第百九十六話 夏の大戦乱祭編(26) 壊滅の王手
各地で激しい戦闘が行われている中、
その裏では逃亡者の三人が渡邉と近藤に討ち取られ、上杉校長ら先生方に身柄を引き渡された。
その頃、
微食会と六組の対決では、
前衛部隊を自らの手で失った微食会は、
後衛サポート特化の大西、坪谷、星野で果敢な攻勢を仕掛け大打撃を与えるも、星野と坪谷が色々と消耗していることもあって力及ばず壊滅した。
志道「はぁはぁ‥近藤と渡邉がいなくなって楽勝かと思ったが‥さすが‥微食会‥だな。」
大西「はぁはぁ、まだ‥終わってねぇ!ごはっ!」
倒れた大西が体を起こし銃を向けるが、
瞬時に払われ回し蹴りをもらった。
志道「‥ふぅ、油断ならないな。」
アリシア「‥油断ならないのは良いけど。」
ジレン「俺たち三人だけで‥この先勝てるのか?」
志道「‥ふぅ、無理だな。」
ジレン「ですよね~。」
アリシア「仕方ありませんよね‥。」
まわりを見渡せば微食会と六組の死屍累々(気絶)が広がり、六組軍で残ったのは志道とジレン、アリシアの三人だけであった。
一方、微食会と魔紅軍の対決に終止符を打ったエニカ率いる微食会は、直ぐさま壊滅寸前の士道部への攻撃を開始した。
治療(蘇生)を終えた"剣聖"相川葵と"最強の武人"ルイ・リーフの初対面にして凄まじい一騎討ちが行われていた。
葵「っ!この力‥洒落にならねぇ。」
想像以上に強く鋭く、そして速い一撃が幾度も襲い、さすがの葵でも苦戦を強いられた。
しかも、ルイは無言で無表情。
普通なら息切れをしてもおかしくない動きにも関わらず、疲れすら見せない。
そのため、隙が見えず仕掛けるタイミングがわからないでいた。
葵「くっ!(力が強すぎて戟を払いきれない。しかもこの強さは本物‥戦を知る者の強さだ。‥ここは本気を出してペースを物にしないとだめか。)」
そんな時、ルイの少し甘い入りに反応すると、ポイントを見定め一気に戟を払った。
ルイ「っ!?」
ルイの力も作用し、少しではあるが後ろへとよろめいた。
エニカ「る、ルイの攻撃が弾かれた‥!?」
ルイの攻撃が弾かれるところを初めて見たエニカは、身を震わせるほど驚いた。
さすが剣聖、
やはり今一番の壁は相川葵だと感じた両軍は、固唾を呑んだ。
すると、無言であったルイの口が開いた。
ルイ「お前‥強い‥。」
葵「っ!(しゃ、しゃべった‥。)」
初めて聞くルイの声に葵は驚いた。
その声は攻撃する時の様な鋭さは無く、
無口キャラらしい、無気力な少女の声であった。
ルイ「‥ルイをここまで押し返す人は久々‥。」
葵「‥そ、それは‥どうも‥。」
葵は警戒を解くことなく刀を構える。
すると、大きな唸る様な音が響いた。
ルビア「い、今の音は?」
シェリル「わ、わからない‥。聞いたことのない音だな。」
シャル「‥ふむ、今のはルイの腹の虫なのだ。」
シェリルのお気に入りにされたシャルは、リタイヤゾーンに向かわず拘束されていた。
ルビア&シェリル「えぇっ!?」
どうやら微食会側は分かったいるようだ。
その証拠に落胆したような表情をしている。
葵「‥は、腹が空いているのか?」
ルイ「‥うん。」
なるほど‥と言うことは、
さっきの甘い入りは空腹によるものか。
まったく‥彼女の力は計り知れないな‥。
ルイの底知れぬ力に翻弄されるも、
葵は、その力の"ごうぎ"さに感心するのであった。
葵「‥ふぅ、仕方ない‥一騎討ちは止めだ。」
さすがの葵も空腹の女の子とは、
戦えないことから一騎討ちを取り止めた。
ルビア「ふぇ!?止めちゃうの!?」
シェリル「ふぅ、まったく女子に甘いな。」
シャル「うむうむ、でも士道らしくて良いと思うのだ♪」
シェリル「‥むう、これでライバルが増えたら困るな。」
ルビア「ふぇっ!?」
シェリルの口から、葵の独占願望を示唆する様な発言にルビアが反応する。
不可抗力とは言え、葵とキスを交わしてしまったことがバレれば、容赦なく切り刻まれると思ったのだ。
シャル「っ、ど、どうしたのだルビア?」
シェリル「な、何か不審な奴がいたのか!?」
ルビア「あ、い、いや‥そうじゃなくて‥そ、その~、直人見たいに一夫多妻でも良いじゃないかな~って。」
シェリル「なんだそんなことか、私は一夫多妻は反対ではない。ただ、多くなりすぎると構ってもらえず、愛が薄れることが怖いのだ。」
ルビア「な、なんだ~♪そんなことか~♪」
苛烈な独占的思想がないことを知ったルビアは、先程の不安から一転し喜び始める。
シェリル「まったく、‥サキュバスは一夫多妻を好むと言うが、愛を気にしないのだろうか。」
天然堅物騎士様は、あからさまな反応をするルビアの心情を読み取れていなかった。
すると、シャルが冷静にツッコンだ。
シャル「おいシェリルよ。ルビアは葵の事を好いておるぞ?」
ルビア「なっ!?」
シェリル「えっ?」
突然のシャルをからの発言に二人は驚く。
シャル「ルビアよ。お主もサキュバスなら何遠慮しているのだ?手負いの葵に押し倒され、唇を奪わて動揺しておるのか?」
