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第百九十八話 夏の大戦乱祭編(28) 混沌恐々

時折、激しい爆発音と地鳴りが響くなか、

両津直人迎撃隊は、船着き場へと集まる。


そこに広がる光景は、妖怪の姿をした両津直人にエルンとリール、そして桜華が抱きつき動きを止めていた。

恐らく彼女たちがいなかったら、

もっと悲惨なことになっていただろう。


そしてそのお隣では、

磔にされたまま復活した桃馬がいた。


魔紅軍の三人は、この事をすっかり忘れていた。どうりでリタイヤ室に居ないわけである。


しかも、これだけ騒がしいのにピクリとも動かない。闇落ちでもしてるのではないかと心配するくらいだ。


晴斗「これは思った以上に深刻だね‥。急いで何とかしないと理性が壊れるかもな。」


葵「直人の奴‥化け物にでもなる気か。」


シャル「と、取りあえず早く三人の援護をするのだ!?」


晴斗「そうだな。事が大きくなる前に終わらせるぞ。」


晴斗の号令に士道部が先行すると、他の者も後に続き直人に迫る。




直人「グルル‥。」


リール「うぅ~、ど、どうして止まらないの~!?」


エルン「くっ、どうやら聞こえていないようだ‥。胸を押し付けても反応がない‥。これが暴走と言うものか。」


桜華「え、エルンさん‥もうここは打撃を与えましょう!」


エルン「うっ‥仕方ないか。すまない直人!」


エルンは刀を抜き峰打ちをしようとすると、

再び直人の咆哮が響くと三人を吹き飛ばした。


エルン「くはっ!」


リール「ふへぇ!?」


桜華「きゃっ!?」


とうとう(かせ)が外れた直人、迫り来る士道部を見るや斬撃波の嵐を見舞った。


晴斗「っ!疾風燕(しっぷうえん)!」


葵「くっ!獄門字(ごくもじ)!」


身の危険を感じた晴斗と葵は固有の斬撃波で応戦するも、予想以上の威力と量に防ぎきれず、半数近くの仲間が吹き飛ばされた。


奏太「ちっ、近づくだけでも一苦労だな。」


海洋「俺に至っては相性が悪いが‥、奏太ちょっといいか?」


奏太「なんだ?」


海洋「俺が奏太を投げ飛ばすから、その隙に拳式を打てないか?」


奏太「っ!その手があったか。」


海洋「早いところ、こんな危険な戦いを終わらせるぞ。」


奏太「おうよ!」


海洋は奏太を掴み、勢いよく直人に向け投げた。


奏太「とっとと、目を覚ましやがれ!拳式一式!天門毘沙!」


投げられた勢いと共に、

毘沙門天が繰り出す槍撃のような、鋭い拳が直人の右頬を捉えた。


直人「ぐっ!?」


手応えのある感触に、直人は勢いよく吹き飛ばされた。

呆気ない展開であるが、多くの者はまだ終わっていないと実感していた。

孔真は妖気を浄化させる結界をすぐに張りにかかる。


孔真「くっ、なんて強い妖気だ‥。」


想像以上に強い妖気に圧倒されるも浄化に集中するが、結界を打ち破り斬撃波が孔真を襲う。


直人「小賢しい!!」


孔真「しまっ、くっ!ぐはっ!」


孔真はやられ際に何かの札を投げ直人に貼り付けた。


麗羅「こ、孔真!?ふぇ!?きゃあっ!」


彼女の麗羅も斬撃波に巻き込まれた。


葵「しまった、ぐっ!ほんとに‥見境ないな。」


直人「薩摩~!!長州~!!岩村~!!土佐~!!出てきやがれぇ!!!」


怒りのボルテージが更に上がると、咆哮による衝撃波が大きくなった。


志道「な、なんて男だ‥。これが鬼仏(おにぼとけ)の力か。」


ジャンヌ「い、いっそ、四人を引き渡した方が収集つきそうな気がするけど。」


ジレン「‥俺もそう思うが、今のまま引き渡したら四人は確実に死ぬな。」


リト「まったく‥両津直人の彼女に手を出したらどうなるかは誰でもわかるってのに‥。薩摩はバカなのか。」


二条「ふむぅ‥。これは四人を処刑しなくてはなりませんな。」


三条「ちっ、面倒なことをしてくれたもんだぜ。」


正直戦犯の四人を引き出せば済むことだが、

ある意味危険な行為である。


仮に四人を引き渡し半殺しにしたり、

こっちで制裁を加えたとしても、

直人が正気に戻らない事が何より一番怖い。




近藤「ここまで来たら、力ずくで止めるしかないな。」


渡邉「‥くっ、あの三人を先生に引き渡す前に、直人に晒した方が良かったかもな。」


近藤「それな‥、はぁ、妥協したツケは重いな。」


藤井「反省しても始まらないさ。それよりどう攻めるか。」


茂野「それなら、俺たち五人で斬撃波を出して距離を縮める‥。そうすれば自然とまわりも距離を詰めてくれるはずだ。」


本間「な、なるほど、それなら‥。おーい、ジレン!志道!これから俺たち五人で両津の足止めをしながら前進するから、お前たちは距離を詰めてくれ!」


ジレン「おぉ!わかった!」


志道「全く、かっこつけてくれるな。」


リト「それなら、俺たちも足早に斬撃波を出しながら接近しよう。」


ジャンヌ「仕方ないですね。ここは微食会の口に乗りましょうか。」


微食会の五人は早速容赦のない斬撃波を直人に向け放つと六組の六人は斬撃波を放ちながら距離を詰める。


直人「うがぁぁぁっ!!邪魔をするな!!大人しく四人を差しだせぇ!!」


