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第二百二話 情報に流されて

三日間に及ぶ夏の大戦乱祭が終わった翌日のこと。


朝から校門前には多くの生徒たちが、夏の大戦乱祭についての号外を求めてごった返していた。


内容は、各学年の勝者についてと、注目の一面、そして二学年で起きた土佐の変など、事細かく書かれていた。


映果「は~い♪夏の大戦乱祭についての号外はこちらだよ~♪たくさんあるから慌てなくていいよ~♪」


号外を手に取り読んだ生徒たちは、

受験合格発表の喜びと同じくらいの大はしゃぎを見せていた。


桃馬「さ、さすが、映果だな。もう出来たのかよ‥。」


桜華「あんなに沢山、一人でよく作れますよね?」


小頼「あはは、違うよ桜華ちゃん♪新聞部は映果の他にも沢山いるんだよ♪」


桜華「ふぇ、そうなのですか?私はてっきり映果ちゃんだけかと思っていました。」


小頼「まあ、普通に見たらそうだよね。他の新聞部のみんなは表に出たがらない子が多いから、そう思うのも無理もないね。」


新聞部は主に影でこそこそとスクープを撮ろうとするのだが、映果に至っては表だろうが裏だろうが積極的に取材をするため、知らない人は一人で作業していると思うだろう。


桜華「な、なるほど‥それなら今の光景も納得です。」


新聞部の事情を知る中、

ジェルドがふと思ったことを口にする。


ジェルド「そう言えば映果って、大戦乱祭に出てたか?」


桃馬「俺は磔にされてたからわからないな。」


桜華「わ、私は桃馬と付きっきりでしたから‥。」


三人がわからない中、

小頼は笑みを浮かべながら答える。


小頼「クスッ、それなら映果ちゃんたち新聞部は、先生方に大戦乱祭の撮影を頼まれて全員不参加だったよ。」


桃馬「‥まじかよ。じゃあ、夏休みの報酬は?」


小頼「イベントの写真と記事作りが宿題見たいよ?」


桃馬「‥それって宿題なのか?」


桜華「なんだか、良いように使われてる気がしますね。」


小頼「映果ちゃん(いわ)く、取材場所が色々と解禁されるから"ウィンウィン"って言ってたね。」


桃馬「うーん、ウィンウィンね~。」


新聞部に対して、かなり優遇されているように見えるが、目の前に楽しんでいる生徒を見ると、納得のいく報酬だと感じた。


すると、十メートル弱離れている中、

映果は小頼を発見し、元気よく手を振り手招きをしてきた。


映果「おぉ~い、おはよう小頼ちゃ~ん♪」


小頼も手を振り返して直ぐに駆け寄ると、

桃馬たちも後に続いた。


小頼「おはよう映果ちゃん♪今日は凄い人だね♪」


映果「今年の夏の大戦乱祭はネタが多いからね~♪その分多く書いちゃったよ♪あ、よかったら持ってって♪」


小頼「うん、ありがとう♪どれどれ?早速一面はどうなって‥ぷっ、あははっ♪」


新聞を開くと小頼は早々に爆笑した。


突然、一面の内容に爆笑する小頼に、後ろの三人は気になり号外を除き込むと、そこには、二人仲良く希望を断たれたような表情で、(はりつけ)にされている桃馬と直人の一面であった。


