第百九十四話 夏の大戦乱祭編(24) 慢心魔王様
士道部壊滅の危機が訪れた。
晴斗がサキュバスに襲われた瞬間、
士道部の敗北が決まる。
そのため有力者たちは、
晴斗の救出に動くも苦戦を強いられていた。
椿とスザクは、ルシアに敗北しどこかへと連れていかれ、
シェリルとシャルは一進一退の攻防を繰り広げ、
葵はサキュバスと言う肉欲の壁に迫られ、
多くの男子はサキュバスに精気を吸われて脱落し、女子たちが必死の抵抗を見せていた。
そんな救出が難航する中、
晴斗に至っては敗北と合わせて童貞の危機に晒されていた。
サキュバス「はぁはぁ、じゅるっ‥晴斗の弱々しい精気‥美味しそう~♪」
サキュバス「体が弱い分‥生きようとする力は絶大‥極上の精気が取れそうね~♪」
晴斗「うわぁ~!?た、助けてくれ~!?」
サキュバス「クスッ、可愛い~♪これで彼女がいないなんて‥不思議だね~♪」
サキュバス「わたし~♪立候補しようかな~♪」
サキュバス「あぁ~!抜け駆けはだめだよ!」
淫魔に好かれた罪な男。
晴斗は、一人のサキュバスに馬乗りにされ身動きが取れない。
葵も助けに動くのだが、行く手を阻むように三人のサキュバスが前に立つ。
葵「くっ‥やっぱり、例えサキュバスでも女子を斬ることはできない‥。」
サキュバス「じゅる‥相川くんは優しいね~♪」
サキュバス「ねぇねぇ~♪相川く~ん、私たちの○馬になってよ~♪」
サキュバス「うんうん、強い子種は大歓迎だよ♪なんなら、ちょっと精気をくれるだけで、毎日私たちを好き放題できるわよ♪」
葵「っ!?」
さすがサキュバスの発情期、かなり見境がない。その中にはいつも大人しい子でさえも急変するくらいだ。
さすがの葵も、サキュバス相手では手は出せないため突破に苦戦する。
しかも少しでも掴まれれば最後、
一気に精気を吸われ押し倒される。
しかも、シェリルの前で。
葵は、無意識に後ろへ下がると、
三人のサキュバスも一歩一歩近寄る。
そんなピンチのなか、お転婆サキュバスのルビアがクナイを投げながら突っ込んできた。
ルビア「こ~ら~!お前たち何してるんだ~!」
サキュバス「ふぇ!?ルビアちゃん!?うわっ!?」
サキュバス「きゃあっ!?」
サキュバス「うわっ!?ルビアちゃん危ないじゃないの!?」
ルビア「よっと、私の獲物‥じゃなくて、仲間に手は出さないでよ~?」
一瞬本音が漏れるルビアは直ぐに言い直し、
三人のサキュバスの前に立つ。
サキュバス「むう~、でもこれは、サキュバスとしてれっきとした攻撃だよ?」
サキュバス「そうそう、本来サキュバスはルビアちゃん見たいに武闘派じゃないしね‥‥ん?」
サキュバス「‥あっ、る、ルビアちゃん?」
一人のサキュバスが何かに気づくと、
他の二人も何かに気づき、ルビアの後ろを見る。
ルビア「どうしたのみんな?あっ、もしかして、気をそらして攻撃する気だな~?」
サキュバス「そ、そんなことしないよ!?え、えっと‥相川くんが‥。」
ルビア「ふぇ?葵がどうしたの?」
ルビアは後ろを振り向くと、左側頭部にクナイが刺さっていた。
ルビア「‥あっ、」
葵はそのまま前のめりで倒れ込むと、ルビアを押し倒すような感じになり、ルビアと唇を重ねた。
ルビア「‥んっ!?」
サキュバス「はぅ!?」
サキュバス「る、ルビアちゃん!?」
サキュバス「は、はわわ!?」
突然のことに、お転婆なルビアも混乱する。
模造とは言え、クナイの先端は若干本物である。
早く治癒魔法を施さないといけない思いと、突如訪れた葵との接吻に、ルビアの脳内はオーバーヒートしていた。
ルビア「んはっ、あ、ああ、葵!?大丈夫!?」
サキュバス「る、ルビアちゃん!早く治癒魔法を!」
ルビア「そ、そそ、そうだね!」
ルビアはクナイを引き抜き、直ぐに治癒魔法を施した。三人のサキュバスたちも慌てて、サポートに回った。
その頃、
シェリルとシャルの対決では、一進一退の攻防をしていたが、徐々にシェリルはシャルに押され始めていた。
そんな中二人は、葵の騒ぎを聞き付ける。
シャル「おや?なにやら、向こうが騒がしいな?」
シェリル「はぁはぁ、はぁはぁ。葵‥。まさか‥やられたのか。」
シャル「ふむ、女に手をあげないのは見事だが、少し課題であるな。」
シェリル「っ!」
シェリルは晴斗ではなく葵に向け駆け出した。しかし、シャルはそれを許さず前に立ちはだかる。
シャル「ふむ、勝敗より恋人を取るか。」
シェリル「っ!そこを退くんだ!」