狂気に満ちた直人は、縦横無尽に斬撃波を出す。


奏太「うわっ!?あぶっぐはっ!?」


海洋「えっ?!ぐがあぁぁ!?」


一番近くにいた奏太は避けきれずに被弾。

そのまま斬撃波と共に飛ばされ、勢いよく海洋を捲き込んだ。


直人「グルル‥。ウオォーーン!」


かなり妖狐(ようこ)化が進み、

直人は勇ましい遠吠えをする。


ギール「っ!ワオォーーン!」


犬化したギールも本能的に遠吠えを返した。


シャル「おいギール!?お主は何をしておるのだ!?」


ギール「はっ!?しまった‥つい反応してしまった。」


シャル「‥ま、全くこれだから犬は‥ん?ギールよ!今の遠吠えは何て言っていたのだ!?」


キール「な、何って‥。"四人はどこだ"ってかなりキレ気味で吠えていたぞ?」


獣の本能でも優先的に怒っていることから、

戦犯の四人に対する恨み辛みが強いと感じた。


シャル「‥直人の嫁愛は、常軌(じょうき)(いっ)してるなのだ。」


二人は足を止め呑気に話していると、流れ斬撃波が向かってくる。


ギール「っ!シャルあぶねぇ!」


シャル「ぬわっ!?」


間一髪のところでシャルを押し倒すと、

ギールの右手から、ちょっとした柔らかい感触が伝わった。


キール「ん?なんだ?」


ギールは触り心地よい何かをもう一度触る。


シャル「ひゃう!」


すると、シャルの甘い声が聞こえた。


ギールは嫌な予感を感じすぐに起き上がった。


恐る恐る確認すると、やはりギールの右手はシャルの小さな胸をがっつり鷲掴みにしていた。


ギールは急いで離れるが、こんな時でも妹にラッキースケベ展開をもたらすとは、お盛んな駄犬である。

やはり、駄犬は駄犬、卒業しても駄犬の(さが)からは逃げられないようだ。


そして‥。


シャル「な、な、何するのだ!」


ギール「ぐはぁぁぅ!!?」


今ある魔力を全て魔弾に込めたシャルは、直人に向けて放てば良いのに、ギールに向けて放ってしまいギールを蹴散らした。


一方で、

六組の数人は微食会の後方支援もあり、

両津直人との距離、十メートルまで迫った。


すると、茂野が放った斬撃波が直人に命中。

怯んで攻撃の手が止まると、志道たちは一斉に斬りかかった。


直人「はぁはぁ‥、」


志道「目を覚ませ直人!」


直人「ふぅ~!虫けらどもが‥!」


鬼のような表情と地獄の魔物のような低い声を漏らすと、志道の刀を力強く払い胸ぐらに掴みかかると、そのまま地面に叩きつけた。


志道「っ!ぐはっ!?」


ジレン「志道!?げはっ!」


リト「なっ!かはっ!?」


直人は続けざまに、ジレンとリトを倒す。


三条「暴れるだけの獣が!この俺が相手だ!」


後ろから力一杯に刀を振り下ろすも、直人に軽く弾かれ返り討ちに合う。


三条「か、かはっ‥なんと言う‥強さ‥。」


あまりの強さに、

二条とジャンヌをその場に立ち尽くす。


ジャンヌ「っ!さ、三条まで‥くっ!」


二条「‥まさかに魔神だな。」


直人「‥グルル‥。」


直人はゆっくり二人の方を見る。

その表情は思わず腰を抜かしてしまうような、

恐ろしい顔をしており、ジャンヌの思考を惑わす。


ジャンヌ「‥くっ、りょ、両津覚悟!」


二条「お、おい待て!?」


焦ったジャンヌが斬りかかろうとすると、


直人は容赦なく斬撃波を繰り出す。


するとそこへ、エルンとリールに間一髪のところでジャンヌを伏せさせた。


急いで伏せさせたことによって、斬撃波は二条へと向けられた。

しかし、二条は抜刀術で斬撃波を斬り伏せた。


直人「あぁ?」


二条「っ、力強すぎだろ‥手がいてぇな。」


エルン「はぁはぁ、ま、間に合った。」


リール「もう~直人!何してるのさ!」


直人「‥エルン‥リール‥‥。」


どうやら二人のことは認識しているようだ。

しかし、もはや声は人間を止めていた。


リール「うぅ、や、闇落ちしてる‥。」


エルン「‥感想を述べてる暇はないぞ!」


ジャンヌ「だが、どうやって倒すのだ?」


直人が攻撃して来ない中、三人が話していると、後方から"トリガー"を外した微食会の五人と相川葵が、人間を辞めたような表情で直人に斬りかかる。


近藤「女子たちは下がれ!ここからは化け物の(いくさ)だ!」


渡邉「目には目を‥化け物には化け物だ!」


茂野「その首叩き落としてやらぁ‥。」


藤井「ククク!これが求めていた戦いだ!」


本間「○す○す‥。」



"トリガー"を外して抑えが効かなくなった微食会の五人は、直人を半○しにする気満々である。


葵「志道も何寝てるんだ!さっさと起きろ!」


直人に叩きつけられ、

その場から動かない志道に葵は声をかけると、

志道の体に翡翠(ひすい)色のオーラが纏う。


志道「‥‥くっ、やっぱり、"トリガー"を外すしかないようだな。」


志道は飛び起きると早々に再戦をする。


七対一、しかも両者は暴走モードである。


さすがの直人でも、

どうすることもできないであろう。



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