第百九十二話 夏の大戦乱祭編(22) 可憐な花には何とやら
戦場に
深紅の女神
降り立つは
迫る敵薙ぎ
鬼神の如く
士道部の本陣で、魔紅軍と微食会が一進一退の交戦をする中、たった一人で魔紅軍の三分の一を倒す鬼神の様な女子がいた。
ルイ「‥‥。」
京骨「はぁはぁ、け、桁違いすぎる‥。」
小頼「さ、さすがルイちゃん‥、あの子に勝てるのはご飯くらいだね~。」
小頼は、ちょっと期待を込めた眼差しで京骨を見る。しかし、京骨は見透かした様にスルーをする。
京骨「‥‥そのようだな。」
小頼「‥ねぇ。」
京骨「‥なんだよ?」
小頼「‥‥うまいって言わないの?」
京骨「‥言わない‥どうせあれだろ、俺が言ったら"ご飯だけに"って言うんだろ?」
小頼「うぐっ、勘のいい骨は嫌いだよ。」
京骨「こんな時に安いボケをかますな!」
勝手に低級漫才をする二人に、
ルイはじっと見ていた。
ルイ「‥‥‥。‥。お腹すいた。」
昼休みに大量の弁当を食べたのにも関わらず、
ルイは腹の虫を鳴らして、お腹を擦った。
どうやら、エネルギー消費が激しい高燃費の様だ。
京骨はこの隙を見逃さなかった。
京骨は敢えて、戟を持っている右手側から瞬時に移動し攻撃を仕掛けた。
理由として、
左側ではもし気づかれた時に、戟で薙ぎ払われやすい危険性がある。しかし右側では、戟で若干死角になっている利点と、もしばれても一間置いて攻撃するため、いやでも隙ができる。
京骨「っ!(よし!もらった!)
大半の馬鹿は、ここで"もらったー!"などと声を上げて居場所を教えるが、京骨は無言で刀を振るう。
よそ見、集中力の低下、左手お留守、若干の死角、間合い、不意打ち、これだけ揃えば勝ったも当然である。
がしかし、
それは一般相手に通じる物で、異次元的な強さを持つ者には無意味であった。
ルイはよそ見をしてるのにも関わらず、片手で戟を巧みに振るい、京骨をその場に叩きつけた。
京骨「がふっ!?」
ルイ「‥‥?」
しかし、ルイは何が起きたのか分かってない様子。どうやら無意識で防衛本能が働いたようだ。
京骨の瞬殺に魔紅軍の士気は大低迷する。
小頼「あ、あちゃ~、これは"ウルスパ(ウルトラスーパー)"ピンチだね。」
そして、
リフィルとエニカの対決では、
ザッ異世界ファンタジー系の戦いをしていた。
青く光る矢をリフィルが放ち、
それをエニカが薙ぎ払う。
正直やっと、
まともな戦闘が始まった様に思える。
リフィル「むぅ~、エニカちゃんもやるね~。」
エニカ「私だって戦えるってことを、みんなに証明したいからね!」
エニカは負けじと魔法陣から炎弾や雷撃などを出す。しかし、これをリフィルが避ける度に無慈悲に敵味方関係なく被弾していく。
リフィル「あ、あちゃ~、これじゃあ諸刃の剣だね。」
エニカ「あわわ味方まで!?ごめんなさい!」
ゲームとは違い、味方までにも当たり判定があるリアルでは、無作為な魔法は命取りである。
そして番場を討ち取り、ルイの元へ向かう憲明は、野生の茂野に出くわしていた。
憲明「うっ、ここで茂野か‥。」
茂野「憲明がここにいると言うことは、せいっちゃんは負けたか‥。」
大鎌を片手に危険な臭いを漂わす姿に、
憲明はほぼ諦めかけていた。
微食会の序列は人の感覚にもよるが、憲明にとって茂野は、四番目当たりの厄介な相手だ。
一応刀を構えるが、
隙を見て逃げるを選択した。
しかし、直ぐに回り込まれ戦闘を続行する。
茂野の攻撃
大鎌を振り回し、二つの赤黒い斬擊波を出した。
憲明は最初の一つ払ったものの、次の斬擊波は払いきれず直撃、会心の一撃をくらいその場に倒れた。
憲明は全滅した。
ここであるある小話
ドラ○エで、確実に勝てない相手と当たり、逃げるを選択するも逃げれず容赦なく袋叩きにされることってあるよね!