ルビア「はわわ!?ど、どうしてそれを!?」
シャル「どうしてと言われても、目に入っていたからな。」
シェリル「‥‥‥へぇ~。」
シェリルの表情が暗くうつむき始めると、シ
ャルを抱き締め始めた。
シャル「ん?どうしたのだ?‥っ、お、おいシェリル‥なんだか締め付けが強くなっているのだが!?」
ルビア「ひっ、シェリルちゃん‥!?」
シェリルから流れ出す負のオーラに、二人は戸惑い始める。
シェリル「ごめんねシャルちゃん‥ちょっと、ここで待ってて。」
シャル「ひっ、う、うむ。」
声に生気が失く、目は完全に病んでいた。
二人は不思議な力で動けなくなり、
シェリルはルビアの所に行くと思いきや葵の元へと歩く。
一方で、未だにお腹を鳴らすルイはエニカと数名の仲間と共にその場を離脱。
微食会最後の生き残りの茂野が陣頭に立った。
葵「さて、気を取り直して始めようか。」
茂野「‥ふっ、命拾いしたな葵よ?」
葵「言ってろ、あの状態で勝っても面白くないだろ?」
茂野「強気だな?まあ、ルイは総合的にズバ抜けているけど、お腹を空いた時は、徐々に弱くなるからな。」
葵「ふっ、微食会は凄い猛犬を飼い始めたもんだな。」
茂野「それがいいんだよ‥ん?」
二人が話していると、
茂野は、葵の後ろで負のオーラ漂わせながら接近するシェリルに気づく。
葵「どうした茂野?」
茂野「‥後ろ。」
葵「後ろ?っ!?」
葵の真後ろにスタンバるシェリルに、
茂野は指を差しながら振り向くよう促す。
葵は促されるまま、後ろを振り向くとさっきまで感じてなかった負のオーラと共に、完全ヤンデレモード化したシェリルが立っていた。
葵「しぇ、シェリル?ど、どうしたんだ!?」
シェリル「‥ルビアを押し倒したって‥本当?」
シェリルは生気がない低い声で尋ねる。
葵「へっ?」
対して葵は、見覚えのないことに"ポカン"とする。
ここで小話
これは臨界制の生徒しかわからない光景であるのですが、先程一夫多妻に反対ではないとシェリルは言ってはいましたが、実際はシェリルが認めた者以外認めないと言う"シェリル"審査と言うものがあります。
下心ある者は当然アウトで、
日常生活でも女子と触れ合う時の監視や
ラッキースケベなどの監視など、愛の重い日常を二人は普通に送っています。しかし、葵はこれを苦と思わず堅物女騎士属性として割りきり、平和に暮らしているのである。
そして話を戻し、
戦闘直前の最中、
葵はシェリルに言い寄られていた。
シェリル「しらばっくれても無駄よ~♪ルビアちゃんから全部聞いてるから~♪」
葵「はぁ!?お、俺、本当に何も知らないよ!?」
事実だが、記憶にない葵は必死で訴える。
シェリル「クスッ、確かにルビアちゃんは良い子だし、私は反対しないわ。‥けど、私の断りなしで襲うなんて‥どういうことなのかしら?。」
葵「うぐっ、ま、待て、これは何かの間違いだよ!?」
シェリル「嘘だっ!!」
葵「ぐふっ!」
茂野「えっ!?ぐはっ!?」
鋭い否定と共に、嫉妬まみれの渾身の回し蹴りが葵の腹部を捉え吹っ飛ばすと、茂野を捲き込んで制裁を受けた。
晴斗「っ!?な、何をしているんだ!?」
まさかの展開に、晴斗も目を丸くして驚いた。
これにより、微食会の多くの者が怖じけずき逃げていった。
これにより、相川葵と茂野天は呆気なく散った。
ここでようやく動けるようになったルビアは、シェリルに駆けより詳しく打ち明けた。
ルビア「シェリルちゃん待って!?わ、私‥葵に押し倒された訳じゃないの!」
シェリル「‥えっ?で、でも、シャルが言っていた手負いの葵に押し倒されたってのは‥。」
ルビア「え、えっと、押し倒されたの本当だけど‥。で、でも、悪意はないんだよ!?あの時の葵は私が投げたクナイのせいで瀕死状態になってて‥その反動でたまたま、倒れた際に‥く、唇が触れちゃって‥その‥。」
急いで誤解を解こうとすると、シェリルは両膝をついた。
シェリル「‥そ、そんな‥では‥わ、私は‥勘違いを‥。葵が知らないと言ってたのは‥本当だったのか。」
ルビア「‥シャルちゃんの言葉足らずだったね。」
シェリル「うぅ、ふぇーん!今度こそ葵に嫌われちゃうよ~!」
ルビア「だ、大丈夫だよ♪しっかり謝れば許してくれる‥ん?今度こそ?」
するとそこへ、ベージュ長髪の紅薔薇隊の女子が近寄ってきた。
紅薔薇隊女子「すまない、いつものことだから気にしないでくれ。ほら、シェリル?いつも早とちりはするなと言っているだろ?」
シェリル「ひっく、うぅ‥リーファ~。」
リーファ「はぁ、人前ですよ?泣き止んでください。」
リーファはシェリルを抱き抱え陣に戻る。
ルビア「‥こ、これが、シェリルちゃんの本性。ふへ~♪痺れるぅ~♪」
ルビアの性格は少し変わっていた。
葵のまわりに集まるのは、
癖の強い子ばかりであった。
こうして締まらない攻防戦は‥。
両軍の痛み分けで終わった。
もはや、誰が勝ってもおかしくはない戦力。
果たしてこの激戦を制すはどの軍か。