(おととい)の祭りとやらで、未来の妻に良いところを見せようと思って頑張ったが、結果は逆効果を招き、エルゼを含むまわりの者から引かれてしまった。

確かに‥たった一時間で、我だけが楽しんだのは悪いと思うが‥、まさか、ただ勝つだけじゃダメだなんて普通思わないだろう。


エルゼの残念そうな顔が今でも頭から離れない‥。

でも、一日百回は顔を見ないと落ち着かない‥。


犬神は、机に突っ伏して垂れ下がった尻尾をゆっくり左右に振らすのだった。


そんな様子を心配して加茂が声をかけてきた。


加茂「い、犬神様?大丈夫ですか?」


犬神「うぅ、加茂‥我は‥どうすれば良いんだ。さすがの我でも時は戻せない‥。許されるなら、あの時に戻りたいぞ。」


加茂「えっ、えーっと、そんなに気になさらなくても‥。」


犬神「我は‥勝負と言うものは勝つだけが全てだと思っていた‥。だが、この祭りの趣旨(しゅし)は‥どうやら違ったようだ。」


いつもの小生意気なショタ風神様の威厳はなく、声にも覇気が無かった。


すると加茂が号外を広げると、

とある一面を見せる。


加茂「で、でも、今週の土曜日、再戦みたいですから、そんなに気を病まなくても‥。」


犬神「わふぅ?さい‥せん?」


加茂「は、はい、号外にはやり直しって書いてありますよ。」


犬神「そ、それはつまり‥や、やり直せるのだな!?」


犬神は、勢いよく席を立ち加茂に言い寄った。


加茂「は、はい、書かれてるのが本当であれば‥。」


犬神「そ、そうか、うむうむ、よ、よかった‥。」


まさに天の助けとはこの事、犬神は思わず見えない神様に感謝したのだった。


女子「犬神くんったら、神様なのに神様に感謝してるよ~♪」


けも耳女子「可愛い~♪やっぱり先輩たちに取られる前に既成事実を作っちゃおうよ~♪」


エルフ女子「あ、相手は神様よ?そんなことしたらバチが当たるわ。」


女子がざわつく中、

エルゼは、二人の友達にモフられながら、じっと犬神を見つめていた。


女子「どうしたの?エルゼちゃん?」


エルゼ「わふっ!?あ、いや、なんでもないよ♪」


女子「またまた~♪今絶対に犬神くんを見てたでしょ?」


エルゼ「わ、わふぅ‥見てたけど‥そ、それだけだよ?」


女子「本当かな~?これは、両想いもあるかもしれないぞ~?」


女子「そうそう、犬神くん絶対にエルゼちゃんのこと好きだよね~。いつも"チラチラ"見てるし~。」


友達のふたりがからかうなか、エルゼは冷静に返答する。


エルゼ「それはきっと犬の本能ですよ♪同じ種族が近くにいると無意識に見てしまうものですから。」


女子「もう~♪エルゼちゃんは可愛いわね♪」


女子「まあ、例え犬神くんでもエルゼちゃんを易々と渡さないから安心しなよ~♪」


エルゼ「わふっ!?そ、そんないきなり‥ひぃうっ♪くぅ~ん♪」


そう二人が楽しそうに言うと、エルゼに抱きつき、弱点である尻尾と耳をモフられ完全に落とされるのであった。


そんな様子を横目で見ていた犬神は、羨ましそうに口元を膨らませていた。



犬神「うぅ、女子たちが羨ましい‥。」


加茂「犬神様から声をかけないのですか?」


犬神「っ、あ、いや‥我は‥こほん、わ、我から声をかけるなど‥お、おこがましいだろ?む、向こうから話しかけない限り‥は、話す気はない。」


分かりやすい強がりに、

加茂はため息をつきながら察した。


加茂「恥ずかしいのですね?」


ドストライクな質問に、図星の反応をみせる犬神は、コクりと頷いたのだった。


加茂「‥声をかける練習をしましょう。早くしないと誰かに取られてしまいますよ。噂ではエルゼさんのことを狙ってる人は多いみたいですし‥。」


犬神「わ、わかっている‥。わ、我を惚れさせるくらい可愛いんだ‥。人気がないわけがない。」


加茂「‥す、凄く推してますね。」


犬神「当然だ!我は必ずエルゼを嫁にするからな!」


加茂「あっちょっ!?声が大きいですよ!?」


犬神「わふっ!?う、うぅ‥。」


勢い余って大声で宣言すると、

まわりの同級生が一斉に注目する。

犬神は"しまった"と言う様な表情で、ちらりとエルゼの方を見る。



女子「あらら~♪エルゼちゃんもいるのに、あんな大声で宣言するなんて~♪」


女子「やっぱり、エルゼちゃんのことが好きだったんだな。」


ざわつく教室に、肝心なエルゼはと言うと‥。


友達二人にモフられ蕩けきっていた。


エルゼ「わふぅ~♪」


もちろん、あの大きな宣言は耳に入らず、

今日も二人の心はすれ違った。


クラスの女子たちは一斉にため息をつき、

男子からは、恋のライバル意識を(たぎ)らせていた。


男子「くくく、愛称が悪いな~。」


けもみみ男子「例え神様でも‥エルゼちゃんは渡さないぞ。」


悪魔男子「強敵だが‥負けるかよ。」


男女問わず、人から多種族に人気なエルゼ。

その競争率は、学園の歴代に入るくらいである。


ここで問題なのが、

二年三組の豆太先輩と凄く仲が良いことである。しかも、犬神と義理ではあるが親類のため、攻略はかなり困難である。


まあ、そもそも兄のジェルドが認めない限り不可能なのだが‥。


それでも、困難と分かっていても諦めたくない気持ちにさせるのが、エルゼの可愛さなのだ。




犬神「‥はぁ、なんだろう‥このもどかしさは‥。」


加茂「ま、間が合いませんね。」


エルゼに聞かれなかったことはよかったが、

それでも進展しない展開にがっかりする神様であった。



その後、担任の先生が来るとホームルームが始まり、一日がスタートした。







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