シャル「いやなのだ。それに、騎士として試合を放棄するのはどうかと思うが?」
シェリル「うぐっ‥、くっ、」
力の差を思い知らされたシェリルは、
思うように踏み込めないでいた。
シャル「ふっふっ、この優越感‥たまらないのだ!ぬはは!」
突然いつものシャルの様に笑い出すと、
妖艶お姉さんの体が一変、徐々に体が小さくなっていった。
シャルは目をつぶって高笑いをしていたため、小さくなったことに気づいていない。
シェリルは、無言でシャルの前に立った。
シェリル「じーー。」
シャル「ぬはは!ん?あれ?どうしてシェリルが大きくなっているのだ?」
シェリル「‥ごくり。」
目の前には、先程までカリスマ溢れるお姉さんだった、可愛い幼女がいる。
シェリルは、辺りをキョロキョロと確認して、誰も見ていないことを確認するとシャルに抱きついた。
シェリル「か、可愛い~♪」
シャル「ぬわっ!?」
シェリル「よしよし~♪こうして近くで見るとシャルちゃん可愛い~♪」
シャル「こ、こら!?離さぬか!?」
シェリル「はぁはぁ、ふにふにほっぺに、さらさらな黒髪~♪」
シャル「ぬわぁ~!?や、やめるのだ~!」
普通では見せない、紅薔薇隊の隊長様は、
無類の可愛いもの好きであった。
戦力外まで力を失ったシャルは、なんとも無様に揉みくちゃにされたのだった。
その様子を天から見ていた上杉校長は、
魔紅軍大将シャル・フォルトを戦闘不能と判定し、魔紅軍脱落の令を下した。
こうして士道部はかなりの戦力を失うことになるも、ギリギリのところで命拾いをするのだった。
その頃、
晴斗はズボンまでも剥がされ、性的に喰われる寸前であった。
更に一方で、微食会と対峙している魔紅軍は、ルイと微食会幹部の無双に蹂躙され、ほぼ壊滅していた。
リフィル「あちゃ~‥シャルちゃんが取られちゃったか~。」
エニカ「ふぅ‥決闘の決着は着かなかったわね。」
リフィル「まあ、仕方ないよね♪また、機会があれば決着をつけようね♪」
エニカ「そうだな。」
二人は健闘を称え握手を交わした。
その頃激戦区では、悔しさを噛み締めていた。
京骨「あぁ~、ムリムリ!強すぎるよ~、」
小頼「あ、あはは‥ここまでやられるとは思わなかったね。」
継丸「ね、姉さん‥ごめんない。僕が弱いばかりに‥。」
小頼「だ、大丈夫だよ継丸くん♪負けたのは継丸くんが悪い訳じゃないからね?」
継丸「うぅ、姐さん‥。」
小頼が慰めているとルイが近寄ってきた。
ルイ「‥‥小頼。」
小頼「あ、ルイちゃん♪やっぱり時期学園最強の力はすごいね~♪」
ルイ「‥っ‥怒らないの?」
本当の戦場しか知らないルイに取って、敗者が勝者に対して、ひねくれる光景を幾度も見てきた。
そのため、せっかくできた友だちと決別したくない想いで声をかけたのだ。
だが、実際はひねくれる所か、小頼はルイを褒め称え称賛した。それは、嘘偽りのない、心からの言葉であった。
そのため、ルイは少し驚き不思議な質問をしたのだった。
小頼「ふぇ?あ、あはは♪勝負に負けたのは悔しいけど、こんなことで怒らないよ~♪」
ルイ「‥‥‥どうして?」
小頼「それはだって、これは勝負でもお祭りだよ?負けても楽しまないと♪」
ルイ「‥ルイは‥それがわからない‥。勝負に負けたら‥悔しい。」
この打ち明けに小頼は、ルイの胸の内のモヤモヤを悟った。
小頼「確かに負ければ悔しいよ。でも、それは時期にルイちゃんも分かる日が来るよ♪」
小頼はルイの頭をポンポンと優しく叩いた。
ルイは片目をつぶり頷いた。
その姿は可愛い小動物の様であった。
小頼「ふへ~♪かわいい~♪」
小頼はそのままルイに抱きつき、なで回したのだった。
そして、磔場こと船着き場では、
桜華「ふぇ~!!?シャルちゃん負けたの!?」
エルン「そ、そのようだな。」
リール「もしかしたら、小さい姿に戻ってやられたとか~♪」
桜華「ま、まさかそんな‥‥でも‥う、うーん、あ、あり得ますね‥。」
エルン「もしそうなら、調子に乗って魔力を使い果たしたかもな。」
シャルの敗因を想像する桜華とエルンは、
苦笑いをしながら納得するのであった。
三人の美女たちが話している中、磔にされている二人はと言うと‥。
桃馬「うぅ、こんな終わり方‥あんまりだ。」
直人「‥‥分かる‥気持ちは凄く分かるよ‥だけど‥。」
二人のまわりにカラスが飛び交う中、
悲惨な敗北を味わう桃馬に、何かを言いかけた直人は、表情暗く頷いたのであった。