とまあ、こんな感じで、現実はそんなものだと突きつけるような戦場であった。
その頃、
魔紅軍と微食会の交戦が激しさを増す中、
擦り付けに成功した士道部は、次なる策に迷っていた。
晴斗「うーん、漁夫の利を取ろうと思ったけど‥微食会側にルイがいると話が変わるな~。」
シェリル「‥なあ、晴斗?そのルイとやらはそんなに強いのか?」
晴斗「あぁ、かなり強いらしいよ。実際俺は見たことはないけど、話によれば新西狂季がエニカに手を出したことでルイが暴走、止めにかかった微食会幹部と新西一派を一人で蹴散らしたとか。」
シェリル「た、たった一人で!?し、信じられないな。」
晴斗「だろ?だから迂闊に攻勢に出れば返り討ちに合う。まあ、磔にされた直人と葵が力を合わせれば勝機はあるかもしれないけど‥。」
シェリル「な、ならすぐに直人を解放すれば良いではないか?」
晴斗「‥‥そうしたいけどな。」
晴斗は少し気難しそうな顔をする。
シェリル「‥何か、問題があるのか?」
晴斗の表情から察するに、何やら重い理由があるように見えた。
すると、気絶したジェルドをなで回している、葵が口を開く。
葵「解放したくてもできないんだよ。」
シェリル「えっ?それはどう言うことだ?ま、まさか、二人を磔にした男子たちの反感を気にしているのか!?」
葵「まさか‥そうじゃないさ。俺と晴斗が気にしているのは‥直人の暴走だよ。」
シェリル「ぼ、暴走?それはつまり磔にした者への仕返しか?」
葵「うーん、仕返しは合ってるけど、矛先が違うかな。」
シェリル「‥矛先‥っ、となると逃亡者か。」
葵「正解。まだ直人の頭が冷えてないのなら、解放するには危険すぎる。」
晴斗「そうそう、修羅モードで暴れ出した暁には、下手すれば死人が出る。」
直人の人柄をよく知る二人は、
手に取るように最悪の展開が想像できた。
事の重さを実感したシェリルは固唾を飲んだ。
シェリル「‥そ、それでは、これから我々はどうしたら‥。」
晴斗「‥幸いまだ有力者は健在だ。そのため俺たちはここから六組あるいは連合軍を叩く。おそらく六組は、微食会の渡邉と近藤たちの攻勢で疲弊していると思うから落としやすいと思う。一方で連合軍は戦力の大半を俺たちに費やしたと思える。つまり今の本陣は手薄だ。」
葵「‥確かに、まだこっちの方が勝機はあるな。」
シェリル「二つに一つ‥ですね。」
三人が悩んでいると、
そこへ妖艶漂わす女性の声が響く。
シャル「いいえ、あなたたちの選択は一つだけよ♪」
シェリル「えっ?」
晴斗「っ!」
葵「‥ん?」
三人が声がした方を向くと、
覚醒して元のエロい姿をしたシャルがいた。
晴斗「まさか、連合軍の大将が一人で来たのか?」
シャル「まさか~♪これは私の策よ♪」
今のシャルに、いつもの子供っぽい感じが一ミリも感じられない。むしろカリスマ溢れる姿に違和感を感じる。
晴斗「策?」
シャル「うむ!豆太!ディノ!」
シャルは自信満々に弟たちを呼び出す。
アニメや漫画ならではの展開に、晴斗とシェリルは身構える。
が、しかし、二人は現れない。
沈黙は数秒間続いた。
シェリル「‥ん?誰も来ないではないか?」
シャル「っ、ま、待つのだ!おーい!ディノ!豆太~!」
再び弟たちを呼ぶが無反応である。
シャル「くっ、な、なら孔真~!」
次は孔真を呼ぶもこれも無反応である。
逆に心配する晴斗とシェリルは、シャルに声をかける。
晴斗「えっと‥シャル?統率取れてないんじゃないのか?」
シェリル「もしかして、タイミングをミスったとか。」
シャル「そ、そんなことはないのだ!確かに一緒に来たはずだ!」
シャルが動揺するなか、周辺警備をしていたスザクと椿が来た。
スザク「お探しの仲間ならもう倒したぞ?」
シャル「っ!な、なんだと!?」
椿「どうやら忍を甘く見てましたね?」
まさかの展開にシャルは驚き、いつものノリが戻る。だが、大人びた姿では違和感は変わらなかった。
シャル「そ、そんなバカな‥、魔力で気配を消していたはず。」
葵「スザクの能力だよ。」
シャルが現れても未だ冷静にしている葵が口を開いた。
シャル「な、なんだと?」
葵「スザクの気配察知は鋭いからな。例え魔力で気配を消しても見つけてくる。かくれんぼでは鬼にさせたくない奴だ。」
スザク「あはは‥まあ今回は逆に気配隠しの魔力でわかったけどな。」
シャル「うぐっ、なんと言う男なのだ‥。」
椿「ちなみに、ディノと豆太は女の子たちに揉みくちゃにされてるぞ?」
シャル「何っ!?で、では、孔真は!?」
スザク「麗羅の一騎討ちに負けて氷漬けだ。」
葵「ということだ。諦めて降伏するか。本陣に帰るか。どうする?」
葵は穏便な提案を持ちかけた。
しかし、シャルは不敵に笑いだした。
シャル「‥‥ふ、ふふふ、捕まえたのはそれだけか?」
スザク「‥ん?ああ、策にしてはお粗末な気がしたけどな。」
葵「っ!スザク逃げろ!」
スザク「‥えっ?うっ!?」
突如スザクの背後からピンク色の閃光が貫いた。
スザクはその場に倒れ込んだ。
椿「っ!スザク!?」
狙撃とも思える攻撃に為す術なしのスザクに、椿は駆け寄った。
三人が上を向くと、
そこには、水色短髪ボブヘアのルシア・シフェルム率いる十数人のサキュバス部隊が羽を広げていた。
ルシア「クスッ、本番はここからよ。」
淫魔界の第三皇女がついに動く。