第百九十話 夏の大戦乱祭編(20) 男の意地
昼休みが明けてから早々に、各地では激しい戦闘が繰り広げられていた。特に、二方面から攻められている士道部こと"壬生浪士"は、この大劣勢を打開すべく決死の時間合わせをしていた。
一方、六組と微食会こと"維出喪喰獲"の戦闘では、両軍退けをとらない戦をしていた。
特に微食会は、ガチムチ部を排除するために行った"お裾分け"作戦を外し、渡邉、近藤、本間の部隊に、星野、大西、坪谷を加えた大精鋭で六組と対峙していた
魔法と砲撃が飛び交う戦場は、
もはや祭りのレベルを等に越えていた。
ジレン「連合軍(魔紅軍)が手を引いてくれたお陰で、対微食会に専念できるが‥。向こうの攻撃も激しいな。」
リト「微食会の本領発揮ってところだな‥。それより志道?少しは落ち着いたのか?」
志道「‥落ち着くわけないだろ。例え事故だったとは言え‥、あんな‥あんな物でジャンヌとアンジェリカをリタイヤさせるなんて‥許せない‥。」
昼休みの"お裾分け"作戦に巻き込まれた、ジャンヌとアンジェリカ。これにより志道は、不可抗力とは言え、微食会に憤りを感じていた。
ニブル「それにしても二人が手にした水筒が、ちょうど限定魔法がかけられてないとはな‥。」
ジレン「まあ二人はこういう変な運が強いからな~、いつも通りな気もするけど。」
志道「‥それが可愛いんだよな。」
ジレンが、ジャンヌとアンジェリカが持つ不思議なドジ属性を語ると、志道は小声で反応した。
ジレン「ん?何か言ったか?」
志道「っ//な、なんでもない!ほ、ほら、俺たちもいくぞ!」
ジレン「あ、おい志道?」
志道は赤面しながら微食会に向け攻撃を仕掛けようとするのだが、動揺していたせいか進む方向を間違えていた。
まわりが教えようとすると、そこへジャンヌとアンジェリカの看病を終えたアリシアが戻る。
アリシア「志道?どこにいくのですか?」
志道「あ、アリシア‥。どこって、微食会と決着をつけにいくんだよ。」
陣の外に出て話す志道に、
アリシアは少し驚いたように話す。
アリシア「ふぇっ、微食会とですか?えぇ~っと、それなら方向を間違えてる気が‥。」
志道「‥えっ?」
ようやく間違えを指摘された志道は、
自分が魔紅軍の方に向けられた歩いてることに気づく。
目の前で微食会と撃ち合いをしているのにも関わらず、間違えたことはかなり動揺していたようだ。
志道は再び赤面し、咳払いをしながら方向転換をした。
ジレン「やっぱり志道って、動揺すると視野が凄く狭くなるよな。」
志道の可愛い一面に、思わずジレンは胸の内を漏らした。すると、まわりは大きく頷き志道を追いかけるのだった。
更にその頃前線では、遠距離戦法が激しく飛び交う中で、微食会の渡邉、近藤、本間は白兵戦を仕掛けていた。
これに対して、ベリー・レリフソン、二条実光、三条実時の三人はこれを迎撃する。
激しい乱戦の中、
数人の男たちを偃月刀で薙ぎ払い声をあげる男がいた。
近藤「出てこいベリー!決着つけようじゃねぇか!」
午前中に起きた"汚い"一騎討ちで、男の天敵とも言えるベリーを追い込むも、惜しいところで時間切れとなり、トドメをさせなかった。
そのため近藤は、休憩してもベリーは弱っていると思い、早期決着をつけようとする。
対するベリーは、今にも"ちぎれそうな"紺色のTシャツと"パツパツ"のジーパン姿で現れた。
近藤は手に持った偃月刀をその場に刺すと、
そのまま前に出た。
対するベリーも合わせて前に出る。
まわりの者たちは手は出さず、あちらこちらで砲弾や衝撃魔法が飛び交う戦場の中、二人に注目する。
そのため二人の光景は、これから行われる"汚い"一騎討ちには勿体ないくらい、無駄にかっこよく映っていた。
本来近藤は、自慢の偃月刀で応戦すれば良いのだが、律儀にフェアプレイに乗っ取って、丸腰で戦おうとした。
勝負は一瞬‥おそらく一分も経たないくらいで決着が着くだろうと皆が予想した。
ベリー「‥午前中は不覚を取ったが、今度はそうはいかないぞ。」
ベリーは、今にもちぎれそうなTシャツをわざわざ破くと一気に近藤に迫る。
近藤「っ!くっ!」
両手でベリーの腕を掴むが、
午前中の時とは比べ物にならないくらいの力に押され、その場に押し倒される。
午前中見たいにブリーフを引っ張ろうにも、
"パツパツ"のジーパンのせいで、反撃もできない。
微食会の味方は、本当にこれまでと思い合掌した。
すると、ベリーは近藤の服ではなくズボンに手をかけ始めた。
近藤「っ!こ、この!何しやがる!?」
ベリー「‥レスリングにズボンは要らんだろ!」
近藤「要るはボケ!?てか、その台詞そっくりそのま返すぞ!?」
ベリー「っ!うわっ!」
近藤は防衛本能から脚を、ベリーの上半身に絡めホールドした。すると、体をひねりベリーの上に股がる。
ここで緊急事態発生。
絡んだ脚をうまく外すことが出来ず、ベリーと地面に挟まってしまい動けなくなった。
ベリーは両手で服を掴み抵抗するも、
近藤も必死で押さえようとする。
しかし、今のベリーに力で勝てる分けもなく右腕を掴まれ引き寄せられる。
完全密着の体勢に、
ベリーも体をひねり上に股がろうとする。
近藤は、まだ自由な左腕を使い離れようとするが、力及ばずクルリと"何か"に掴みながら体を入れ換えられた。
もはやこれまでと思ったとき、
アァァーッ!