ジェルド「ぷっ、あはは!いい顔してるな桃馬~♪」


桜華「あらら‥これはこれは‥。」


ジェルドは大爆笑し、見慣れた桜華は苦笑いをしながら恐る恐る桃馬を見ると、反応が全く無く、むしろ無心と言った表情で固まっていた。


映果「ん?どうしたの桃馬~?面白くなかった?」


桃馬は静かに手で顔を隠し、

赤面しながら声をあげた。



桃馬「もう~!恥ずかしいって!」


映果「‥ニマァ~♪あはは♪いいね~♪その反応♪可愛いじゃねぇか兄ちゃんよ~♪」


想定外の反応に味をしめた映果は、調子に乗ってちょっかいをかけ始める。


桃馬「き、気持ち悪い話しかけ方をするな!」


映果「まあまあ、そういうなって~♪桜華ちゃんに恥ずかしいところ全部出しちゃいなよ~♪」


桃馬「‥っ!お、お前な‥。」


映果「桜華ちゃん!今の直人をとくと見よ!これが直人の照れ隠しぃぃいだだっ!?」


調子に乗った映果の顔面を鷲掴みにし、アイアンクローを決める。


桜華「と、桃馬何してるの!?」


小頼「ありゃりゃ、これは調子に乗り過ぎたね。」


すると、桃馬は顔を近づけ牽制を計る。


桃馬「おい、こら盗撮魔‥調子に乗るのもいい加減にしろよ?さもないと‥不正をばらすぞ?」


映果「うぅ、その不正品を買ってる同志には言われたくないな~♪いたたっ!?」


桃馬「減らず口はその口か~?」


反省の色を見せるどころか、マウントを取り始める映果に再び手に力を入れるのだった。


映果「わ、わかった!わかったよ~!今回は許して~!ごめんなさーい!」


(はた)から見ては、完全に恐喝と弱い者いじめである。そのため、同級生からのブーイングが起きた。


二年男子「おい桃馬!一面が気に入らないからって、映果に当たるなよな!」


二年女子「そうよ!桃馬だって号外を見て笑ったこともあるでしょ?」


桃馬「うぐっ‥わ、わかったよ。」


挑発してきた映果に対して、いつも通り制裁を加える桃馬であったが、まわりからは号外に不満からくる物だと勘違いされ、バッシングを受けるのであった。


桜華「す、すごい叩かれようですね。」


ジェルド「まあ、いつも見慣れてる光景だけどな。」


桜華「いつもこんなに叩かれてましたっけ?」


ジェルド「わう~ん、今回のは特別バッシングが多いかもな。でもまあ、直人より敵意を向けられてないから大丈夫だろうよ。」


桜華「‥あ、あはは‥た、確かにそうですね。なんだか、急に心配になってきました。」


まだ号外を全部見たわけではないが、もし直人に関する変な記事があれば、再び玄関前で磔にされている事であろう。


桜華は、何も起きてないことを祈るのだった。


その後は、底無しの茶番に見かねた小頼が割って入り教室へと促した。


小頼「はいはい、茶番はそこまでよ。映果ちゃんもあまり(あお)らないの。」


映果「うぅ、反省します。」


小頼「うんうん。それじゃあ、また後でね♪」


映果「う、うん。またね。」


その場を締めた小頼が先行して歩きだすと、

三人も急いで後を追いかけた。


そして、二年棟に着くと桜華の心配が的中する。最近磔がブームなのか、玄関前で黒いローブを着た多くの男子たちが、直人を磔にし囲んでいた。

今回はご丁寧に薪まで積まれていた。


リール「み、みんな!?これはさすがにやりすぎだよ!?」


エルン「そ、そうだ!た、例えこの記事に書いてある事が本当だとしても、ふ、夫婦の営みだから仕方がないだろ///」


今回の二人はかなり直人を弁護しているようだ。


しかし、エルンが赤面しながら弁護してることから、男子たちに記事の内容が事実だと悟られ、火に油を注ぐことになってしまった。




桜華「はわわ!?あ、あれはまずいですよ!?」


桃馬「今日こそ、命日かもな。」


桜華「の、呑気なこと言ってる場合ですか!?」


桃馬の冗談に桜華がツッコんでいる隣では、

小頼とジェルドが号外を広げて、原因を探していた。


小頼「えーっと、あ、あったあった。医務所密閉禁断イチャラブ夫婦。」


ジェルド「これか。どれどれ、突如二時間以上開かずの間と化した医務所にて、両津直人は抵抗できない嫁のリール、エルンを押し倒し、禁断の校則違反に乗り出す。これぞ夫婦愛の強行‥。写真はないけど、デカデカと書かれてるな。」


小頼「あはは‥、最期は妊娠の疑惑って書いてあるね。」


ジェルド「‥学園物のエロゲーかよ。」


ボソッと本音が漏れるジェルドに、

桜華が反応する。


桜華「に、にに、妊娠!?り、リールちゃんとエルンちゃんが‥。ぷしゅ~。」


桃馬「お、桜華!?しっかりしろ!?」


かなりレベルの高い淫靡な話に、桜華の脳内がオーバーヒートするのであった。


ジェルド「‥ゴクリ、バッドエンド系に多い妊娠姿での登校か。」


小頼「ゴクリ‥どうしよう。想像しても違和感がない‥。む、むしろ‥え、エロい!に、妊娠してもなお‥"自主規制"をするなんて!な、なんて鬼畜で最高なの!」


歪んだ小頼は、目を輝かせながら期待するのであった。


しかし実際は、直人が襲うどころか、逆に寝込みを襲われると言う展開であった。


ちなみに、二人は妊娠はしていません。



直人「うぅ、な、なあ‥本当に見覚えがないんだけど‥。」


男子「見苦しいぞ直人!二人を密閉の部屋に二時間も拘束させておいて、何もしてないなんてあり得ないだろ!」


男子「そうだ!どうせ、強引に押し倒したんだろ!」


信じてもらえないのは慣れているが、さすがにここまで当たりが強いのは初めてである。

万事休すの中、困り果てたエルンが真実を打ち明けた。


エルン「わ、私が、ね、寝込みの直人を襲ったんだ!」


リール「ふぇ!?え、エルン!?」


突然の告白に、黒いローブを着た男子たちは一斉に振り向いた。


男子「え、エルン?何言っているんだ?」


男子「ま、またまた、直人を庇ってるのか?」


エルン「本当だ‥、わ、私は直人の妻だ!これは私の意思だ!」


堂々としたエルンの振る舞いに、リールも負けじと名乗り出た。


リール「わ、私も!直人の寝込みを襲ったぞ!む、むしろ直人から押し倒してくるのは少ないくらいだ!」


爆弾告白をする嫁に、直人は磔にされながら赤面しながら驚いた。


直人「‥お、襲ってたのか!?」


エルン「す、すまない‥。い、色々あって‥抑えられなかったんだ。」


リール「そうそう、直人のお姉さんが変な贈り物を残すからね。」


この勇気ある証言により、既成事実は合ったものの、自ら手を出したと言う冤罪は解けた。


男子たちは、二人の愛に免じて直人を解放した。これにより、二人からの既成事実は全面的に認められる事になった。


桃馬「茶番は他にも続きそうだな‥。」


桃馬は今日から数日間、このような茶番の嵐が来ると予見するのであった。


号外からもたらされる茶番と騒動。

まだまだ、続きそうである。


これが後に"号外の役"と言われる小さな校害へと発展するのであった。


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