表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/431

第百八十九話 夏の大戦乱祭編(19) 攻勢の一手

いざ()かん

夢と希望を

胸に秘め

(そび)えに立つは

深紅(しんく)の鬼神


昼休み終了の花火が上がり、

各軍では戦闘に備えた。


その頃、微食会では、

勝敗を分ける大きな動きがあった。


それは、士道部攻撃部隊の進軍中に起きた。


途中まで部隊の全員が気にしていなかった事だが、たまたま微食会幹部のある茂野 (そら)が後ろを向くと、本来本陣にいるはずの二人の赤髪美女が着いてきていた。


茂野「‥ん?なんだ、二人も来たのか‥ってんんっ!?エニカ、ルイ!?」


茂野が慌てて声をあげると、ようやくまわりも二人に気づく。


ちなみに近くにいた者たちは違和感は感じていたが、不思議と感じる言ってはならない空気に()され黙っていた。


しかし、茂野がツッコンだことにより、

"あ、やっぱり、この二人がここにいるのはおかしかった"のだと思うのだった。



藤井「こらこら、総大将が出てきちゃダメだろ?」


エニカ「そうですけど、せっかくのお祭りなのに見てるだけはつまらないです。それに私をこのまま、飲み物の冒涜をさせて終わらせる気ですか?」


藤井「う~ん、気持ちはわかるけど、この祭りは総大将がやられたら負けなんだよ?」


茂野「そうそう、負けたら夏休みの宿題が大量に出されて‥うぅ、身の毛がよだつ。」


エニカ「ふ~ん、」


二人の必死の説得は何のその、夏休みの宿題の恐ろしさを知らない、お転婆モードのエニカは恐れず先行する。


藤井「あっ、ちょっ、待てって!?」


茂野「マッキー!せいっちゃん!エニカを止めてくれ!?」


先頭を歩く高野と番場は、ため息をついてエニカの前に立つ。


番場「おいエニカ?頼むから下がってくれよ?」


高野「そうそう、さすがにエニカを激戦地に連れていけないよ。」


エニカ「むぅ~、あなたたちも私を過保護にする気なの?」


番場「いや、そういう訳じゃ‥。」


高野「宿題を回避するためだ‥。分かってくれ。」


いつも過保護にしてくる微食会の十人に、

とうとうエニカは不満を漏らす。


エニカ「仲間なら‥私も力になりたいもん。守られっぱなしは‥いや‥。」


(うつむ)いて寂しそうに話すと、

さすがの二人は気まずくなり、仕方なく了承し共に歩き出した。


茂野「おや~?何か一緒に歩き出したぞ!?」


藤井「‥はぁ、もう仕方ないな。こうなれば、覚悟を決めるしかないか。」


ルイ「‥二人とも大丈夫‥エニカはルイが守るから。」


茂野「あはは、そうは行かないよ。」


藤井「そうそう、俺たちの大将だからな。みんなで守りながら戦うぞ。」


吹っ切れた茂野と藤井は、

笑みを浮かべながら三人の後に続いた。



微食会の十人にとってエニカは、お転婆ながらも純粋無垢(じゅんすいむく)で優しい心を持っていることは良くわかっている。


そのためか友人以上恋人未満の関係になり、エニカを可愛がるようになると、徐々に過保護になっていった。


ちなみに今では、エニカとルイを傷つけることは微食会への宣戦布告を意味し、その危険度は両津直人の暴走を軽く越えるとか。





それからエニカ率いる微食会は、海洋率いる士道部に迫った。



海洋「‥"半兵衛"の予想通り、エニカとルイが来やがったな‥。」


鬼山「まずいな‥。」


六道「‥どうするよ。」


覚悟はしていたが、いざ二人の姿を見ると自然と士気が下がる。


そのため海洋は苦渋の決断に至った。


海洋「‥鬼山‥六道‥。もはや‥これまでだ。」


鬼山「‥海洋‥。」


六道「‥じゃあ、やるのか。」


海洋「‥あぁ、ありったけのバズーカを撃ち込むぞ!」


鬼山&六道「おぉ!!」


海洋より禁断のバズーカ戦法が解禁されると、待っていたかのように同士たちが一斉に構える。


もはや彼らの姿に士道を全くなかった。

しかし、これこそ士道部らしい戦いである。


海洋「全ての責任は俺が取る!一斉に放て!」


海洋の号令により、総勢二十五人からなるバズーカ戦法が微食会を襲う。


藤井「っ!まずい!バズーカだ!伏せろ!」


微食会男子「えっ?ぐはぁぁ!?」