ベリーから一度聞いたら忘れられない奇声が漏れ、近藤から離れ転がった。
ベリー「おォ~う、おォ~ん。」
近藤「はぁはぁ、よくわからないがこれでトドメだ!」
怯んだベリーの下半身に腕を回し、
相手を持ち上げるベリー式超必殺技"光悶祭り"を出した。
まさかの自分の技にヤられると言う結末に、ベリーは肉体的と精神的にダメージを負い、十数秒間神輿のように上下させられ、奇声を上げ続けた。
ベリー「あぁ~っ!おぉぅ~ん!歪みねぇ~!アァァーッ!」
最期の奇声が響くと、近藤はその場にベリーを投げ捨てた。
近藤「はぁはぁ‥。勝った。」
まさかの逆転(?)に微食会の士気は上がった。
しかし、ガチムチ部をお裾分け作戦で倒せなかった事は大きく、十数名の微食会男子の被害が出たことは言うまでもない。
一方、二条と三条が対峙する、渡邉と本間だが、かなり激しいか撃ち合いをしていた。
二条「さすが剣聖の一人、渡邉殿ですね。」
渡邉「そう言う二条も相当な腕だな。」
互いに認め合う二人に対して、もう一方は‥。
三条「あはは!本間はツッコミだけかと思ったが‥剣技も達者だな~。」
本間「あはは、俺は三条の事をただの脳筋ゴリラかと思ってたけどな~。」
‥‥。
二人は互いに罵倒し合うと、
笑顔で数秒間沈黙する。
そして二人が目を開いた時、二人の表情は一変、狂気に満ちた表情で斬りかかる。
三条&本間「ぶっ潰す!」
騒がしく斬り合う二人に対して、二条と渡邉は静に睨み合っていた。
二条「あの二人は、気が合うようだな。」
渡邉「ふっ、そう見たいだな。本間も楽しそうだ。」
二人は鞘に手を置き、静かにせめぎ合いをする。
しかしそこへ、お隣で激しく戦闘している本間と三条が、目の前に割り込んで来ると。
渡邉は三条を、二条は本間を一閃し、壮絶な斬り合いが始まった。
三条&本間「ぐはっ!!?」
渡邉「はあぁぁっ!」
二条「うおぉぉっ!」
火花が散るほどの打ち合いをする二人の姿は、
もはや剣豪その者であった。
まわりは長期戦になると思われたが、これもあっさりと決着がついた。
葵が二条の剣技を払うと、
左手で鞘を抜き二条の頬を捉えぶっ飛ばした。
二条「へぶっ!?かはっ‥‥み、見事‥。」
渡邉「ふぅ、二条実光討ち取ったぁぁ!」
六組前線部隊の幹部は全滅した。
渡邉と近藤は、このまま攻撃を続け総大将藤原志道を目掛けて進攻した。
が、そこへ‥不運が起きた。
微食会側から放たれた流れ弾と衝撃魔法が二人を直撃、呆気なく最後を迎えた。
それを双眼鏡で覗く星野は唖然とした。
星野「あっ‥。」
大西「ん?どうした?」
坪谷「もしかして、当たった?」
星野「やっちまったな‥。」
大西「‥ちなみに志道は?」
星野「健全‥。」
前線特化の三人が、予想もつかないことでリタイヤしたことにより、後衛特化の三人は動揺し冷や汗をかくのだった。