微食会男子「ぎゃあぁぁっ!」


反応に遅れた数名の男子たちは吹き飛ばされ、微食会の足並みは崩された。


流れ弾がエニカに迫ったとき、近くにいた番場は、咄嗟にエニカを押し倒し頭を伏せさせた。


茂野「せいっちゃんナイス!そのままエニカを立たせないで茂みに隠れろ!」


番場「わかった!エニカそのまま‥茂みにいくよ。」


エニカ「で、でも‥。」


番場「大丈夫、エニカの出番は沢山あるから‥ここは専門家に任せよう。」


エニカ「わ、わかった。」


番場とエニカは速やかに茂みに隠れると、

攻撃の隙を伺う。


士道部は弾がある限りバズーカ戦法を継続し、微食会に攻撃の隙を与えないようにする。

だが、一部では無駄な行為であった。


その一人の茂野は半ギレで大鎌を構えていた。

赤黒い不気味なオーラを漂わせ、背後には髑髏(どくろ)が浮き上がった。


茂野「‥てめぇら‥エニカが怪我をしたらどうするんっ‥だぁぁ!」


大鎌を力強く振ると、三日月型の赤黒い斬撃破が士道部を襲った。


地が(えぐ)れるほどの斬撃破は、半数近くの士道部を吹き飛ばした。




番場「今だエニカ!号令だ!」


エニカ「う、うん!皆さん今が好機です!全軍突撃ー!」


微食会「おぉぉっ!!」



足止めどころか、更に勢い付かせてしまった海洋は、もはやこれまでと覚悟を決めた。


海洋「もはや‥これまでか‥。鬼山、六道‥あとは頼むぞ。」


鬼山「海洋‥ふっ、なに言っているんだ。」


六道「お前一人じゃ、背中が寂しいだろ?」


士道部男子「そうだ!ここまで来たら最後までお供するぜ!」


士道部男子「てか、さっきの茂野の攻撃で動けるのが十人しかいないし、逃げても意味ないよ。」


士道部男子「十人駆けか。いいね~!やってやろうや!」


海洋「ふっ、ありがたいが、本陣の連携もある。とりあえずそこの二人は後方のスザクと共に本陣に引き付けろ。」


士道部男子「うぐっ、わかった。」


士道部男子「うぅ、だが、もう相手は目の前だ‥。仕方ない。」


海洋「よーし!行くぞ!!」


渋る二人の男子を背にして、海洋率いる八人は、最後の散り花を咲かせに出るのだった。




一方、魔紅軍と対峙する士道部は。


大砲と鉄砲の砲撃音が響くなか、

激しい攻防戦を広げていた。



ギール「くっ!やっぱり配置してるよな。」


ジェルド「だけど相手は少数だ!ここは一気に畳み掛けるぞ!続けえ!」


ギール「あ、おい!待てジェルド!うわっ!?」


激しい砲撃の中を、ジェルド率いるけも耳隊は突撃を実行する。


葵「来たか、砲主と鉄砲隊は下がれ!白兵隊は援護に回るぞ!」


シェリル「紅薔薇隊もいくぞ!」


総勢三十人の内、二十人がジェルドの部隊と交戦する。


ジェルド「相川葵!勝負だ!」


葵「駄犬ジェルドか‥、来るならこい。勝利への(いしずえ)になってもらうよ。」


ジェルド「っ!俺を駄犬って言って良いのは桃馬だけだ!ぐはっ!?」


葵は、取り乱したジェルドの斬撃を交わすと、刀を抜かず片手だけで後頭部に重い一撃を与えた。


ジェルドはそのまま気絶し捕らえられ、持ち逃げされた。


ギール「あ、あのばか!何してるんだよ。」


憲明「はぁ、土佐の件ではあんなにかっこ良かったのに‥。いつものジェルドに戻ったな。」


京骨「‥駄犬だからな。集中力がないんだろうよ。」


ギール「全く世話が焼けるな‥。」


負けについては予想通りではあったが、まさかの持ち逃げと言う展開に、ギールたち魔紅軍は急いで追撃を開始する。


さすが、剣聖と呼ばれる相川葵、

格下には刀を抜くまでもないらしい。



シェリル「さすが葵だ。刀を抜くまでもないか。」


葵「ジェルドの動きは単純だからな。体術だけで十分だよ。」


シェリル「ふっ、ジェルドが聞いたら泣いてしまうな。」


葵「だろうな。さてと、作戦が終わったら‥こいつをもふり倒すぞ。」


シェリル「あぁ、ジェルドのもふもふは最高だからな♪」


ジェルド「わふぅ~。」


葵は自分より少し体が大きいジェルドをおんぶして後退する中、シェリルは夏毛に変わった"サラサラ"で滑らかなジェルドの尻尾を触るのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